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愛され気質な逸般人の異世界奮闘記  作者: Mat0Yashi_81
二章:運命を壊すは世界の奔流
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3-2:次の日々に

 大丈夫そう?







 あれから3時間くらいが経った頃、俺達はサクラに空海の貪鯨の情報を渡すということを建前として、彼女の様子を見るためにギルドの支部へと来ていた。

 受付嬢にその旨を伝えると簡単に通してくれて、案内付きで支部長の執務室まで案内される。

 ノックをしたら返事が返ってきたので入ってみると、何やら、いそいそと執務をしている姉妹の姿があった。


「あっ、来てくれたんだね。いらっしやい」


 サクラは立ち上がってから迎え入れてくれたが、アヤカは何をすれば良いのかがわからなくてオロオロしている。

 どうやら、亡くなってしまった部下の代わりとして、妹を傍に置いているらしい。

 わたわたとお茶の準備でもしようとしているのか、アヤカが慌ただしくなったため───俺は右手で何もいらないという意志を込めたハンドサインをサクラに送ると、彼女はアヤカの所まで歩いていって、何らかの文言を耳打ちしてから席に戻った。


「妹と2人で切り盛りか。他にツテは?」

「応援が昼頃に到着する予定だって言われたんだけどね。残念ながら、そこまで執務を止める・・・ってわけにもいかなくて」

「・・・なるほど。管理職ってのも大変だな」


 来客用のソファに座れと手で促されたため、俺達は大人しくソファに座り、つらつらと会話をする。

 しかしどうやら、彼女は昨日のことを忘れているらしい。

 あるいは、忙しすぎて記憶から飛んだのか。


「それで・・・、グレイアさんはなんでここに?」

「ん、昨日言っただろ。()()についての情報を渡すって」

「あー・・・!」


 わりとしっかりめに伝えたはずなのだが、まあ、それほど忙しかったという事だろう。

 俺は左手を収納魔法に突っ込み、用意しておいた資料を中から引っ張り出すと、彼女に声をかけながら資料を瞬間移動させた。


「ほら。受け取れ」


 短時間の浮遊魔法を付与し、キャッチしやすいように彼女の目前へと瞬間移動させた資料を、彼女はすっと手に取り、中身を確認する。

 そして、俺の方を見ながら一言。


「これって・・・」

「空海の貪鯨について・・・って言いたいんだが、生憎と俺達はそいつに興味がなくてな。だからこれは、確実に信用できる情報源から引っ張ってきた情報のみを記しただけの代物でしかない」


 まーじで俺達は興味が1ミリもなかったし、そもそも叡智の寵愛者関連の事柄はぶっちゃけ触れたくもなかったため、ざっと印刷ミスがないかだけを確認しただけで中身はまったく読んでいない。

 言ってしまえば、資料にwebサイトのコピペをするのと同義。

 ちゃんとした場だったら普通に怒られる。


「情報の確実性だけは信頼していい。ただ、役に立つかはまた別・・・というか、内容はほぼ図鑑みたいな代物になってるはずだ」

「それでも大丈夫。わたし達は少しでも情報を知りたかっただけだから、必要以上に質の高い情報を沢山くれるってだけで十分嬉しい」


 良い言い方をすれば、確実なソースの情報をわかりやすく纏めた資料を提供した・・・のだと言える。

 まあ、これを纏めたのは8割くらいニアだけど。


「ああ。役に立てたのなら何より・・・」

「うんうん。わたしも、ギルド支部長としてお礼を言うよ。

 情報の提供、ありがとう! ってね」

「・・・そうか。そうだな」


 若干だが、彼女が無理をしているような気がしてしまって、どうにも反応が遅れてしまった。

 こういう時、すぐに感情が出てきてしまうのはどうにかならないものだろうか。


「・・・・・? どうしたの?」

「いいや、今日は随分と暇でな。これから何をしようかと悩んでいるだけだ」

「そうなの? じゃあ一つ、頼み事をしていい?」

「・・・面倒事はやめろよ」

「大丈夫。あなた達の腕を見込んで、3つだけ依頼を受けてもらうだけだから」


 それなら大丈夫・・・と言おうとしたが、どうにも彼女は状況の説明がしたくて仕方がなかったようで、食い気味に言葉を続ける。


「うちはどうしても、滅多なことがない限りは冒険者が留まることがないから、強い魔物とかがそのまま放置されちゃう。それに、他の街に依頼を出そうにも、手続きとかを含めたらわたしたちがやる方が早いし確実・・・だったんだけど」

「早速、俺を頼るってわけか」

「・・・そうなるね。できるかな」


 どう考えたってYESだ。

 断る理由がない。

 話を聞く限り、公布されている依頼を受けてくれって話だろうから───報酬の話をする必要も無いだろう。


「タダ働きじゃないんだろう。それなら、俺が依頼を受けない理由はない」

「ありがとう。それじゃあ、よろしくお願いするね」


 まどろっこしい言い方ではあったが、俺の意向はきちんと伝わったようだ。


「あと、受けてもらう依頼はアヤカに纏めてもらったから、下のカウンターで見てもらえばいいよ」

「了解だ」


 それにしても仕事が早い。

 先程の耳打ちは、この為だったのか。


「行こう、ティア」


 俺はティアに声を掛けて立ち上がり、彼女もまた、無言で俺の方を見て頷いてから立ち上がった。

 サクラの頼み事は単純明快。

 サッとこなして、サッと報酬を貰えばいい。




 〇 〇 〇




 という訳で、俺達は依頼の説明を簡単に受けた後、()()()()なものから順繰りに済ませていくことにした。

 まず1つ目の依頼は、森の中に現れた「フェイカー・トレント」の群体を全て始末するというもの。

 群体型ということもあり、推奨ランクはチーム平均でB。

 そこそこ強い冒険者でないと難しい依頼だ。


「・・・これだな?」

『魔力反応が目標と合致。フェイカー・トレントの群体で間違いありません』


 そして今、俺の目下にあるのは、微弱な魔力を放っている円形の広葉樹林。

 本来、この辺りに生えている樹木は針葉樹が殆どであるため───地上から迷い込んだとしても、その微弱な魔力反応も相まって、違和感から直ぐに魔物の群体だと気がつくだろう。


『補足されないよう注意を。対象は一定以上の魔力反応に対して、自らの肉体すら厭わずに攻撃を行います』

「・・・ん?」


 嫌な予感。

 魔力反応に反応するということは、つまり、俺達が現在進行形で使っている飛行魔法にも反応するのでは?


「グレイア」

「あー・・・」


 ティアに声をかけられて下を見ると、そこには枝を曲げすぎてもはや針葉樹みたいになっているトレント達の姿があった。

 これはもう、めちゃめちゃ補足されている。

 まことに残念だが、俺の予想は大当たりだった。


「ちいっ・・・」


 ひとつの小さな魔力反応を皮切りに、凄まじい密度と速度で飛んでくる無数の木の葉。

 俺はそれらを見るなり、舌打ちをしながら両手のひらに魔力を凝縮させて目の前に突き出し、発射型の球形攻撃魔法を放った。

 銀色に輝く魔力の塊は俺の手を離れた瞬間に加速し、無数の木の葉を消し飛ばしながら進んでいき、トレントの群体の中央あたりに着弾すると───一瞬の輝きの後に大規模な爆発を巻き起こして、竜巻のような爆炎を生み出す。


「・・・っぶね」


 現在は身体強化を何も施していない状態であるため、俺は吹き荒れる暴風に流されないよう飛翔魔法をコントロールしながら事の顛末を見守った。

 そして、爆炎が勢いを弱め、ようやく地面が見えそうになった時───俺の隣で暴風をものともせず、直立したまま爆炎を見つめていたティアが、俺の方を向いて口を開く。


「今、きみと同じこと考えてる」

「・・・ああ」


 まあそうだよな。

 大抵、考えることは同じだろう。

 空、飛ばなければよかったな・・・と。

 余裕ぶっこいて、どうせなら偵察ついでに空から無力化すればいいか───なんて軽率な考えでやってきたら、まあまあビビることをされた。

 次からは、ちゃんと調べてから戦いに望まなければ。


「次からは移動する前から情報を仕入れておこう。できるか、ニア」

『可能です。では次の依頼目標について調査を開始します』

「ああ、頼む」


 ・・・というか、俺は同じことをナギとの戦いの時もやらかしている。

 なんなら、そのせいでピンチになった。

 今回も俺とティアだけだから大事無かったものの、これを機にちゃんと反芻しないと、後々に大変なことが起こりそうだ。


「・・・冒険者がゆっくり空を飛ばない理由がわかった気がする」

「同感だ・・・」


 こんなものが普通に湧いている状態で空をゆっくり飛んでみた時のことを想像すると、それはまあゾッとする。

 快適な空の旅を満喫していたら、森の中から唐突に一発一発が殺人級の刃が自分を目掛けて大量にカッ飛んで来るのだ。どう足掻いたって恐怖でしかない。

 そう考えると、あの時のキクさんが空中をかなりの速さで移動していたのも、こういったリスクを避けるためのものだったのだと───今更ながら、理解できる。

 中身では色々と思考しているキクさんのことだ。

 きっと、あれは意図したものだったのだろう。


『マスター、次の目標である「カッター」の群れについての情報を纏めました。確認を』

「ああ」


 ニアの通知とともに、俺の目の前にはいくつかのウィンドウが表示された。

 それらのウィンドウにはそれぞれ、「カッター」と呼ばれる魔物についての情報が事細かに記されている。


「・・・・・」


 ざっと見た感じ、どうやら、一昨日に俺がミスをやらかした時に殲滅した魔物がそうだったらしい。

 ゴブリンの一種で、中規模の団体行動を好み、木の実を食べたり弱った生き物を襲ったり川で漁をしたりして生活している魔物。

 カッターという名前は武器から由来するものであり、森の中で活動することと、あまり人間の目の届く範囲には出現しないことから───魔物を研究している学者達の間では「愚かな賢人」とも言われているそうだ。

 討伐推奨ランクはB。

 依頼書の備考欄には、悠長にしていると包囲されてしまうため、少人数での討伐は推奨しないと表記されている


「・・・それなら」

「今度は空を飛んでいくのが正解だな」


 それと、依頼書に書いている情報から察するに、この依頼が出されたのは山中にある何らかの施設付近にカッターが住み着いてしまった・・・というのが、大体の理由だろう。

 相続したのか購入したのか、丁寧に施設の位置まで表記されている。


「目的地はHUDにマークした。瞬間移動、するぞ」

「うん」


 ということで、ティアは俺の手をぎゅっと握り、俺はHUDに表記された位置に出現するように瞬間移動魔法を行使した。

 次の瞬間には目的地に到着し、探知魔法を展開。

 それっぽい魔力反応がないかと、辺りを見回す。


「ん・・・」


 すると、見つけた。

 見つけたのだが。


「見られてる」

「・・・思ってたより賢いな」


 前回は急ぎすぎて気が付かなかったが、そうか。

 討伐推奨ランクがBという時点で、そこそこの強さを有する冒険者を必要とする強さであり───ある程度の水準であれば、魔法など、簡単に使えてしまうわけだ。

 とはいえ、これほど素早く勘づかれるとは。

 推奨ランクを考えれば、恐らくはその辺の冒険者よりも優秀なのが居るんだな。


「グレイア、攻撃」

「・・・・・ん」


 ついでに、なんか当然のように岩石属性で飛び道具の魔法がいくつか飛んできた。

 俺達が浮かんでいる位置がかなり高いということもあり、命中率は悪いが、ここまで飛ばせる時点で普通なら驚異ではある。

 Bランク以上を推奨しているのも納得だ。


「・・・ティア、背中よろしく」

「うん」


 あまり時間を与えすぎるのも良くないと思った俺は、固有武器を呼び出し、短剣に変化させてから瞬間移動で群れの中へ転移。

 魔力の反応を見て、一番魔力がでかいやつを目掛けて瞬間移動をすると、出現するなり首を飛ばしてやった。


「キギッ・・・」

「ギキャッ・・・!」


 目の前に5、後ろに4。

 この辺の森の中では珍しい、開けた場所だ。

 群れの拠点を作るには適切だったのだろう。


「ギキャ───」


 俺は瞬間移動で5体のうちの中央に立っていた奴の顔面にピンと張った右脚の先をめり込ませ、そのまま蹴り飛ばす。

 次に、向かって右奥にいたカッターに照準を合わせて短剣を投擲し、額に突き刺さった所で瞬間移動。最後に額から刃を引き抜いてから振り抜き、首をすっ飛ばした。


「ギキキッ・・・」

「キキャアッ!!!」


 すると、残った2体のうち、片方が武器の手斧に魔力を込め始めたところで、もう片方が俺を目掛けて突撃してくる。

 振りかぶった勢いのある振り下ろしを、俺はひらりと身をかわして避け、そのまま左手の上に魔力を出現させつつカッターの顔面に押し付けて魔法を放つ。

 ちょうど直線上に立っていたカッターは魔法の準備が終わった途端、目の前から突っ込んできた仲間もろとも後ろへぶっ飛んでいき、木の幹にぶち当たったところで俺の魔法が爆発。

 みごとに両者とも肉体が消し飛び、その場には手斧と魔石が2つずつ残った。


「・・・ふう」


 息を整え、武器を空中に放り出して消滅させる。

 魔力探知によって、ティアは既にカッターを倒していることを把握できたため、これで状況は終了。

 魔石を拾い終えたら、次の目標へと行ける。


「ひょい・・・っと」


 俺は魔石から放たれる魔力の反応からおおよその位置を見積もって小規模の瞬間移動魔法を行使して、散らばった魔石を手元に呼び出した。

 数は5つで、それぞれが俺の手のひらくらいのサイズをしている。


『マスター。ひとつ、共有をしておきたいことが』

「ん?」


 と、ここでニアが俺に話しかけてきた。

 十中八九、次の目標についてだ。


『次の目標である「不明個体(アンノウン)」ですが、依頼書に記されている情報を辿っても、類似する魔物を見つけることはできませんでした』

「つまり、何らかの魔物の特殊個体だってことか」

『もしくは、薄い線ではありますが、完全な新種の魔物ということも有り得ます。どちらにせよ、十分に警戒を』

「ああ。そうだな」


 頷き、後ろを向く。

 するとそこには、ティアが無言で俺の方を見ながら立っていた。

 どうやら、俺の思考を見ていたらしい。

 もう既に、全て把握しているようだ。


「・・・ティア」

「うん」


 それにしても、これを最後に回しておいてよかった。

 仮に俺がテキトーな性格じゃなく、厄介事から先に済ませるタイプの計画性がある性格だった場合───この異常なまでのワクワク感は味わえなかっただろう。

 もっとも、俺は戦闘狂ではないが、それはそれとして戦うのであれば相手は強い方がいい。


「・・・・・」


 依頼書に記されている情報から、目標の位置を辿る。

 そして見つけた、大きな魔力の反応。

 近くの山の頂上に佇む───少なくとも人型ではない、強大な力を有する何か。


「行こう」


 ティアが微笑み、俺の手を取った。

 その次の瞬間、俺は瞬間移動魔法を行使し、目標の近くへと2人の身体を移動させる。

 そして、出現するなり俺は武器を構え、ティアは全身に魔力を巡らせたて臨戦態勢に入った。

 瞬間移動魔法と飛翔魔法の使用により放たれた余剰魔力によって、既に相手からは───目の前で大きく羽ばたいている狼っぽい化け物からは、肌がビリビリと震えるほどの凄まじい殺気を感じている。


「・・・・・」


 瞬間移動のおかげで、俺がやろうとしている事の全てがテンポよく進んでいて気持ちがいい。

 願わくば、この先の全ても気持ちよく終わって欲しいものだ。







 どうも。

 肩の荷が降りすぎて空が飛べそうな人です。

 今回はなんか、どうしても気が抜けていたせいか文章が拙いので、申し訳ないんですが読者兄貴姉貴は頑張って読み解いてください。

 どうかご容赦願います。

 次からは頑張りますんで。


 それと、魔物の設定はぜんぶテキトーです。

 なんか粗があって、それを指摘してくださるような優しい方がいましたら遠慮なく教えてください。

 がんばって次に活かします。

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