幕間:ファンクラブ会員第一号の女(下)
曰く、彼こそが最強であると。
(・・・随分と集まってきたな)
およそ3分後。
2人がスタンバイしている中、アリーナの観客席には、ぞろぞろと貴族や休憩時間の兵士などがやってきた。
席の埋まり具合は6割ほどとなっており、即日宣伝にしてはよくやった方だろう・・・と、アリスは満足げだ。
(話題性が高いのは俺か、彼女か。
どちらにせよ、全力でやる他ないな)
身体強化が20パーセントである以上、前のように黒銀色に輝くオーラは出ていないし、多少ばかり見栄えには欠けるものの───しかし、今のアリーナには、それを補って余りある要素が存在している。
それは、アリスの自己証明によってもたらされた水のフィールド。
戦いが始まる前の時点で、既にアリーナの床には薄く水が敷き詰められ、自らが主役であると言わんばかりに主張を強めている。
そして、それらの水が全てアリスの思い通りになる・・・ということはつまり、既にグレイアは彼女の術中のど真ん中に居るわけだ。
『それでは、時間となりましたので模擬戦を始めさせていただきます』
アリーナに響く、冷徹そうな雰囲気が漂う女性の声。
どこかヘッセを思わせる声質の彼女は、淡々と言葉を続けていく。
『レギュレーションはBパターン。
詳細は省きますが、後ほど公開する戦闘アーカイブにて記載しますのであしからず』
こうした最低限のアナウンスを済ませれば、あとは戦いが始まるのみ。
『それでは開始です。観客席各位はできるだけお静かに』
彼女はそう告げると、広域通信をブツッという切断音を立てながら切り、自分の主の勇姿を見届けんとアリーナに目を移す。
そこでは、右手と左手に固有武器を握ったアリスが、グレイアに向き直って高らかに戦闘開始を宣言するところだった。
「では。グレイア様、行きますっ!」
「・・・」
右手に握ったレイピアを目前に掲げつつ、左手を背中に回して騎士らしい姿勢になった彼女は、彼女の周りで蠢く水を制御し、無数の触手として顕現させる。
「───我が魔力より創造されし水よ、我の声に応え、目前の敵を穿てッ!」
そして次の瞬間、彼女の詠唱とともに変形・硬化した水の触手は、凄まじい速度をもってグレイアに向かい、彼の体を穿たんとした。
「・・・・・」
するとグレイアは無言のまま、急に前傾姿勢になったかと思えば───凄まじいパワーで地面を蹴り、自分を狙っていたはずの触手を完全に無視しながらアリスの位置へと急接近していく。
それを迎撃しようと、彼女も近接型の触手を顕現させたものの、彼の行動開始から準備を始めた以上は間に合うわけがない。
「くっ───」
グレイアの刃が彼女に届きそうになると、彼女は予め仕掛けておいた回避用の瞬間移動魔法を起動し、彼から距離をとる。
斬撃を空ぶったグレイアは、自らの探知魔法に映ったアリスの位置を把握すると、そのまま反転し、その勢いで刃を振り抜いて剣圧を飛ばす。
「!!」
あまりの対応の早さに驚きつつも、アリスは放たれた剣圧を水の壁で防ぎ、次に仕掛けようとしていた攻撃魔法を起動する。
「さて、どうするか」
グレイアが彼女の出方を伺い、剣を構え直したその時、彼女は左手を突き出してクイッと指を上に向ける仕草をした。
すると彼の周囲に転移阻害系のバリアが展開されると同時に、彼を取り囲むように、半径5メートルほどの水の檻が展開された。
(さらに触手。今度は上から狙い撃ちか)
そして彼が認識した通り、アリスは檻の外側からさらに触手を顕現させ、檻の内側に居る彼を攻撃しようとしている。
次に彼女が左手の指を下に向けると、顕現された触手はグレイアに牙を剥き───次々と彼目掛けて降り注ぐ。
しかし瞬間、彼の判断によって展開されたバリアが襲い来る触手を受け止め、カウンターとして爆裂魔法をぶっぱなす。
(理解はしていたことだけれど、貴方様は手段を奪っても動揺が一切ない───)
アリスは己の考えた手を全ていなしてしまうグレイアを見て、予想内ではあっても多少は焦りが見える様子。
そんな彼女の先には、崩れゆく水の檻と転移阻害バリアの破片に彩られながら、余裕そうに歩きつつ彼女を凝視するグレイアの姿が。
(半端じゃない威圧感。
でも、この程度で集中を乱していたら、貴方様に勝つことなんて夢のまた夢!)
再び前傾姿勢となり、己をロックオンしたであろうグレイアの威圧感を振り払い、アリスは己の切り札を場に召喚する。
(今だ───)
再び地面を蹴り、凄まじいスピードで接近するグレイアに対し、彼女は瞬間的に魔力を高めて構築した魔法を以って迎撃せんと、操作系統を構えた。
次の瞬間、彼の目の前に現れた彼女の分身は、彼女の固有武器ではなく単純なロングソードを振り、彼の首を捉えようとしたが───彼はギリギリで仰け反り、水で構築された刃を回避する。
(近接戦闘は不得意だけど、魔法を使えばそれを補える!)
分身体を優先すべきだと判断したグレイアは反転して横薙ぎをしつつ、瞬間移動魔法を準備して分身体の回避先を見た後、ちょうど分身体を真っ二つにできる位置に瞬間移動をすると、刃を直下に振り下ろした。
しかし、彼女とて剣術の教育を受けた騎士のうちのひとり。
単純な振り下ろしくらいなら弾き返せると踏み、グレイアの刃を受け止めると───上手い具合に重心をずらして彼の体勢を崩し、続けざまに蹴りを食らわせる。
続けて、アリスは自らの脳と分身体の動きを同期し、自身の経験と知識から導き出された最適解を用いて分身体を動かすことで、彼に凄まじい速さの突きを食らわそうとした。
「ラヴィランス流剣術───」
だが、彼とてそう甘くはない。
彼女が分身体と思考を同期していた隙に彼は体勢を立て直し、続けて彼女が繰り出してきた突きを受け止めると、今度は逆に刃を弾き返して体勢を崩してやる。
ぐらりと分身体が怯んだのを見た彼は、悠長に攻撃していては援護が来ると判断し、肘打ちで距離を取ろうとしたが───生憎、それはアリスが仕掛けた罠。
「かかった!」
(っ!?)
グレイアの肘が分身体にめり込み、固定される。
これでは行動ができないうえ、射線が通りまくりで、彼女が放つ触手攻撃をモロに受けてしまう。
そして現に、彼の周りには牙をトキントキンに研いだ触手がスタンバイしており、今まさに攻撃命令が下らんとしている。
「ちっ・・・エクスプロージョン!」
そのため、グレイアは固有武器を手放して床に手を突き出すと、範囲型の爆発魔法を使用して辺りのギミックを全て吹き飛ばす。
ついでに分身体にも小規模の爆発魔法をぶち当て、上半身を消し飛ばした。
「まだです!」
爆発魔法の余韻で擬似的な煙幕が展開されている最中、再び分身体を顕現したアリスは、その特殊な探知方法を用いてグレイアの位置を把握し、再び切りかかる。
勿論、触手による援護も同時に行い───どうにかして彼の隙を突こうと集中してく。
今度は広範囲を巻き込む剣術を多用し、彼に1太刀を浴びせようとするものの、逆にその、繰り出した剣術によって彼にチャンスを与えることとなる。
(位置だけは常に把握できるくさいな。それなら・・・)
ここで彼は、アリスが自身の位置を「フィールドに敷き詰められた水」によって探知しているのではないかと予想し、それに対するカウンターをしてやろうと画策した。
そのため、彼は分身体をさっと切り刻むと───アリスの位置を把握し、魔法で狙撃するフリをするために飛び上がって頭上に魔力の塊を構築する。
(・・・やっと隙ができたっ!!!)
見たことあるポーズだ・・・なんてことを、咄嗟にでも思ったのだろう。
あれは先日の戦いの際、全身に防護魔法を展開してダメージが与えられなくなったナギに対し、グレイアが放ったビーム型の魔法の溜めポーズと同じ。
アリスは突然の勝機に歓喜したのか、彼のあからさまな隙を疑うことすらせず、彼の後ろから隠蔽型の触手を伸ばして拘束しにかかった。
「ん・・・・・」
グレイアの二の腕までを非常に太い触手で飲み込み、脱出できないように固定する。
足元の拘束は甘いが、素早く方をつけてしまえば問題はないだろうと判断したアリスは、両手を前に突き出す。
そこには大きな魔法陣が現れ、彼女の自己証明によって生成された水が一点に収束して圧縮されていく。
「穿て・・・精霊なる光輝ッ!」
続く詠唱をトリガーに活性化した魔法は、凄まじい圧力を持って圧縮した水を押し出し───グレイアの頭を貫く勢いで発射した。
このまま行けば勝ち。
だが、次の瞬間だった。
「・・・へっ」
アリスが放った攻撃を見たグレイアは嘲るように笑う。
そして全身に力を込め、魔力の内圧を高めていく。
彼の狙いはあの時のナギが使ったフルパワーの身体強化魔法のような、内側から湧き出る魔力の放出。
「はああああああっ・・・・・!!!」
攻撃の到達まであと数秒あるかすら怪しいのにも関わらず、彼は一切の迷いもなく身体中にめいっぱい力を込め続け、魔力を爆発的に高めていき───遂には腕の触手を吹き飛ばし、拘束から開放される。
「っは・・・・・だあっ!」
そして迫り来る水のビームを弾き飛ばし、飛翔魔法で勢いを殺しながら地面に着地したグレイアは、放出する魔力の量を一瞬だけ爆発的に増やしたことによる風圧で煙幕をまとめて吹き飛ばす。
崩壊した触手と水のビームが霧散して宙を舞い、地面では少しだけ残った煙幕が探知用の水とともに揺れ、彼の圧倒的な威圧感を演出する。
彼の体から放出される魔力も、今度は黒銀色ではなく白銀色に輝き、激しく吹き出すように大きく波打つ。
「流石は貴方様・・・。でも、まだですっ!」
圧倒的な威圧感に押されながらも、再び同じ魔法を───しかし、今度は指向性を調整して範囲型にした魔法を準備した。
そして次の瞬間、地面を蹴って接近してくるグレイアに対し、その魔法を、無数に枝分かれした水撃による飽和攻撃を狙った魔法を放つ。
だが、彼は当然のように飽和攻撃を受け流して突破してくる。
(恐れてはいけない!
引き付けて引き付けて・・・・・今っ!)
無論、彼女も勝つための努力は怠っていない。
今まで見てきた経験上、彼はこういう時に後ろからやってくるような真似は絶対にしないだろうと踏み、飽和攻撃を切り抜けた先に最後の一撃を仕掛けていた。
ただまあ、そうして続けざまに放った極太の魔法すら、極限まで出力を上げた魔力放出によってかき分けられ、接近を許してしまう。
(そんなっ!)
動揺しながらも、彼女はギリギリでグレイアの右ストレートを避け、彼の後方に待避した。
「・・・貫け」
だが、焦燥から咄嗟の判断をしていたことによって、彼女の頭からは、グレイアが常に相手の位置を把握できるほどの探知魔法の使い手だという情報が抜けてしまっていた。
そして現状、水魔法以外で、彼女が辛うじて使用できるのは瞬間移動魔法と身体強化魔法のみ。
防御のためにと地面から水の触手を生やしたところで、今まさに放たれようとしている彼の攻撃を回避することはできない。
(しまっ───)
反射的に腕で防御姿勢をとったものの、グレイアの右腕から放たれた圧力魔法は彼女の全身に直撃し、彼女の体はかなりの勢いで吹き飛ばされる。
「あぐっ・・・ぁっ・・・・・」
ごろごろと転がってから体勢を立て直し、早く対応しなければと立ち上がってグレイアの方を見たアリスの目に、新たな絶望が刻まれた。
「・・・虚無すら食らう悪食」
彼女の視線の先には、空気中の魔素すら吸収される引力を持った、黒銀に輝く魔力の塊があった。
彼が後ろに構えた右手のひらに収束し、極度に圧縮されたその魔法は、とてもこの世のものとは思えない威圧感を放っている。
(あれを・・・押し返す・・・・・?)
信じられないと思い、思考を巡らせる彼女。
そして次の瞬間、目の前の光景から導き出されたひとつの希望が彼女の背中を押す。
(・・・・・いや、数秒だけでも耐えられればいい。
そうすれば、別の手で貴方様を攻撃することが可能・・・!)
覚悟を決めたアリスは、再び精霊なる光輝を構え、その時を待つ。
まるでガンマン勝負のような空気と、ただ魔力を充填して待機する音のみが響くようになった数秒間。
そして、その時は急に訪れる。
「・・・・・っ!」
「穿て!精霊なる光輝!」
黒く銀に輝き、全てを飲み込まんとする威圧感を放つ魔力の塊と、青く流麗に輝き、虚無に対抗せんとした水流の力が、それぞれ同時に放たれた。
数瞬の後に魔法は衝突し、激しく余剰魔力を撒き散らす。
「ぐっ・・・うぐぐぐっ・・・・・!」
激しい重圧に身体が限りなく限界に近くなるアリス。
だが、悠長にしていては限界が来てしまうと、キツいながらも体と魔力を必死に動かして攻撃魔法を起動する。
「精霊なる・・・剣山・・・!」
ひねり出すように唱えた詠唱が、その効力を発揮した途端、グレイアが居るはずの場所の周りにある水が急激に形を変え、彼の身体を貫くために加速し、攻撃を仕掛けた。
大規模な攻撃魔法に集中している彼は、それを避けられず───行動不能によって、彼女の勝ちになるはず。
それが、普通の相手であるのなら。
「・・・!?」
瞬間、彼女の脳内に、ひとつの違和感が走る。
(手応えが・・・・・ない?)
通常、魔法であったとしても、攻撃が当たれば多少の手応えが術者に伝わってくるものだ。
しかし、彼女は今の攻撃に、一切の手応えを感じなかった。
(ありえない。ずっと水は魔力圧で動いているし、魔法だってあそこに───)
そう思考し、何が起こっているのかと困惑した彼女に対し、また予想外の出来事が降りかかる。
なんと、さっきまで絶大な圧力を感じていた虚無すら食らう悪食が急激に失速し、彼女が使っていた魔法に飲み込まれてしまったのだ。
そして、それによってもたらされた感触によって彼女は確信した。
グレイアは既に、どこかのタイミングで虚無すら食らう悪食の発動場所から離脱し、自らの位置を悟られぬようにどこかへ移動していたのだと。
魔法同士が拮抗したことにより撒き散らされる凄まじいエフェクトに隠れ、彼女の死角へと待避し───どこかから、己を攻撃しようとしているということを。
(そもそも、あれほどの魔力の放出をする必要性は?
最初みたいに回避しながら接近するという選択肢もあったはずなのに、あえて正面突破しながらわたくしを攻撃した理由は?
もしかしたら、あの魔力の放出はただの演出ではなくて、わたくしを欺くための手段なのだとしたら?)
探知の仕方がバレることは、彼女にとって想定の範囲内ではあった。
だが、そこから探知の方法の穴を突き、それを利用されることは想定の範囲外。
それどころか、事情が事情であるが故に、彼女はその欠点を、己の魔法の重大な欠点を、全くもって認識していなかったのだ。
(まさかっ・・・後ろに───)
事実に気が付き、反転した時にはもう遅い。
固有武器を顕現させる隙すら与えぬ勢いでアリスに迫ったグレイアは、そのままの勢いで両肩を掴み、押し倒す。
「うぐっ・・・・・」
水がばしゃりと飛び散り、少量の水滴が降り注ぐ最中、怯んで目を瞑っていた彼女が恐る恐る目を開けるとそこには、とてもわる〜い笑みを浮かべ、見下したような目つきで腹の上に馬乗りになっているグレイアが居た。
どうやら、彼女がまんまと自分の策にハマってくれたことが嬉しくてたまらないらしい。
ニタニタとした笑みを隠そうともしない彼の姿は、ある意味で言えば無邪気で、イタズラ好きな子供のようにも見える。
「惜しかったな? アリス」
そしてその笑みを浮かべたまま、彼はアリスに対し、嘲るような言葉を言い放った。
すると彼女は一瞬だけ悔しそうな顔をした後、自分の置かれている状況を理解すると───ぶわっと顔を赤く染め、己の顔がびしょ濡れになることも厭わずに両手で顔を隠す。
「・・・どした?」
「は・・・恥ずかしいです・・・」
「何がよ」
「騎士学科首席のわたくしが、こんな・・・押し倒されて負けるなんて・・・・・」
どうやら、彼女には自分の負け方が凄まじく間抜けに思えているようだ。
現状、彼女は抵抗しようと思えばできないこともないが、抵抗をしたところで対処され、さらに不利になるのは火を見るより明らか・・・という、完全に無力化されたと言って差し支えない状況。
恐らく、かなり屈辱なのだろう。
たとえ相手が、凄まじく強い転生者であったとしても。
「ストーム・プロテクションの方が良かったみたいだな」
「言わないでください・・・・・」
ここまでだとは思わず、グレイアもちょっと申し訳なさそうにしている。
ただまあ、それはそれとして、勝負はついたのだから宣言はしなくてはならない。
「・・・まあ、いいや」
「・・・・・?」
「おーい!俺の勝ちでいいよなあーっ!?」
馬乗りになったまま背中を反らせ、めいっぱいの声量で叫ぶグレイア。
別の手があるだろうとは思うのだが、まあ実際、これがいちばん手っ取り早い。
「ふー・・・・・」
パッと見で元気いっぱい・・・かと思えば、疲労を隠しきれなかったのか、虚ろな目で俯き、溜まった息を吐きだす。
「あ・・・あの・・・」
「ん、どした?」
弱いところチラ見せアピールではなく、もうなんか、本当に疲れているらしい。
それでもアリスを相手にするとマシな表情に変わるのは、無意識に気遣いをしているからか。
「貴方様から見たわたくしって・・・強かったですか?」
「・・・放ってはおけないくらいには。
集団戦だったら真っ先に仕留めようか悩む」
経験が少ないとはいえ、あの正義の寵愛者を相手に自分のペースで勝利まで持ち込んだ男だ。その辺の下手な戦術教官よりも、彼の感想には重みがある。
アリスも自分が思っているより高い評価を受けたことに驚き、とても嬉しそうな表情を見せた。
「本当ですか・・・!」
「少なくとも、首席という肩書きが納得できる程度の強さではあった」
そもそも、彼女が持っていた元々の狙いは「グレイアと戦い、自分の戦闘能力を評価してもらうこと」であったため、彼女は無事に目的を果たしたことになる。
(・・・ぶっちゃけ、基準となる強さを知らないから信用ならんとは思うけど)
まあ、目的を果たして浮かれている少女に対し、本人はそんなことを考えているのだが。
(んで・・・・・俺は何時までこうしてればいいんだろうか)
そして、この時間が終わり───傍から見たらイチャついているように見えた戦闘後のアレコレが広まり、ティアにバレるのは、また別の話。
彼がこの国を出て、冒険に出るまでは・・・まだもう少しだけ、時間がかかりそうである。