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愛され気質な逸般人の異世界奮闘記  作者: Mat0Yashi_81
一章:正義が統べる正義の王国
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2-12:序章のおわり

 物語の幕間に、人の影のない場所で。







 さて。


 正義の寵愛者に勝利した俺は、近くにいた使用人さんに声をかけ、そのままスタコラとアリーナを去った。

 なんとなくだが、面倒事に巻き込まれそうだったと言うか、嫌な予感がしたというか。

 とにかく、さっさと部屋に戻って休みたい俺は、今まさにニアとティア両名との合流を目指している最中というわけである。


「・・・・・」


 既に場所は聞き、あとは歩くだけという現状。

 キョロキョロと見回すのはなんだか不審者っぽくて気乗りしないが、それを差し引いてでも壁に飾ってある絵画や、その他内装などに目を引かれている。

 ひと段落して余裕が出たからだろうか。

 まあ、事実が如何にせよ───今はとても休みたい気分だ。

 速やかに2人と合流して、昼飯の話でもしたいな。




 〇 〇 〇




「お早いお帰りで。マスター」

「ん・・・ただいま」


 目的地につくと、ニアは既に部屋の前で待っていた。

 俺が出ていく所が映ったりでもしたか。


「マスターのことですから、さっさとあの場を離脱して帰ってくるだろうと思い・・・ここで待っていました。

 ティアさんは先に部屋に戻っていると」

「把握。じゃあ、俺らも戻るか」


 ニアが俺のことを慮ってくれていたおかげで、あまりにも会話がスムーズに進むものだから・・・・・ここに来て1分も経たずにまた歩き出す羽目になってしまった。

 べつに良いことだから構わないが、こうも配慮されているという状況は、なんだか慣れないな。


「・・・そういえば、マスター」

「どした?」


 そのまま歩いていると、ニアが話を振ってきた。

 なんだろうと返事をしつつ、耳を傾ける。


「創造主より言伝があります。聞きますか?」

「・・・まあ、聞く」


 相も変わらず、守秘義務なんて概念が欠片も存在しなさそうな確認の取り方だな。

 べつに知られても構わない情報なら良いのだが、ここはお世辞にも安心できるような場所じゃないし───言うなれば、「壁に耳あり障子に目あり」を地で行くような場所だろう。

 どうせ秘密にしようとしても無駄なのだから、いっそのこと知られていい情報なら漏らしてしまおう・・・なんて魂胆だったりするのだろうか?


「曰く「プロローグは終わり」だそうです。

 次いで、これからの活躍にも期待している・・・と」


 ああ、とくに知られても構わない情報だった。

 というか、そんなプロローグみたいな概念があったのか。

 当のそれ(物語)を歩んでいる本人が存じ上げないんだが。

 その辺はどうなんだ。


「・・・これから楽しくなるといいな。本当に」

「そう願っているでしょう。

 ()()()()の方々も」

「どうだかな」


 向こう側の方々・・・か。

 少し前にお呼ばれした時の暇神様の言い方から察するに、俺に目をつけている上位存在は確かに居るはず。

 それがどう作用するかは気になるところだが、まあ、行動してみなくちゃわからない。


「・・・だが実際、俺は無駄に派手で大規模な、くそムズいチュートリアルをこなしたんだ。

 それなら、少しくらい贔屓してくれたっていいだろ・・・・・なんて思ったり」


 振り返り、軽くにやけつつ冗談を言うと、ニアは無表情のままで言葉を返してくる。


「肯定します。プロローグ終了に伴った能力のロック解除は予め決められていたことですから。

 追加で何か報酬を要求したくなるのは理解できます」

「・・・ちょっと待った。能力のロック解除って何」

「ああ、お伝えしておりませんでしたね」


 淡白にそう言うニア。

 どうやら、あまり重要度が高い話題ではなかったらしい。


「曰く、この世界の自己証明や能力に慣れてから運用できるように・・・・・という配慮だそうです。

 開放される能力はHUD、情報ライブラリの2つとなります」

「これまた有用そうな能力を」

「はい。今回の戦闘でマスターが苦戦するようであれば、ロック解除は先延ばしにする予定だったとのことですが・・・曰く、その心配はなかったどころか、むしろ想像以上だったとのこと」

「・・・お褒めに与り光栄だな」


 まあ、わりかしチート味が強めの能力を与えられたとはいえ、俺はほぼノーダメに近かった。

 それが当然だと言うのなら、この先も随分と苦戦しそうな気がするが・・・しかし、その程度の予想ごときで怖気付いていてはやって行けないか。

 むしろ、この先の戦いは全てパーフェクトゲームで終わらせるくらいの気概で行くべきだな。


「尚、HUDと情報ライブラリのふたつに関しましては、私に帰属する自己証明となりますので・・・・・利用するには、私をマスターの脳内サポートとして運用している状態でなければならないそうです」

「それでも十二分に有用な能力だろ」


 情報ライブラリはよく分からないが、HUDの方は名前を聞いただけでも有用な使い道がいくつも湧いて出てくる。

 コンパスと仲間の位置を視界に表示しているだけで、一体どれだけ戦いが有利になるか。

 仲間がひとり戦えなくなるのと引き換えに実行する価値は確実にあるだろう。


「・・・そういえば、お前はどれくらい強いんだ?」


 そこで思う、ニアの強さ。

 まだ戦っている姿を見たことがないから分からないが、本人の認識的にはどのくらいの強さなんだろう。

 さっきアレと戦ったばかりだし、聞くだけ聞いてみたいな。


「・・・・・私の戦闘面での性能を数値のみで評価し、言語化した場合、評価は『ハイレベルな器用貧乏』となります」


 おっと、中々のパワーワードだ。

 楽観的なリアリストだとかと同じ感じで、積極的に言いたくなるわけじゃないけど、なんとなく覚えておきたい感じの語感をしている。


「ハイレベルな器用貧乏・・・」

「はい。性能は軒並み高水準ですが、上澄みというほどでもなく・・・そして、突出して高性能な部分もないため、この評価となりました」

「なるほど」


 ・・・なんて納得しかけたが、ちょっと待て。

 軒並みの部分が「上澄みというほどでもないが、高水準ではある」のなら、それはつまりオールラウンダーだろ。

 オールラウンダーの定義もたしか、大体のことをそつなくこなせる人・・・みたいなニュアンスだった気がするし。


「・・・ものは言いようだな」

「事実ですから」


 事実か。

 まあ、本人がそう自覚しているのなら、俺からとやかく言う必要は無いな。


「そんで、それなら・・・お前が戦闘に参加するか否かの判断は俺がした方がいいのか?」

「非常事態であれば、私はマスターが普段行っている思考のパターンから判断を導き出します。

 それ以外の場合は、マスターが状況の判断して下さると、場が纏まって良いかと思います」

「把握した。そうする」


 野暮なことを聞いてしまった。

 現状、ティアやニアの言い方から鑑みれば、これから3人でやっていく時のリーダー格は俺のようだし・・・・・そうなると、そろそろ態度や口調を整えなければならないな。

 リーダーとしての態度や口調を意識するのなら、それこそ仕事用の仮面を用意することも候補に入れるべきだろうし。


「だとしても・・・この見た目でリーダー格ってのは格好がつかない気がするけど」


 少し自虐ぎみにそう呟きつつ、足を進める。

 実際、この見た目でリーダを務めるのなら───精神面的な意味合いではなく、実際に物理的な仮面を被ることすら考慮のうちに入れておくべきかもしれない。

 それほどまでに可愛らしいからな。この体。


「・・・中継による全国放送が、どの程度影響するかにもよるでしょう。

 もしくは、戦闘職という特殊な環境においては、目に見えない情報を頼るのが一般的だったりする可能性も捨てきれません」

「・・・・・確かに」


 そう考えると、大方の予想がつくかもしれない。

 瞬間移動は難易度が高い魔法だとか言っていたから論外だとして、身体強化や探知魔法なんかは皆が使っているものだろう。

 この2つは同時に発動し続けることができないから、戦闘職が戦う時は最低で2人・・・・・できることなら、余裕を持って4人は欲しいはず。


「命に関わる職業なら、それ相応に()()することが当たり前になるだろうしな。

 キクさんの言っていることを踏まえれば、パーティーメンバーを勝手に追放したり、初心者を虐めたりするような阿呆なんて以ての外だろ」


 まあ、実際に冒険者になってみないと分からないことは多いが───これだけは言える。

 この世界じゃ、追放系の漫画本でよく見るテンプレクソ野郎は、すぐさま淘汰されるはずだということが。


「むしろ逆かもしれませんし」

「・・・それも有り得るのがなあ」


 人が必要・・・というか、()()()()()()()という存在が珍しい界隈は、どこもかしこも初心者の囲い込みが激しいものだ。

 某SNSでゲームを始めた旨の投稿をすれば、すぐさま経験者からの生暖かい目が向けられるゲームの界隈に属していた俺は、SNSを巡回する度にそういう状況を何度も見てきた。

 だからこそ、この少しダークな世界の冒険者という職業は・・・・・もしかしたら、そういう囲い込みが激しい界隈なのではないかと思っているわけだ。


「まあ、いいや。いずれ分かることだろうし」


 とまあ、そんなことを話しているうちに、俺たちは部屋の前まで戻ってきた。

 結構な距離があったが、やっぱり談笑しながらの移動というのはあっという間に過ぎてしまうものだ。


「・・・てか、これ便利だよな」

「何がです?」

「これこれ。魔力認証式のロックだっけ?

 俺の魔力じゃないと開かない・・・とかいうやつ」


 俺はドアノブに手をかざしつつ、ニアに向かってそう話す。

 前世で言うなら、カードが必要ない電子ロックみたいなものだろうか。

 なかなか表現しづらい代物だが、かなり便利なことには変わりない。


「なんか、もっと使えば車とかが発明された時に・・・」


 部屋に入りつつ、そこまで話した時。

 俺は目に入った口径により足を止め、口も自然に止まった。


「・・・・・前言撤回。

 そりゃ魔力をコピられたらセキュリティもクソもないわな」


 頭をかきながらそう呟き、ニアの方を見る。


「・・・ああ、そういえばティアさんにマスターの魔力データを提供していたのを失念していました」

「おい」


 白々しく言い訳をするニア。

 何が狙いかは知らないが、まったく驚かせる。

 一瞬マジで部屋を間違えたかと思った。


「・・・・・」


 んでまあ、それはそれとして。

 どうするべきかが悩ましい状況だ。


「・・・寝てるなあ」


 部屋に入り、俺のベッドの端っこに腰掛けて眠っているティアの隣に座りつつ、そう呟く。

 本当、随分と安らかなお顔で寝ていらっしゃる。

 これから昼飯のことを考えようとしていたのだが、これでは起こしづらいな。


「・・・・・俺も寝るか」


 なんか面倒になったので、俺も寝ることにした。

 ぶっちゃけ疲れてるし。

 わりかし眠いし。

 そんでもって、まだ10時を過ぎたくらいだし。


「・・・ニア、11時半には起こして」

「了解しました」


 まるでスマートスピーカーに命令するように言い、俺は上体を後ろに倒した。


「おやすみ・・・」


 昼飯は1時間半後の俺が考えてくれることだろう。

 だから今は、ちょっと昼寝に勤しむとしよう。




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