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【完結】憧れの乙女ゲーに転生したのに悪役モブ令嬢!?~ギロチン確定で攻略キャラたちからの好感度最悪ですが抗い続けたら楽しい学園生活が待っていました~  作者: スズイチ
第二章 悪役モブ令嬢の結末

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51 攻防戦



「……こんな時間に、大勢でお集まりになって何をなさっていらっしゃるの?」


 長い金色の巻き毛を揺らしながら、クロエ姫が部屋に入ってくる。


「ねぇ、お兄様?」

 

 甘く幼い声だが、異常なまでの威圧感に背筋が震える。

 私たちが何も言えずに黙っていると、大きな目がテーブルの上に置かれたペンダントに視線を移す。


「そのペンダントに、何をしようとしていらっしゃるの? ねぇ? ねぇ? ねえぇ!?」


 美しい碧眼が力強く開かれると、クロエ姫が禍々しい気を放たれる。


「なんで!? なんで!? なんでよっ!! いつ、どうやってバレたのよ、ゼノっ!!」


 大きな目がぐるりと悪魔に移される。


「んー? 何でだろうねぇ」


 ゼノと呼ばれた悪魔は飄々と受け流す。


「……っ、クロエ。僕は、とうの昔に知っていたよ。君が悪魔と契約していること……この世界が繰り返えされていること……そして、君が死なないように心臓を別の場所に移していることもね……」


 アルベルト様の表情が、苦痛に歪む。


「……なぜ、こんなことを……? 何のために……いや、結婚が嫌だったのか……ならば、僕や両親に相談してくれれば別の婚約者を……」

「違いますわ!! ――確かに結婚は嫌です、絶対にしたくありません! ですがそれは、相手が誰であろうと変わりません。わたくしはただ、お兄様と離れたくないのです! ずっとずっとずーーーっと永遠にお兄様と一緒にいたいだけなのです!!」


 クロエ姫の叫びに全員が絶句する。


「――っ、それは無理だよ、クロエ。遅かれ早かれ、いつかは互いに離れ離れになる。それは、どうしようもないことだ。だが、例え離れ離れになったとしても君は僕のたった一人の妹だということには変わりない。そうだろう?」


 麗しい唇を悔しそうに噛み締めるクロエ姫。

 

「……なぜ、わかってくださらないの?」

「……クロエ」

「……もう、いいですわ……もういい……もういい! もういいっ!! 分かってくださらない、お兄様様なんかいらない!!」


 少女は、目に涙を溜めながら苦しそうに叫ぶ。


「……一緒にいられないくらいなら、死んだほうがマシだわ……けれど、どうせ死ぬのでしたら、わたくしと一緒に死んでくださいませ……ねぇ、お兄様っ! ――魔導書ブック!!」


 魔導書を作り出した瞬間、その場にいた全員がアルベルト様を庇うように前に出る。

 それを見てクロエ姫が嘲笑う。

 

「なんですの、あなた方。邪魔をするおつもり? ただの、その他大勢のくせに調子に乗りすぎなのではなくて?」


 くすくすと笑うと、防御結界の魔法を使う。


「……さあ、これで誰もここには入って来れませんわ。わたくしの好き放題にできましてよ」


 そう言うとクロエ姫の視線がキャロルに向けられる。 


「――先ずは、貴方から殺してさしあげますわ!!」


 クロエ姫がキャロル目掛けて氷魔法を放つ。

 

「「!?」」


 ――キャロルに当たる前にカイちゃんが庇うように前に出ると、魔法が直撃して弾け飛ぶ。


「カイちゃん!!」


 キャロルが、叫び声を上げながら駆け寄る。


「カイちゃん! カイちゃんっ!!」

「…………っ、たた……大丈夫だ」


 側頭部に手を当てながらカイちゃんが起き上がり、皆が驚きの声をあげる。

 あの魔法を間近で受けて、なぜ起き上がることが出来るのだろう。

 

「か、カイちゃん、平気なの……?」

「ああ。シャーレお嬢さんの掛けてくれてた防御魔法のお陰だな」


 全員の視線がシャーレ嬢に向く。

 

「――もしもの時のことを考えて強力なものにしておきましたの……ですが、こんな一撃で弾け飛んでしまうなんて……」 

「いや、凄いもんだ。お嬢さんの防御魔法じゃなきゃ大怪我で済んだかどうか……ありがとな……っいっ……」

「カイちゃん、大丈夫!? 何処か怪我したの?」

「いや、飛ばされた時に腕を少し強く打っただけだ」

「すぐに治療するね!」


 私は、二人の側に行くと庇うように前に立つ。


「コレルちゃん」

「二人のことは、私が護るから安心して」

「……ありがとう、すぐに終わらせて私も参加するから」


 キャロルが、カイちゃんの治療に戻る。


「あらあら、お美しい友情だこと……ばっかみたい!!」


 クロエ姫が、攻撃魔法をこちらに向けて撃ち続けてくる。

 休みなく放たれる魔法に、私は自分と二人を護ることに必死で手も足も出ない状況だ。

 これだけの魔法を使っても、クロエ姫が魔力エネルギー切れを起こす様子が一切見られない。


「――お待たせしました!」

「俺らも参加する……っつっても、俺はそんな役には立てねぇだろが」

「私も、回復魔法以外はそんなに得意じゃないけど頑張るね!」

「キャロルさん、カイちゃん! 二人も無理しないでね!」


 二人が頷くと、私はクロエ姫に振り返り彼女に攻撃魔法を放つが当たることすらない。


 一方的な消耗戦に皆が焦り始めた時、シャーレ嬢が声を上げる。


「わたくしが皆さまに防御魔法を掛けますので、その隙に一斉攻撃を! 星々の護り(スターズプロテクト)!!」


 防御魔法を掛けてもらったのを合図に、それぞれがクロエ姫に向かって魔法を放つ。

 

螺旋の疾風スパイラルゲール!」

星屑の業火スターダストインフェルノ!」

鳴雷の咆哮サンダーロアー!」


 一気に畳み掛けた結果――。

 


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