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【完結】憧れの乙女ゲーに転生したのに悪役モブ令嬢!?~ギロチン確定で攻略キャラたちからの好感度最悪ですが抗い続けたら楽しい学園生活が待っていました~  作者: スズイチ
第一章 モブ令嬢の抗い

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32 文化祭2日目『魔法祭』・1


 

 ――文化祭、二日目。


 今日の目玉ともいえる催し『魔法祭』。

 簡単にいうと、魔法に対する感謝祭である。魔法持ちの生徒らが、魔法に感謝の意を表し、各学年ごとにテーマを決めて大勢の人達の前で、魔法を披露するのだ。

 基本的に、各学年から男女合わせて三名ずつが選ばれるのだが、一年生からはキャロルとシャーレ嬢が選出されていた。


 私は、カイちゃんと一緒に二人の応援に来ていて、舞台裏でキャロルとシャーレ嬢のあまりの美しさに感嘆の息を漏らす。


「わあぁ! 綺麗ーー! 美しいーー! 美の化身かな? 私が宮廷画家なら、二人の美しさを永遠に絵の中に閉じ込めておくのに……」

「ははっ! でも、ほんと二人とも女神のような美しさだな」

「もう、褒めすぎですわ」

「えへへ! このお洋服、とっても綺麗だよね!」

  

 二人が着ている魔法祭用の式典服は、白で統一された柔らかな素材の生地に、様々な装飾が施されている非常に美しい召し物だ。

 彼女達にとても似合っていて、カイちゃんも言っていたが、さながら女神のようである。


 ちなみに今回の魔法祭には、アルベルト様もジェラルドさんもカイちゃんも参加していない。

 アルベルト様とジェラルドさんは、高等部になってから初めての文化祭兼魔法祭ということで、どちらかが疎かになってはいけないと辞退なされたのだった。

 

 実際、生徒会のお仕事を手伝ってみて、あの忙しさの中で魔法祭のことまで、気に掛けられないだろうなぁ……と、思わずにはいられなかった。

 カイちゃんは単純に、今回披露するテーマと自身の得意とする魔法が噛み合っていなかったので選出されなかったのだ。

 

 今回の一年生による、魔法演舞のテーマは『キラキラふわふわみんな元気になーれ』である。キャロルの名付けたものだ。結界……防御魔法と治癒魔法をメインにしたものとなる。


「あ、そろそろ一年生のリハーサルの時間だよね? 客席から二人のこと応援してるから!」

「ありがとう、コレルちゃん!」

「ふふっ、心強いですわ」

 

 じゃあ、もう行くねとカイちゃんと立ち去ろうとした時。


「きゃあああああああ!!」

「!?」


 突然の叫び声に、びくりと肩を揺らしてしまう。声の主が舞台裏まで走って来ると、その場でしゃがみ込んでしまった。

 どうやら、リハーサル中の二年の女子生徒のようだが……。


「ふえぇ……っ、もう無理……無理ですぅ……やだぁ……ひっく……っ……」


 よく見ると、女子生徒の腕が真っ赤に腫れ上がっていて、慌てて声を掛ける。


「だ、大丈夫ですか!? 一体、なにが……」

「……っ、すみません、無理です……すみません……すみません……ひっく……ぐす……」


 他の二年生の人たちが、腕を真っ赤に腫らした女子生徒を追いかけて、こちらに来る。

 

「お騒がせして、申し訳ございません。彼女、緊張していたみたいでリハーサル中に詠唱をミスして、腕に火傷を……」

「……っ、すみません……すみません……」

「……あの」


 会話の途中で、キャロルが手を上げる。


「先に、先輩の手当てをしても構いませんか?」

「そ、そうね! お願いしてもいいかしら?」


 キャロルが頷くと、魔導書を呼び出し治癒魔法をかける。


「……あ、ありがとう……ございます……」

「いいえ」


 火傷が綺麗に治り、ほっとしたのも束の間。火傷を負っていた先輩が、またぽろぽろと涙を溢し始める。


「……す、すみません、私には無理です……魔法を披露できません……っ……絶対に無理です……ふえぇ……怖いよぉ……無理ぃ……」

「今更、そんなこと言っても……たくさんの人達が、楽しみにして来てくれているのよ? 王族の方々だって、いらしてるんだから!」

「……でもっ、だって……! 怖いんだものっ!」


 先輩は、わあぁと声を上げて泣き始めてしまった。


「ど、どうすれば良いの……」

「……もう魔法祭まで、時間がないぞ」


 騒ぎを聞き付けて、生徒会の人達も駆け付けたようだ。


「何の騒ぎだい?」

「……アルベルト様、実は……」


 話を聞いたアルベルト様が、顎に手をやり溜息を吐く。


「そうか……。それは、困ったね。だからといって、嫌がっている人間を無理矢理舞台に上げるわけにも、いかないしね……」


 ――沈黙が流れる。

 誰もが、どうしたものかと考えていた時。

 

「コレルさん!」


 シャーレ嬢が、声を上げた。


「貴女、炎魔法が使えましたわよね!」

「…………え?」


 私は、突然のことに酷く間抜けな声を出してしまった。

 




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