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【完結】憧れの乙女ゲーに転生したのに悪役モブ令嬢!?~ギロチン確定で攻略キャラたちからの好感度最悪ですが抗い続けたら楽しい学園生活が待っていました~  作者: スズイチ
第一章 モブ令嬢の抗い

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24 私と私以外のモブ令嬢たち



 夏休暇が終わり、いつもの学校生活に戻って数日が過ぎた頃。

 私は見ず知らずの女子生徒たちに、中庭の裏へと呼び出されていた。現在、壁際に追いやられ数人の女子生徒たちに睨み付けられている。


「……あ、あの、何かご用でしょうか?」

「貴女、夏休暇中にお城に招待されたんですってね?」

「近頃、ルーク様やサイラス様……それにジェラルド様とも、親しげになさっているようですし」

「随分と調子に乗っていらっしゃること」

「ご自分の立場をわきまえては、いかがかしら?」

「後に恥をかくのは貴女ご自身でしてよ?」


 あ~~なるほど! それかぁ! 私が攻略キャラの皆さま方と、お話する機会が増えたから絡まれているんだ! おお。何だか主人公みたいだと囲まれているにも関わらず気分が上がってしまう。


「貴女、わたくし達の話を聞いてらっしゃいますの!?」

「わざわざ、注意してあげてますのよ!」

「ちょっと小綺麗になったからといって、生意気すぎるのではなくて!?」

「えっ!?」


 こ、小綺麗になった!? 今、小綺麗になったって言われた!? ほ、ほんとに!?

 わぁ~良かったぁ! ちゃんと少しは良くなっているのだと、思わず嬉しくなってしまう。


「……なに、にやにやしていますの?」

「気味が悪いですわね……」

「あのねぇ、わたくし達は貴女の為を思って言ってさしあげておりますのよ?」

「わたくし達に、感謝なさいな?」


 女子生徒たちの言葉に、先程までの浮かれていた気持ちが一気に萎む。

 

 あ~~前世にも居たなぁこういう人……。


 あなたの為にって言うけれど、こういう人達の言う『あなたの為』は結局は自分の為なのだ。思い通りにならないからといって、自分を正当化するために『あなたの為』なんて言葉をこちらに使って来る。

 

 そもそも、どの辺が私の為なのだろうか? せっかくなので聞いてみよう。


「あの、どの辺が私の為なんですか?」

「は?」

「いえ、どの辺りが私の為を思って言ってくださっているのかなぁと、気になりまして」


 途端に女子生徒たちが黙る。


「……ぜ、全部ですわよ! わたくし達の言ったこと全部!!」

「そうですわ!!」

「えっと……調子に乗っているとか、立場を弁えろとか、後に恥をかくのは私だかとか……ですか? では、私が立場を弁えて、陰に隠れてジェラルド様たちと口も聞かずにいたら、皆さんの気が済むということでしょうか?」

「わ、わたくし達の気が済むとかそういう話ではなく、貴女の為にそうなさいと申し上げておりますのよ!」

「そうですわ! わざわざ貴女なんかの為に、時間を割いてまで教えてさしあげているの!」

「感謝なさいな!」


 ――呆れた。

 自分たちの主義主張を、あくまで私の為って言い張るんだ……この人達。

 

 シャーレ嬢は、今まで何度もこんな風に囲まれて理不尽なことを言われ続けていたんだと思うと、悲しくなってしまう。私も彼女の美しさが羨ましくて一度口にしてしまったから、言えた立場ではないけれど、大変だなぁと改めて感じる。


「言いたいことはわかりました。――お断りします」

「「…………………え?」」


 女子生徒たちが難しい顔をしたあと、声を揃える。まさか私が断るとは思っていなかったのだろう。


「……貴女、ご自分が何とおっしゃったのか自覚がありまして?」

「はい」

「まあぁ~~! さっすが、あの嫌われ者のキャロルさんのご友人なだけはございますわねぇ!」

「空気が読めないのにも、程がございましてよ!」


 そう、キャロルはこの学園の大半の女子生徒たちに嫌われているのだ。

 

 庶民の出ということもあるが、可愛くて愛嬌があって魔法の力は一級品。おまけに男子生徒にめちゃくちゃモテるのだ。既に何度も告白されている。カイちゃんいわく、学園に来る前から日常茶飯事だったらしいと額に手を当てながら教えてくれた。好きな子がモテるっていうのは、大変なんだろうなぁ。

 

 そんなこともあり、キャロルは驚くほど女子生徒から嫌われている。


「……でも、ただの嫉妬だよね?」

「「………………は?」」


 いけない、口に出してしまった。


「嫉妬? 誰が誰に?」

「勘違いもはなはだしいですわね」

「あんな庶民の小娘に、誰が嫉妬なんかするものですか! 不快なことを言わないでちょうだい!」

「そうですわ。あんな魔法しか取り柄のない、つまらない子」

「甲高い声でいつも男性に媚びていて、はしたない」

「さすが庶民の方ですわよね。品のなさに呆れてしまいますわ」


「…………言いたいことは、それだけですか?」


「……なんですって?」

「よく、友人である私の前でそれだけキャロルさんの悪口が言えますね。品がないのはどちらなのでしょうか?」


 ああ、これは……アルベルト様に言われた言葉だと気付く。

 本当に品のない人間だったなぁと思わず苦笑してしまう。私は、あの頃よりはマシな人間になれただろうか。


「――何なんですの、さっきから生意気な態度ばかり!!」

「よく、こんな方とジェラルド様たちは仲良く出来ますわね!」

「――ああ。ですが、ほらジェラルド様って……」

「そうでしたわね。あの方、元は……」

「そういえば、夏休暇中に柄の悪い方達と歩いている所を見掛けたという方が、いらっしゃいましたわね」

「それに、乱闘騒ぎを起こしたとか……」

「わたくしは、平民の女性に乱暴を働いたともお聞きしましたわ!」

「まぁ。恐ろしい! 見目は、お美しいかもしれませんが所詮は……」

「貴女なんかと、仲良くできるだけありますわね」


 クスクスと女子生徒たちが笑う。

 ――はぁ?

 あったま来た!


「先程まで、ジェラルド様と仲良くしているからって文句付けて来てたくせに、今度はそのジェラルド様の悪口ですか!?」

「ふんっ! だって事実なのでしょう!?」

「ジェラルド様は一方的に絡まれていただけで、そんな事実はありません! 詳しく知りもしないのに、よくそんな勝手なことが言えますね!」


 ただでさえ、友人であるキャロルのことを口にされて腹が立っていたのに、今度はジェラルド様の悪口を言うなんて……何なんだ、この人達!


「私のことが気に入らないからといって、好意的に思っていたジェラルド様のことまで貶めて楽しいですか? 面白いですか? 何処まで根性が腐ってるんです? 他人ひとのことをとやかく言う前に、自分達のどうしようもなさを省みろ! バカ令嬢共!!」


 怒りのままに声を荒げた私に、女子生徒たちがビクリと肩を震わせる。


「……っ、な、なによ……そんなに怒らなくても……」

「も、もういいですわ……行きましょう!」

「……何なのかしら、あの子……」


 女子生徒たちはブツブツと文句を言いながら、そそくさと逃げるようにしてこの場を去って行った。


「……言い過ぎちゃったかな。いやでも、いくら何でも失礼すぎるでしょ!」

 

「…………マルベレット」

「ひゃい!?」


 突然、別方向から声を掛けられ妙な返事をしまった。声のした方に視線を移すと、ジェラルド様がいらっしゃって目を見張る。


「ジェ、ジェラルド様!?」

「君を探していたんだが、ちょうど俺の話をしていたようで、出て行くタイミングを見失ってしまった……すまなかったな」

「……あ、い、いえ」


 先程の会話を聞いていたんだ。

 何だか申し訳なくて、黙ってしまう。


「……君は、ここでも俺を助けてくれるんだな」

「……え?」

「いや、それより時間はあるか? この間の約束を果たしに来たのだが」

「……約束?」


 何のことだったかと考えていると、ジェラルド様がチラチラと不安げにこちらを見ていることに気付く。珍しいなぁ、こんなジェラルド様。いや、それよりも約束だ。約束……約束……あ。


『でしたら、今度カフェテラスで紅茶でもご馳走してください』

 

 夏休暇に私の言ったことだ!


「覚えていてくださったんですね!」


 軽口のつもりだったので、まさか覚えていてくれて、しかもそれを実行しに来てくれるなんて思いもせず驚いてしまう。私の言葉に、ジェラルド様がほっとした様子で息を吐いた。


「ああ。時間があるなら今からどうだろうか?」

「は、はい! よろこんで!」

「そうか。ならば行こうか」


 ジェラルド様が薄く微笑むと、二人で並んでカフェテラスへと向かう。

 道中で、ふとジェラルド様が歩くペースを合わせてくれていることに気付き嬉しくなる。


「……ふふっ」

「何を笑っているんだ?」

「いえ、何でもないです」


 歩きながら、先程までのことを思い出す。

 まさか、私があんな風に呼び出しをされて、何かを言われる日が来るなんて思ってもみなかった。

 地味で目立たず、陰で他人を羨んで恨みつらみを吐くだけでしかなかった私……。

 

 そんなことを考えていると、風に靡くジェラルド様の美しい銀白の髪が視界に入る。

 

 不思議だなぁ、何もかもが。

 私が変わりたいと思ったから、今のこの光景があるのだろうかと、ジェラルド様を見つめながら考える。私なりに努力した結果が今の状況なのだとしたら、これほど喜ばしいことはない。


 ――私が断罪されるまで、長くてあと一年と数ヵ月くらいだろうか……。

 私は私の出来ることをしようと、静かに空を見上げた。

 

 



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