表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】憧れの乙女ゲーに転生したのに悪役モブ令嬢!?~ギロチン確定で攻略キャラたちからの好感度最悪ですが抗い続けたら楽しい学園生活が待っていました~  作者: スズイチ
第一章 モブ令嬢の抗い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/57

12 創立記念祭・前

 

 ――創立記念祭、当日。


 私とキャロルは、シャーレ嬢の部屋にお邪魔していた。品の良い調度品が置かれた室内は美しく整えられている。シャーレ嬢が奥にあるクローゼットを開くと、煌びやかなドレスが所狭しと並んでいた。彼女はその中の幾つかを取り出して行く。


「わたくしの方で、キャロルさんに似合いそうなドレスをいくつか見繕っておきましたわ。……いかがかしら?」

「わぁ、 ありがとうシャーレちゃん!」

「ふふっ、どのドレスも素敵だね」

「うん、みんな可愛くて綺麗で迷っちゃう! ……ほんとに私が着てもいいのかな?」

「も、勿論ですわ!」


 キャロルが愛らしいピンクを基調としたドレスを選び、シャーレ嬢はボルドーとエメラルドグリーンのドレスで迷っていたようだが、エメラルドグリーンの方に決めたようだ。


 ドレスが決まったところで、皆でメイクを始める。


「キャロルさん、これが私の手持ちのお化粧品。好きに使ってね」


 持って来ていたメイクボックスを開くと、キャロルが顔を輝かす。


「わぁ、こんなにたくさん! お化粧品っていろんなのがあるんだね」

「うん。使い方がわからない時は、気にせず聞いてね」

「ありがとう、コレルちゃん!」


 お化粧といっても、若いので肌を整えたあと透明の下地を塗り軽くパウダーをはたいて、うっすらとチークとアイシャドウを乗せたら、マスカラを塗って最後に眉毛とリップを丁寧に……そんな感じだ。とはいえ、前世よりも余程ちゃんとメイクをしている。


「わぁすごい! なんだか、お顔がキラキラしてる!」


 化粧の終わった自分の顔を見て、キャロルがはしゃぐ。あなたはいつだって、キラキラしているけどね!そもそもキャロルもシャーレ嬢も元が良いので、お化粧を施すことで更に美しさが際立っている。私は見事に二人の引き立て役だなぁ。素材が違いすぎる。


「……マルベレットさん。その口紅をお使いになるの?」

「え? はい、そうですが……」

「よろしければ、こちらをお使いになってみて」


 そう言って渡されたのは、上品なサーモンピンクの口紅だ。


「あ、ありがとうございます?」


 せっかくシャーレ嬢が渡してくれたのだからと、私は塗っていた口紅を落とし、新品のリップブラシに貸してもらった口紅を取ると丁寧に塗っていく。


「わぁっコレルちゃん、さっきのお色も合ってたけど、そのお色も明るくて素敵! すっごく似合ってる!」

「ええ。よくお似合いですわ」

「ほ、ほんと? 嬉しいな」


 二人に誉められて思わず頬が緩んでしまう。

 

 メイクが終わると次は髪の毛を纏める。私は右サイドの髪を残し短い髪を編み込んで行き、最後に繊細な装飾の髪留めを付ける。髪の毛が終るとドレスだ。

 私のドレスは二人のような華やかなものではない。色もミッドナイトブルーの暗めのもので、首回りからデコルテまでがレースになっているマーメイドドレスだ。肘から袖先にかけて広がっているところが個人的に気に入っている。


「シャーレちゃん、ドレスすっごく似合ってる! きれい!」

「キャロルさんも、そのドレス似合っておりましてよ」


 先に着替え終わった二人が、互いのドレス姿を誉めあっているのが最高に微笑ましい。


「コレルちゃんは、着替え終わった?」

「うん。今、終わったよ」


 私を見たキャロルの大きな目がキラキラと輝く。


「コレルちゃんのドレス素敵! コレルちゃんにピッタリだね!」

「本当に、とてもお似合いですわ」

「うん! コレルちゃん背が高くて細身だから、そんな風なドレスが似合うんだね!」

「あ、ありがとう! 二人もすごく素敵だよ!」


 えへへと笑う。今回のドレスは師匠と話し合って新調したものの中の一つだ。

 師匠曰く私は華美なものよりもシンプルで体型の分かりやすいものの方が良いらしい。色も淡いものよりも、深めの方が似合うとのこと。

 なので、このドレスを褒められるのは凄く嬉しかったりする。


「では、そろそろ参りましょうか」

「「はい」」


 私たちは三人で会場へと向かう。会場と言っても学園に併設された式典会場だ。

 会場の前まで行くと、正装したカイちゃんが待っていてくれた。正装も似合うなぁ……脚が長い。


「よお。お嬢さん方、今日は一段とお美しいね」

「カイちゃんもカッコいいよ。ね、キャロルさん」

「うん、すっごくカッコいい!」


 頬を薔薇色に染めて言い切るキャロルに、カイちゃんが眩しそうに目を細める。


「ん、ありがとな」


 穏やかにその光景を見ていると、隣のシャーレ嬢が口を開く。


「あらあら、お熱いことですこと。わたくし達は先に参りましょうか、マルベレットさん」

「ふふっ、そうですね。じゃあ、お先に」

「え? あ、あの、コレルちゃん? シャーレちゃん?」


 戸惑うキャロルにカイちゃんがダンスを申し込む。

 キャロルが恥ずかしそうにカイちゃんの手を取ったのを見て、心の中でガッツポーズを決めてしまった。カイちゃんに目配せをすると小さくピースが返って来る。私は軽く頷くとシャーレ嬢と会場内へと入って行った。


「キャロルさんとガレルローザさんは、お付き合いされていらっしゃるの?」

「いえ、まだそこまでは……二人は幼馴染なんです」

「あら、そうなの。ですが〝まだ〟と言うことは、可能性があるということですのね」

「……私が勝手にそうなれば良いなぁと思っているだけです」


 シャーレ嬢と並んで歩いていると多くの視線を感じる。皆が彼女を見ているのだ。

 目を見張るような美少女だもんなぁとか考えていると、シャーレ嬢のため息が落とされる。


「そんなに魔法持ちが珍しいのかしら」

「ん?」

「人のことをジロジロと……煩わしいったらありませんわ」

「いや、この視線はフォルワードさんが人目を引かれるからだと……」

「……どういう意味ですの?」

「フォルワードさんが、お綺麗だという意味です」

「…………わたくしが? 立ち振舞いとかではなく?」

「……ええ。立ち振舞いもですが、何より見目がお美しいからこそ、皆さんフォルワードさんのことを見ていらっしゃるのだと思われます」


 シャーレ嬢が顎に手を当てて難しい顔をしている。もしかして、自覚がなかったのだろうか。


「……家族や使用人の方々からは良くおっしゃっていただいたりしましたが、贔屓目なのだと……。外では社交界の場を除いて、ほとんど言われたことがありませんでしたし……」

「はぁー……そうなんですね。フォルワードさんは凄くお綺麗ですよ」

「そう、なのですね……確か以前にも言ってくださいましたわよね」

「以前?……ああ、あの時」


 シャーレ嬢が女子生徒に絡まれていた時だ。私が彼女に酷いことを言ってしまったと謝罪した時に言った記憶がある。


「あの時の言葉を含めて信じようと思います。嘘を付いても仕方ありませんし、少なからずとも貴女はわたくしのことを綺麗だと思ってくださっているのでしょう」

「……ありがとうございます。ですが、誰から見てもフォルワードさんはお美しいと思いますよ」


 ふふ、と笑うとシャーレ嬢が真っ直ぐに私を見つめてくる。


「……名前」

「え?」

「……名前、ですわ。ずっとフォルワードですから、その……シャーレ……で、構いません」

「……シャーレ、さん?」

「……はい」


 頬を染めて返事をしてくれるシャーレ嬢の尊さに、顔を覆い天を見上げてしまう。


「……あ、あの、私のことも……良ければですけどコレル、と」

「……コレル、さん?」

「は、はい!」

「ふふっ、コレルさん」


 あーーーーーー生きてて良かった。

 このあと、キャロルやシャーレ嬢と違って一人壁の花……いや、花は恐れ多いな。草かな。壁の草……微妙だなぁ。

 

 とにかく一人で寂しく壁際に立ってるしかない私だけど、お陰で乗り越えられそうだ。

 胸に手を当てて幸せを噛み締めていると、早速シャーレ嬢にダンスの相手を申し込むため、男子生徒たちが群がってきた。

 

 さすがだなぁ。私のことは気にせず行ってきてくださいと軽く背中を押すと、後ろ髪を引かれる様子ではあったが、シャーレ嬢は男子生徒とホールの真ん中へと進んで行かれた。

 

 さて、一人になってしまったがどうしようか。壁際に行っておとなしくしているか、それとも何か食べようか……悩んでいると声を掛けられる。


「マルベレットさん。よろしければ一曲お相手願えませんか?」


 目の前の男子生徒の言葉が飲み込めず、しばらくの間呆然としてしまう。

 

「……………………え? あっ、わ、私ですか!?」


 ようやく理解出来て思わず慌ててしまう。誰かと間違えてるのかとも考えたが、彼は明らかにマルベレットの名を口にしていた。生まれて初めてのダンスのお誘いに混乱してしていると、他の男子生徒がやってくる。


「あの、次は僕と踊ってもらえませんか?」

「その次は俺ともお願いします!」


 …………何が起こっているの?

 この人達は本当に私に声を掛けているの? 幻覚か何かなのかな? いや、待て。冷静になれ、コレル。もしかしたら、罰ゲームなのかもしれない。そうなると、彼らは何かの賭けに負けて私に声を掛けているのだ……可哀想に。

 このフロアには、美しく着飾った素敵なお嬢さん方で溢れているのに……よりによって、こんなモブに声を掛けさせられるなんて、気の毒にも程がある。


「……あの、心中お察しします」

「……はい?」

「私は気にしていませんので。……皆さんも運がなかったですね」

「……え、えっと? ダメってことですか?」

「ん?」

「……ん?」

 

 どうにも話が噛み合っていない。

 ここは、ちゃんと罰ゲームだと分かっていることを伝えるべきかを悩んでいると後ろから誰かがそっと私の肩に手を添えて来る。


 驚いて振り替えると、そこに居たのは思いもよらない人物で私は目を丸くした。 

 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ