百鬼魔装録〜『魔装』と呼ばれたものたちの日常〜
魔剣『アインシュヴェルク』-①
私は蝶王と共に幾度の戦場で勝利を得てきた。しかし私はその蝶王に裏切られた
『お前は強くなりすぎた、故に死んでもらわないといけない』
そんな戯言を抜かす王に呆れと怒りを覚えた
それから幾年月が経っただろうか…ある1人の男が私を拾った
『あんたも独りか…なら俺と一緒に来ないか?共に戦場を駆けようではないか』
ハッとした、今まで道具としか扱われなかった私を私を初めて『仲間』として見てくれた彼に何ができるだろうか…
彼の名前は黒翼緋色、聞けば百鬼隊という組織の1番隊隊長を務めているらしい。彼の人となりを見る絶好のチャンス…疑うつもりはないが、一応しておかなければ
「めずらしいな、あんたから俺の部屋に来るなんて…何か用か?」
「いえ…少し一緒にいたいと思いましてね…」
すると彼は少し考えた後に
「あんた蝶王とは犬猿の仲だよな?ならなぜ俺のところにきた、それこそ仇の蝶王を宿しているんだぞ?」
私は少し悩んだ、事前にその話は聞いていたとはいえ、文字通り『仇』である蝶王を彼は宿している。蝶王も私が魂となった直後に魂になったという、ある意味自業自得と言ったところだが…
「確かに少し考えました、蝶王は私にとって仇です。ですが、それ以前に貴方は私を道具としてではなく唯一無二の相棒として見てくれました…正直蝶王も最初こそは相棒だったのでしょうが、今となっては聞くことは出来ても真意までは分かりませんね」
私は本心を言った、嫌われるのを覚悟で。でも彼は…
「蝶王は確かにそうだったかもしれない、でも俺はそうはしないさ。あんたはこの世に一つしかいないんだ、わかるだろ?」
瞬間、涙が出た。道具としてではなく仲間として見てくれた彼のその優しい言葉に私は嬉しさと共に感動してしまった
「俺も百鬼隊に入隊するまでは独りだったさ、誰からも必要とされずに生きてきた」
初めて私に共感してくれた、彼も私と同じ境遇だったんだ…
「私は…独りじゃない…」
「そうだ、誰も独りじゃない。あんたも例外じゃないさ」
私は誰のものでもない…魔剣『アインシュヴェルク』という嘘偽りのない存在なんだ、それを彼は気づかせてくれた
「ええ、私は貴方の傍でいつまでも戦い続けます」