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七三分け
『ビューーーッ』
『バサッ』
左からの強い風で、何度戻しても私の髪は右分けから左分けになった。
『ビューーーッ』
『バサッ』
この会社で左分けにしていいのは、課長より上の人間だけなのだ。
『ビューーーッ』
『バサッ』
私の左分けがバレたら、上層部に会社の屋上へ呼び出され、何をされるか分からない。パンチやキックならまだしも、左遷やクビとなると家族が路頭に迷ってしまう。
『ビューーーッ』
『バサッ』
私は必死で髪を抑えながら、愛する家族を想い、歯を食いしばった。