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不器用な私
残業で疲れた私はパソコンから顔を上げると、大きく息を吐きボキボキッと首を回した。
「おっ、もうこんな時間か。確かに疲れたな」
そう言って、課長も首を回した。
しかし、課長の首から出た音はキュッキュッだった。
「…今のは聞かなかった事にしてくれ」
課長は柔和な表情をしていたが、目の奥は笑っていなかった。
やはり、課長が幼少期に親に捨てられ、その後鳴子のコケシに育てられたという噂は本当だったのだ。
しかし、課長の過去に何があろうと、私は課長を信じてついて行くと決めているのだ。
「へ?課長はん、何の事でござんしょう」
私はしっかりと、とぼけて見せた。
課長はうつむいた。