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第8話『再会と、差しのべられた手』

陽介は最寄りの駅に着くと、再度Rin を開き画面を見た。


 待ち合わせ場所は、『水池』駅の銅像が置いてある東口だ。

流石に気温が低く、肌寒い。

周りの人達はコートを着たり、厚着をしている。


陽介は場違いか、スーツ姿だった。

久しぶりに会う、Rin の相手。

一体誰なんだろうか?


駅に着いてから、一時間が過ぎた。


「そういえば前にもこんな事あったな、花梨さんの時か、、今頃は、田舎で元気してるかな、、、。」


「駅で待たされて、、会ってみたら同一人物で、、それから、色んな事があって、、、。」


「ダメだ、駄目だ、、もう忘れるって決めたんだ。」


陽介は過去の事を思い出していた、楽しかったルームシェア生活、それが跡形も無く崩れていったのだから。


「そろそろ現れても良いんじゃないか、、仕方無い、、帰るか。」


陽介は痺れを切らし、帰ろうとした時。

後ろから、懐かしい声が聴こえた。


───漆原


────さん!


 喧騒によって掻き消されそうになったが、

陽介にはハッキリ聴こえた、心がボロボロになって、孤独になり、寂しくて、もしあの時

居てくれたらどんなに心強かったか。

陽介の一番の理解者だった。

変わるきっかけを与えてくれた友。


陽介は振り返り懐かしい名前を呼んだ。


「清瀬!!」


 「はい!、お久しぶりですね~」


「お前なにやってたんだよ、、連絡もくれないで、、お前が居ない間に色々な事が起きたんだぞ!」


 「すいません、、丁度その時期liveツアーが始まって、プライベートの携帯家に置いていったんで、、しかも壊れたままだったんで、買い換えたんですよ。」


「そうだったのか、、でもまた会えて嬉しいよ!」


 「漆原さんこそ、どうしたんですか、部屋に帰ったらオーナーが怒っていて、大月さんや樽井君も居なくて、理由聞いたら漆原さんの事を追い出したって。」


 「で、奥さんが詳しい事情教えてくれて、解った訳です。」


「色々、、大変でしたね、、、。」


「ああ、、もうさ、、疲れたんだ、、誰かの為に何かをしても、頑張っても、待ってるのはこんな悲しい結末ばかりだからさ、、。」


「だから辞めにしたんだ、新しく関わる人間と、それ以上の関係になる事を、、親しくなる事を。」


 「なるほど、、そうでしたか、、とりあえず今日は飲みましょう!。」


「あのな、俺は酒飲めないんだよ、、知ってるだろ?。」


 「そうでしたね、じゃあ何か食べに行きましょう、美味いところ知ってますから!」


そう言うと、清瀬は陽介を連れて歩きだした。

やがて、駅近くの通りまで来ると、立ち止まり地下にある店に入った。


店内に入ると、オレンジ色の蛍光灯の明かりが出迎えてくれた。

周りからは、楽しそうな笑い声や、話声が聞こえる。


「2名でお願いします。」


 「はい、畏まりました、喫煙席、禁煙席御座いますが、どちらになさいますか?」


「禁煙席でお願いします。」


「さぁ、行きましょう漆原さん。」


 清瀬は受付を済ますと、陽介を席へと案内した。


 陽介は思う、清瀬はいつものへらへらした状態と違い、時々しっかりとした、受け答えが出来る時がある。

きっとそれが、有名バンドのvocalとしての顔なんだろうと。

その証拠に、顔付きも、声のトーンも違う。


 二人は禁煙席に座ると、メニューを見て、注文をした。

清瀬が頼んだのは鍋、酒に、つまみだ。

陽介が頼んだのは、オレンジジュースに、野菜炒め、魚のムニエルだ。


メニューが決まり、店員を呼び鈴で呼び出し、

二人は注文が届く間、積もる話をした。


「漆原さん、このエロゲーの子良くないですか!」


 「ああ、確かに胸が大きいし、顔も可愛い。」


「ですよね?、、でもこの子も捨てがたいんですよね~。」


 「ん?、どの子?、、あ、この子か、顔は可愛いけど、胸が小さくないか?。」


「それが良いんじゃないですか~、、解ってないな~。」


「そうそう、、漆原さん、冬ロミケ行きます?。」


 「ロミケ?、なんだそりゃ。」


「ロミケ、通称、ロミックマーケットです、同人誌とか、あとは、グッズとか、扱ってたり、素人が、店を開いたり出来る、お祭りみたいなものです。」


「へぇ~、、そんなのあるんだな、知らなかった。」


「オタクでは常識ですよ!。」


 「俺はオタクじゃないぞ、ただ、好きな物を観たり、集めたりするだけだ。」


「それをオタクって言うんですよ!。」


「…」


「じゃあ、カントウキッズのカウコン、カウントダウンコンサート行きますか?、俺は行きますよ!」


 「うーん俺は熱狂的なファンではないし、ただ、曲が好きなだけで、、。」


「まぁ、僕はストームも行きますけどね。」


 「本当、ジョニーズ好きだな、、。」


「失礼します、料理をお持ちしました。」


頼んだ料理が、並べられ陽介と清瀬は、話ながら、舌鼓をしつつ、楽しく食事をした。


大分周りから、話声や、客が捌けた頃、清瀬は

真剣面持ちで陽介に話始めた。


「漆原さん、ヘッドスパ行ったんですね、

髪が綺麗になってますよ、清潔感が少し出ましたね。」


 「ああ、約束したからな。」


「でも、まだ全然足りないですよ。」


「俺あの時言ったじゃないですか、勿体無いって、、だから今日はこれを言いに来ました。」


「『エステ』しましょう!」


 「エステ?、名前は聞いたことあるけど、何をするんだ?。」


「俺、こういう職業してるから、エステに行って肌を綺麗にしてるんですよ、見てくださいこの肌、漆原さんと違うでしょ?。」


 「確かに、俺でも解る、肌が白いし、光ってる、、。」


「そうです、エステはこんなにも肌が良くなるんです!」


「だから、やりましょエステ!」


「でもさ、お高いんでしょう?やっぱさ聞いたことあるし。」


「大丈夫ですよ、分割も利きますし、なんだったら、最初の頃は安いですし、充分出来ますよ。」


 「うーん、、分かったよやってみるよ、折角ヘッドスパ行ったり、少しは身だしなみに気を使えるようになったし。」


「はい!、良かったです、、そろそろ店出ましょうか。」


二人は会計を済ませ店の外へ出た。



「それじゃあ、僕こっちなんで。」


 「あれ?、、あっそうか、、引っ越したんだな。」


「また、会いましょうね、カラオケでも行きましょう。」


 「ああ、またな。」



 陽介は清瀬と別れ、家路へ急いだ。

冷え込んだ空気が頬を掠め、本格的に冬の到来を感じた。

寒さが体温を奪うが、それでも陽介の心は温かった。

新たな目標を掲げ、陽介の新しい挑戦の日々が始まった。

════════════════════


翌週から陽介は空いてる時間があれば、パソコンでエステを検索した。

調べていくうちに色々な事が解った。


エステは女だけの物じゃなくなったこと、

格安で受けられること、

エステ会社が色々存在すること、


そして、陽介の目を一番引いたのは、『施術体験』という文字だった。


施術体験とは一体何か?

陽介みたいにエステ初心者でも、気軽に店に来店して、格安、または、無料で受けられるエステの事である。


「色んな会社があるんだな、おお、『橋村ダクヤ』のCMでやってた、『SBC』じゃないか。」


SBC とは、スリムボディカスタマイズの略称だ。


「こっちは、『我鳥新語』がやってた、メンズサロンか、どれも良さそうに見えるな。」


 陽介はパソコン画面を観ながら、ワクワクしていた、自分が知らない世界が其処に広がっていたから。

 井の中の蛙大海を知らずという言葉があるが、結局は、自分の周りばかりしか見えないと、新しい事にチャレンジしたり、知る事は出来ない。


陽介はそれを知る事が出来た。


「よし、ここに決めた。」


 陽介が何時間も検索して、吟味した結果、選んだのは、橋村ダクヤのSBC だった。

内容は、体験無料、但し、初心者に限りと書かれていた。

陽介は早速パソコンから、項目を入力して、

予約をした。


「これでOKだ、、楽しみだな~、一体どんな事をするんだろう。」


「この色黒の肌が綺麗に白くなるんだろうか、、。」


「考えても仕方ない、明日に備えて早めに寝るか。」


陽介は明日のエステに備えて早めに就寝した。



───やっと逢えるね


────待ってるから


 陽介はうなされていた、例の夢をまた見たのだ。

だが、今回はいつものそれと内容が違っていた。

いつもは、顔に靄が掛かって見えなかった女の子の顔が鮮明に映るようになっていた。

 その容姿は美しく、顔は陽介風に言うと、可愛いの一言に尽きる。

その女の子は長く綺麗な髪を揺らしながら、陽介に微笑んだ。


「!」


「待って!、君は一体誰なんだ!」


「逢えるって!、、どういう、、意味、、。」


───きっと


その夢は、まるでテレビの電源が切れるからの様に、プツンと音をたててフェードアウトした。

そのまま陽介は、深い眠りについた。




時刻は6時30分


チュンチュン


小鳥のさえずりが聴こえる。

朝だ、目覚まし時計は鳴らない、今日は祝日。

そして、陽介にとって自分磨きの本当の意味で

新しい朝だ。


「ふぁ~、、朝か、、おはよう、、。」


「確か、、エステの予約時間は11時からだったな、、場所は、『無楽町』。」


 無楽町は、あのマンションがあった下野駅から二駅過ぎた所にある。

音楽会館やテニスコート、そして、『白夜堂』がある。


陽介は、水池から電車に乗り、無楽町に着いた。

予約時間まで余裕があるので、町を探索することにした。


「懐かしいな、、確かこの町には、『無楽国際フォーラム』があって、ここで、声優の田無優香里のliveを初めて観に来たっけな、、超ファンで可愛い顔に可愛い声で、、憧れたもんだな。」


「その時に、親友の『時枝 優太』に途中まで着いて来てもらったな~。」


「アイツ今頃なにやってんのかな。」


「お!、、ここだ、ここ、、無楽国際フォーラム、ここの周辺にファンが沢山居て、赤色のはっぴを殆どの奴等が着ていて、俺と優太だけ浮いてたな。」


「本当、、懐かしいな、、おっと、そろそろ行かないとな、間に合わなくなる。」


陽介が予約をしたSBC は無楽国際フォーラムから、徒歩10分の場所にあった。


 縦長の看板を見つけ、そこが目的地だと、解ると、陽介はエレベーターを使い、店のある5階のボタンを押した。

エレベーターはゆっくり上がって行き、静かに音をたて、扉が開いた。


 エステ店の入り口は、会社の受付の雰囲気と似ていた、目の前には綺麗な机とテーブルがあり、椅子には、一人の女性が座っており、

 陽介がその女性に予約の旨を伝えると、部屋の奥へと案内され、アンケート用紙とボールペンを渡された。


病院で渡される問診票みたいな物だ。


 その紙には、過去大病にかかったことがあるか?、アレルギー等や、肌荒れ等を起こした事は無いか?、色々項目があった。

 氏名、住所、電話番号、必要項目を記入し、書き終えた頃、先程の女性が紙を取りに来た。


「漆原様、それでは、シャワーを浴びてから、これに着替えて下さい、着替え終わりましたら、ベッドに横たわっていて下さい。」


 「はい、分かりました。」


 渡されたのは、茶色いバスローブと、大きめなバスタオルに、紙パンツだった。

紙のパンツは、濡れたらしわしわになるという、そんな代物ではない、特殊な加工が施された物だった。


陽介はシャワールームに入り、念入りに洗い、

もしかして、という展開に備え一応下も洗った。


 シャワールームから出ると、バスローブを着て、紙パンツを履いた。

ハッキリ言って、雰囲気は性を吐き出す場所のそれと似ていた為に陽介は緊張してしまった。

実際はそういう場所ではなく、また、そういう事をしに来た訳でも無い、だが、下半身は正直だった。


 興奮を抑えながら、誰かが来るまでベッドに横たわっていると、先程とは違う女性が来た。

髪はロングで、陽介的に顔は有り寄りのありだった。

 制服だろうか?、黒いワンピースに、下は黒いスカート、黒いタイツ姿だった。

こんな薄着なんだなと、陽介は感心した。


「初めまして、玉木と言います、本日漆原様の担当をさせていただきます、宜しくお願いします。」


 「こ、こちらこそ宜しくお願いします。」


陽介は緊張のあまり、樽井状態になった。


「それでは早速、施術に入らせていただきます、、先ずはお顔の『皮脂』を取る為、『脂』を浮かせる為に『スチーム』を当てます。」


 何やら箱みたいな機械から、白い煙の様な物が出てきて、陽介の顔に降り注いだ。

その煙は温かく、不思議な感じがした。

 陽介はこの店員が言ってる、聞いたことの無い単語の意味も解らなく、ただ、ただ場の空気に流された。


「続いては、お顔の浮いてきた汚れ拭き取り、『フェイスライン』を引き上げます。」


 スチームを顔全体にかけた後は美顔器を当てた。

美顔器と言っても、テレビの通販番組で、よく見かける玩具物とは違い、見掛けも凄かった。

 それが顔に当てられた瞬間、当てられたその部分に微量な電流が流れる。


その感覚は、手が痺れた時のそれに似ていて、多少の痛みを感じる。

こんな事で、フェイスライン?が引き上がるのだろうか?


痛みは徐々に慣れ、それは段々心地の良い物に変わってくる。

例えるならば、他人にマッサージをされ、筋肉がほぐれていく、そんな感覚。


「そして、最後にこのクリームをお顔全体に付けて終わりです。」


 顔には特別なクリームが、手の指使いで解る、普段陽介が顔を洗う時の力加減と違い優しく撫でられてる様な感覚。

冷たい刺激とともに市販で売ってそうな、そんなクリームが、塗られていく。

 だが陽介には、それが市販か、特別な物か、見分ける知識も、経験も持ち合わせていなかった。


顔全体にクリームが行き渡り、冷たいタオルをかけられ、それから10分程経って

施術が終わった。


「漆原様お疲れ様でした、本日はこれで終わりです。」


 「ありがとうございます。」


「シャワーを浴びましたら、着替えて、フロントまでお越し下さい。」


 「はい。」


 陽介は初めての施術が終わると、真っ先に鏡を見た。気のせいだろうか、肌が光っている。

手の指の腹で頬を触ると、スベスベしていた。

施術前はカサカサ、ザラザラしていた筈だ。


陽介は物凄い達成感に満ち溢れていた、

何かを成し遂げたそんな高揚感。


「これが、エステなんだ!、、凄いな!」


 陽介はフロントに向かい、店員に挨拶をし、店を後にした。

これは後で知った事だが、大体のエステ店では、勧誘というものをされるらしい。

 簡単に言うと、長期通って欲しいが為に、客に対し、無理やり分割契約させようとする行為だ。

だが、この店は陽介を勧誘して来なかった。


 地上に出ると、風が頬に当たり、何故かそれが気持ちの良い物に感じた。

今まで分厚い何かが妨げていたような、それが剥がされたような、そんな感覚。

陽介はその新しい感覚に包まれ帰路に着いた。


════════════════════


初めてのエステから数週間が経ち、陽介は

すっかりエステの体験にハマっていた。

施術を行う度、肌がスベスベに潤い、艶が増しているような、そんな実感が嬉しかった。


 陽介は休みの日を出来るだけエステに注ぎ込んだ。

無料もあれば、有料でも2000~5000円程の

料金。

 体験にも色々あった、体、『脱毛』、頭皮など様々だ。

片っ端から、受けまくった。

数えるだけで20を越える店舗に陽介は足を運んだ。


 その中でも印象に残ってるのは、山宿にある

エステだった。

そこでは、脱毛とフェイシャルの施術をしてもらい、担当をしてくれた女性は、有り寄りの、大有りだった。

背が小さく身長は145位の子、お子様体型おまけに声が可愛いかった。


別に陽介はロリコンではない。


帰りがけ思わず陽介は、その女性に失礼な事を言ってしまうほど小さかった。


「いや~本当に小さいですね。」


 「よく言われます~」


「子供かと思いました。」


 「また、来てくださいね!」


「はい!、また、今度。」


歯切れの悪い挨拶には理由がある、陽介は通う店を見定めていた。


 あの夜、清瀬に言われたのだ、「エステに通うのは良いんですが、自分に合わない所だと、続きませんよ、自分に合った所でないと。」

そう言われて陽介は体験を利用し、店を見定めている。


 30店舗程体験をした矢先、陽介はここだ、という店舗に出会った。

『赤山』駅にある、エステ店だった。

体験の内容は、フェイシャルと『body』に脱毛だった。


 その店は外観からも高級感溢れ、店内も清潔感があった。

この店で担当をしてくれた女性は、有名アイドルグループ、『CBK』の『阿波野友美』に似ていた。

アヒル口が特徴的で、エキゾチックな雰囲気を醸し出していた。


 他店同様に施術は代わり映えは無い、だが一点だけ違う部分があった。

それは会話だ。

その女性は陽介と世間話を交わした。

何気無いやり取りだが、この体験中にこの様な会話等、あまり無かったのだ。


 そして、楽しい会話も終わり、部室に待機して陽介は分割で契約をした。

この店に決めた理由は二つある。

一つは、分割でも一回2万だということ、二つ目は、やはり会話だった、今までの陽介は会話すらしなかった、どうせ体験が終われば、

その場の関係等終わるのだから、余計な関り合いは避けてきた。


30店舗程体験をして、ようやく陽介は自分磨きをする場所を見付けたのだった。

════════════════════


季節は2度目の梅雨を迎えていた。



 リア充、リアルが充実している。

そんな言葉が世情に広まっていた頃、

陽介もまた、プライベートが充実していた。

 会社では、課長や部長にさらに頼りにされ、

会社の女性陣には、清潔感が出たと評判になった。


そんな、日常のある日


「陽介先輩~、最近なんか輝いてますね?

何かあったんですか?」


 「あ?、おう、ちょっとな、一皮剥けたってやつかな。」


「先輩、、、昼間から下ネタですか?、、俺、下ネタ苦手なんでやめてもらっていいですか?」


 「おい、何を勘違いしてるんだ?、お前は!。」


「え?、違うんですか?、、。」


 「お、お前な、、。」


「そういえば、新しい家は騒音とか大丈夫なんですか?。」


 「ああ、お陰さまでな、防音仕様だから鉄筋コンクリート性なんだよ。」


「凄いじゃないですか、良いところ見付けましたね!。」


 「マジ凄いぞ、物音一つ聴こえて来ない!」


「良かったですね、一時期はどうなるかと思いました、、あの頃陽介先輩、凄く落ち込んでたから。」


「それもそうですよね、、あんな事になったんですから。」


 「…」


 「笹山、、悪いけど、その話は止めてくれ、思い出したくないんだ、、。」


「すいませんでした、、じゃあ俺戻りますね。」


笹山は陽介の琴線に触れてしまった罪悪感からその場にいられなくなった。

陽介も、後輩に気を使わせてしまった事に対し罪悪感を感じていた。



充実した日が続いたとある日



久しぶりにRin が鳴った。

やり取りしている相手は、笹山、樽井、大月、親友の時枝だけだった。


「誰からだろ?、お!、、時枝か!」


「久し振りだな、アイツから連絡くれるなんて珍しいな。」


 親友の時枝とは、約10年以上の付き合いだが、お互いプライベートには全く干渉をしない。

今何をしてるのか?、、仕事は何か?、、彼女がいるのか?お互い知らないし、干渉しない。        

それが当たり前であり、暗黙のルールにもなっていた。

 その甲斐あってか、二人は喧嘩は数える程しかなかった。


時枝から連絡が来る事は滅多に無い、殆んどが、陽介発信だった。

久し振りに来たメッセージの内容はこうだ。


{元気してた?、あのさ、今度の夏休みに旅いかない?

『他馬』にある、『老幼渓谷』にさ、自然をさ

味わってみたいんだ。

昔、バンドしてた頃に旅したよね?

あんな感じにさ。

返信待ってるよ。}


老幼渓谷とは、老幼川に囲まれている渓谷であり、春にはツツジ、秋には紅葉で有名な観光名所である。


「わかったよ、行こう、俺も自然好きだからさ。」


 陽介は直ぐ時枝に返信をした。

返ってきた内容から時枝は凄く喜んでいた。

会うのは数年振りだ、陽介は楽しみでいた

 自分磨きをして、少し自信が付き、

時枝がどんな反応をするか、それを考えるだけで、顔がニヤけてしまう。


「楽しみだな、変わった俺を披露する場に丁度良いな、、ってことは、山登りか、、登山靴や、色々用意しとかないとな。」


═══════════════════


それから1ヶ月が経ち、夏真っ盛りの

老幼渓谷当日。


陽介は朝5時頃、始発で出発した、途中時枝と合流し、軽く挨拶を済ませると、二人は老幼渓谷の駅に着いた。

道中は長かった。


『東旧』駅から外房線快速約60分六井駅下車、大湊鉄道に乗り換え約60分老幼渓谷駅下車・ローカルバス乗り換え、または約70分終点下総

 『仲間野駅』下車・ローカルバス又は『探桜勝』行きバスに乗り換え無くてはならない。

何れのルートにしても容易ではない。


 老幼渓谷前駅から外に出ると、そこに待っていたのは自然界そのものだった。

陽介達の他にも、家族連れや、カップル等が訪れていた。

 渓流釣りやハイキング、バーベキューなど、 手軽にアウトドアレジャーを楽しめるからである。


 また、上流の方には老幼の滝という名所がある。

その光景の凄まじさたるや絶景だった。

 さぞかし写真に収めれば、その一瞬を切り取る事が出来るだろう。


「すげえな!、、まさに自然界!。」


 「だね~、圧倒されるよ。」


「この自然の前では、俺らなんかちっぽけな存在だな。」


 「うん、悩みもくだらないと思えるくらい。」


 この頃の時枝には俺には言えない、悩みがあった。

それを打ち明けられた時、俺は本当の意味で理解をしてやれなかったと思う。

 親友が選んだ人生、道だから、何も言えなかった、、だだ、理解してやる事しか出来なかったと思う。

それを知るのはもっと先の話になる。


 滝から離れた場所に、コテージがあった。

今夜泊まる場所だ。

だが、陽介達が泊まるのは、そのコテージではなく、特別な汽車の仕様で出来ている、コテージだった。


「汽車じゃん!、間近で初めてみたよ、おお、中はこんな風になってんだな。」


中にはソファーがあり、まるで電車の中の作りにそっくりだった。

他にも、本棚もあり、童話から、文集まである。


 「不思議な感じだね、、電車の、、汽車の中に居るんだね。」


「ああ、、それにしても、腹へったな、、。」


 「確かカレーが貰えるらしいよ。」


「じゃあ貰って来るか!」


陽介と時枝はカレーを受け取り、福神漬けやおまけの唐揚げ等を貰い夕食を終えた。


 食べ終わると、時枝は持ってきたギターを弾き始めた。

バンドをやってた頃時枝は、曲作り、ギター担当だった。

とはいっても、正式なバンドではなく、ツインvocalで楽器が弾けるのは、時枝だけだった。


 勿論、陽介はギター練習をしたが、あまりの不器用さの為に断念。

仕方無く、時枝がギターを弾く事に。

その代わり陽介は作詞を頑張った。

初めてのliveは、まぁまぁな手応えがあったようだ。


時枝が奏でるギター音を聴きながら、そんな想い出が陽介の中に浮かんだ。


時枝がギターを弾き終えると陽介は、時枝に話し掛けた。


「本当に色々な事があったな、あの頃は迷惑かけて済まなかった。」


「俺の家庭環境のせいで、巻き込んじまってさ。」


 「気にしないでよ、親友じゃないか。」


「俺な、今エステに通ってるんだ、、自分磨き、、自分を変えたくてさ、肌なんか少し変わっただろ?」


 「確かに、なんか光ってるね、それに清潔感が出たね。」


「優太とさ、こうやって再会するまで、色々な事があったんだ。」


「今度話すからさ、、今は整理が着かなくてさ、、悪いな。」


 「うん、いいよ、、無理しないで。」


「あのさ、、俺な将来好きな人が出来て、結婚する事になったら、、絶対幸せにするんだ、、俺さガキの頃から苦労してきたからさ、、せめてその彼女だけは幸せにしたい、、だから俺は、、酒や煙草やギャンブルをしてこなかった、、アイツみたいになりたくないんだ。」


 「うん、、知ってるよ。」

 

「ああ、、今も続けてるよ、、きっと俺が苦労してきたのは、いつか出逢える運命の人って子を幸せにする為だと思うんだ、、」


「だからさ、、俺は変わるよ、、もっとさ、」


それから数時間二人は、会わなかった時期の出来事を互いに一部除き語り合った。



 次の日、陽介と時枝は、早く起床し、日の出を見に行った。

大自然に囲まれる渓谷の中で見る日の出は、

それぞれにとって、かけがえのない物になったに違いない。


 朝食を済ませると、二人はもと来た道を惜しむように、辿るように、それぞれ帰路に着いた。

また会う約束をして、あの場所で誓った己が信念の為に。


════════════════════


時枝と老幼渓谷に行ってから、2ヶ月あまりが過ぎた頃、季節は秋になっていた。



 陽介は変わらず、あの赤山にあるエステに通っている。

慣れたものだ、施術をして帰る。

その繰り返しだ。

最初の頃はあれだけ、緊張していたのに。


 担当は毎回変わった、忙しいらしい。

あのアヒル口の子は、最近見掛けないと思っていたら辞めたのだという。

少し寂しい感じがした。


 陽介は自分磨きをしてから、色んな事に挑戦していた。

例えば、整体に行き針治療をしてみた。

マッサージした後、顔に極細の針を刺す。

針の太さは、縫い針より、注射器より細い。

痛みは皆無に等しかった。


次に、血抜きにも挑戦した。

名の通り、血を抜く。

献血や血液検査等で抜く血抜きではない。

では、どこから抜くのか?


 それは、特殊な細い針で背中や足に深さ1mm程度穿刺し、その上にカップをつけて、その中を真空にし血液を抜く瀉血療法。

こめかみ等からも血を抜く事もある。

この治療法は、きちんとした施術であり、

 目的は、どす黒い所謂老廃物が溜まった血を抜いて、医療用オゾンを投与し、血液とオゾンを反応させて、活性化した血液を再び体内に戻す治療法だ。


 簡単に言えば、血の洗浄だ。

陽介は、色々調べてこの店を見付けた。

自分なりに考えてみた。

 肌を綺麗に、色白にするには、老廃物が溜まっていたら駄目なんじゃないかと。

だからやってみた。



 それから色々試した、色んな事もした。

だが、陽介の肌はスベスベになる以外、いつまで経ってもなんの変化も現れなかった。

脱毛も、それほど変化が見られなかった。

 陽介は変われると信じ自分磨きを続けてきたが、結果の見えない状況に耐えられなくなってきた。


段々苛立ちが増し、それは日を追うごとに

希望から、絶望に変わった。


「なんで、、なんで変われないんだ!、、何が足りないんだ、、どうして肌が白くならないんだ?、、何が、、足り、、ない、、。」


そして、陽介はとうとうその店に行かなくなり、また、あの頃の他人を信じられない、暗い陽介に戻ってしまった。




 季節は冬になり、生命の命を奪う、寒さがやってきた。

あれ以来陽介は、折角続けてきた自分磨きを辞め、殻に閉じ籠っていた。

清瀬や、時枝に約束した手前、二人に会わせる顔がなかったのだ。



 それでも人間は生きていかなくてはならない、如何なる状態であろうと、働き、稼ぎ、生きなくてはならない。

 会社ではいつもの様に愛想良く、誠実、真面目、その陽介でいられたが、だが、心では泣いていた。


 とある日陽介は、街中を歩っていた。

目的も無く、ただ、ただ、湖に漂う枯れ葉のように。

逆らうことも、抗うことも出来ず。

 その目は生気を失い、まるで病人の様だった。

当然だ、金魚すくいの、ぽいから破れ落ちた

物で再びすくいあげるには、新しい物が必要だ

でも、一度穴が空いた部分を塞ぐ手段は無い。

また、新しい物を手にする力も気力も陽介にはもう残されていなかった。


堪らなく感情が溢れてくる、涙が何度も頬を伝う。


「……っ……! どうして……どうしてなんだよ……っ、、もう、、駄目だよ、、皆、、。」


陽介は思わず嗚咽と共に、吐き出してしまった。

自分の弱さを、悲しさを、やるせなさを

全て吐き出した。


そんな状態の最中、陽介はおぼつかない足取りで再び歩きだした、、。

ところが、陽介は大きな石に足を取られ、転倒した。

幸い大事には至らなかったが、そのショックからか、陽介は意識を失った。




────きらめないで



──────諦めないで



────────もうすぐ逢えるから



「また、あの、、夢、、か。」


「駄目だよ、、俺は、、。」


「変わることなんて、、無理なんだ、、。」



────大丈夫。


─────恐がらないで。


─────手を。


 夢の中の女の子は、変わらず陽介に優しく微笑み、絶望するその心に、小さな手を差し伸べた。

 陽介が彼女の手に重ねると、その瞬間、陽介の中に暖かい物が入って来るのを感じた。

優しさに包まれるとは、こういう事を言うのかもしれない。



 陽介は夢から覚めると、突っ伏したままだった。

転倒した時に、両手が地面に間に合っていたのだろう。

何やら右手に違和感があった。

 先程の手の温もりとは違い、紙のような手触り、いつの間にかそれを掴んでいた、無意識のまま。


 陽介はそのまま立ち上がり、それを手に取り見てみた。

それは、『クールペッパー』という、主に美容のフリーペーパだった。

 クールペッパーとは月刊の無料クーポンマガジンである。



そして、掴んで開かれていたページには、エステ店の紹介文が書いてあった。

内容はこうだ。


皆さんは、自分磨きしていますか?

誰だって変わることが出来るんです。

当店では、そんな皆様の変わるお手伝いをしています!


諦めないで下さい、一緒に頑張りましょう。

お待ちしております。

           

           明智健一



 よくある謳い文句だが、この時の陽介には

この文が、この明智健一という人物がどうしても気になってしまった。

 思えて仕方無かった、思わずにはいられなかった。

きっと彼女が導いてくれたんだと。


陽介はこれが最後だと、自分に言い聞かせ、

直ぐに、その店に体験の予約をした。



最後のエステ体験当日



時刻は17時00分


 陽介は予約した店を訪れていた。

店は電車で30分かからない場所にあった。

ビルのドアを開けると、エレベーターがあり、

陽介はエレベーターで上がり3階で降りた。

 エレベーターから降りると、目の前には看板があり、手書きだろうか、可愛らしい文字で書いてあった。


 店の扉を開けると、フロントがあり、右手には下駄箱があり、スリッパに履き替えた。

呼び鈴を鳴らすと、男の声だろうか、奥の扉から声がした。


♪チリリン


「はーい、今行きますよ~。」


ガチャ


 扉が開き、中から白衣姿の男性が出てきた。

背は陽介より低く、頭髪は黒髪の短い髪型で

何よりビックリしたのは、顔の小ささだ

 同姓でこんなに小顔は見たことがない、

陽介があっけに取られていると、その男性が話し掛けてきた。


男の割には高い声質だった。


「予約の方ですか?」


 「はい、17時に予約した漆原です。」


「お待ちしてましたー、では奥のロッカーに荷物を置いて、着替えて下さいね。」


 「はい、分かりました。」


 この流れはどこの店も同じだ、この後に部屋に案内され、施術が始まる。

だが、陽介の予想を裏切る事が起きた。

着替えを終えた陽介は、バスローブを羽織、紙パンツを履き、次の指示を待つことにした。


暫く待っていると、陽介を呼ぶ声が聴こえた。


「漆原さーん、着替え終わりましたか~?」


 「はい、着替えました。」


「はい、では、あちらの部屋に行きましょう。」


ロッカールームから程近い部屋の個室に案内された。

そこには、二つ椅子が置いてあり、テーブルの上にはモニターが置いてあった。


「私が、本日担当をさせていただきます、『明智』です。」


明智は、一呼吸すると、陽介が驚くような発言をした。


「その前に、この機械を使って今の漆原さんの肌の状態を見てみましょう~。」


そういうと、モニターの電源を入れ、そして、内視鏡のカメラに似た細長い物で、陽介の肌に先端を当てた。


すると、モニターには、人の肌らしきものが映っている。

陽介は初めて見る映像に見入ってしまった。

それを見た明智が、すかさず言った。


「初めてみますよね、これなんだと思います?、、これ漆原さんの肌なんです。」


「良く見ていただくと分かるんですけど、先ず、色が色素沈着が凄いですよね、それに、肌に潤いが無いですし、乾燥しています。」


「私の肌と比べて見ましょうか?」


明智は機械を自分の肌に当てた。

映し出されたのは、陽介の肌とは違い、断面は綺麗で、凹凸も無く、まさに肌色だった。


「比べると分かるんですけど、模様みたいなの見えませんか?」


 「はい、沢山あります。」


「それが、『キメ』です!」


 「キメ?ですか、、?。」


「はい、キメです。」


「これは、人間なら誰でも持っていて、模様の形は十人十色、同じ人は居ません。」


「では、この模様がどんな風に大事かと言うと、キメが無いといくら化粧水をつけても、何も変わりませんし、逆に肌を悪くしてしまいます。」

 

「!」


「漆原さんの肌をもう一度見てみましょう、どうですか?比べて見て。」


 「模様、、キメが全然ありません。」


「そうです、全然ありません、漆原さんの肌を例えるなら、枯渇した砂漠と同じ状態です。」


「枯渇した状態でいくら水をあげても、直ぐにまた、枯れます、栄養が行き届いていないのです。」


「肌には深層があり、そこまで行き届かないと、肌は変わりません。」


「つまり、表面だけ良くしようとしても、奧まで浸透しないと、いつまでも同じです。」


「ですから、本日する施術は、肌の深層に栄養を浸透させ、乾燥を和らげ、保湿していきます。」


「宜しいですか?」


 「はい、お願いします。」


では、あちらの部屋に行きましょう。


 陽介は案内される途中に思っていた、この明智という人物は、今までのどの、担当よりも違う、1~10の事を解りやすく教えてくれた。

こんなに懇切丁寧にしてくれたのは、初めてだった。


「では、仰向けでお願いします。」


「はい。」


 そういうと、先ずスチームをかけ、その次に

美顔器の機械を使って、表面をマッサージし、

その後にクリームを塗った。

ここまでは他店と一緒だ。

 だが、明智は他の担当と違い、指の動きが滑らかで、そして、迅速だった。

そのうえ、首のリンパの周りを、凄い力でほぐし始めた。


 首の凝りが取れ、まさにリフレッシュした感じがした。

そして、クリームを拭き取り、さらに特別な化粧水を塗って、タオルをかけ、5分程してから

タオルを取り、保湿をして施術は終わった。


「はい、終わりで~す、お疲れ様でした。」


「着替えたら先程の部屋に来てくださいね。」


 「ありがとうございました。」


 陽介はロッカールームに行き着替えながら

思った。

ここに通ってみようかなと。

鏡を見てみると、顔の表面は光り、手で頬にふれてみると、微かだがモチモチとした、弾力があった。

その感触に陽介は感動を隠せなかった。


 明智の腕も良いし、店の雰囲気も悪くない。

だが、陽介はまだ吹っ切れてはいなかった。

トラウマになっていたのだ、自分の感覚で物事を捉えれば、自分に裏切られる。

 その恐怖に似た感覚が、陽介に後一歩踏み出す事を躊躇わせた。


明智を待たせる訳にはいかないので、陽介はあの個室に向かった。


個室には明智が座っており、そこでさらに詳しい知識を与えてもらった。


「凄いですね、光ってますよ~、効果が出るの早いんですね。」


 「はい、微かですがモチモチとした感覚があります。」


「そう、それがもっとモチモチするようになったら良いんです、それに少し乾燥が緩和されたと思います。」


「で、漆原さん、折角こうして変化が現れたんですから、通ってみたら以下がでしょうか?。」


「私も全力でサポート、変わるお手伝いをしますから。」


 「…」


 「俺も初めてこんなに教えてもらえて、嬉しかったし、新しい変化も起きたし、通いたいと思いたいのですが、、、。」


 「あのう、、一週間頂けませんか?、、その間に答えを出して返事するので。」


「良いですよ、大丈夫です、、では一度考えられてから、またいらっしゃって下さいね。」


 「はい、今日は本当にありがとうございました、もし縁がありましたら、その時は宜しくお願いします。」


「はい、こちらこそ~。」


陽介はエレベーターに乗り込み、それを明智は深くお辞儀をし見送った。

思えば帰りがけに見送ってくれた、担当等誰一人いなかった。


陽介はエレベーターから降りると、店があるそのビルを見つめて、思うのだった。

ここに通えば今度こそ変われると。


そして、その見つめた先にある名前を陽介は深く心に刻んだ。


 『リ・アース』

 

 resurrection earth


陽介は身軽になっていた、そう心が、その為早く家に帰って、じっくり今後の事を考えたかっただから、陽介は走った、力の限り

足を一歩ずつ踏み込み、これからの自分のさらなる決意の為に走った。




一方 リ・アースでは。


施術を終えた明智が、女性スタッフ二人相手に愚痴を溢していた。


 「先程の人はどうしたんですか?」


「アイツ帰ったわよ、折角私が勧めてあげたのに。」


「なんで男って、決断力無いの多いのかしら!、、もうプンプン。」


 「じゃあ、もう来ないですね、大体のお客さんそうだから。」


「そうですかぁ~、、私はあの人きっと来ると思いますよぉ~。」


「何よ◯◯は来るって言うの?」


「なんとなくですけどぉ~、、そんな気がするんです~ぅ。」





陽介は一欠片の希望を胸に帰路に着いた。

布団に入り眠りにつくまで、一生懸命考え、眠りについた。

 だけど、それは人生で一番心地の良い

時間だったのかもしれない。


時計の秒針が、チクタクと音を鳴らしながら、時をゆっくり刻んでいった。


═══════════════════



8話どうでしたか?

親友の時枝と清瀬に誓うも、断念し、途方に暮れるも、夢の中の女の子に助けられた陽介。


本当に人生、自分自身じゃどうしようもない時ってありますよね?

この話しは、これからの陽介にとってターニングポイントになります!


さぁて、陽介の返事はyesかnoか!?

そして、明智とは一体何者なのだろうか?

作者的には最後のポワポワした子が気になりますが笑

何?お前の好みは聞いていない?、、、失礼しました、、


それでは次話でお会いしましょう。


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