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第8話 超絶美少女と話すより助ける方が楽だよな

 正門からずいぶん離れた所で、女の子をおろす。


 適当に走って来たが、この子を家まで送っていかなきゃならないな。


「よし、ここまで来れば大丈夫だろう。

君の家はどっちか分かるか?」


「うーんと……」


 女の子がキョロキョロと辺りを見回す。


「あっち、大きい家」


 そう言って住宅街の方角を指差す。


 マップを開いて大体の位置を予測する。


「そうか、じゃあそこまで送っていくからな」


「うん」


 そしてマップを閉じて女の子に向きなおった瞬間、俺は驚きで固まってしまった。


 な、な、何だこの超絶美少女は!!!?


「ん?」


 今まではフードを被っていたので気が付かなかったが、鮮やかな金髪でさらに整った顔付きは、まるで良くできた西洋人形のようだ。


……絵本から出てきたとかそう言うレベルの可愛さじゃねーぞ!? 


「どうしたの?」


「い、いや」


 いかん、いきなり緊張して話せなくなった。


 女の子を助けたら超絶美少女って、ご都合主義にも程があるだろ!


 いや、ここは異世界だ。そういった事も起こりえるだろう。


「ああ、と、取りあえず行こうか」


「うん」


 くそっ! カッコ悪いな俺!


 異世界の主人公たちはこんな時、クールに決めてるのにな。

 

 これだから童貞をこじらせた奴は厄介だ。

 人のことロリコン呼ばわり出来ないぞ全く。

 

ーー


ーー


「ここが私のお家なの」


「……随分大きいな」


 案内されて来てみれば、かなりの大きさの家が目の前にあった。


 周りの家が日本の一軒家くらいだとして、この子の家は大きめのアパートくらいある。


 貴族の子……とかだろうか?


「ねぇ、お兄ちゃん」


「どうした」


 家の大きさに気を取られていると、話しかけられた。

 

 というか、美少女からのお兄ちゃん呼びは破壊力があるな。


「今晩泊まって行って?」


「はっ!?」

 

 な、何を言ってるんだ!


「いきなりどうした!?」


「お礼がしたいの。……だめ?」


 うっ……! 上目遣いでお願いされたら断りづらいだろ……。


 だが、こんな美少女と一夜を共にするなんて理性が持ちそうに……って! 俺は何を考えてるんだ!


「いや、気持ちはありがたいが、まずは親御さんと話をしないとな」


「居ないの」


 えっ?


「お母さんもお父さんも死んじゃった」


……。


 どうも話を聞くに、両親は商人だったらしい。


 ある日、街の近くを根城にしている盗賊団に殺されてしまったのだとか。


 門前で襲ってきたサイモンの一味だろうか。


「それからはずっと独りなの……。

お願いお兄ちゃん、私と一緒に居て?」


 うーん、可哀想だな。


 暴漢に襲われたショックも残ってるだろうし、俺も宿が無い。


 今晩は泊めてもらうとするか。


「じゃあ、今日はお願いしようかな」


「本当!? やったぁ!!」


 そんなに喜んでくれると、こっちまで嬉しい。


「私はエル・クラットっていうの! 入って!」


「俺は善神 誠治だ。て、おい、押すなって」


ーー


ーー


 流石は商人の家だ。


 部屋は広いし、設備も整ってる。


 飯はエルが買いだめしてるらしく、異世界の豪華な食材が揃っていた。

 

 さらに、エルは料理の腕も良かったので、将来は立派なお嫁さんになることだろう。


「風呂、ありがとうな」


「ううん! お湯加減どうだった?」


「ああ、最高だったよ」


 残業ばっかりでシャワーしか浴びてなかったからな。


 五人くらい余裕で入れそうな浴室を独り占めできたのは、冗談抜きで最高だった。


「じゃあ、二人とも身体を洗った事だし、そろそろ寝るか。

俺はどの部屋を使えば良い?」


 見たところ何十部屋と余ってるな。


「あのね、セージお兄ちゃん」


「うん?」


「今日は本当にありがとう」


 まあ、勢いに任せてやっただけ何だがな。


「ああ、気にするな」


「そ、それでね?」 


「ああ」


「今日の夜は、一緒に寝て欲しいの」


…………。はあ!?!?


「い、いやいや待て。

仮にも年頃の女の子が簡単に男と寝るもんじゃない!」


「……だめ?」


「だ、駄目って……」


 くっ! またあの上目遣いだ。

 俺の防御力を簡単に突破してきやがる!


 そんな芸術品の様な幼顔で俺を見ないでくれ!


「だ、だがな……」


「ずっと独りで寂しかったの……お願い……」


「……」


 まあ、こんな広い家に一人で住んでたんじゃ寂しいよな。


 金は両親の貯金があるから良いが、温もりは金じゃ買えないだろうし。


「はぁ……。今日一日だけだぞ」


「やったぁ!」


 明日からはちゃんと自分で部屋を借りよう。

 でないと、俺の理性が持たん。


「お、おい、だから押すなって言ってるだろ」


「うふふ!」


ーー


ーー


 くそっ! やっぱり眠れん!


「すぅ……すぅ……」


 エルは布団に入ってすぐに寝てしまった。


 きっと夕方の騒ぎで疲れたのだろう。


「それにしても……」


 綺麗な寝顔だ。


 日本に居た頃じゃ、アイドルや子役ですら、

ここまで可愛い子は居なかったぞ。


「人種が違うんだから、まあそう言うこともあるか」


 流石異世界だな。


 その言葉で、全て説明できてしまいそうだ。


「……お父さん……お母さん……」


 エルが寝返りをうちながら両親を呼ぶ。


 自立出来ているように見えても、まだまだ子供なんだな。


「エル……」


 頬に流れた涙を拭ってやる。


 ときどき様子を見に来てやるか……。

 まだまだ人肌恋しい年頃だろうしな。


 俺が少しでも保護者代わりになってやろう。


「うーん……」


 とその時、涙を拭ってやった手に、エルが抱きついてきた。


「お、おい、エル……!」


「えへぇ……お兄ちゃん……。だいす……すぅ……すぅ」


 寝惚けたエルが、俺の懐まで入り込んで胴体をがっしりと掴む。


 そして再び夢の世界へ行ってしまった。

 

「ま、まじかよ……」


 やっぱり、保護者代わりは厳しいかもしれない。


 その日は結局、ほとんど寝付けなかった。

お読みいただき、ありがとうございます。


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[気になる点] エルちゃんの両親が商人だったら家業は一人で?彼女の両親が亡くなったのは長い年月ですか、それとも10日から20日程度ですか?
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