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第6話 俺、門番に驚かれる

 林を出てから思ったが、変な方角から歩いていくと怪しまれるかもしれない。

 

 一度戻って街道沿いに歩いていく。


 門の前まで着くと、さっきまで三人だった門番が一人減っていた。


「お、兄ちゃん旅人だな。

こんな時間に来るなんて珍しいねぇ、街に入るのかい?」


 よ、良かった。言葉は通じるんだな。


 話しかけてくれたのは、よく見ればさっき鑑定した門番だった。


「ああ、そのつもりだ。

随分と遠くから来たんでな、勝手が分からなくて困ってるんだ」


 こんな感じでいけるか? 怪しまれてないか?


「随分遠くから来たって……兄ちゃん荷物も何も持ってねーじゃねぇか。どうしたんだ?」


 あっ、そういえばそうだ……! 

 普通は旅装をしてるはずなのに、手ぶらで遠くから来たとかおかしいよな。


「う、うーんそれはな……?」


 考えろ俺! こんな時、異世界の主人公はどうしてた!? 適当でいいから何か言わないと……!


「ああ、あれだろ! 最近流行りの盗賊団!

人殺しが多発してるって聞いてるが、よく荷物だけで済んだなぁ」


「あ、ああ……。逃げ足には自信があってな」


 助かった……! 流石幸運値999だ!


「まあ、命あっての物種だ。

だが命があっても荷物を盗られるのは辛いだろう。許可証を発行しなくちゃならないもんな」


 腕を組んでうんうん言いながら、門番が色々としゃべってくれる。

 

 やっぱり許可証が必要なのか、無一文でも大丈夫だろうか?


「見ての通り金は持ってないんだが……」


「ああ、それは大丈夫さ。

この国は入場費じゃなくて、滞在費がかかるんだ。

だから許可証の発行はタダなんだよ」


 なるほど、今の俺にとっては助かることだ。


「滞在費はいくらだ?」


「うん? あー、兄ちゃんの使ってた金と同じ価値かわかんねーけど、ここは一週間に二千ダット……まあ銀貨二枚だな。

払えなけりゃ街から追い出されるか、綺麗な女だったら夜の町で働かされることもあるらしいぜ」


 うーん、夜の町で働かされることは無いが、追い出されるのも嫌だな。


 しっかり払おう。


「分かった。

許可証の発行は、門番の兄さんがやってくれるのか?」


「ははっ! おーいおい、兄さんは止めろって!

こんなおっさんを捕まえて何言ってるんだか……」


 前世の俺より若そうだったので、ついついそう呼んでしまった。

 二十代は兄さんで行けると思うんだがなぁ……。

 うーん、行けると思いたいなぁ……。


「普段はここの門番長が許可証を発行してるんだが、俺は今日だけの監視員みてーなもんでな?

少しだけ偉い立場だから、まあ代わりにやってやることもできるぜ?」


 そうだったのか、見かけによらずエリートなのかもな。


「じゃあ、頼む。俺は誠治だ」


「よろしくな、セージ! 俺はマットだ、許可証出すからこっちに来な!」


 そう言えば、鑑定した時に名前が出てたな。

 すっかり忘れてた。


 と、門の中に歩き出したところで、妙な音が聞こえる。


「ん? 誰か走って来る?」


「んあ?……て、おい! ありゃ賞金首のサイモンじゃねぇか!?」


 町の中心の方角から、ずた袋の様なものを抱えた男が、走ってくる。


 よく見れば、口の端から(よだれ)を垂らした状態で走っている、とても気持ち悪い。


「あいつは近くを根城にしてる盗賊団の一員だ!

俺が来たのもその為だったんだが、ビンゴだぜ!」


 そうか、マットはあいつを逃がさない為に来てたのか。

 一応、鑑定してみよう。



 ーー種族 人間

  名前 サイモン

  スキル 狂戦士


  ステータス

  HP381/125

  MP51/30

  TP125/5

  攻撃力   112

  魔法力   5

  防御力   1

  魔法防御力 2

  敏捷性   48

  命中率   89%

  回避力   0

  幸運    2


  状態 狂戦士ーー



 何だあの片寄ったステータスは!?

 

 攻撃と敏捷性がやけに高いが、防御力は紙性能だぞ!?

 

「なあ、こっちに来てるんだが……!」


「このマットさんに任せておけ!!」


 マットが一歩を踏み出して槍を構える。


 すると、近くまで来たサイモンが、物凄い形相で突進してくる。


「どぉけぇぇぇ!」


「フンッ!!」


 マットが槍を突き刺す形で一歩踏み出す。

 

 正確にサイモンを狙った槍さばきは、日本で平和ボケしていた俺にも感動できるくらいの見事なものだった。


 だが、サイモンは元から避ける気がなかったのか、自ら槍に貫かれてマットへ突進してくる。


「痛てぇぞぉお!!」


「ぐあっ!?」


 おいおい、ダメじゃないか!?

 勢い余ってこっちに来てるぞ!?


「てめぇもどけぇぇ!!」


「くっ! これが初戦闘とかどうなってんだよ!」


 最初は弱いモンスターと戦うのが鉄板だろ?

 何でこんな狂人を相手にしなきゃならないんだ!?


 そう思っている間にも、サイモンが自分に刺さっていた槍を抜いて、俺に向かって投げつけてくる。


「避けられるか……? 当たったら痛いじゃ済まなそうだな」


 せめて槍をよく見ておこう。

 と、槍に意識を集中させた途端、空中を突き進んでいた槍が一瞬にして遅くなった。


「何だ、槍が止まったぞ?」


 いや、違う。

 槍が止まったんじゃなくて、俺の動体視力が上がりすぎて止まったように見えているんだ。


「そういえば俺の回避力はチート性能だったな……。

いきなりの戦闘だったから忘れてたぞ」


 そのまま回り込んで、槍を横から掴む。


 勢いの付いた槍だったが、攻撃力220のおかげか腕を持っていかれる事もなく手元に引き寄せられた。


「そ、そんなばかなぁ……!」


「おいおい……今の、どうやって槍を掴んだんだ……!」


 サイモンと、うつ伏せで倒れているマットが驚いて目を点にさせている。

 

 チャンスだな。


「く、くるなぁ! やめろぉ!」


「はっ!」


 動きの止まったサイモンの胴目掛けて、槍の裏側を突き当てる。


 殺そうとしてきたとは言え、流石にこっちから殺す気にはなれないからな。


「ぐはぁっ!?」


 サイモンは後方10メートルくらいまで飛んでいき、気絶したようだ。


「初戦闘にしては、まあ上手くやれた方か」


 最初はもっとスマートに終わらせたかったんだがな。

 

 平和な日本から来たんだ、慣れてなくて当然だろう。


 むしろ、いきなり異世界に来てドンパチやらかす主人公達の方がおかしいんだ。


「大丈夫か、セージ!!」


 倒れていたマットが起き上がってこっちに来る。


「ああ、問題は無い」


 俺としては、お前の方が大丈夫かと問いたい。


 が、彼も兵士なのでこれくらいは平気だろう。


「それにしてもさっきの技は凄いな! どこの流派だ? いや、スキルか!?」


 マットが矢継ぎ早に質問してくるなか、もう一人の門番がサイモンを担いでいくのが見えた。


「いや違う。ただの体術だ」


 体術というか能力値?

 

 流派やスキルと言っておいた方が良かったかもしれないが、すぐにボロが出るだろう。


「我流の体術だけであんな凄い芸当が出来るなんてなぁ、とにかくこっちに来い!」


「あ、おい!」


 引っ張るなって。


 俺は門を超えて、すぐ脇の建物に連れていかれた。

お読みいただき、ありがとうございます。


今回が初戦闘ですが、セージ君は今後も色々な要素に巻き込まれて行きます。


バトル、ハーレム、恋愛、迷宮、スローライフ……果ては"ざまぁ"まで、節操が無い人生になることでしょう。

全ては、幸運値999のせいです(笑)


幸運すぎて逆に困ってるセージ君が見たい!


と言う方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。

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