第63話 授与式
「よし、こんなものか」
一晩明けて、俺は肩慣らしの為にダンジョンにもぐっていた。
これで何が襲ってきても大丈夫だろう。
まあ、式典に行くだけなんだけどな。
「……昨日は色々あったな」
まず四人にプロポーズするのが大変だった。
いやレイネードは例外だったが、童貞の俺には色々とハードルが高すぎた。
最後のアリスに至っては、あの後の使用人の二人も凄かったのだ。
疲れて眠ってしまったアリスを抱き抱えて部屋を出てみれば、メリエッタさんとセバスさんが部屋の外で号泣していた。
何とか宥めようとしたが、泣きながら感謝を伝えられるばかりで、一向に収まる気配はなく、それなら明日の式典で俺を手伝ってくれという落としどころを作り、何とか脱出できたのだ。
「とにかく時間だし、さっさと王城に行くか」
――
――
「ふぅ、間に合ったな」
昨晩の裏口とは違い、ちゃんとした正門の前に立つ。
「さて、ローズを探さないとな」
「おい!! そこのお前、止まれ!!」
見慣れない門番がこちらの方をみて怒鳴っている。
……もしかして俺か?
――
――
結局門番に止められた後、時間に遅れそうになったり、俺を馬鹿にした門番にローズが斬りかかりそうになったりと、いろいろ大変だった。
「はぁ、疲れた」
「まあ、良いじゃねぇか」
ローズが門番を連れてどこかに行ってしまったので、俺はカイルと一緒に王城を歩いていた。
先に来ていたカイルに案内してもらっている形だが、ふと、カイルには質問出来ていなかったことを思い出した。
「もしもの話だが、俺が別の国へ行くって言ったらどうする」
「おう、もちろん俺らも行くぜ!」
「いや、お前もう少し躊躇しろよ……」
どうやら、理由も聞かずに付いてくるつもりらしい。
そんなにあっさり返答されると、昨日から思い悩んでいた俺がバカみたいだ。
まあ、カイルのこういう思い切りが良いところは流石というべきか、俺には無いものを持っている。
「別の国だったらよ、バラチカ西部国に行こうぜ。俺らのパーティーメンバーがその国にいるから、ついでに回収して行きてぇんだわ」
「パーティーメンバーか……」
たしかカイル達のパーティー名は、暁の四獅子だったな。
四人目の仲間か……どんな人物だろう。
「まあ、もしもの話だ。そんなにすぐに行くことはないだろう」
「そうかい、そりゃ残念だな!」
そうこう話している内に、謁見の間へ続く扉の前に到着する。
「遅いニャー!」
「旦那さま、もうすぐ始まるようです」
「師匠! 表彰ですよ、表彰!」
扉の前には、既にメリー、アリス、レイネードが待機していた。
魔王アグリエル戦で戦ったメンバーだ、どうやら全員で表彰されるらしい。
とその時、横から声がかかる。
「よぉ、救国の英雄どの。ずいぶんと余裕のあるご登場だな?」
「マット、ここにいたのか。お前が正門に居ないから無駄に時間が掛かってたんだぞ……」
軽口を叩くマットに、俺も言い返す。
「ああ、団長から聞いたけど災難だったな。あいつはあの後こっぴどく叱られてたぜ」
「いや、別にそこまでしなくても良いんだがな」
話していると、横から別の騎士がマットに耳打ちする。
「お、そろそろ始まるみたいだな! 皆さんの準備は大丈夫かい?」
「ああ、問題ない」
「いつでも良いぜ!」
「早くするニャ!」
「準備は整っています」
「いつでも行けますよー!」
俺たちが所定の位置に着くと、扉の向こうから入場の挨拶が始まる。
ローズの声だ。
「それでは、英雄セージ殿御一行の入場です!」
その宣言に、真剣な表情になったマットが扉を開ける。
さて、無事に終わると良いんだけどな。




