表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/81

第51話 剣術大会5

 炎の魔法で聞こえなかったが、どうやら会場はパニックになっているらしい。

 そこかしこから悲鳴が聞こえ、我先に外に出ようとしているようだ。


「エリサやエルは無事だろうか? いや、二人が付いているから大丈夫か……今は大丈夫だと信じよう」


 エリサにはレイネードが、エルにはマットが付いていた。

 会場の騒ぎに巻き込まれて怪我をすることはないだろう。


「それよりも今は……!」


 抱き抱えているローズを見る。

 多少熱気に当てられているようだが、意識ははっきりしているみたいだ。

 心配なのは喉の方だが。


「ローズ、話せるか?」

「……セージ……殿……すま……ない」


 声が掠れているが、なんとか話せるようだ。

 出来ればすぐに治療させてあげたいが。


『そろそろ、よいかな?』


 斜め頭上から声が聞こえる。

 どうやら奴は、俺を待っていてくれたらしい。

 ご丁寧にどうもと言いたいが、それは奴の優しさではなく、単に余裕なのだろう。


『同胞を心配する時間は終ったか? 人間は虫けらのようだと認識していたが、お主のような強者もいるのだな』

「それはどうも」


 話して時間を稼げないだろうか。

 こういうのは苦手なんだが、いけるか?


『ふむ、お主との戦いは楽しみだが、羽虫の声が小うるさいな』


 アグリエルが自分の周囲に四つの火球を作り出す。

 気が短い奴だ、話し合いは無理か。

 動き出すために、ぐったりしたローズを背中に担ぐ。


『掃除してやろう』

「チッ!」


 奴が四方に火球を放つと同時に走り、そして考える。

 このままではどう頑張っても被害が出る、最小限に抑えるにはどうすればいい……!


「セージ! 三つは俺らに任せろ!」


 思考している端から声が聞こえた。

 今のは、カイルの声だ。


「了解だ、任せたぞカイル!」

「おう!!」


 声の方も見ずに駆け出す。

 今はあいつの声を信じるしかない。


「現誠剣・昇陽!!」

「爆砕剣!!」

「ウォーターウォール!!」

「くらうニャ!!!!」


 俺が炎を絶ち切るのと同時に、三方向から現れた人影がそれぞれ技を発動する。

 どうやら、全ての火球を防いでくれたらしい。


「今だ、セージ!!」

「ああ!」


 カイルは、隙を見せたアグリエルを挟んで反対側にいる。

 挟み撃ちにするには今が好機だろう。

 俺はローズをその場に下ろして駆け出した。


「おらぁぁ!!」

「はっ!」


 アグリエルの前後から、同時に斬撃を入れる。



 "キィンッ"


 

 しかし刃が当たる一瞬、奴がどこからか取り出した二振りの巨剣に防がれてしまった。


『楽しいな。我輩に魔法だけでなく、剣まで使わせようとは』

「チッ……クソったれが!!」

「一旦引くぞ、カイル」

「……ああ」


 奇襲を防がれてしまった。

 カイルに声をかけて、一旦ローズの居た場所まで走る。


『ほう、作戦会議か? よかろう、我輩も力を蓄えておくとしよう』


 背後から、愉悦を含んだようなアグリエルの声が聞こえる。

 向こうはまだ楽しんでるようだが、こちらも急な事だったので、準備が出来るのはありがたい。


「セージさん、ご無事で良かったです!」

「あんた、強いニャー!!」


 ローズを下ろした場所へ戻ると、猫耳のメリーとアリス(?)がローズの手当てをしていた。


「ありがとう。まあ、腕には多少の自信があるからな」


 二人に返事をしておく。

 メリーは今初めて話したが、猫耳のとおり語尾にニャをつけるらしい。

 少し感動しそうになったが、これくらいで動じる俺ではない。

 ……断じて何も思っていない!


 そしてアリスに関しては、非常に派手なドレスを着ていたので一瞬誰だが分からなかった。

 おそらく目の玉が飛び出るような額の服だろうが、これは触れない方が良いんだろうか?


「おーい、セージ!! どうなってんだ……って団長!? 大丈夫かよ!?」

「師匠!! 今一番弟子が到着しましたよ!!」


 考えていたら、マットとレイネードが来たようだ。

 マットは倒れたローズに駆け寄っている。


「レイネード、来てくれて早々に悪いが、エルとエリサはどうした?」

「エルちゃんってあの可愛い女の子ですよね? 今は避難誘導をしてるエリサさんと一緒にいますよ!」


 二人が一緒に来たので、他の二人も無事だろうとは思ったが、合流できたようで一安心だ。

 あとは怪我をしたローズだが、同じ騎士団員のマットに頼むか。


「マット。ローズを連れて避難してくれ、喉を少し焼かれてる」

「しゃーねーな、俺じゃあ役立たずだろうし。エルちゃんの為にもしっかり勝ってこいよ」

「ああ」


 マットの出してきた拳に、俺の拳を合わせる。

 お互いに拳をつき合わせたあと、マットはローズを抱えて出口の方に走っていった。


「ははっ、ずいぶんカオスなパーティーになったじゃねーか!」

「確かにな」


 俺、カイル、メリーの戦士職三人に、アリス、レイネードの攻撃魔法職二人になってしまった。

 だいぶ脳筋編成だな。


「それで旦那さ……セージさん、これからどうしましょう?」


 アリスが空気を読んで名前で話しかけてくれた。


「そうだな……」


 まあ、必然的にこのメンバーをまとめるのは俺になってしまうのだろう。

 重圧がのし掛かりつつ声をかける。


「俺は一度、魔王候補と戦ったことがある。そこで作戦があるんだが、みんな協力してくれるか?」


 自分でそう言ってみたが、みんなの顔を見るのが少し怖い。

 こんな時まで前世のトラウマのが邪魔をしてくるのか。

 しかし……。


「おう! あの腹立つデカブツ野郎をぶっ飛ばしてやろうぜ!」

「もちろん、私はセージさんを信じますよ」

「強いやつには従うニャ!!」

「師匠の修行の成果を発揮して見せます!」


 みんなが口々にそう答えてくれる。

 分かってはいたが、やはり杞憂だったようだ。

 トラウマをこじらせた自分が恥ずかしくなるな。


「みんなありがとう。それじゃあ、作戦だが……」


――


――


「待たせたな、アグリエル」

『なかなかに待ちくたびれたぞ、人間よ』


 作戦を話し終えた俺たちは、それぞれの位置に着く。

 向こうはと言えば、とっくに準備万端のようだ。


『ククッ、もうよいのかね?』

「ああ、その前に一つ聞かせてくれ」


 ちらりと会場を見る。

 どうやら、観客の避難は終ったようだな。

 これで心置きなく暴れられる。


『なんだ?』

「ゴッズ先輩……取り憑いていた人間はどうなった?」

『なんだそのことか』


 アグリエルが自分を指差す。


『もちろん我輩の一部となって死んだ、幸せなことであろう?』

「そうか」


 全く、一ミリもゴッズに対して好意なんて抱いてなかったが、何となくそう言われると腹が立ってくる。


「一応先輩だったからな。弔い合戦をしてやるよ」

『ククッ、よいぞ。それでこそ楽しみがいがある』


 アグリエルが両手を広げる。


「みんな、来るぞ!!」

『それではゆくぞ……《ワールド・オブ・フレイム》』

 

 奴がそう詠唱した瞬間、全てが炎に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ