第3話 異世界へやって来た
目映い光が収まると、辺り一面には俺が想像していたより何倍も美しい緑の景色が広がっていた。
「とうとうやって来たのか、異世界に」
ずっと夢に見ていた異世界に来られたのだ。
思わず目頭が熱くなってしまう。
「俺って涙もろいのかもな」
今日一日で二回も泣いてしまった。
まあ、それだけ俺にとって嬉しいことが続いたのだろう。
「すぅー」
肺の中に空気を思いっきり吸い込んでみる。
日本は田舎だろうが都会だろうが、どこに居ても空気が汚れていたのだろう。
異世界に来て、生まれて初めて空気がうまいと感じる。
息を吸うだけで幸せだ。
「それにしても、この沸き上がる力の様なものはなんだろうか?」
夢中で草木の香りを楽しんでいたが、ふと身体に違和感というか、新たな力の様なものを感じる。
「これはもしかして魔力だろうか」
魔法が使える世界だ。魔力が身体を巡っているという表現が一番納得出来る。
「まあ、若返ったというのもあるのかな、随分身体も軽いし」
その場で数度跳ねてみる。
想像していたより簡単に身体が動き、油を差した機械のように滑らかに動く。
「お、おっとっと」
油断してその場で尻餅をついてしまった。
「そりゃあそうか。事故に遭って女神様に会って、そんで異世界に来たんだもんな」
疲れてるに決まってる。
俺は尻餅をついた状態からそのまま寝そべる。
「会社に居た時は、こんなにのんびり出来るなんて思わなかったなぁ」
ひとしきり体を休めた所で、右手を下へ振り下ろしてみる。
すると、目の前にデジタルモニターのような映像が浮かび上がった。
「おお! 本当にメニュー画面みたいだな。
チュートリアルも用意されてるし、親切設計だ。
どれどれ?」
ーー無事転生出来ましたようで何よりです。
この権能はステータス画面と言って、この世界で貴方だけに与えられたスキルです。
ゲームや漫画に親しんだ方なら扱えるように作りましたが、分からないことがあればヘルプを見てみてくださいね。
王国へは地図を参照すれば辿り着けると思います。
それでは、良い異世界旅を。女神より。ーー
「なるほど、チュートリアルは終わりか。
随分と簡潔な文章だが、操作しながらヘルプを見れば大体分かるだろう」
表示された"次へ"の文字を指で押す。
「ははっ、本当にゲーム画面みたいだな。
ステータスにスキル、アイテムの項目もあるぞ」
その中の一つ、マップを押してみる。
「ええと……『クリュールの草原』が現在位置か。
勝手に名前が表示されてくれるのは助かるなぁ」
マッピングの苦労が無いのはありがたい。
「王国王国は、っとここだな、『ミズダット王国』。
ここから東にあるみたいだ。
向こうの岩が北側で、東側は……あの三本伸びてる木の方に歩けば王国に辿り着けるな」
そうと決まれば、さっそく行ってみるか!
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