第20話 厄介な奴!1
冒険者ギルドに到着すると、レイネードが既に到着していた。
「セージさん! おはようございます!」
「ああ、おはよう」
朝から元気なことだ。
「それじゃあ、早速いきましょう!」
挨拶もそこそこに、レイネードが出発の号令をかける。
とその時、巨漢の男が俺たちの目の前に立ちはだかった。
「っへへ、待ちな!」
「アンタは、ゴッズ先輩か……」
「憶えてたようだな!」
さすがに昨日の今日で忘れはしない。
というか、そのむさ苦しい見た目を忘れるのは無理だ。
「よお弱虫! てめぇ、運良く冒険者になれたようじゃねぇか!」
「まあな」
弱虫って……昨日、俺に攻撃を避けられたのを忘れたのか?
「色々と運が良かったみてぇだが、俺の目はごまかせねぇぞ!」
運って……まあいいか。
「まあ、運が良かったんだな、そうだそうだ。
だからそこを退け」
面倒くさい、さっさと行こう。
「まあ待てよ、女連れで自分を大きく見せたいのは分かるが、身の程を弁えないと恥をかくぜ?」
それはお前の事だろうが。
「何の用だ、こっちはこれからダンジョンに行くんだが?」
「いやなに、好成績を出した新人はさぞ優秀なスキルを持ってるんだろうと思ってな!」
そう言うと、ゴッズのにやけ面がさらに深まっていく。
こいつ、どこかで俺のスキルを知ったみたいだな。
どうせ真っ当な手段じゃないだろうけど。
「俺のスキルは、ステータス画面だ」
「ほお、ステータス画面ねぇ」
ゴッズがさも嬉しそうな顔をする。
やはり知ってるな。
「もしかして、ステータスを確認するだけのスキルか?」
「そうだが」
チート能力の存在は隠しておかないといけない。
特にこんなやつにはな。
「はっはっはっ!! そうかそうか!! いやぁ、新人にふさわしい雑魚スキルだなぁ!!」
「そうか」
「俺も森樹のダンジョンに行くから、せいぜい邪魔にならないように気を付けろよ!」
それだけ言ってギルドを出ていった。
俺が行くダンジョンの場所まで知っているとは、本当に気持ち悪いやつだな。
攻撃を避けたせいでここまで執念深さを発揮するとは思わなかった。
「セージさん! あの人本当に気持ち悪いですね! では行きましょう!」
そう言ってレイネードがギルドを出ていく。
……意外と容赦の無い事を言う娘だな。
「俺も行くか」
一足先に出ていったレイネードに続いて、俺もギルドを出た。
ーー
ーー
「ここがダンジョンですか! 私、入るのは初めてです!」
レイネードがダンジョンを珍しそうに見渡す。
「ダンジョンに入らずにどうやって能力をあげたんだ?」
「私は魔法学校に通ったんですよ! 一通りの魔法を習ってから冒険者になろうと思いまして。
それで昨日、ようやく合格出来ました!」
「そうか」
魔法学校なんてあるのか。
普通はそこに通ったりするんだろうな。
「セージさんは違うんですか?」
「ああ、俺は違う国から来たからな。
魔法学校には行ったことが無い」
「そうでしたか! あ、思い付きました! 異国の大魔法使いセージさん、という二つ名はどうでしょう!」
二つ名にさん付けはどうかと思うな。
レイネードにネーミングセンスはあまり無いらしい。
と、しばらく歩いてトレントに遭遇した。
「きゃー! 初の実践ですよ!」
「ああ」
何でそんなに嬉しそうなんだか……。
いや、昨日は俺もそうだったかな。
「行きますよ! ファイアーボール!」
レイネードの杖の先から火球が放たれる。
ありふれた魔法名だが、この世界でもオーソドックスな魔法なんだろうか。
「ファイアーボール! ファイアーボール!」
続けて二発撃ち込んで、トレントが倒れる。
「ふぅ……! どうでしたか!? セージさん!」
「ああ、良かったんじゃないか?」
初戦闘の割にはスムーズに倒してた気がする。
「本当ですか! よーし、このままじゃんじゃん進みましょう!」
「元気だな」
とその時、レイネードの横から不意にトレントが現れた。
油断した……しっかりとマップを確認しておくべきだったな。
「はっ!」
衝撃波を使ってレイネードに近づく前に倒す。
「う、うわぁ! ビックリした……。ありがとうございます」
「ああ、怪我はないか?」
「平気ですよ! 流石はセージさんですね、もうこれは師匠と呼ぶしかありませんね?」
「し、師匠は止めろ……」
まだ攻撃魔法も習得してないのに師匠はなぁ。
「ではセージ師匠! 行きますよ!」
「あ、おい!」
全く、どっちが師匠なのか分からんな。
「ダンジョンで突っ走るなよ!」
レイネードの後を追った。
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