第15話 女の子とパーティーの予約
「そう言えば、俺にも武器が必要かもな」
ギルド長室を出てから思ったが、徒手格闘では限界があるかもしれない。
考えておくか。
手すりを伝って、二階から降りていく。
「あ! 見つけました!」
階段の最後を降りると、茶髪の女の子がこちらに走ってきた。
一体誰だ?
「はぁ、はぁ、いきなりすみません! 私とパーティーを組んで頂けませんか?」
パーティー? 何で俺と……。
「すまない、君が誰だか分からないんだが、どうして俺とパーティーを組みたいんだ?」
さっき、試験場に居たんだろうか。
「あ、自己紹介がまだでしたね!
私はレイネード・エルミスと申します!
一緒に試験を受けましたよね?」
一緒に試験を……。
「ああ、魔法で人形を3体倒した女の子か」
あの時はそれどころじゃなかったからな。
この娘も合格したのか。
「覚えていて下さったんですね!
それでさっきの試験を見て、私感動したんです! 15体の人形を倒すなんて、見たことがありませんよ!」
まあ、史上初らしいからな。
「酒場の冒険者さんたちは、ただ凄い新人が現れた……。くらいにしか思っていないでしょうが、私は違います。
何てったって、あのアテナ様と同等の……
この娘、話が長いぞ。
別に嫌じゃないんだが、ほとんど耳に入って来ない。
「はぁ……それで、俺とパーティーを組みたいとは?」
「そうでした。
実はその魔法の腕を見込んで、一緒にダンジョンに潜って頂きたいのです」
ダンジョンか……やっぱりあるんだな。
街の外にモンスターは居なかったし、迷宮のような物は存在すると思っていた。
「ありがたい申し出だが、まずは一人でダンジョンに入ってみたいんだ。すまんな」
パーティーを組んでたら、スローライフは送れそうに無いからな。
「そうでしたか! では、明日はどうでしょう!
お試しでパーティーを組んでみましょう!」
「はぁ……明日ね」
この娘、顔は可愛いんだが、かなりグイグイくるな。
嫌いではないが、正直苦手なタイプかもしれない。
「まあ、明日だけなら良いか」
「本当ですか? やったー!! 偉大な大魔法使い様とダンジョン攻略ですよ! それではまた明日!」
そう言って、ギルドを出ていってしまった。
「魔法はまだ使えないんだがな」
取りあえず、受付に行くか。
ーー
ーー
「あ、セージさん! こっちですよ」
受付の近くまで行くと、美人受付嬢のエリサが俺に手を振っていた。
「まあ、おっさんの所に並ぶより良いな」
エリサの所まで歩いていく。
正直、美人に色々教えて貰った方がやる気が出ると思う。
「凄かったですね、セージさん。
まさか、徒手格闘と魔法の両方があんなに出来るなんて思いませんでしたよ!」
魔法は使えないけどな。
「いや、まあ上手く行った方だな。
それで、色々と教えて欲しいんだが」
主に、クエストやダンジョンについて聞いておきたい。
「もう、セージさんったら昼間からダメですよ?
女の子に色々と聞きたい、なんて」
「いや、そう言うことじゃないんだが……」
これが痴漢冤罪みたいなものか?
恐ろしいな、気を付けよう。
「うふふっ、分かってますよ。そちらはまた今度、二人きりでじっくりとお教えしますね?」
「はぁ……」
美人には敵わないな。
これが童貞との力の差か……甘んじて受け入れよう。
「もうランクの説明は受けられましたか?」
「ああ、基本的な事については知っているつもりだ」
異世界小説で予習は出来ているはずだ。
「ランク以下の依頼を受けて、期限までに達成すると報酬が貰える。それで間違いないか?」
「はい、概ねそれで間違いありません。
ただ、常設クエストと依頼されたクエストがありまして……」
「ああ、それも大丈夫だ」
常設クエストは、モンスターの素材や薬草を一定数納めるクエストだろう。
依頼を受けずに、素材を持ってくるのが基本だな。
「流石ですね、他にお聞きしたい事はありますか?」
そうだな……。
「素材は、ダンジョンの物しか買い取ってくれないのか?」
街の外にある薬草はどうなんだろうか。
「ダンジョンの外に居るモンスターや付近の薬草も、勿論買い取りの対象ですよ」
外にモンスターがいるのか、俺は運良く出会わなかっただけなのか?
「遠方の国にしか存在しない薬草もありますので、ダンジョンの中だけに制限すると色々問題が出てくるんですよ」
「なるほどな」
輸入の一端を冒険者にも任せてるということか。
「じゃあ、冒険者はダンジョンに縛られてる訳ではないんだな」
「はい、ダンジョンでの仕事が多いですが、洞窟の探検などもあり、基本的には自由ですよ」
自由……良い響きだ。
「それじゃあ、早速行ってみる」
「はい、まずは西にある森樹のダンジョンが良いでしょう」
「何故だ?」
「森樹のダンジョンでは、浅い階層でも素材がいっぱい落ちているので、肩慣らしにはちょうど良いんですよ」
なるほど、初心者向けか。
「ありがとう、クエストを見てから行ってみる」
「はい、また来てくださいね!」
エリサが手を振って送り出してくれた。
「まずは依頼を見てダンジョンに行くか」
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