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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第一章『異界からの来訪者』
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第一話「猫耳少女と犬耳少女」

 推定。場所は何処かの商店街の一角。


 断定。風祭紅葉はそこの街路樹近くに置かれたベンチの上で気絶していた。


 時刻はまだ太陽も登り始めた朝頃。


 燦々と降り注ぐ日の光は透明なアーケードを突き抜けて商店街を照らす。


 道端の街路樹の木陰に当たるその場所は、転寝うたたねするにはちょうど良い場所だろう。


 気絶している紅葉にはわからない事だが、この場所は風通りも良く、柔らかな光がとても心地良い。


 道行く人々はその状況を単にベンチで休んでいるものと認識し、近くのどうみてもヤバそうな血塗れの瓦礫と粉砕した道路は日常の一種として華麗にスルーしながら日々と変わらず通り過ぎて行く。


 そんな状況下で現在気絶中の紅葉の傍に近付く者が1人。


「ちょっとー、大丈夫ですかー?」


 その近付く者閠、コ九€€∝スシ螂ウ縲∝セ―[error-概-結ヵィの撥銅……認-墜s-programs…妨「強制介入*権限奪取*妨害透過」err-programs正常動作確認-log復元続行]―


 その近付く者事、彼女、御砥鉈瑠璃はおもむろに紅葉を揺さぶり、声をかける。


 その手には近くの無料給水所で汲んで来たであろう水の入った金属製の水筒が握られている。恐らく気絶した紅葉を介抱してベンチの上に寝かせたのも彼女だろう。


「おーい、おーい、大丈夫ですかー?」


 瑠璃は紅葉を何度か揺するものの、一向に起きる気配はない。


 とはいえ呼吸も脈拍も安定している為、これはもう気絶というより単なる熟睡だろう。


 その呼吸と脈拍を見て瑠璃も容態は安定していると見たようだが、しばらく揺さぶってみても反応がないので、水筒から器となっている水筒の蓋へと水を注ぎ、それに手を浸して紅葉の額に一定間隔で水を落とし始める。


 ぴちゃっ……ぴちゃっ……ぴちゃっ……。


 指先から一定の等間隔で額に落とされる水はその何気ない些細な悪戯に見える行為とは裏腹に猛烈な不快感となって紅葉の睡眠を妨げ、その意識を強制的に表へと引きずり上げる。所轄、水滴拷問である。


「ん、んん……!」

「あ、起きた」

「!?」


 風のそよぐ商店街の一角。


 気絶から目を覚ました風祭紅葉の瞳に、人並外れた端正な顔立ちが映り込む。


 服装は何処かの学校の制服だろうか。


 紅葉の目に映る彼女は赤いラインの入ったセーラー服を着用しており、やや紫みを帯びた鮮やかな青、いわゆる瑠璃色のサイドテールが商店街の空調から出た風に涼し気になびいて、何処か少しミステリアスな雰囲気を醸し出している。


 そんな瑠璃の容貌を目の当たりにした紅葉は精神に少し衝撃を受けたのか[理性値判定1D4/1D8、上方、1D8ロール、結果7、理性値7回復]目をぱちぱちとさせていたが、その容貌の高さが目の保養となったのか、しばらくすると多少の落ち着きを取り戻して、じっと瑠璃を見つめ返す。


(……水兵?)


 そこで、この世界と紅葉の間にまず一つの認識の違いが生じる。その制服は紅葉にとって学生ではなく別の意味を持つものだったのだ。


 そう、その制服は紅葉の記憶の中では水軍、または海軍の制服に当たるものだ。そして紅葉には何故その相手が目の前にいるのかがわからない。


 しかし、それより何より、紅葉の目を引いたものが別にあった。


 それは、彼女の頭の上にある二つの『猫耳』だった。


「猫……?」

「そうですね、そういう貴方は犬ですかね?」

「え?」


 瑠璃は目を細めながら紅葉を見つめつつ、さも当たり前だという様に返答する。


 しかしそれもまた紅葉にとっては衝撃の事実であった。


(犬……?)


 その事実を確認する為か、紅葉の手は自然と瑠璃の視線の先、自身の側頭部へと伸びる。


 もふっ


 そこには確かに紅葉本人の髪の毛と同化する形で垂れ下がった犬のドロップイヤーのようなものがあった。


 その事実を確認すると同時に、紅葉の視線はおそるおそる近くの店のショーウィンドウへと向けられる。


 そこに映る自身の姿を確認した瞬間、紅葉は目を見開いた。


 そこに映っていたのは火の様な赤いセミショートにそこから髪と同化する形で垂れた犬耳、そして瑠璃とは違う種類の緑色のセーラーブレザーを着た少女の姿。


 その可愛らしい姿は正に……。


「すっごい美少女……!!」

「自分で言いますか」


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