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前奏


「自己紹介、しない?」


「あーそういえばなんだかんだでお互いの名前知らないね。」


今更ながらに、僕たちはお互いの名前を聞く機会がなかった。


でも、息をつく暇が僕たちには無かったから、こればっかりはしょうがないと思う。


セレナから順に自分の名前をみんなと共有していった。


「私はもう知ってるかもしれないけど、セレナよ。よろしくね。私の能力は、糸よ。糸を生み出してそれを扱える。」


「私はホノカです。よろしくお願いします。」


「僕はアイト。よろしく」


そして僕の番。


「僕はダイヤです。よろしく。」


少し緊張しつつも、無難にこなせた。


4人で握手を交わすと、早速この状況を乗り切る方法について話始める。


僕たちには、余裕がない。


時一刻と、着実に死の時間が近づいてくる。


時間は無駄にはできない。


「何か案は?」


アイトの問いに僕たちは黙り込んでしまう。


「正直、厳しいですよね。」


「ええ。今の私たちには絶望的よ。」


僕たち4人の内、能力持ちは現在セレナさんだけ。


どうにかセレナさんの能力を最大限生かし切ることは出来ないか?


思考するも、やはりいい案は思いつかない。


ふぅ。


やっぱりこれしかないか。


この方法を取ることに僕自身抵抗はない。


だけど、多分この人たちは、僕のこのやり方を阻止しようとする。してくれる。


だから。


「僕に、任せてくれないかな?」






「どうかな?」


僕の「偽」の作戦を聞いた彼らの反応は、


「どういうこと?」


この反応一つであった。


その反応は当然であった。


なぜなら、


「ダイヤに能力あったの?」


そう。


僕は彼らに自分には能力が本当はあるのだとそう告げたのだ。


だが、それは紛れもなく嘘だ。


僕の本当の作戦は、この嘘が必要不可欠だった。


「うん。実はね。」


その嘘をついた能力の性能というのは、


自分の周りを爆発させるものと伝えた。


周りを具体的に5メートルとも伝えたため、必然的に彼らは僕の周りから離れざるを得なくなる。


先に言った通り、僕はここにいる彼らを死なせない。


死なせたくない。


ここで死んでいいのは、僕だけだ。


「もう、時間がない。僕を信じて欲しい。絶対にあなたたちを死なせない。」






そして、光の壁が破壊され、ローブの敵が迫ってきた。


もちろん、ただ迫られるのはごめんだ。


できるだけ敵を減らす。


迫ってきた敵の胴体が、切り裂かれる。


「や、やった。」


敵の胴体を切り裂いたのは、あらかじめ僕たちの周りに張り巡らしておいた糸だ。


これを仕掛けたのは言うまでもなくセレナ。


彼女から、小さな歓喜の声が漏れる。


だが、これで終わりじゃない。


これで、倒したのはせいぜい5体ほど。


敵の数は残り20程。


ここからが本番だ。


「みんな散るよ!作戦通りに、セレナさんお願いします。アイト君とホノカさんも無理はしないでください。」


「任せて。」


「了解。」


「ダイヤくんも気をつけてくださいね。」


それぞれが四方に散る。


それぞれに追手が4、5人ついている。


僕の元を追ってきている敵は、8。


他よりも多いが、僕にとって好都合だ。


セレナは、順調にかつ確実に敵を倒していく。


自身の通った道に糸を細工しまず、敵の足を切断し、次に頭部を胴体と分裂させる。


余裕があれば、僕やアイト、ホノカのサポートを行なってくれてもいる。


アイトとホノカは、敵を倒すことは出来ないため、敵を引き付けたまま逃げている。


だが、ただ逃げてるだけでなく目的がある。


その目的というのが、僕の元に連れてくることだ。


僕も2人と同じく、戦うことは出来ないため出口から離れた場所に向けて走る。


ここら辺でやろう。


「アイト、ホノカ!僕のところに!セレナは2人のアシストを!」


僕の声が届き、こちらに向かってくる2人。


セレナは自分についてくる残り1体の敵を相手取る。


「よろしくお願いします!」


始めに来たのは、ホノカだ。僕の走る左側から僕と合流する。


「うん。セレナの元へ。」


自身の引き連れた敵を僕に被せる。


すぐに、アイトとも合流する。


走りながら、アイトが僕に話しかける。


「任せたよ。ダイヤ。」


「うん。任されたよ。」


「……」


「アイト?」


「いや、じゃあ特大の頼むよ。」


そう言ってセレナとホノカの元へと向かった。


僕はその場に立ち止まり、状況を見る。


うん。セレナとホノカは大丈夫。


アイトも2人と合流できるだろう。


こうしているうちにも周りを敵10体ちょっとに囲まれる。


敵が近寄ってくる。


彼らが僕の異変に気づいても近寄らないように、敵が僕にできるだけ近寄るのを待ってから爆発を使うと言っておいた。


だから、このまま囮になれたのにそれは叶わなかった。


彼らが、3人がこっちに戻ってきてしまったからだ。


セレナが能力で糸を生み出し、外側にいた敵の頭部を切り落とした。


それにより、敵の興味は彼らに向いてしまった。


僕を囲っているのは、すでに数にして3。


「どうして!どうして戻ってきたんですか?!」


僕の叫びにアイトが答える。


「気づかないと思ったの?君の発言したことが嘘だってこと。」


「え?」


「その、一人で死のうなんて考えないでくださいね。」


アイトに続いてホノカが微笑みながらそんなことを言う。


「私たちは、これからもずっと一緒に戦おう!元いた場所に帰ろうよ。その、仲間でしょ。私たちは。」


セレナまでもが優しい笑顔で、僕に語りかける。


どうして!


これじゃ台無しだ。


全滅だ。


誰も生き残れない。


無理だ。


そんなことを考えている間にも敵が迫る。


セレナたちに今にも襲い掛かれる距離だ。


敵が迫る。


僕は、瞳を閉じる。


どうか、今この時だけでもいい。


僕にこの人たちを助けられるだけの力を。


そしていよいよ敵がセレナたちに襲い掛かった。


僕の目の前にも鉄剣が迫る。


瞳を開く。


その瞬間、世界が白く染まった。


その瞬間、この場が、静まりかえった。


どさ、どさ、どさと3つの音が場を支配した。


敵の視線だけでなくセレナたちの視線があるものに向けられる。


3つの黒のローブが地面に広がっていた。


そのあるもの、僕がそれらの視線を見つめ返す。


「お前たちの相手は僕だ。その人たちには手を出すな。」


静かに淡々と僕は告げた。


























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