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失言


今この状況を表すならまさしく地獄以外に言いようがなかった。


少女が言っていた黒い何かの正体はわからないがそれは人のように見えた。


腕があり足があり二足歩行。


それは当然としてその手には鋼鉄剣を携えていた。


見た目も異様であった。


黒のローブを全身に羽織り顔の表情すらフードに隠れ、見ることは叶わない。


初めはデインたち数人の男子で相手一人と戦えていたのだが、後から来た10数体の黒ローブにより途端に形成が逆転した。


黒ローブは人の集まっている方へと向かうらしくデインたち数人の相手はすることなく捌き切れなかった数体の黒ローブが、後方の僕たちかつ女子たちのもとへと迫ってきた。


その事実は数時間前に初めての顔合わせをした僕たちの陣形を破壊するには容易にすぎた。


まず、戦おうとして立ち向かった少女が殺された。


その少女は、腕を落とされたことで叫ぶことしかできなくなりあっという間に頭と体が分裂された。


次にその無残に殺された少女を目の当たりにした少女たちが背を向けて我先にとこの場から逃げ出そうとする。


だが、背を向けているために自分らよりも相手の動きが速いことに気づくことなく、すぱっ、すぱっとあまりにも簡単に命が散っていく。


僕は、僕たちは、地面よりも3メートルほど高くなった場所からその蹂躙をただ見つめていた。


この高さは能力によって作られたものだ。


だがその高さが徐々に元の地面へと戻ろうとする。


その理由は察しがつく。


この能力を使った少女が殺されたからだ。


黒ローブの敵によって。


デインたちの方を見ると彼らが相手取っていた2体の黒ローブの敵を倒し、こちらへとかけてきているところだった。


「みんな後ろに下がれ!このままじゃ全滅することになる」


デインの声に応え能力なしと言われている僕たちの方へと男女問わずに後退してきた。


それと同時に


「ショウ!頼む!」


「うん!」


ショウと呼ばれた少年の手のひらが白く光りはじめた。


「みんな目を瞑れ!」


デインの指示で咄嗟に目を瞑る。


その瞬間に爆発したような光が辺りを満たした。


デインたちが僕たちの元へと到着したと同時に

そしてみんなが集まっていることを確認して。


「よし、ダン!頼む」


「おうよ!」


ダンと呼ばれた少年が僕たちを囲むようにして光の壁を形成した。


後から来た黒ローブの敵は剣で攻撃しているもののどうも壊れる気配はない。


助かったと安堵していたところだった。


「おい、デインマジでどうすんだよ!この状況シャレにならねーぞ!」


「今考える!」


デインに訴えているのはバークだ。


「なぁ、考えている場合か?これがいつまでも持つわけじゃねえんだよ。」


「わかってるさ!」


デインが声を荒げる。


「この状況を乗り越えられるように君も考えてくれ。これ以上死人を出さないために。」


僕もこの状況を変えられる方法を考えるが思いつかない。誰も死なずになんて条件付きじゃきっとこの状況を乗り越えることは不可能だ。


あるとしたら…


「僕が、ここで囮になるよ。」


そんな声を上げたのはもちろん僕だ。


「君、正気か?」


「はは。最高じゃねえか。お前なんていったけか?」


「ダイヤです。」


「そうか、ダイヤか。俺の記憶に留めておいてやるぜ。俺たちの命を救ってくれた英雄としてな。」


デインが僕のことを心配に思ってくれていることは伝わってくるが、バークはそんなこと欠片とも

思っていないだろう。


心配するどころか、はやく死んでくれとでも聞こえてきそうなそんな言葉だった。


「でも、一人で囮なんか務まんの?」


次に主張してきたのは金髪の女リサであった。


彼女の見た目が目を引くものであったため、気にせずとも彼女のことを見ていたのだが、彼女の周りの子たち、言ってみればすでに奴隷のように彼女に従う子たちが彼女のために戦い、時には盾になってリサ自身が何かすることはなかった。


そんな彼女にバークが噛みつく。


「あ?何言ってんだ?」


「そのままその言葉あんたに返すよ。囮の能力を使ったところでこいつ一人じゃ務まるわけなくね?」


「ちょっと待って!」


横から静観していたがこの発言はなんとしても取り消してもらわないと。


「ん?なに?」


リサだけでなくバークからの視線も浴びながら、僕は言う。


「いや、僕だけで十分だよ。」


「そう言い切れる理由は?」


「それは…」


僕の返答を待たずにリサが続ける。


「ないでしょ?ならさ、確実に助かるなんて方法はないし、思いつかないけど、少しでも私たちが助かるようにさ、残るって言ったあんたは貢献すべきなんじゃないの?」


僕はそれに反論する。


「それはそうだけど、僕以外の人がここで死んでいい理由なんてない。それに、リサさんの言うことはまるでここで死んでいい人がいるって言っているように聞こえるよ。」


能力のない僕にできるのは、多分みんなのための自己犠牲だ。


そのために、このみんなと共にここにやってきた、連れてこられたんだ。


きっとそうだ。


だから、僕に巻き込んでここに人を残らせるわけにはいかない。


「じゃあさ、お前以外のやつらは残る価値があるってそう言いたいんだね?」


「そうだよ。僕以外の人たちは、僕と違って戦うことができる。だから…」


ここで僕はやってしまったと後悔の念に駆られた。まずい。


そしてリサは、それを見逃さなかった。


「どうしたの?急に俯いちゃって。」


「…」


「ふふ。あのね、忘れちゃった?あんたみたいな役立たずはまだいるってことをね。」


僕は取り返しのつかないことをしてしまった。























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