9 輝く太陽
【登場人物】
プロチーム
中岡将志(49)監督
福東悟(40)MFコーチ
田之中真(41)DFコーチ
大仏友朋(46)GKコーチ
播東英二(37)
増田隆之(37)
アマチュア選手
明智秀一郎(24)
前田慶(22)
伊賀半蔵(22)
島左近(19)
草薙太陽(16)
審判
マリオ(68)フィジカルコーチ
太陽は、サイドに張る左近へ鋭いアーリークロスを上げた。すぐさま、ペナルティーエリアのスペースへ駆け出す。
プロチームも太陽の思わぬ動きにマークが追いつかない。
パスを受けた左近は、詰め寄る増田のプレッシャーにドリブルで抜きにかかるかと思いきや、ダイレクトで太陽に返す。
しかし、わずかにボールの軌道が太陽の身長より高い。
太陽は、頭を通り過ぎようとするボールを、オーバーヘッドで合わせた。
ゴール!
グランドにいる誰もが、太陽のプレーに、わずか、3タッチの光のようなダイレクトプレーに震えた。
相手チームでプレーする中岡たちでさえ、太陽の輝きに興奮したのだ。
ゴールを決めた太陽に中岡が、太陽の首を抱き寄せ締める。
「おい、さっきゴンって呼び捨てにしたな。でも、さっきのオーバーヘッドは、少し違うな、まるで、宙を駆け上がるように両足で飛んでいた。なんだあのシュート?」
「いつもクラブでやってた普通のシュートやで」
「あれが、普通ってお前どこでサッカーやってた!」
「タイランドだよ」
「タイ?タイっうことは、お前、セパタクローやってたのか!」
「そうや。俺、これでもいちおうプロ(にかっ)」
セパタクローとは、バレーと似たコートでサッカーのように足だけを使ってするスポーツで、プレーは、空中技を基本とする。タイでは、サッカーを凌ぐ国技である。
「それが、どうして日本でサッカーするんだよ?」
「親父が死んだから、母さんを食わせるため日本へ帰って来たんだ。(日本は物価が高いからトホホ・・・)」
「親父がタイ人か?」
「うん。セパタクローの代表だった」
中岡は何やら考えて、
「それより、お前、高校は?」
「日本語難しいよ~」
「お前、中卒?」
「(うん)ここしか、雇ってくれそうなとこないねんゴンちゃん。雇って~(しがみつく)」
「お前、うちに普通の就職のつもりできたのかよ?」
「絶対、俺はサッカーで飯を食う!」
「サッカーで飯を食うか」
「そうや、セパタクローじゃ食えないけど、サッカーで世界No.1プレーヤーになんねん!」
「お前のプレーには夢があるな。よし、お前に貸したスパイクは報酬にやる。大事にしろよ」
中岡は、笑って太陽の頭をぐしゃぐしゃになでた。
「(うわ~、ゴンちゃんありがとうと、抱きつく)」
「お前また、ゴンって言ったよな」
中岡が、笑って太陽の首をしめたところで、ミニゲームはタイムアップした。
その光景を、同じプロを志す明智は、感情を押し殺したような表情で見ていた。
前田が、明智の気持ちを感じ取って
「明智さん、あいつ・・・」
「攻撃だけが、サッカーじゃない。気にするな」
(つづく)




