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19 微笑みの貴公子

【あらすじ】世界No.1を目指すJ3のFCビシャモンテ尼崎の新チーム作りを任された中岡が、地元アマチュア選手を集め強化に奮闘。そんなある日、スターな外国人選手が入団する。


【登場人物】

監督 中岡将志(49)


FCビシャモンテ尼崎GM 鈴木(58)

MFコーチ 福東(36)

【19 微笑みの貴公子】


「あなた、チュサンなのね」


中岡は、午後の練習の合間に、クラブハウスのロビーで韓流ドラマを見ていた。


初恋を描いた人気の韓流ドラマだ。


「はははー、こんなバカな話あるわけないよな福東。死んだ初恋の相手が実は生きてた」


「でも、案外、現実は小説、ドラマより奇なりと言いますから、あるかも知れませんよ」


と中岡は隣にいた福東悟MFコーチと好きな韓流ドラマを見ている。


「それより、中岡さん。スーツ姿でこのあと記者会見ですか?」


「鈴木GMの話だと、今日、一人合流するらしいが、どんなやつか詳しい事は今夜のFCビシャモンテ尼崎TVのサプライズ入団記者会見でやるそうだ」


「ケーブルテレビでも、毎日、練習風景や中岡さんの解説漫談じゃ飽きられますからね」


「そらそうだ。っておい!まあ、ジュビロ時代と比べて毎日ケーブルテレビでも入るのは有難い。中岡将志をおいてテレビの視聴率を取れる美男子は他にいないからな行かねばならぬ」


「ビートたけしの鬼瓦権蔵がよく言いますよ。せめて、ドラマのこの主役ぐらい男前が言わないと」


「どこが、いいんだろうな。俺のかみさんも韓流を吹き替えやってから、どうも、韓流にどっぷりはまっている。(画面を指差して)こんなやつ、眼鏡で歯を剥いて笑ってるだけ!この中岡の方がよっぽど男らしい」


「そうだ!中岡さん。そろそろ記者会見の阪神尼崎駅のアルカイックホテルへいかないと間に合いませんよ」


「そうだな」


中岡は、慌ててカバンを担いで入口まで行くと立ち止まって福東を振り返って微笑んだ。


「中岡さんがやると気色悪いです」




クラブハウスから15分ほど車を走らせてやって来たアルカイックホテルは、阪神尼崎駅のすぐ側を流れる川伝いに歩けばすぐの所に、1800人規模のコンサートホールに隣接したウェディング、ディナー、機能を完備した宿泊ホテルだ。


阪神尼崎駅からは、大阪梅田、近鉄難波。キタとミナミの繁華街へのアクセスと、リムジンバスによる関空への直行バスが出て大変便利で、大阪の人混みを避けて宿泊だけはこの街でする者も多い。


記者会見会場は、シャンデリアも豪華な大会議室が用意された。


駐車場から裏口を抜け控室へ向かう中岡がチラッとロビーを見ると、いつものケーブルテレビ以外に、民放各社、新聞、雑誌記者でごった返している。


「おお、中岡こっちだ」


戸惑う中岡をGMの鈴木が呼び止めた。


「鈴木さん。このマスコミの注目度異常じゃありませんか、噂のビックネームの選手が早々に来たんですか?」


「ビックネームと言うなら、その通りかも知れないだが、それは、サッカー選手と言うよりも(と言い淀んで)すぐにわかるさ」


と鈴木はポンポンと中岡の肩を叩いた。




記者会見の席にGM鈴木と座った中岡は、入団する選手が誰とも知らされずその選手を待った。


司会が、現れ、


「それでは、ご紹介しましょう。FCビシャモンテ尼崎新入団選手、韓流ドラマでもお馴染みの韓国代表MF"微笑みの貴公子"ぺ・ヨンサン選手です!」


扉が開きぺ・ヨンサンが現れるとカメラのフラッシュが一斉にたかれた。


「鈴木さん。あいつ、夕方のドラマの・・・チュサン!」


「そうだ。彼は、サッカーのオフシーズンはその貴公子然とした姿を生かして韓流スターとしても活躍するスーパースターだ」


「よくそんなスターをウチで獲得できましたね」


「実はな、彼の入団にはある秘密の条件があるんだよ」


新たな問題の予感を浮かべた中岡の表情の向こうで、眼鏡からこぼれる優しい目をしたヨンサンは、輝く白い歯を見せ微笑みマスコミ注目のフラッシュすべてに手をふって応えている。


(つづく)


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