16 PK戦カンポスの咆哮
世界No.1を目指すJ3のFCアジアの新チーム作りを任された中山が、地元アマチュア選手を集め強化に奮闘。そんなある日、オーナーに推薦されたGKは暴走族のヘッドだった。中山は、彼をチームで更生させるべく族の集会に乗り込み、PK対決を挑む。
【登場人物】
監督 中岡将志(49)
暴走族ヘッド カンポス園田(18)
【16 PK戦カンポスの咆哮!】
暴走族のチームの二本の旗を、メンバーに持たせ火急のゴールポストにし、中岡を睨みつけ構えるカンポス。
中岡とカンポスの距離は、11m。
プロのサッカー選手のキックは、ゴールまで0.5秒、瞬きすれば枠を捉える。
一般に、人間の反応速度は0.6秒と言われる。
キーパーは、ボールの軌道を見て反応したのでは、ボールの速度に追いつかない。
ここに、キーパーのセンス読みがいる。
以前の日本代表、川口能活や、現代表の川島永嗣などは、練習と経験で、キッカーの軸足のモーションを瞬時に見抜き判断する。
また、読みが当たってコースに飛んでも、手が届かなければ、ゴールを割る。
PKとは、圧倒的にキーパーに不利なのだ。
しかし、中岡は素人キーパーカンポスに才能を見た。
カンポスの天賦の才と言おうか、その全身から放たれる気迫。オーラに中岡を気圧させた。
(こいつデカイ!)
160cmに満たないカンポスが、いくら両手を広げたところで、体格の3倍もあるゴールマウス、客観視すればカンポスがデカイわけがない。
中岡は、素人に気圧されプライドが刺激された。
(ならば、試してみるか)
「おいカンポス!俺は真正面に蹴る止めれるものなら止めてみろ‼」
中岡は、自信がある。引退間もない中山のシュートは、まだまだ弾丸そのものだ。
例え、わかっていても止めれない。暴走族のヘッドでも、プロの本気のシュートには、仰け反らずにはいられない。
中岡は、渾身の右足をカンポス目掛けて振り抜いた。
「中岡、サッカーの本気はこんなもんか?」
カンポスは、眉一つ動かさずボールを真正面でうけ止めた。
「カンポスよく逃げなかったな」
「中岡、こんなデカイボールなんか野球のボールと比べたら止まってみえるわ!」
PK戦は、5本づつ交互に攻守入れ替えながら行われる。
次は、カンポスのキックだ。
中岡はサッカー選手だが、GKは素人だ。けれど、素人にはゴールの枠にコントロールするのも案外難しい。
中岡はカンポスを舐めていた。
カンポスの振り抜いたシュートは、中岡がしたように、真正面に飛んで来た。
中岡はカンポスのシュートに仰け反った。
かろうじてボールを身体に当てて弾き飛ばしはしたが、中岡の姿は仰向けに倒れ無様だ。
「ぶはははは、カンポスいいぞ!お前はキックの才能もあるぞー!」
中岡はカンポスの未完の才能が堪らなくうれしい。
「いいかカンポス!俺はお前を必ず連れてゆく!」
まともにすれば技術の差がある中岡とカンポス。
勝負は、姑息にもコーナーを攻めた中岡の勝利に終わるのだが、カンポスの読みとセービングはハマって、後の4本中3本みごとに止めた。
カンポスのキックは、まともにサッカー経験のなさから全て虚しく枠をはずれた。
「ちくしょう!」
中岡は、悔しがるカンポスに近づいて背中にポンと手をおいた。
「なあ、カンポス。仲間は大事だが、こいつらの希望になる気はないか?お前ならなれると思うんだ」
「中岡・・・」
「悔しいかカンポス。お前のことだから、こいつら全員の将来も考えて踏ん切りもつかないだろう。俺に任せとけこいつら含めて俺が世話する」
「うおーー‼」
カンポスの咆哮が夜に響いた。
そこへ、一台のバイクを先に"Lucifer"(ルシファー)の旗を掲げた一団が入ってきた。
(つづく)




