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14悪童カンポス

【あらすじ】

世界No.1を目指すJ3のFCアジアの新チーム作りを任された中岡将志が、地元アマチュア選手を集め強化に奮闘。そんなある日、オーナーに呼び出され問題のあるGKを推薦されたのだが……。


【登場人物】

監督 中岡将志(46)

GM鈴木政之助(58)


【14悪童カンポス】


中岡が訪ねた学校は衝撃だった。


校門を潜ってすぐの校舎の窓が一枚もない。


すべて生徒たちに叩き割られた後なのだ。


ここは、市内の北部の地域より北へ、尼崎では珍しい電車の通らないエリアにあるオーナー滝本の母校の工業高校だ。


こんな荒れた学校の卒業生の中から、滝本のような世界的企業のトップエリートが生まれたのも驚きだが、ゆとり教育の平成の世の中で、今だ、校内暴力が行われていたことに中岡は驚いた。


(こんな、不良の吹き溜まりみたいなところに、オーナーが見つけた男がホントにいるのだろうか)


中岡は、校門を潜り職員室のサッカー部の顧問を尋ねたが、意外な返事が返って来た。


「うちには、野球部はありますがサッカー部はありませんよ」


「いや、確かにここにGKがいると聞いて来たんですが?」


「いったい誰の事でしょうね。うちは、見てのとおりゴミ溜めみたいな、クズの吹き溜まりですから……」


肩透かしを食った中岡は、その晩、GMの鈴木と食事をした。


「鈴木さん、あの不良学校にサッカー部はありませんよ」


難しい顔をしていた鈴木が、重い口をひらいた。


「実はな、オーナーが目をかけた男は、優秀な野球部の選手だったそうだが、暴力事件を起こして今は学校に行っていないんだ」


「なんでまた、そんな不良をオーナーは?」


「娘さんがな、夜の街で4人のチンピラに襲われそうになったところを、そいつが救った」


「それが元で停学ですか?」


「いや、そうではない。彼は、学校外で暴走族のヘッドをつとめ、ライバルの暴走族との抗争が原因があるらしい」


「プロサッカーには難しい男ですね」


「そうなんだ。だが、オーナーも娘を救われた義理と、昔の自分を重ねる思いがあるそうで、なんとしても君のチームで彼を更生させたいそうだ」


「そうですか、それなら、一度会って人物を見定めないとならないな。で、どこへ行けば彼に会えるんです?」


「名を、カンポス園田と言う。阪神尼崎駅の真夜中のバスロータリーで、夜な夜な暴走族の集会がある。そこに彼はいる」


「カンポスって彼は外国人ですか?」



「父親は、南米系の男らしいが母親もわからん彼は捨子だ。彼は児童福祉施設で育った日本人だ」


そのあと中岡は、わかったともわからないとも返事をせず鈴木と別れた。


中岡は、車を走らせながら自分の人生を振り返った。


俺は幸運にも高校、大学、プロと、サッカー一筋脇目もふらず真っ直ぐエリート街道を突き進んだ。


グレて非行に走る男の気持ちをわかって、果たして、サッカーで更生させることができるのだろうか。


しかし、中岡は、4人のチンピラに一人で立ち向かうカンポスの勇気に、最後の砦として一人でゴールマウスを身を張って守り切る適性をみる。


その上、暴走族とは言えヘッドをつとめるカンポスは、DFをコーチングしシュートコースを遮るGKとして欠かせないリーダーシップのスキルをもつ。


元・日本代表GK川口能活に通じるものがある。


とにかく中岡は、一度、悪童カンポスに会って人物を見定めようと、真夜中の阪神尼崎駅へ車を走らせた。


(つづく)









この物語はフィックションです。現在の尼崎に荒れた高校はありません。

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