帰郷
依頼があってから結構な日数が経ったけれど、結局僕自身転移の魔法が使えないままなので、方法がわからずじまいで打つ手無しな状況が続いていた。依頼自体は断っているので、別に問題は無いのだろうが一度気になると何とかならないものかと気になって仕方がない。
前の僕は完璧主義者とかだったのかな? 何でも解決しなければ気が済まないとか・・・・・・
レイシアと休憩しながらそんな話をしていると、こう言われた。
「どっちかと言うと、バグはやろうと思った事は全部出来ていたよ。直ぐは無理でも大体の事は、時間があればやれてたかも」
何それ。完璧主義って言うより絶対主義? 前の僕は神にでもなったつもりだったのかなっていうか、最後神になっていたのか? 魔神だったしな~
とにかく、今引っかかっているのは僕なら出来るだろうって想いがあるからなのだろうか?
過去の僕を知り、何かしらの解決策でもないかといろいろな魔道具をいじっていると、過去の自分が作った転移魔道具を見付け出した。
あれ? 普通にこれを使えば行けるんじゃないのかな? そう考えて使ってみるけれど何かに阻まれるようにして転移は失敗に終わる。おー、ホーラックスが言っていたのはこれか~
て言うか、昔の自分でも駄目じゃん・・・・・・
やっぱり出来ない事は出来ないんだなって思ったよ。ちょっと昔の自分が身近に感じられてホッとする。完璧過ぎると近寄りがたいもんだし、期待と言うかなんというかそういうものが重いんだよね~
わからないなりに魔道具という物を調べて行った結果、僕の魔道具ともう一人の魔道具の違いみたいなものが見えて来た。僕の方は元々ある力を物品に込めて行く普通の魔道具という感じかな? それに対してもう一人の方の魔道具は足りない力を補う方向で開発されている。その良い例がこの魔石という属性毎に別れて力が込められている石だ。
力を一つだけに絞る事で、なるべく大きな力を引き出そうという工夫がされている。おそらく他の力を混ぜてしまうとその分不純物が混ざるかのように威力が減ってしまうのだろう。
そしてこの魔石一つ一つを魔法的に繋げて行って特定の効果を生み出すように、魔法を誘導している。ただ石を並べただけではおそらく何の効果も引き出せないばかりか、周りの石と干渉しあって力が暴走する恐れもあるんだろうな。
単体の石のみならまだこんな面倒な仕掛けはいらないと思えた。
さてここで僕と彼の魔道具の性質を組み合わせる事が出来れば、何とかなるのではないのかという考えが浮かんで来る。僕だけの力では転移が届かないのなら、彼の魔石の力でそれを補強するという発想だ。それは彼の魔道具の方向性として当たり前のことで、僕の魔道具とも相性は悪くないと思えた。
問題は今の僕に魔道具の知識が無いということだけでなく、彼のやっていたそれぞれの魔石を正常に稼働させる為の機能を解析出来る知識も足りないことだった。
記憶の一部を失った影響なのかどうか・・・・・・とにかくこのままではらちが明かないので、ホーラックスとパペット達にお願いして解析してもらうことにした。一応レイシアに現状を伝えてひょっとしたら遺留品の回収か、生きているのなら迎えにいける可能性があることを伝えてみる。
いつになるかわからないけれど依頼人にその事を報告してもいいかもしれないな。そう言いつつ僕は研究成果が出るのを待つことにした。
結局二つの魔道具を繋げた物が出来上がったのは、依頼の話を聞いた一か月以上も経った後だった。
しかしこれだけではまだ飛ぶことはできない。
この魔道具を稼働させる為の魔石を往復分用意しなければいけなかった。
『レイシア、以前相談されて断った依頼なんだけれど、何とかなりそうな目処が立ったよ』
「え、そうなの?」
『まだ必要な物があるけれど、どうする?』
「必要な物って何?」
『飛ばされた友人と言っていた人間が作った魔石が必要になる。往復分の魔石が手に入れば迎えに行けると思う』
「あれから結構時間も経っているし、心配しているだろうから一応聞くだけ聞いてみようか?」
『僕はどちらでもいいよ。判断は任せる』
「うん。じゃあ一度は断ったけれどもう一度依頼を受けようか」
『ああ』
僕らは家の位置を知っていたので、とりあえず依頼人の家へと転移して会うことにした。だけどその日は冒険に出かけていてどうも家にいなかったのでまた日を改めて来ることにして、とりあえず目処が立ったという事と魔石が必要だと伝言を頼んで帰って来た。
数日後にもう一度家に向かうと今度はいたみたいで、魔石もちゃんと用意していてくれた。魔道具のテストとかをしていないのでちょっとだけ不安はあるものの、ホーラックスやパペット達を信じて発動させてみよう。
僕とレイシアは特に前触れになるような壁などを感じることも無く、どこかの夜空へと放り出されていた。慌てて空を飛んで、レイシアを落下から救おうとするものの、レイシアは持っていた空を飛ぶ為の魔道具を発動して自力でで空中に留まる。
ああ、そうかそんな魔道具も渡していたんだ。背中から純白の翼を生やしたレイシアの姿を見て、そんな事を想い出した。
しばらく綺麗だなってレイシアを見詰めた後、ここはどこだろうと周りを窺うけれど、どうしてだろうか・・・・・・何だかこの薄汚れた空気を僕はよく知っているような気がした。
ゴホゴホッ
濁った空気にレイシアが咳をしていたので、背中をさすりながらも見下ろす光景に釘付けになった。地上に人工的に作られた星空が広がっていた。
僕はこれを知っている。いやこれは知っているなんて生易しいものではなく、僕はここで暮らしていたことがあるはずだ。そうだ、僕はスライムなんて生物じゃなく人間として生を受けた存在だった。
やっと全てを想い出せた。
何で忘れていたのか、ここは僕の故郷の日本という場所じゃないか・・・・・・
どこか靄がかかっていたかのように曖昧な頭が、すっきりしたような気がした。まずはレイシアの体調を癒すことにする。
(エアー)
魔法で作り出した新鮮な空気。自然の宝庫で暮らして来たレイシアにはこの日本の汚れた空気は毒のようなものだ。作り出された穢れの無い空気によってレイシアの咳は止まる。
これでレイシアは大丈夫だな。
さて依頼人の友人とやらはどこにいるのやら?
とりあえず久しぶりに帰って来られた日本なので、レイシアと一緒にあちこち見て回ってみるくらいはしてもいいかもしれないよね・・・・・・
『レイシア、ここは僕の故郷だった場所だ。少し見て回ろう』
「ここがバグのいた世界?」
『ああ、多分東京だろう』
レイシアを引っ張って、とりあえず生前僕が住んでいたアパートへと向う事にした。おそらくはもう自分の部屋には誰かが住んでいるのだろうが、確認はしておきたいと考えた。その予想通り、既にその部屋にはどこの誰とも知れない人が住んでいるのがわかる。
むー、調査のスキルが無くなったおかげで、周辺を探る事も出来ないし、実家に行こうにも転移の魔法が使えない。仕方ない、魔石を消費しないように注意して水晶を使っての転移を行った。
『さっきの場所は僕が死ぬ直前まで暮らしていた部屋があるところで、ここが僕の生まれ育った家だ』
「ここがバグの生まれた家」
レイシアにそう説明すると、おそらくこの時間はおじさんもおばさんも二人とも仕事で家にはいなかったはずなので、鍵の隠し場所を探りまだあった鍵を使って家の中へと入って行く。そして自分の部屋へと向かうと、そこは僕が家を出た時そのままの状態で残されていたのを見て、思わず泣きたい気分にさせられた。
『実家にいた時、僕はここで生活していたのだ』
「ここがバグの部屋?」
『ああ』
時計を見ると、夜の九時を指していてそろそろおばさんが帰って来そうだと考えると、少しでも部屋を見られたので満足するべきだなって判断する。おじさんは後一時間位しないと帰って来ないだろう。
『もう直ぐおばさんが帰って来るからそろそろ出るか』
「バグのご家族はこんな遅くまで働いているの?」
『日本では、殆どの人がそんな感じだぞ。まあ片方だけってパターンもあるけれどな』
そう言いつつ見付からないうちに家から抜け出した。後隠しておいたお年玉を持ち出して来たので、少しくらいは町を散策することが出来るだろう。せっかく来たのに、ただ見ているだけっていうのもつまらないだろうしね。
服装は、まあ僕はドラゴンに似せたリュックとでも思ってもらえばいいし、レイシアはコスプレ外人とでも思ってもらえば問題ないだろう。どうせ日本人は勝手にそう判断するだろうしな。そう考えてレイシアの背中にへばり付く。
転移でもう一度東京の街中に来ると、早速レイシアを誘導して街中を案内して行った。
せっかくだから、まずは少ないお金を生かして食べ放題のお店へと案内する。僕の作っていた料理は、日本では普通の一般的料理だっていうことをこれで知ってもらえると思う。と言うか、僕が作る料理はお腹が満たせたらいいって感じの素人料理だからちゃんとしたまともな料理じゃないからな~。本場の味を味わって欲しいって感じかな? 決して高級フランス料理とかではないのだぞって言いたい。
さてお店に入るその前に、まず言葉が理解出来ないと駄目だろう。
(リードランゲージ)
翻訳の魔法をレイシアにかけたので、これで会話も出来て書いてあるメニューも読めるようになったはず。さてさて、早速夕食を食べるとするか~
とは言ったものの僕はおよそ二時間、レイシアの背中にへばりついてひたすら我慢の時間だった・・・・・・。リュックの振りをしていたのをすっかり忘れていたよ。
「バグ、美味しかった! 何か凄く美味しかった!」
まあ、レイシアが喜んでいるからいいかって思ったけれどね。
「それにしてもこんな夜中なのに、全然人波が途切れないんだね」
『この街は特にそうかな。眠らない街とも言われることがあるよ』
「ヘー」
そしてお次はゲームセンターへと案内して、どう遊ぶのかなど説明したりして、実際に少し遊んでもらった。はしゃいでいるレイシアを見られて、これはこれでよかったと思う。
ただ周りからコスプレ外人だって注目を集めていたので、ナンパされないかが心配だったけれど、さすがに言葉が通じるか心配してなのか迫られなかったことにホッとする。
さすがにこの姿で追っ払うのはどうかと思うしね。
時間にして零時を過ぎ、さすがにちょっと休んだ方がいいかと考え、ネット喫茶へと向う事にした。ホテルに入る程お金はないし、かといって野宿も出来ないのでここの個室で、臨時で朝まで休むことにする。
ついでにネット動画で、今の日本がわかるような動画を探し出して、少しレイシアに解説しながら見せていったりもした。まあ疲れていたのか、直ぐに眠ってしまったのでこっちはこっちでカタカタと操作して、いろいろと情報を調べたりしていたけれどね。さすがに懐かしいな~
懐かしいついでに昔やっていたネットゲームを起動してみるけれど、さすがにアカウントは消えてしまっていたのが残念だった。ああ、せっかく集めたレアアイテムが・・・・・・まあ死んでから何年も経っていれば、消されて当然だな・・・・・・
そんな感じでしばらく遊んだりしていたけれど、やっぱりモンスターだから人間のように眠くならない。おかげで朝が来るまでにいろいろな情報を調べることが出来た。まあその情報の中に依頼人の友人に関するものは無かったのだけれどね。
調べた情報の中には僕の情報もあって、どうやら信号を無視して突っ込んできた車に跳ねられたっていうのが死因だったようだ。
信号無視か・・・・・・僕の不注意とかではなかったのだな。今更どうでもいい事だけれど、死んだ理由が自分に原因が無いことだったのが、ちょっとだけまあ人生そんなものかなぁと思えた。結果的に今の自分には満足しているからそう考える事が出来るのかもしれないけれどね。
朝が来て軽い朝食を頼んで二人で食べると、早速外へと出る事にした。個室だったので誰にも見られる事無く一緒にご飯が食べられたので、レイシアは嬉しそうだったな。僕も再びこんな時間が来るとは思っていなかったから嬉しいよ。
そのまま探査魔法で友人とやらを調べようと思っていたけれど、持っている金額的にそろそろきつかったので、さっさと店を出て来た。
とりあえず目立たないように、コスプレしている人が多い場所へと移動して、周囲に溶け込むとじっくりと探査魔法を使って調べて行くことにする。
反応を探ったところこれは東京にはいないかもしれないな。そう考えていると、どうやら朝の生中継でもしていたのかテレビカメラがこちらを映した様だった。その瞬間、探査魔法で調べていた相手がテレビを通じてこちらを見たように感じた。
おかげで座標が特定出来た!
目の前に人が横切ってカメラから一瞬姿が隠れたのを確認して転移すると、座標の場所にはなにやら結界が張ってあったようで、思いっきりそこに突っ込んじゃったよ。
突き破ったのはまあいいけれど少しだけ座標がずれて頑丈そうな扉の前に出て来てしまう。中を覗き込んでみると、結構広い部屋の中にいろいろと物資が備え付けられているのが見えた。
ひょっとしてこれって地下シェルターとかいうやつなのかな? なんとなくこういうのはアメリカみたいな大国にしかない物だとばかり思っていたので見られたことにちょっと感動してしまった。
魔法をぶち込んでどこまで耐えられるものかなとか調べてみたかったりしたけれど、まあそんな敵対行為は取れないよね。
「ここに依頼人の友人がいるの?」
『結界があって少し座標がずれたみたいだけれど、こっちに向って来ているみたいだから待っていたら来るよ』
「わかった」
レイシアにも言った通り、しばらく待っているとこちらにやって来る一団があった。
『友人の名前は確かロップソンって名前だったかな?』
僕の言葉にレイシアが頷き、やって来た一団の中で日本人ぽくない男の人に語りかける。
「貴方がロップソンね。迎えに来たわ」
「迎え?」
迎えが来るとは考えていなかったのか、友人はちょっとビックリした表情を浮かべた。
「ええ、向こうでジャドという貴方のお友達が、随分と心配していましたよ」
ああわざわざ情報を教えなくても、ちゃんと覚えていたか。そういえば方向音痴とか直っていなくて初心者って気になっていたけれど、普通に頭は良かったし、最上級の冒険者なのは間違いなかったな。そんな事を考えていると、レイシアは帰ろうっていう感じで手を伸ばした。それなのに男は困惑したような表情を浮かべている。
これってひょっとして日本が気に入っちゃって帰りたくないよってパターンかな? まあこっちはモンスターみたいな危険はないし、結構豊かで料理も美味しいからな~
お金が稼げて生活して行けるのだったら、確かにここで暮らして行きたいって考えるのも頷ける。本人が帰りたくないって言った場合、依頼は失敗になるのだろうか?
「マッテクダサイ!」
僕がそんな事を考えていると隣にいた女性が異世界語で話しかけて来た。あー、ひょっとしてこのパターンは異世界で好きな人が出来たってやつだ・・・・・・それは帰るかどうか悩むところだろうな。
この女性の事を考えるのならば、あっちはモンスターが出て危険だし、結構生活が不自由になるから日本に残るのがいいと思う。なんといっても日本に比べれば料理は不味いし、一緒に連れて行くとなると苦労するだろう。これはロップソンという男が故郷をどうとらえているか次第って事だろうね・・・・・・
「何かしら?」
「ツレテ、イカナイデ」
「残念だけれど、彼には帰る場所がちゃんとある。彼が嫌だと言うのならともかく、貴方にそれを遮る権利は無いわ。決めるのは彼よ」
レイシアが彼女に対してそう受け答えする。珍しく強めの主張だな。ひょっとして二人にこっちに残って欲しいって事なのか、彼女の決意を試しているのか・・・・・・
「僕は・・・・・・帰るのはもう少し待ってくれないかな? みんなにも挨拶をしたいし、それに遣り残した事もある。仕事も引き継がないといけないし・・・・・・」
「貴方は既に、この世界に大きな影響を与えてしまっている。今直ぐどちらにするのか決めてくれるかしら? 帰るのか、残るのか・・・・・・」
畳み掛けるようにレイシアがそう言うと、彼は覚悟を決めたみたいだった。彼女を置いて一人で戻るという選択を・・・・・・
納得出来ないのか、彼女が一緒に行きたいという主張に、やっぱり危ないとか不便だと言って諦めるように説得するものの、彼女は不自由な世界に行く決意を固めたようだった。
そしてロップソンとやらがレイシアの手を取ると、逆の手で女性の手をしっかりと握ったのを確認して水晶の力を発動させた。
帰って来た場所は出発した位置と大きくずれているようだった。異世界に渡る影響で座標が曖昧になるのかな? そう考えていると、男がポツリと呟いた。
「帰って来た・・・・・・」
これが万感の想いを込めた言葉というものかな? 異世界に行っていたのだし、そりゃあ二度と帰れないとか思っても仕方がない事なのかもしれないな。
「ロップソンの家は、ジャドの隣だったわね? 送るわ」
レイシアがそう言ってみんなを移動させる。その後依頼完了を伝える為に、お隣の依頼者であるジャドの家へと向った。依頼主は家にいたようで、友人を確認すると確かに本人だと嬉しそうに呟いて、依頼報酬を渡して来たのでレイシアは受け取っていた。
『さてさて無事に依頼は完了なのだけれど、あの女性がこっちで暮らすのは大変だぞ』
「そうなの?」
『ああ、ここは日本と違って危険が一杯だし、料理も口に合わないからな』
「バグの同郷の人だし、手助けする?」
『そうだな。少しなら手助けしてもいいかもしれないな。その後付き合って行くかは彼女次第かもしれないが』
「わかった、ちょっと提案してみる」
そう言うと、女性と話をすることになった。
「貴方はサチさんだったかしら? 少しいいかな?」
「はい・・・・・・あの日本語が話せるのですか?」
「いえ、私は日本語とかは知らないわ。でも魔法で会話は出来るの」
「魔法って凄いですね! あ、それでどういった話でしょうか?」
「サチさんはこちらの世界について詳しい話は聞いているかしら?」
「いえ、少しだけ聞いたことがあるくらいです」
「そう、こちらは日本程甘い世界じゃないわ。もしここで暮らして行きたいのなら少しだけ手助けをしてもいいかと思っているのだけれど、どうする?」
「助けてもらえるのですか? でも何で?」
「う~ん。貴方を心配している人がいたからと言っておこうかしら」
「はあ・・・・・・それは誰かと聞いてもいいですか?」
「まだそれは言えないかな。私はあなたの事をよく知らないし」
「わかりました、じゃあいつか話せる時が来たら教えてください。それといつの日にか助けてもらった分の恩はちゃんと返しますね」
「ええ。じゃあどれくらいの付き合いになるかはわからないけれど、よろしくね」
「よろしくお願いします!」
話もまとまった事だし、念話でパペットに連絡して魔道具を送ってもらうことにした。確か魔道具は全て回収されていて、その中に転移のペンダントとかもあったはず。それの転移位置を拠点の客を招く為に造って結局使わなかったゲストルームがあったので、そっちに移動するように設定してもらい、それを彼女に渡しておくことにしよう。
非常事態の時の緊急脱出手段にもなるしね~
送られて来たそれをレイシアに差し出すと、彼女にペンダントを渡して拠点の話をしてくれる。いちいち言わなくてもそれがどういった魔道具なのか理解していたみたいで、ちゃんと緊急避難にも使えるって説明までしていた。長い付き合いになるからか、こういうちょっとしたところでよく察してくれるな~
その後、幸という日本人女性を危険にさらさないようにとロップソンに忠告して、僕らは拠点へと戻って来た。
さて、幸に関しての支援としてはまず調味料を分けようと思う。それと日本人ならではの味噌と醤油と日本酒を増産してもらい、お酢辺りも分けられるように作ってもらうかな。おそらくこれだけでもかなり過ごし易くなるだろうと考える。安全に関してはあのロップソンとかいう男も魔道具が作れるだろうし、何とかするだろう。
さすがに日本人を唸らせる料理に関することは、僕の方じゃなければ無理だろうからね。だから支援してやらないといけないと思ったのだ。同じ日本人としてそれくらいは支援してやろう。その代わり、友達がいない状態のレイシアと話し相手にでもなってくれれば嬉しいかな。
結構女子同士っていうのは大切なことが多いと思う。こればかりは僕にはどうしてやることも出来ないからな・・・・・・
早速料理に関してはパペットに指示を出しておく。
ちなみに、日本に戻る事でどうやら完全に記憶がはっきりしたようで、眷族やパペット達との繋がりが復活したようだった。新たな眷族などを創り出す能力は失ってしまったようだが、今のところは問題ないだろう。
その影響で一番最初のパペットも、魔道具を開発する力を失っているので、まずは生産のスキルを復活させる事を目指すことにした。
まずは生まれ変わってからやろうとしていた、水晶に魔法を込めてみよう。
資材置き場に置かれていた適当な水晶を使うと、ファイアアローを発射する魔道具を無事に作り出すことに成功する。多分これは魔力を使い切ったらただの水晶に戻るタイプの魔道具だな。ただし一発で使えなくなる程柔ではないらしい。
そうなると、魔道具と言うよりは魔晶石あるいは、炎結晶とでも言う別物かもしれないな。どっちかといえばロップソンとかいう男の魔石と似ているかもしれないな。違いはロップソンと言う男の魔石は結構寿命が早いのに対し、こっちの魔晶石は多少ながら自発的に周囲の魔力を吸収しているみたいで、連発しなければ半永久的に使えそうだという違いかな?
もう少し複雑な物を作ってみることにする。
魔力を流し込むことによって発動する炎の剣。ファイアソードの魔道具って感じか。実体を持たない剣なので剣同士の打ち合いなどは出来ないけれど、逆に剣で防げないって感じの武器にはなるだろう。
これは確実に魔道具で間違いないかな? ついでなので今使える属性でそれぞれの属性剣を作ってみる。細かい作業はこの手では無理なので、ドワーフパペットとゴーレムパペットに持ち手の柄の部分を作ってもらい、そこに水晶を組み込んで完成させる。
まあ、玩具だけれどね。
さて魔道具を作れる事が証明出来たので、早速最初のパペットに同じ属性剣を作製させてみると、今度は作ることに成功した。つまりパペットとの繋がりはしっかり戻っていて、僕が作れる物ならば生産可能だということもこれで証明されたことになる。
後は鍛冶や木工は僕に出来なくても、パペットがしっかり出来るようなので、一応安心かな?
そうなって来ると記憶が曖昧だった時はどうやらトラウマになっていたようだけれど、進化を試して以前のような自由度を手に入れて行きたいと考える。今のままだと創造系スキルが手に入れられないという欠点があると思えたしね。
進化するのに必要になる素材が十体と多くなったけれど魔王軍で進化させていたように適当なスライムでいいかみたいなことはしたくないので、今の僕で捕獲出来そうなモンスターを十体、がんばって集めに行こうかと考え司書パペットに情報収集を依頼することにした。
まずは自分のランクで捕まえられるモンスターを調べるところから始めないとだな~




