知謀四天将と魔導四天将
魔王城、かつて魔王と勇者が戦った決戦の地であり、現魔王がいるとされる場所。外見の威圧感は結構な緊張を強いるものであったが一歩中へ入ると、当時の激しい戦いを思い知らされる荒れた様子がそのまま残っていた。
そんな広大なホールの中に、二人の人間がぽつんと立ってこちらを見ているのがわかる。彼らが新たな仲間で四天将になる人達なのだろう。
僕から見て右にいるのは・・・・・・職業が既に魔王軍知謀四天将と表示されているのは別にいい。だが何故マグレイア王国の第一王子であるオーリキュース・ライトン・マグレイア王子がここにいるのだろう?
左に立っている男は、結構年をとっていて初老に差し掛かった魔法使いだった。魔王軍魔道四天将という職業になっていて、名前はウクルフェスというみたいだな。この男が僕の魔法を見てみたいとか言っていた男なのだろう。ここからでも目をギラギラとさせているのがわかるくらいだった。
「お主がバグ殿か、わしは見ての通り魔導師のウクルフェスという者じゃ。早速で悪いのじゃが、お主の魔術を見せてはもらえんかのう?」
自分の魔術を発展させる事だけを考えているって感じだろうか? まあだからこそ引き込みやすかったっていうのと、戦力にもなるという感じなのだろうな~。まあどうせ後々一緒に戦っていれば見る機会もあると思うけれど、待ち切れないといった感じなのだろう・・・・・・
殆ど廃墟みたいな所だけれど、一応外見の方までダメージはいっていないので外で見せた方がいいだろう。確かビームが見たかったはずだから、あんなのを室内で使えば壁に大穴が開きそうだ・・・・・・
「じゃあ王子には申し訳ないが、魔法を見せに外へ行かせてもらうよ」
そう言ってウクルフェスを連れて転移しようとしていると、王子が話しかけて来た。
「既に私の事は知っているようだが、一応私にも魔法を見せておいてくれないかな? 私は、戦闘は不得意だが指揮を取るのは得意でね、仲間の戦力はしっかり把握しておきたいのだよ」
「まあ、構わんがね。じゃあ一緒に付いて来てもらおうか」
直接戦わずに命令だけはするという・・・・・・ある意味王家の者らしいと言えばいいのだろうか? 大人しく王子の指揮下に入る気はないのだけれどな~。そのうちお互いの事をもっとよく知るようになるだろうから、その時にお互いの距離もわかって来るかもしれないな。
ついでに黒騎士も含めた四人で平原に転移して、ウクルフェスに攻撃目標を出してもらう事にしよう。そういう目標になる物を呼べないのなら、こっちで適当にどこかのフルプレートみたいなのでも創って出すかな・・・・・・
「ウクルフェス殿、何か攻撃目標になるような物を出せるか?」
「ならば、これで頼もうかのう」
そう言って無詠唱魔法で出したものは、魔法で作られた盾。魔力によって創られた物で、実態を持たない盾なのでおそらく純粋な魔力勝負って感じなのだろう。いきなりお互いの力比べって事か。まあそれならそれでいいけれどあちらも無詠唱で挑んで来たので、こちらも同じく無詠唱でのビームでお相手しますか。
(ビーム)
ついつい勝負事になって力が入り過ぎたようで、ビームは盾を貫通して三キロ先くらいまで飛んで行ってしまった・・・・・・森とかでやっていたらまた環境破壊するところだったよ・・・・・・
しばらくの間呆然としていたウクルフェスは、お互いの力量差を素直に認めたらしくこちらに頭を下げて来た。それを見るに、自分の魔術に自信を持っているものの歪んだ性格はしていない事がわかる。そして相手の力量を認める心の広さと、妙なプライドなど持たずに教えを請う事もいとわない。王子などよりよほど好感が持てる人物であった。
ウクルフェスならいろいろと教えていってもいいと思ったね。弟子を取って偉ぶるつもりはないのだけれど、仲間だし成長してくれればいいなって思ったよ。
「いやはや、これ程とは思ってもいなかったよ。一人でマグレイア王国を落とせるとか豪語していたと報告を受けた時には、大馬鹿者が来たと思ったものだが、なるほどこれならば納得できるな」
「オーリキュース殿は、正しく戦力評価ができておらんのう。こんなものはお遊びのようなもの、バグ殿は全然本気を出しておらんからのう。バグ殿が本気を出せば、五・六ヶ国で連合を組んでも殲滅させられる可能性があろうな」
「確かにありえないとは言えないか。それならばなぜ我々も四天将などに加えた? バグ殿がいれば魔王軍に他の者などいらぬであろうに」
王子が最後の言葉を黒騎士に向けて発した。
「彼は正確には仲間というよりは協力者になる。この世界のごたごたに本来ならば巻き込む必要のない存在といえばいいかな? それを手伝ってもらっている協力者なのだよ。だから彼には基本的に好きに行動してもらおうと思っている。ここにはいないヤーズエルト君が彼の指導を受けて特訓しているが、君達も今のうちに教えを受けて成長しておいてくれると嬉しいな」
「いろいろと世話になるのう。だが一方的に教えのみ受けるなぞあってはならぬし、何かわしに要求するものはないかのう? お主程の者ならば、早々困る事などないであろうができる事ならばやるぞい」
黒騎士の言葉に早速ウクルフェスがそんな事を言って来るのだが、特にして欲しいものとかないのだよな~
「特に困っている事も、して欲しい事もないが・・・・・・通常の生活なら町で治安維持とか、学校で魔法を教えるとかって感じならやる事はあるかもな。魔王軍としてなら、部下を育てるとかがいいかもしれんな。現状部下など僕達四天将ぐらいしかいないがな」
「なるほどのう・・・・・・町等の騒がしいところは苦手じゃわい。魔術の研究もできんしの・・・・・・。ならばここで部下でも鍛えてみるのもいいかもしれんのう~」
「妥当なところだな。問題はどうやって部下を連れて来るかってところか・・・・・・魔王軍だからやっぱりゴブリンとかそういうモンスターを引っ張って来るのがいいのかもしれないが・・・・・・」
おそらく普通にゴブリンとかのモンスターを連れて来るのは僕なら問題ない。レイシアでも殴ってわからせる事はできるだろうな。しかしウクルフェスや王子の場合、普通に襲われると思う。まあ、二・三匹なら倒せるだろうが、部下を殺しては意味がないだろうね・・・・・・
そうすると野生のを引っ張ってきてリーダーになるやつを僕が眷族として創って従わせるとかが、一番スマートに進められる方法かもしれないな・・・・・・ついでに、今回はスライムに転生して順調に進化できたからここまで強くなれたけれど、そうじゃなくてコボルと、ゴブリン、オークといった雑魚に生まれ変わっていたらどうなっていたかも調べられるかもしれない。
まあゴブリンとかだとミノタウロスの前に呼ばれた時点で、潰されて終わりだっただろうけれどね・・・・・・
「部下はこちらでそろえよう。そいつらを鍛えるダンジョンも創るので、ウクルフェスはここで部下を鍛えてくれるか?」
「引き受けよう。その代わりいろいろと魔法を見せてもらうぞい」
「わかった。王子は特に鍛えたりしないのだろう?」
「私はそうだな、歴史などから戦略などの勉強をしておけばいいだろう。今から体を鍛えても大して強くもなれないだろうしな。それより私が魔王軍に入るに辺り、この本の元ネタを詳しく教えてもらいたいのだが、聞くところによればバグ殿が詳しい事を知っていると聞いたのだが、本当かな?」
「何故それについて知りたいのだ?」
「我がマグレイア王国の初代は、かつて勇者パーティーで共に戦ったメンバーの身内であったそうだ。子供の頃からそう聞いていた私は当時の事をいろいろと調べて、魔王討伐後の勇者達がどのような活躍をしていたのか知りたかったのだが、ある時を境にしてぱたりと勇者の名前が出て来なくなった。不思議に思って調べていくうちに、いろいろな仮説や陰謀などの説が浮上してな、そのどれもがリンデグルー連合王国が関わっていた事まではわかったのだが、結局それ以上の事は不明のままであった」
「という事は、僕達がマグレイア王国に行った時に顔を見せなかったのは、そのせいか?」
「ああ、過剰反応してしまったようで申し訳ないが、あまりいい気分ではなかったので避けさせてもらった。でだ、この本の元ネタをバグ殿は知っているのだな?」
うーん、まあ身内になら見せて問題はないが、マグレイア王国も含めればこれの所有権を主張できそうな国が三つなのだよな・・・・・・下手になぶって崩されるよりは読めるようにした原本を渡せばいいかな?
「大元は少し触るだけで崩れてしまうから、内容を書き写したものでも構わないか? 大元は、勇者の国辺りに所有権がありそうだしな」
「わかった。ではその写本を見せてもらってもいいだろうか?」
そう言うので呼び出して渡す事にした。これでもって証拠にする事などは不可能ではあるが、調査とかの役には立つだろう。
「感謝する」
さてさて、また忙しくなりそうだな~
ウクルフェスに適当に合成魔を見せた後拠点へ帰って来ると、ホーラックスに魔王城の地下に魔王軍の拠点と訓練用ダンジョンの作製を依頼する。
でもって、リーダーとなる眷族でも創りますかね。
「創造!」
コボルトとゴブリン、オークをそれぞれ二体ずつ創ってみる。何故二体かといえば、どちらかといえば僕は魔法タイプなので、普通のタイプと魔法を操れるタイプで各二体ずつ創造してみた。
正確な種族でいけば、ただのコボルトとコボルトマジシャンという種族になっているね。職業で別れていないのは、そもそもが普通のコボルトには魔法が使えないからだと思われる。ちなみに他のやつはゴブリンマジシャンとオークマジシャンかな。
さてまだ時間もある事だし、早速それぞれの群れでも見付けて部下を捕獲して来ようかな。
「お前達の部下を捕獲しに行く。まずはコボルトを捕獲しに行くので、チルナがリーダー、ボーンがサブリーダーとして群れを統率するようにしてくれ。行く前に少しLV上げが必要か?」
ステータスを少し確認してみた感じ、そこまで強くなくてLVも六しかない。これでは下手したら現地のボスコボルトにも負けてしまうかもしれないと思ったので聞いてみたところ、首を横に振っていた。知能がそこそこ高めなので、何とか切り抜けようって感じなのかもしれないな。危なかったらサポートしてあげよう。
そんな感じでコボルトが群れているところへと転移して来てみたのだけれど、予想していたより多い気がするな。ざっと見た感じ七十体くらいはいるかな? 突然やって来た僕達を警戒して戦闘隊形に移行する群れに、チルナとボーンが前に出て行く。
どうするのかなって思っていると、チルナが初期装備として持っていた棍棒で地面を思いっきり叩いていた。それは普通に殴っただけでは到底出せない威力を秘めていて、爆発したような音と共に少しだけ地面にクレーターのようなものが出来上がる。
彼らには群れの統率をしてもらう為にステータス確認のスキルを持たせてみたのだけれど、それで自分に強打のスキルがある事を理解して、自分を強者だとアピールしたのかもしれないね。
「ウォォォーン」
ボーンの方もそれに合わせて力を誇示する為か、魔法で火の玉を作り出して枯れ木にぶつけていた。
コボルト達の大半は、それらの行動に対して尻尾を丸めて震える者も出て来ていたが、おそらく群れのボスともいえる者が前に出て来てチルナと対峙する。
そして唐突に戦闘が始まった。おそらく群れのボスの座を賭けた戦いであろう。
ぱっと見、体格では現ボスの方が優れて見える。力もその体格に合わせて強いようだが、体格が良い分素早さが足りていないように思える。ただ、やっぱり防御力が高そうで、ちょっと殴ったくらいでは殆どダメージにはなっていないようだった。
そうなって来ると、素早く懐に入り込んでの強打スキルが決め手になりそうな感じだな。チルナは素早い移動を繰り返し、細かく鉤爪の攻撃をおこなっているようだけれど、体毛によって受け流されているみたいだ。
そういえばお互いにモンスターなので、人間の戦い方とは違うのだったな。ぱっと見はお互いに素手だけれど、コボルトなら爪とか牙も武器になる。尻尾は柔らか過ぎて、鞭にもなりそうにないな。
「バウ!」
ギャウウ
素早く入れ替わる攻防の中、背後に回ったチルナが耳元で衝撃波のような大声を上げた。犬だから耳や鼻もいいので、そこを攻めるというのも有りか、ただいくら怯ませてもあまり効果はないと思われるが・・・・・・
ギャワン!
と思っていると、ボスが股を押さえて崩れ落ちる・・・・・・。あー、確かに戦場などで弱点を攻めるのは鉄則だろう・・・・・・だからといって男の急所を何の躊躇もなく蹴り上げるものか? それが女ならまだわからない事もないのだが・・・・・・。よく見てみると、ステータスには性別を載せていないな、これだとチルナが女の子の可能性もあるのか・・・・・・そう思えば名前もどちらかといえば女性っぽいので、ひょっとしてチルナは女の子か?
リーダーを任せるのだから男とばかり思っていたよ・・・・・・倒れたボスを見ている男共は、自分も痛いとばかりに股を押さえていたりする。
まあ勝負は勝負だし、これでも一応は勝ちでいいのだよね?
「チルナ、こいつらは配下にできたか?」
「ウォン」
チルナが一声かけると、それまで散っていたコボルト達が集まって来た。襲い掛かって来ないところを見ると、どうやら上手くボスとして認められたって感じかな。
一度魔王城へとコボルト達を転移させる事にして、彼らには自分達の棲家でも造らせて置こう。こっちはまだゴブリンとオークの配下を捕まえに行かないと行けないからね・・・・・・
さて、コボルト同様ゴブリンの群れがいる場所に転移する。
「手順はわかっているな、モッポ、クエル。上手く自分達の配下にして見せろ」
「ゴブ」
二体のゴブリンが、五十体はいるゴブリン集団の方に向って行く。
『突然の連絡、申し訳ありません。今よろしいでしょうか?』
これからって時に眷族から連絡が入ったよ・・・・・・うーん、この声は・・・・・・
「イオルドか、どうした?」
そうそう、レイバーモルズ町で畜産を任せているイオルドだった。彼から連絡が来るという事は、町で何かが起こったという事だろうな・・・・・・ちょっと嫌な予感がするよ・・・・・・
『はい、集団犯罪の現場を抑えました。彼らの処分をどうするかお聞きしたく思います』
「被害者は無事なのか?」
『そちらは何とか。司書パペットの探査にかかって直ぐこちらに連絡が来て間に合いました』
「わかった、そちらに向う」
順調だっただけにこういう犯罪はテンションが下がるな・・・・・・司書パペットや、町の監視をしていたパペット達にはよくやったと褒めておく事にした。彼らは喋らないが、どこか誇らしい感情が伝わって来たよ。
「マークス、フォルオン、聞いての通りだ。これから町に行かないといけない。オークの集落へ飛ばすので制圧しておいてくれるか?」
「ブヒ」
あ、よくある小説などではオークもゴブリン語を喋ったりするのだけれど、ここの世界は豚扱いなのだな~まあそれはさておきさっさと転移させて町へと行かないといけないな。
転移でイオルドのいる場所にやって来ると、酔っ払った男達と思われる集団が二十人近く縛られているのがわかった。そこには既に町長もいて、多くの野次馬達が彼らを取り囲んでいる。
「バグ様、ご足労頂きありがとうございます」
「いや、よく未然に捕らえてくれた。感謝するぞ」
「勿体無きお言葉、それでは忙しいと思われますので早速状況を説明させていただきます」
「ああ、頼む」
野次馬も、これが何の集まりなのかわかっていない者もいたようで、イオルドの話を聞こうと自然静かになる。
「つい先程彼ら男性集団で、女性一人を暗闇へと連れ去り強姦しようとしていたところ報告を受けた私が駆け付け、救出すると共に加害者集団の捕縛に成功しました。女性は衣服などの損害はありましたがそれ以外に被害はありませんが、とても怯えていた為別の場所に待機させています」
まあ、酔っ払いを見た時に薄々その可能性もあるだろうなとは思っていたけれど、予測していた中では最悪に近い方向の犯罪であった。日本なら未遂で酒に酔っての犯罪は、そこまで罪が重くはならないのだよね・・・・・・
「ま、この町で強姦まがいな犯罪行為をするとどうなるか、よっく思い知ってもらおうか。お前達はもう二度と日の光を見る事はない事を覚悟しておけ」
「おいおい、ちょっと待てよ。酔ってちょっと行き過ぎちまっただけじゃないか、未遂なんだからもう少し軽くしてくれないかな?」
二度と日の光が見られないっていう意味を重く受け取ったらしく、酔っ払いが抗議して来る。
「ごめんなさい。どうかお父さんを許してください」
野次馬の中から、酔っ払いの家族と思われる娘も出て来て、何とか罪を軽くしてもらおうと懇願して来た。
「悪いが、僕は誰がどんな惨い目に合っていても、笑って許しますとか言える程善人じゃないのでね、どれだけ交渉しようが罪を軽くする気は一切ない。野次馬している者もよく覚えておけ。取り返しが付くミスならまだ軽い罰則で済ませるが、僕が重罪だと判断した者には慈悲を与えるつもりはない。まあ自殺しなければ死ぬような目には合わせないから、それだけはよかったとでも思っておけ」
そう言うと、捕縛した男達を地下深くに転移させた。ただ殺してしまうって言うのは、僕の中では楽な道だと思うのだよね。やっぱり罪を償うには生きていてもらわなければ、自分が何をしたのかを理解できないというものだ。
「後日、彼らの関係者は会話だけならさせてもいいので、イオルドを訪ねて来るといい」
そう野次馬と町長に告げると地下へと転移した。
ひとまずはいきなり死なれても困るので、多少の空気と共に小さな穴の中に連れて来たものの、ここはいろいろ人が住むには不足している物が多過ぎる。まず彼らには自分の食べ物くらいは自分で作ってもらわないとだろうな。まあ、いわゆる強制労働って事だね。この町で特に不足していそうなものはないし、ここで食料でも作っていてもらおうかと思う。
それと今後も罪を犯す者が出て来るだろうし、犯罪者の待機場所を造って、畑も造る。そしてここの管理をする眷族でも創っておけばいいかな。収穫された食物を地上に送る役割も必要だし、それに地中なので空気も必要になるので、トレントの眷属が良いだろう。
ただ前に創ったトレントは、普通に木だったので今回は動いたり会話できるエリートトレントって感じがいいかもしれないな。
「創造。役割はわかっているか?」
「はっ! 心得ているであります! 我が役割は囚人となる者の空気を作る事と、彼らを働かせる事にあります」
何か、軍人っぽいやつが出来たな。まあいいや、とりあえずここは彼に任せておく事にしよう。あ、忘れるところだった。
エリートトレント、名前はブリクトンか・・・・・・彼に罪人と家族が会話できる水晶を渡しておかないといけなかったな。
通信用の水晶を作製して早速渡す事にした。
「イオルドにも水晶を渡しておくので、罪人の家族が来たら三十分だけ会話を許可してやれ」
「了解しました!」
地上に戻ると、イオルドに水晶を渡す。
「会話は、一週間に一回三十分にしておくか? 後、地下では農業でもやらせようと思う、不足している野菜の種でも送ってやってくれ」
「わかりました」
まあ、犯罪者の扱いはこんなものでいいかな~。そう思い、ゴブリンとオークがどうなったか見る為移動する事にした。
とりあえずゴブリンのいたところへと戻ると、無事に配下にする事ができているようだった。なので魔王城へと転送する。
この分ならオークも問題はないだろうと移動して見ると、五十体近いオークを配下にしているのがわかったので一緒に帰還する事にした。まあ、どれも雑魚なのであまり戦力にはなっていないだろうけれどね。
それよりも混ぜると喧嘩する恐れもあるので、こいつらにはそれぞれの生活空間を造ってやり、争わないようにする。後々には強くなってもらう必要があり、その為にもまずは衣食住をそろえてやらないとな~
「創造」
魔王軍の運営管理をして行く為に、新たに眷族を創造する事にした。一人目は魔王軍関係の生産担当者で、主に生活空間を管理してもらう。ある程度整えばこの子は手が空くだろうから武具の生産も担当してもらう事にした。二人目は食事関係で、食材の生産調達から料理加工までをやってもらう。この子はおそらく毎日忙しくなるだろうね・・・・・・今回捕まえて来た配下だけで百七十体のモンスターを養わなければいけない・・・・・・
三人目は配下の調教師で、野生のままだと味方にも襲い掛かって来るであろうから、彼らの知能を上げる努力をしてもらう。戦い方とかは、ウクルフェスと協力して教えていってもらえばいいかなって思うよ。王子に任せると捨て駒にされそうだからあまり任せたくはないしな・・・・・・
四人目は雑務を担当してもらう。忙しいところの手伝いだね。後何かしらの厄介事が起きる可能性もあるので、結構戦闘などもこなせる万能キャラに創ってみた。
早速それぞれに行動を開始してもらって、とりあえず食料だけはのんびりしていると餓えてしまうので、畑を造り出した後そこの空間の時間の流れを操作してサクサクと野菜を収穫できる状態へと持って行く。肉を寄越せって感じだと困るけれど、畜産関係も空間を操作して一杯増やした方がいいかな?
まずは食料になる家畜として、大ねずみを確保させる。こいつなら一杯増えるので肉に困る事はないだろうし、食べるのは人間じゃないので病気も心配しなくていいだろう。まあ捕まえて来る個体が病原菌を持っていなければだろうけれどね・・・・・・
うーん・・・・・・そう考えると、魔王軍にも医療関係がいないのは問題があるな・・・・・・
「創造!」
という訳で五人目として回復系の眷族を創り出した。早速捕獲されて来たねずみを徹底的に健康状態にしてもらい、清潔な場所で増えていってもらう事にする。
後は、ウクルフェスが配下のゴブリンとかに襲われても大丈夫なように魔道具でも作って渡しておくくらいかな? がんばって戦力として育ててもらわないといけないからね。機能としては拠点内で襲い掛かられてもダメージを負わないし、逆に全力攻撃をしたとしても肉体的に傷付けないよう手加減が出来る指輪を作り出した。肉体的に傷が付かないのだけれど、死ぬような攻撃ならば死ぬ程痛いって事だね。
これで逆らうのは愚かだって学習して欲しいものだ・・・・・・早速渡しておこう。
「一応、安全の為に常に身に着けておいてくれ」
「ほー、魔道具を作れるとは聞いておったが、さすが特技四天将殿だ。有効活用させてもらうおうかのう」
ウクルフェスが有効活用って言うと、実験材料にでもされそうな意味に取れるな・・・・・・まあいいや。
これで魔王軍の方は大体整備できたかな? 訓練用ダンジョンは、もう少しかかりそうだ。
後は、ウクルフェスは放っておいても転移魔法が使えるだろうからいいが、王子とヤーズエルトが魔王軍の拠点に来られないかもしれないので、そっちの魔道具も作っておく事にしよう。まあ、王子はここに来ても何するのって気はしないでもないけれどね・・・・・・
一応現段階ではここに来る必要は無さそうだけれど、二人に転移と配下に襲われない効果を持つ指輪を渡しておく事にした。
まあ、考え付くのはこんなところだろうね~。僕もそろそろ日常に戻る事にしよう・・・・・・魔王軍が動く事になるのはもっともっとずっと先だと信じて・・・・・・




