リンデグルー連合王国のその後
さて、リンデグルー連合王国がその後どうなっているのか、というか国民にどんな感じで影響しているのかを見る為と、卒業生の様子を窺いに僕達はギルドに来ていた。
国内の様子は表面的には特に何も変化しているようには見えないな。ギルド内に入って見ても特に変わった所は無さそうだった。多少はバタバタしていそうな人は見受けられたが、それは仕事の為か国の事なのか判断できない感じだった。
そう思っているとギルド員が慌てながら依頼を張り出しているのがわかった。という事は、国の影響ではなくて普通に仕事で慌てていたのだろうね。おそらくは緊急依頼が張り出されたのだと考えて、レイシアが自然と依頼を見る為に移動して行った。
少し遅れて付いて行くと、相変わらず周りがレイシアに気が付いて孤高の乙女だって感じで注目した後、あの男は誰だって感じで僕を見て来るのがわかる。暇人共め・・・・・・
そんな感じで周りの冒険者を眺めていると、レイシアが依頼表を剥がしてこちらを向いたのがわかった。
「バグ、この緊急依頼を受けたい」
「いいよ」
内容は確認していないのだけれど、真剣な表情をしてそう言って来るレイシアに、即答していた。一緒に受付で手続きをして改めて内容を確認して見ると、多くの子供達を誘拐した盗賊団のアジトの場所が判明したので、子供の救出と盗賊の排除というのがこの緊急依頼の内容みたいだね。
リンデグルー連合王国の地図をシートに呼び出して、今回判明したアジトの位置を確認した後、僕らはその場で転移して早速行動を開始した。緊急と言うからにはアジトは発見できたものの、こちらの動きも相手に伝わってしまった可能性があるので、急いだ方がいいかと思ったのだ。
でもってアジト周辺上空にて、転移して来た僕は改めて調査スキルによってアジト内部を調べ上げ、子供達が集められている部屋を探り出す。この手の依頼で気を付けなければ行けない事は、子供を人質として使われない様に迅速な行動をする事である。しかし、僕らの場合は子供達のいる部屋からの制圧が可能であった。
「依頼内容は盗賊の排除もあったから、入り口を塞いでくれるかな?」
「うん、わかってる。召喚、ゴーレム。召喚、アラクネ」
「じゃあ突入開始するよ」
「いつでもいいよ!」
これで逃げ出そうとした盗賊も、討ちもらす事はないと思われたので、早速子供達がいる部屋に転移する事にした。突如として現れた僕達に子供達が騒いでしまった為、見張りの盗賊に気付かれてしまったようだな。
「貴様らどこからあらわ・・・・・・」
既に隠密行動を取る必要もなくなっているので、鉄格子もろとも騒ぎ出した盗賊を殴り飛ばして沈黙させる。結構盛大に音がしてしまったから、時期に盗賊達が集まって来るだろうね。
「みんなここで少し待っていてくれるかな? 悪い大人達を倒して来るからそしたら町まで帰ろう」
「僕達、助かるの?」
僕が子供達にそう語りかけると、大半の子供は半信半疑で一部の子供は助かったって感じになっていた。まだ幼い子もいるようで、よくわかっていない子なども中にはいるみたい。そんな中でそこそこ年長な子がそう問いかけて来たので、答えようと考えていたのだけれど、レイシアが受け答えるのが先だった。
「ええ、みんなお家に帰れるわ」
まあ、家族を殺されたとか村事襲われたとかだと、帰る家すら無くなっているのだろうけれどな~。まあそれよりも盗賊を排除してさっさと町に連れて行ってあげよう。
「レイシア、まずは盗賊を排除しよう」
「ええ、じゃあここで大人しくしててね」
後半部分を子供達に向けて安心させるように微笑んで見せていた。案外子供と相性いいのかもしれないな~
あまり殺し合いの現場は見せたくないし、さっさと移動して目に付いた盗賊をとっとと殴り倒して行く。このランクの相手では特に危険もないだろうし、レイシアには入り口に向けて侵攻してもらい、僕は奥に向けて行動する事にする。おそらく異形に成り代わる者が現れてもアルタクスが付いているので大丈夫だろう。こっちも討ちもらして子供が危険にならないようそれだけ気を付けて盗賊の殲滅をして行った。
そして盗賊そのものの殲滅自体は特に問題でもなんでもなかったのだけれど、アジトの一番奥にて発見した盗賊は魔道具を持っていてどこかと何か通信らしき事をおこなっているのを見てしまった。
始めはこれが黒騎士に警告された魔道具か! って警戒したものの、どうやらただの通信用である事がわかって少し時間を無駄にしてしまった。
その出遅れた分を取り戻そうと調査のスキルを使い、通信相手を捜索する。そこで判明した情報は、この周辺といっても走って一時間はかかりそうな距離がある場所に別のアジトがあり、そこにも子供達が捕らわれていてそっちの仲間に対して魔道具で襲撃されたと言う情報を伝えられてしまったようだった。
さらに厄介な事に、アジトは他にもあるようでそっちにも襲撃が伝わってしまったようだった・・・・・・。残念ながら後二箇所あるうちの片方が所在不明だった。これ以上の情報を与えない為に盗賊の排除はできたのだけれど、時間をかければ犠牲者が出るか、そのまま連れさらわれる子がいるかもしれない。
レイシアと一度合流して現状を確認し合う。
「こっちの殲滅は終わった。ただアジトは他にも二つあって、そっちに魔道具で連絡が行ってしまったようだ。早めに手を打たないと子供達が危ない」
「私の方は問題なく片付いたよ。別れて制圧しに向う?」
「ああ、一つは任せる。もう一つは場所の特定からやらないといけないから、そっちはこちらでやるよ・・・・・・問題はここの子供達も放置はできないって事だな」
「じゃあアルタクスを見張りに置いておこう」
「いや、僕達は慣れているから問題ないが、スライムでもモンスターだ。子供達には不安だろう」
「あ、確かにそうだったね。ずっと一緒にいたからそこまで考え付かなかったよ」
「まあ、そうだろうね。あ、アルタクスはいいスキルを持っていたな。肉体変化のスキルだと形を変えるだけだったから色で人間と思えなかったけれど、アルタクスなら人化で人間として行動できるな。今回はそれで子供の面倒を見てもらおう」
「確かに! じゃあやっぱりアルタクスにお願いだね!」
話を聞いていたアルタクスが早速人化のスキルを使い、人の姿に変化したのだけれど・・・・・・
「なんで僕の姿になる?」
身長で行けば、背が少し低いので僕の子供時代の姿とでもいえるかもしれないな。そしてアルタクスは黙ったまま僕を見詰めるだけで返事をしようとしなかった。
「可愛いからいいじゃない!」
後ろから抱き付くレイシアにも、特に反応する事無くその場でされるがままになっている。ひょっとして元がスライムだから感情が表れないだけかもしれないと考えた。まあ、それならそれでいいか~
「とりあえず裸なのはどうにかしないといけないな。拠点に行って服を着て来てくれ」
頷いたアルタクスが影に沈んでその場から消える。
「時間を無駄にしたくないし、レイシアもアジトに送るぞー」
「いつでもいいよ!」
レイシアを位置の判明しているアジトの子供達がいる場所へと転移させると、こっちの入り口にいるゴーレムとアラクネもそっちのアジトの入り口へと飛ばしておいた。こっちはこっちで、残りのアジトを索敵する為に、忍者パペットを呼び出して周辺を調査させる事にする。
戻って来たアルタクスには子供達の方へと行かせて、少し時間はかかったものの、もう一つのアジトを発見し制圧を開始する。
「ファイアランス」
調査スキルで盗賊の位置と数を把握できているので、炎の槍を誘導して殲滅するのはわずか数秒で完了した。子供さえ人質にされなければまあこんなものだろうね。
忍者パペットをねぎらって、本来の活動に戻ってもらい、レイシアの方へと子供を連れて転移する。調査のスキルで調べてみれば、こっちも今制圧が完了して子供達のところへと戻って来るところみたいだった。
「お疲れ様~」
「お疲れ様!」
戻って来たレイシアと合流して、最初のアジトへと向う。そこでアルタクスと合流すると、まとめた子供達を連れてギルド前に転移して、中へと入って行く事にした。気分的には幼稚園の先生か、カルガモの親だな・・・・・・
「依頼完了したので報告に来た」
「予想より子供達の数が多いですね」
「ああ、依頼にあったアジトは盗賊のアジトの一部だったよ。他にもアジトが二つあって、そっちに魔道具で襲撃されたって連絡をしていたので、急いで場所を探して子供を保護して来た」
「そうだったんですか! 迅速な対応、ありがとうございます。それと不手際があって申し訳ないです」
簡単に説明をすると、受付の人はまず子供の対応をギルド員に指示して、今回の依頼についてもう少し詳しいものを要求して来たので、多目的シートを広げてアジトの位置を表示しながら説明していった。
とりあえず今回分の報酬を受け取り、後日調査をおこなって追加の報酬を用意するという事で話はまとまったので、一度拠点へと移動する事にした。
それにしてもアルタクスはせっかく人化したのに、全然喋らないな。
「アルタクス、何か話してみろ」
そう言うと、アルタクスは口をパクパクとさせる。ん? ひょっとして喋れないって事か? まあスライムは会話なんてしないから、やり方がわからないという感じかもしれないな。それならと息を吸って吐くところから教えて、声帯を使って声を出すところまで教えていく。
しばらくそんな事をやっていると、こつを覚えたのかちょっとずつ声が出せるようになって来た。そして聞こえる声は、中性的で、どちらかと言えば女声って感じかな? むー、子供みたいな僕の姿でその声っていうのはなんとなく微妙な感じだな・・・・・・
「アルタクス、その声にその姿は合っていない気がするから、女性に変化してみろ」
頷いて女性へと変化した。どことなく僕っぽさを残してはいるが、ちょっとはましになった気がする。元々アルタクスはこちらの指示に従う知能はあるので、声が出せるようになれば普通に会話できるだろう。
「どうだ? やっぱり喋るのは違和感があるか?」
「いえ、慣れてしまえば問題ありません」
「可愛い!」
レイシアが喜んで飛び付いていた。さっきよりも女性っぽい声で姿にも合っている感じかな。まだちょっと合成音声っぽい気がしないでもないけれど、まあそこまで変って事もないか・・・・・・性別も変わった事だし、後は服に違和感があるな。そう思って裁縫パペットに服を用意させて着替えてもらう。
「せっかくだから、アルタクスも冒険者登録しておくか?」
「いいかも!」
僕の眷族ではあるけれど、アルタクスはレイシアのパートナーだからな。今後何があるかわからない事を考えれば、身分を用意しておくのもいいかもしれないな。何かあった時の保険は多い程いいだろう。
「じゃあ早速行くか」
「うん!」「了解です」
僕達はさっきのギルドへとやって来ると、受付に行ってアルタクスの登録をお願いする事にした。
「その子はレイシアさんの新パーティーメンバーですか?」
「はい」
「レイシアさんは、もうトップの冒険者だと思うのですが、いきなり新人さんを入れてもいいのでしょうか?」
「いえ、新しいパーティーメンバーではありますが、実力は既に十分ありますよ?」
「え? そうなんですか? まあわかりました、では相応しい実力があるかどうか調べますので、アルタクスさんの職業を教えてもらえますか?」
「盗賊です」
まだ会話に慣れていないのか、短めに回答を返しているな。声についても特に違和感なく受け入れられているようなので、怪しまれる感じは無さそうだ。これなら二人でクエストを受けたりしても、大丈夫だろうと思われた。
「ではこちらへ来てもらえますか?」
ギルドの奥へと案内され、そこで盗賊としての試験を受ける事になった。僕は魔力を測るテストだったけれど、アルタクスが受けるテストは鍵開けと罠の発見解除のようだな。っていうか、いつの間にか罠の位置がわかるようになっているぞ。
ひょっとしたらこの間のダンジョンに潜った影響で、何かしらのスキルを習得した可能性があるな・・・・・・後で確認しておこう。
「それではまずはこちらの鍵を解除してください」
「もうやっていい?」
「準備が出来次第どうぞ」
「はい」
鍵の前に立ってそう言った時にはもう、解除されていた。さすが本職だな~。僕は鍵開けの難易度が違うのだろうが一時間もかかったのだけれど・・・・・・
「え、もうですか! で、では、ここの部屋には罠が仕掛けられていますので、その発見と解除をお願いします」
「はい」
すっと移動して、地面にしゃがんだと思ったら立ち上がってギルド員の方へと声をかけていた。技術で行けば、アルタクスは相当な凄腕なのだろうな~
「素晴らしいですね・・・・・・レイシアさんのパーティーメンバーとして十分な実力があるみたいです。試験は合格ですので、直ぐ登録をさせてもらいますね。少しお待ちください」
そう言って、ホールまで案内された後早速手続きをしに向ったようだった。僕の時は結構直ぐ登録が終わったけれど、どれくらい待ち時間があるかな?
「待っている間にご飯とか頼むか?」
「うーん。そこまでお腹は空いていないかな?」
「じゃあ受付前の椅子にでも座って、おやつか」
「おやつ! 何かあるの?」
む、何やらハードルが上がった気がするな・・・・・・それならば開発の終わったソースを使って、お好み焼きをふるまってやろう。以前はソースがなくて偽物だったからな~。完成されたお好み焼きは美味しいと思うよ!
デザートパペット改め、料理パペットに早速注文すると、そこまで待たないでお好み焼きを完成させてくれたので、早速呼び出したものをレイシアに渡し、次にできたものをアルタクスへと渡す。最後に出来たものを受け取ってみんなで早速かぶり付く事にした。
お好み焼きは、薄い紙に包まれ半分に折り畳まれた小さめのサイズで、買い食いに向いている箸を使わなくてもいい感じのものだった。さすがパペットは気が利いているな~
「んーー! 美味しいよ!」
アルタクスは無表情で食べている。スライムには味わうって事がないのかな? 僕がスライムだった時には確か、ご飯全般普通に美味しいって感じで食べていた気がするので、どちらかと言えば前世の記憶で美味しいと思えるものを食べていた気がするな。基本食べられればそれでいいっていうのがスライムの思考だったように思える。
「アルタクス、美味しいとかそういうのはわかるか?」
「んー、よくわからないけど、これはまた食べたいという気がする」
味覚みたいなものはありそうだな。とすると人化に慣れていないだけで好み自体はありそうだ。そんな感じで考えていたら冒険者登録が終わったようで、証明書を受け取ってレイシアに渡しておく事にした。
今は人化しているが、スライムに戻ったら登録書など持って歩かないだろうからね。
今日はこのまま、リンデグルー連合王国の様子を見て回る事にする。ブレンダの屋敷にも顔を出してみたのだけれど、さすがに貴族だっただけはあって忙しくて会えない状況だった。
ひょっとしたら上の方は忙しく動き回っているものの、国民は誰も王族がいなくなった事に気が付いていないのかもしれないな~。警備兵の詰め所などはさすがに緊張した雰囲気を感じるね。
調査のスキルで探ってみたところ、各ギルドは事件について知っている感じではあるようだ。まあそれでも幹部クラスまでかな? まだ公表するには早いって感じだね。
そういえば、こっちも真実を面白おかしくして本にしないといけなかったな。町の中を見て歩きながら少しずつ書いていこうかな~
一日見て回った結果、悪徳貴族もついでに排除したおかげかこの隙に国を牛耳ろうって感じの騒ぎは無くて、落ち着いた雰囲気だった気がする。今後どうなって行くのかは、生き残っている貴族連中次第なのかもしれないな。
さて、こっちはさっそく本の原案を書いていく事にする。結構お話を作っていくのは難しく、司書パペットに相談したところいつもは読む専門だった事もあり、結構のりのりで参加してくれる事になったよ。
さすがに読むのと書くのでは必要な技術などが違っているから二人していろいろ悩んだけれど、原作といえる大筋は既にあるのでそれなりに読めるのではって感じのものを書き上げることが出来たと思う。今度ダンスでも教えに行った時にでも、持って行ってみようと考えた。まあ、あっちはあっちでイベント企画と料理で、やる事が一杯だと思うけれどね~
さて、久しぶりにステータスでもチェックしておくかな。
《名前 バグ 種族 魔神 年齢 4 職業 魔王軍特技四天将
LV 87-88 HP 8667-8824 SP 10012-10281
力 760-762 耐久力 828-830 敏捷 861-863
器用度 715 知力 1266-1269 精神 2520-2521
属性 火 水 土 風 光 闇 生命 無 空間
スキル 吸収 時空干渉 分身 無詠唱 完全回復 憑依 調査 創造 完全耐性 飛行 言霊 守護 自動復活 罠感知 鍵開け 危険感知》
うーん、普通に盗賊系のスキルを学んだだけだったな。でもゲームと違って魔法系の職業でも他の職業スキルを取得できるって事はわかったかな。それはそれで収穫ではあるね。
さて、まだ時間もあるようなので少しレイシア用の魔道具を作成しておこうかな。以前レイシアの能力不足でビーム兵器の扱いは難しかったけれど、そろそろ他の銃器も扱えるかもしれないなって考えて、狙撃タイプの遠距離銃器の開発でもしてみようと思う。
構造としてはスコープを覗き込んで引き金を引くって感じなのだけれど、ここはファンタジー世界なのでちょっと変更させてもらおう。
スコープを覗く事で僕の調査スキルのように射程距離内の状況を把握できるようにして、引き金を引けばビームが飛ぶのは同じだけれど、上空から見下ろすように把握する事で障害物を避けて誘導しやすいようにして目標を狙いやすくする。
ゲームのシューティングと違うところは、自分を基点とした半径八百メートルくらいが全部範囲内となるので、後ろから狙われるとかそういう危険が無いところだろう。シューティングゲームだと、スコープを覗き込むと横すら見えなくなるからな~。あれは現実的じゃないなって思ったよ。ちょっと顔を上げるとか見回せば周りが見えるのに、スコープを覗き込んでいるからと奥の一点しかわからないという理不尽・・・・・・
こっちのスコープなら、本来見えない後方八百メートルさえ把握できる優れものだ!
まあ、チート武器っぽい気はするけれどね・・・・・・
「レイシア、新しい武器を作ったからちょっと来てくれるか?」
「何を作ったの?」
リビングでのんびりとアルタクスと会話していたレイシアが、こっちにやって来る。
「狙撃用の銃なのだけれど、試してみてくれ」
「うん、いいよ」
簡単に銃の持ち方、スコープを覗いて見える風景の説明などをして、射撃場の目標を狙い撃ってもらった。
「このスコープってのが凄いね!」
「まあな。その代わり連射ができないかもしれないけれどね」
使い方次第ではいろいろと役に立ってくれるはずだ。僕に何かあった時にはおそらく活躍してくれるだろう。
翌日は音楽担当の眷族と共にダンスを教える為に、ドラグマイア国へとやって来ていた。ダンスを教える為の部屋の改装も終わっていて、そこにピアノだけは重くて持ち運ぶのが大変なのでこっちで呼び出して配置すると、試しにワルツの演奏をしてもらう。
「ほー。これはこれは、お主のところには本当にドラグマイアを上回る文化があるのだな。重ね重ね私達は無礼であった事であろう」
「まあな。僕の目から見れば、ゴブリンが文明人を気取っているようなものだったよ」
「それは・・・・・・この音楽といい、料理といい。あながち言い過ぎとも言えぬところが悔しいのう・・・・・・。我がドラグマイア国は、最大の文明国を自称しておったのだが、つくづく傲慢であったと思い知らされたわ」
「料理の方はどうだ? 一ヶ月で一つ・・・・・・何とかなりそうかな?」
「今のままでは無理じゃのう。どう素材の味を生かそうとも、あの味には届かぬ。味付けなどを工夫しようと試みているが、どう甘く見たところで一年は研究を続けてできるかどうかといった感じかのう」
「それはそれは、王子は苦労しそうだな」
「だな。それがわかっていて条件を変えるつもりはないのだな?」
「ないよ。僕は別に正義の味方ではないし、勇者や英雄になりたいと思う善性も持ち合わせていないからな。単純に気になって、手を差し伸べたいと思えば助けはするけれど、それを強制されるのは逆に反発したくなるだけかもね」
「そうか・・・・・・気まぐれだな」
「だな、だから皇女殿下が友達にと言った時に、面白いと思ったので受けたのであって、別に利益など求めてもいない。ただ、来て見たらいろいろとやりたい事は出て来たからな~。一緒にできればいいなって考えたので誘ってみた。実際断られたところで、痛手ではないからな」
「ふむ。多少時間が余計にかかるくらいかの?」
「そうだな。時間短縮って感じくらいかな。ああ、そういえば本の原案ができた。イベントの方はどんな感じだ?」
「おー、なかなか早いではないか。こちらは企画をまとめて一度共通規格ってものを試してもらおうかなといった感じかのう。丁度いいのでその規格で本を作ってもらえぬか?」
「わかった、何冊くらい作ったらいい?」
「そうだのう・・・・・・五冊もあれば十分だと思うぞ」
「それなら直ぐできるな。少し待っていてくれ。注文して来る」
工場へと転移して五冊作るように指示して一度拠点へと行く。ついでにサンプルのダンス衣装と靴を見せておくのもいいかなって思ったのだ。裁縫パペットに、男女の衣装と靴を注文しておく。それが済むと皇女殿下の元へと戻った。
「帰る時には渡そう」
「わかった」
その後、生徒の貴族達には男女ペアになってもらってゆっくりとした音楽を弾いてもらい、それに合わせてみんなで踊るようにして練習していった。人数が足りないので、ペアが作れない者はシャドウで踊ってもらって、途中で入れ替わりながら教えて行く。
夕方頃になり今日のダンスは終了し、皇女殿下に誘われて食事をして行く事にした。今日王子は一緒に食べないみたいだな。まあいいけれど、食事の後に本と衣装を取りに戻り、持って来たそれを皇女殿下に渡す。
「ダンスのドレスか、中々派手であるな。キラキラしていてかなり目立つのう。それに比べてこちらの男性用の衣装は地味と言うか・・・・・・」
「ダンスは男性が女性をどれだけ綺麗に見せるかっていう部分もあるのだったかな? まあ引き立て役なのだよ」
「ほー、そうなのか。それを聞いたら貴族共が不満に思いそうだのう~」
「そんな事で怒るとか、どれだけ心が狭いのかって思うがね。着飾った女性をどれだけ美しく見せられるかなんて、男性ならそれこそ紳士的にエスコートできなければ恥ずかしいって思うけれどな。もういっそ自分の手にかかれば、ボロボロの衣装を着ていてもお姫様の如く見せてみせようとか考えろよって思うよ」
「おお~、それは確かに男らしいな」
「男らしいと言うか、紳士だろうな。文句言っているなんて、お子様って事だろう?」
「ああー、確かにそう聞くと、ただの子供のかんしゃくと変わらんな。文句があるやつは今の話でも聞かせてやるとしようか」
「まあ、男性の衣装はこれが基本になるが、別に派手にしても問題はないよ。あくまでも参考にしてくれ」
「わかった。本の方はまた規格変更する部分があれば知らせるぞ」
「了解」
打ち合わせなども終わったので、眷族も連れて僕達は拠点へと帰って来た。帰り際、皇女はピアノに興味がありそうだったな。そのうち欲しいとか言われそうだ・・・・・・




