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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十二章  ようこそ魔王軍へ
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難民

 サフィーリア教会本部にやって来た僕達は、早速話を聞く為にジェレントの元へと来ていた。

 「今回は、協力を感謝する」

 今回の訪問は、魔王軍と関係がないので、黒尽くめのかっこうをやめて普段の冒険者姿で応対していた。

 「いえいえ、お忙しい中よくおいでくださいました」

 「それで、相談と言っていたが何か困ったことでも?」

 「実は今、各教会に戦争や怪物によって住む所を失った難民が押し寄せている状況でして、できれば受け入れをお願いできればと思っているのです」

 「難民か・・・・・・。僕個人なら受けても構わないと考えているのだが、マグレイア王国にという話になると僕の一存では決めることはできないな」

 「ええ。ですが国に伝手があると聞いていますので、何とか交渉をしてもらえませんか?」

 「交渉役ということか。そういう事ならしばし時間をもらいたい」

 「はい。今直ぐどうこうなるとは思っていませんので、できるだけよろしくお願いします」

 「わかった。一度王子のところへ行くけれど、レイシアはどうする?」

 「一緒に行く!」

 「そうか、ではしばし待ってもらいたい」

 そう言うと、王子の書斎まで転移した。


 「お邪魔するぞー」

 「うん? バグか、少し待ってくれ」

 「ああ、待たせてもらう」

 例のごとくお茶会の準備でもしながら、王子の仕事に切りが付くのを待つことにした。

 十分位してからこちらにやって来た王子は、デザートを頼んで僕の正面に座る。護衛の二人は王子の後ろに用意された、折りたたみ式の机に着いて、お茶を楽しんでいた。

 「それで今度はどのような話を持って来たのだ?」

 「少し面倒な話になるかもしれないが、この国に難民を受け入れてもらいたい」

 「それはまた、唐突な話だな。それで何人くらいだ?」

 「人数は聞いていないな。まずは受け入れることに問題がないかどうか聞きたかったからね」

 「問題といえば問題はあるな。この国の情報を持ち出される危険性や犯罪の増加等々、いろいろと大変だぞ。住む場所や、食糧事情もあるからそう簡単な話ではないだろうな。まあ、それでも人数次第では少しなら受け入れられると思うぞ」

 「住む場所や、食料をこちらで面倒見た場合はどうだ?」

 「そうだな・・・・・・。来て直ぐなら警備を増やすなどの方向で何とかなるかもしれないが、そういう準備が必要かな」

 「そうか、なら受け入れ方向で話を進めてくれないか? 紙の生産をやらせている村辺りに住む場所を作って、工場での人手にしようと考えているのだが、どうだろう?」

 「働く場所を作ってやるのなら、そこまで荒れる事もなくなるかもしれないな。わかった、少し相談してみよう」

 「じゃあ、今後も連絡など付ける為に、王子にも通信用魔道具を渡しておくよ」

 「確かブレンダが持っていたやつか?」

 「ああ、まあそう頻繁に使う事が無いといいのだけれどな。お互いに軽く連絡が取れれば、今後も行動しやすいだろうしな」

 「わかった」

 王子に水晶を渡して、サフィーリア教会へと向うことにする。


 「待たせたな」

 「ああ、お早いお戻りで。それでどんな感じでしょうか?」

 「一応前向きに話をしてもらえる。今僕が考えているのは、紙を扱っている村があるのだが、そこに住む為の家などを用意して、工場で働きながら生活してもらおうと考えている。人によっては、畑に回ってもらう事もあるかもしれないがね」

 「なるほど。いろいろありがとうございます」

 「それで、今回の難民というのは、どれくらいの人数いるのだ?」

 「そうですね・・・・・・ほんとに申し訳ないですが、四百人程になるかと予想しているんです・・・・・・」

 「それは、下手をしたら町丸ごとって感じだな」

 「ええ、さまざまな町や村、国も違う者達が合流して、こちらにやって来たようでさすがにこの人数になりますと、私共もなんともできずに、貴方様を頼らせてもらいたいと思った次第です」

 「今その難民の人達は、どうやって過ごしているのだ?」

 「この街や近くの村などに散ってもらい、周辺で野宿してもらっております。さすがに街中に入れたりできるだけの余裕もありませんので」

 「食料などは何とかなっているのかな?」

 「正直、もうギリギリの状態です。後二・三日のうちに何とかできなければと、考えています」

 「わかった。早めに行動させてもらおう」

 「お願いします」

 そう言うと、僕は早速紙を作っていた村へとやって来て、村長に事情を話してここに町を造り上げることにした。今後も難民が増える可能性を考えて、千人くらいが住めるくらいの規模に造り上げるようにパペット達に指示を出す。

 町の配置などは申し訳ないがこちらで勝手に決めさせてもらって、サフィーリア教会と紙の工場と元々この村に住んでいた人達の住む家を中心に、放射線状に道を作り兵士の詰め所、ブレンダの店などの建物を配置して行こうと考える。

 今はどこに何を建てるのか、多目的シートを広げて町の完成予想図をレイシアとパペットを呼んで会議していた。大体の方針は決まったので、後は配置が終わり次第造るだけになるのだけれど、まずは食料が切羽詰っているな。

 当面の繋ぎとして、まずはブレンダに話を通してみるかな。


 「今時間はあるか?」

 『ええ、大丈夫よ。本の方は順調に売れているようなので、もっと値段を抑えた感じの物ができないか考えていたのだけれど、ちょっと難しいかしら?』

 「それなら紙の質を落とした物でも作って、量産するっていうのもいいかもしれないな。それより急ぎで四百人分の食料を調達したいのだけれど、何とかならないか?」

 『それはまた大量の注文ね。一度にというのなら少々難しいかもしれないけれど、少しずつなら何とかできるかもしれないわ』

 「じゃあ、それでいいので発注させてもらってもいいかな?」

 『わかったわ。それで直ぐに必要なのね?』

 「ああ、二・三日で尽きそうなのだそうだ」

 『急いで動くわ』

 「頼んだ」

 こっちは手を打てたので、僕の方でも食糧確保をしておくかな。野菜の類は今直ぐにどうこうできる物ではないので、野生の動物などを捕まえてくればなんとでもなりそうだな。問題はそれを誰にやらせるかって事だけれど・・・・・・

 あ、拠点に丁度よさそうな奴がいたな。少しこちらで使わせてもらおう。そう思って、早速蜘蛛型パペットに指示を言い渡すことにした。

 彼らは普段から拠点の外に出て、草や肉を食べていたので、こういう作業にも向いていると思われる。糸を吐き出せば、鳥なんかも捕まえて来てくれるだろうから、ひょっとしたら卵を産ませるとか、そういう方面でも期待していいかもしれないな~

 新しくできる町に、畜産施設を盛り込むことにした。


 後は不足する野菜の方だけれど、こっちは土地が痩せている為に芋系統や、豆系統くらいしか育たないという話だったな。そこを何とかしないと、町の維持をするのが大変になるのだけれど、そこは現代日本の技術の見せ所で、あっちには土がなくても水だけで生産する技術などもあったはず。

 植物に関した技術を持っている伐採パペットに、水に混ぜる栄養素の研究をさせてこっちは、実際に種を植え付けるシートと、ビニールハウス自体の生産を始めることにした。

 これも新しい町に配置する場所を決めておこう。上手く行けば、この水での栽培で作られた野菜が、他の村や他所の国にまで輸出できるようになれば安心できるのだけれどね~

 『お~い、聞こえるかの~』

 「その声は皇女殿下かな。久しぶりだな」

 『デミヒュルスの殲滅の確認と、それにともなう記念パーティーの日取りが決まったんでな、知らせようとこれを使ってみたぞ。三日後の昼前にはこちらに来てもらえるかのう』

 「おそらくは大丈夫だと思う。駄目そうなら連絡を入れるよ」

 『普通なら、絶対に来いと言いたいところなんだがな~。まあよい。間に合うように努力はしてくれよ』

 「わかった。ではまた三日後にな」

 『ああ、待っているぞ』

 そういえば、皇女殿下の話も残っていたのだったか・・・・・・僕も随分と忙しくなって来たものだな~


 さて、三日後までにこっちの話にきりを付けたいから、さっさと王子にも話を通しておくかな。

 「サリラント王子、今時間は大丈夫かな?」

 『おお、ほんとに会話できるのだな。丁度今、会議をしているところだがどうした?』

 「一応難民の人数が判明したのでその知らせをと思ってね。大体四百人近くいるそうだ。でもって、紙作りをさせている村を町にして、そこに収容させようと考えているのだが、それでいいか話し合ってくれ」

 『随分と話が進んでいるのだな』

 「今その四百人の難民を維持している食料が、後二・三日分しか持たないらしいからな。急いでいるのだよ」

 『なるほどな、考慮しよう』

 「頼んだ」

 これで一応の手は打てた感じかな。食料の早期確保に向けて、関係施設はさっさと造り上げて稼動させてしまうことにしよう。


 畜産系の施設をそうそうに造り上げ、動物の管理を村人にさせる事にした僕は、水栽培をおこなう為のビニールハウスを開発していた。

 詳しい構造などの知識は無いものの、水が滞ることなく循環するようにすることと、しっかりと根を伸ばせる場所を作ったり、光合成ができるような環境を整えてあげるなど建物内部の構造を考えて行く。

 これによって多くの人達に食糧を配れるだけの大規模農園を作るつもりでいる。このビニールハウス栽培は、基本的にはあまり人が中へと入らないように造りたい。出入りしてしまうと、それにともない虫などが繁殖してしまう可能性があるので、管理をパペットにさせようと考えている。

 収穫作業の段階から先を人の手で行い、出荷輸送の作業を現地の人でやってもらえばいいかなと考えている。まだ昨日の今日で、水に溶かす為の栄養素を開発できていないので、施設を造り終えた後は育てる為の作物選びを始めることにした。

 拠点の草原地帯の地下にある花の繁殖地にて、まずは種から芽を出させる工程から始めることにするのだが、この作業はレイシアと一緒になってすることにした。

 羊パペットから採れる綿を湿らせて、野菜の種をそこに置いて行く単純な作業になる。

 「そういえば、こっちの花の蜜を抽出する作業もしないといけないな」

 「これでいつでも美味しい蜂蜜が食べられるんだよね?」

 「ああ、思っていたよりは大変じゃなかったな。環境さえ整えてあげれば、普通に花を咲かせてくれたみたいだ」

 ちょうどいい機会なので、ハウス管理パペットを創造するついでに、蜂型パペットを創って蜂蜜を回収させよう。

 「魔生物作製」

 農民タイプのパペットを創り出したので、この子にはとりあえずこの種の管理から始めてもらおう。

 「魔生物作製」

 蜂型パペットはそんなに数はいらないと思い、今回は一体だけにした。出て来たのは実際に花を採りに行った時にいた蜂と同じで、子供サイズの蜂だったけれどね・・・・・・

 「蜂パペットはとりあえず、ここと上の草原エリアで蜂蜜を回収して来てくれ。農民パペットはここの種を管理して、芽が出た物から順番に、ハウス栽培に移ってくれ。またこっちは時間がかかると思うので、伐採パペットに協力して、栄養素の開発も頼む」

 そう言うと、それぞれのパペットが作業に移って行く。

 「それにしても蜂蜜か・・・・・・あの村、いや町になるのか。そこの名物にする為にちょっとダウングレードの物でも開発してみるかな?」

 「ダウングレード? 下って事?」

 「ああ、栽培しやすい花にしてこっち程の味ではなくても、そこそこの蜂蜜にでもしたらいいんじゃないかなって思ってね」

 「一般家庭にこの蜂蜜が出て来るようになるのね。いいね! でも、美味しい蜂蜜の価値が下がらない?」

 「ダウングレードは売り出すが、こっちのやつは僕達用にしよう。王子とか、舌が肥えたやつのところへ持って行くには、こっちの美味しい蜂蜜は、良い土産になるかもしれないしな」

 「ちょっともったいないかもしれないね」

 「まあ、じっくりと味わえる程は持っていかなければいいさ。ブレンダとかには、渡してもいいんじゃないか? 彼女なら価格を崩す心配はしなくていいだろう?」

 「確かに。もう蜂蜜って取れたかな?」

 「うーん。ああ、一瓶位ならもうあるみたいだぞ」

 「じゃあ、ちょっとブレンダのところに行って来る!」

 「ああ、行ってらっしゃい」

 蜂蜜を呼び出してそれをレイシアに渡してやると、早速ブレンダのところへと転移して行ったようだった。


 さて大規模水栽培農園を作り上げたので、王子の許可が無いけれどもう見切り発車で町を造ってしまおう。このビニールハウス農園が正常稼動してしまえば、この国の食料事情は一気に改善されて、他国からの輸入に頼ることもなくなるから、この町は確実に必要になるだろうと予測できる。

 もしこれを断って来たら、国民が反乱を起こしてもおかしくなくなるだろうな。まあ実際はそんなことはありえないと思うけれど、それくらいは重要な施設になって来ると思われる。

 それに畜産の方も実際にもっと人手が必要になって来るので、難民にそっちの仕事なんかをさせる必要もあるしね。

 この町はこの国で重要な場所になると予測できる。予測というか、強引にそうしちゃったって感じだけれど・・・・・・

 肉は直ぐにでも捕獲された野生動物で何とかできそうな感じだけれど、野菜はしばらくブレンダだのみになるとして、こっちのブレンダの店に人を送ってもらうようにしないといけないかな?

 そうなると難民用の物資の受け取りもかねて、転送魔道具の設置とかもお願いに行かないといけないな。

 レイシアも行っている事だから、僕もこれから打ち合わせしに行ってみるとするか~


 「お邪魔するぞー」

 「あら、バグも来たのね。いらっしゃい」

 「どうしたの?」

 二人がそれぞれに声をかけて来た。

 「まあ、今後の打ち合わせもしたかったからな。寄らせてもらったよ」

 「まあいいわ。それにしても、ほんとに蜂蜜の栽培に成功していたのね。ちょっとビックリだったわ。この蜂蜜、家で売り出してもいいのかしら?」

 「市場が荒れない程度なら、少量売り出してもいいかと思うけれど」

 「本当? それならぜひともお願いするわ」

 「わかった。おそらくこれのもっと品質の劣る蜂蜜を生産しようと考えている。例の難民を受け入れた町で大規模な農場を造るつもりでいるのだが、そっちの町にもブレンダの店を建設させている。なので人員の派遣をお願いしたい。難民用の食料も、そっちに転送してもらえると助かるのだが・・・・・・ちなみに、そこの店の転送魔道具がこの水晶だ」

 「なるほど、打ち合わせって、これのことなのね」

 「ああ。まだ王国からの許可は出ていないけれどもね。もたもたしていると飢える人も出て来るから、もう町を造り始めるように指示を出しておいたよ」

 「わかったわ。じゃあ直ぐに物資の運び込みを始めるようにするわね」

 「ありがたい。よろしく頼む」

 「構わないわよ。こちらとしても頼ってくれた方が、取引しやすいからね。そうじゃないと逆にバグに借りばかりが増えて、返しきれないから怖くなって来るわ」

 「それなら、お金の取引に変えて行くか?」

 「いいの?」

 「今回とか前回のいろいろで、お金を使う機会も出て来たからな。ある程度のお金はあっても困らないかと考えているよ」

 「こっちとしては、プレッシャーが無くなってホッとするのか、逆に用意しなければいけない金額にドキドキしていいのか、微妙なところね」

 「ブレンダにとっては、それくらいのお金の動きは、日常茶飯事なんじゃないの?」

 今まで、ハニートーストを頬張っていたレイシアが、会話に参加して来た。

 「まあ、確かに日常的ではあるのだけれどね。積み重なった金額を計算して見た事があってちょっと驚いたというのか、刺激的過ぎたというのか・・・・・・。ちょっと頼り過ぎたかもって思っていたところなのよ」

 「そういえば、作った物はどんどん売れて行っているって話だったな」

 「ええ。おかげで発明王とか言われて困っているんだけれどね」

 「作った物が売れてくれるのは、いいことなんじゃないの?」

 「確かにいいことよ。でも、それはバグが作れるからで、逆にバグにしか作れないのが困っているところなのよね」

 「どうして?」

 「簡単よ今バグが取引をしないって言えば、私の家は大打撃を受ける可能性が出て来るのよ」

 「技術を盗んだとか、言われるのか?」

 確か日本では特許とかいう制度があって、盗んだ技術とか使って商売とかしたら、罪になるって法律があったのだけれど、こっちの世界にもそういうのがあるのかな?

 「そういうことはないけれど、今まで供給できていた物が供給されないってなると、いろいろなところから苦情が殺到するのよ。最悪、供給を止めて価格の釣り上げをしているとか言われて、裁かれることになるかもしれないわね」

 「単純に作れなくなったとは、思われないのだな」

 「そう理解してくれればいいんだけれどもね」

 「ブレンダも大変なんだね」

 友達なはずなのに、そんな人事のようなことを呟くレイシアがいた。それとも、商売系統の話だからよくわからないって感じなのかな?

 「そうなって来ると私の家はバグの機嫌を窺って、契約を切られない様に媚を売るとかしないといけなくなる訳よ。悲しいことにそれが今の私の立場って訳ね」

 「何か、家の方から言われているのか?」

 「今のところは私が当主だから、そういうことは言われていないわね。ただ、機嫌を損ねるような事はするなとは、周りに言われているわ」

 「なら、今まで通りで問題ないわね!」

 今度はわかる話だったのか、元気よく意見を言っていた。まあこっちは別に何も変える必要性はないだろうね。

 「そうだな~」


 「さて、今後の納品について、お金の支払いにしたらいいのかしら?」

 「今はそこまで困っているって感じではないから、まあそっちの都合でそろそろお金でって言うのならって話しだよ」

 「なるほどね。じゃあ今回みたいな突発的な依頼なども引き受けつつ、そろそろ借りは返しておきたいなって思えばお金で支払って行くって感じでも構わないってことなのね?」

 「そういう話だ」

 「わかったわ。じゃあ今後ともよろしくお願いするわね」

 「ああ、こっちも突然頼みたい事とかできるかもしれないから、その時は頼む」

 「ええ、わかったわ」

 「この蜂蜜とかは、魔道具じゃないんだから、ブレンダでも作れないの?」

 「ああ、それね。以前やろうとした人もいたらしいのよ。調べてわかったのはその結果ね。スイートビーがやって来て花畑を占拠されてしまったので村が滅んだって話よ」

 「ベテラン冒険者が討伐に来たりとかしなかったの?」

 「ベテラン冒険者が村に到着した時には、蜂の巣が五つはできていて、とても退治できるような状況じゃあ無くなっていたらしいわ」

 「ふーん」

 なんとなくレイシアの考えていることがわかったな・・・・・・どうせそんなに強くなかったのにとか思っているのだろう・・・・・・

 「まあ蜂蜜も少量納品するようにはするよ」

 「ええ、お願いするわね」


 その後は二人をそのまま置いておいて、サフィーリア教会へと向うことにした。教会の方にもかなりの負担はかかっているようだし、さっさと難民を移動させてしまおうと思ったからだ。

 「失礼する。今時間など問題ないかな?」

 「ああ、バグさんいらっしゃい。ええ大丈夫ですよ。受け入れの話は上手く行きましたでしょうか?」

 「今はまだ、前向きに考えているって状態かな。ですが既にあちらで町を造り始めているので、難民の方達にはあちらへと移ってもらおうかと考えているのだが、いいかな?」

 「こちらとしては助かるのですが、許可も無く移動させてしまっていいものなのですか?」

 「問題を起さないようなら、おそらくは大丈夫だろう。後は向こうへ移ったらそれぞれに仕事を見付けて働いてもらいたいのだが、そこは大丈夫だろうか?」

 「仕事があるのは大歓迎ですよ。そうでなければ食べて行けませんからね」

 「ふむ、確か難民の方達は周辺の村にも別れて野宿しているのだったな?」

 「ええそうです。さすがにこの人数に来られても、教会側としても備蓄が足りませんからね」

 「では順番に移動を開始してもらおう」

 「よろしくお願いします」


 ジェレント最高司祭の案内で難民が一時待機している場所へと移動して行くと、殆どの人がテントすらなく布だけを体に巻いて過ごしているといった感じであった。

 難民達から少し離れた場所に転移用の魔法陣を展開して、現地へと飛ばす準備をしながら難民達に話しかけることにする。

 「荷物を持って、こちらに集まってくれ」

 ここにいるだけでも百人近い数がいる為に、何度か呼びかけても反応しない人や、鈍い人なんかもいるようだった。現地で難民の世話をしていた司祭の人にも手伝ってもらい、難民を何とか一塊にしてもらう。

 「これからあなた方には、マグレイア王国という国に来てもらう。現地の町に付いたら一時的に家に入ってもらうが、早急に仕事を探して活動してもらいたい。納得できない者はこのままここに留まるなり他所に行ってもらい、問題ない人はこちらの魔法陣より現地へと向かってくれ」

 「それではジェレントさん。こちらの対応はお任せする。僕は現地での誘導をしに行くので、ここの誘導が終わったら一度マグレイア王国に来てもらえるかな」

 「わかりました。お願いします」

 そう言って僕は魔法陣を使って、出来立てというか造りかけの町へと転移した。


 現地では、村人と教会に赴任している司祭に、難民の誘導の手伝いをお願いする。

 「まずは全員、この一番大きな多目的運動場へと案内してくれ。しばらくはこちらで寝泊りしてもらい、仕事を見付けた人から順番に町の家の方へと移って行ってもらおう」

 ブレンダの店の方には早速派遣されて来たと思われる人材がいて、物資を運び出しているようだった。ついでに村人にもその物資を運動場、体育館と言った方がいいかな? の方へと運び込んでもらい、早速奥さん方に鍋物の料理も作ってもらうことにする。

 食材の中には肉類も含まれていた為、野生動物の方はそのままにすることにした。というか、保存加工された肉の方が多いみたいだね。

 野菜はやっぱり痛みやすくてこういう救援物資には向かなかったか・・・・・・

 仕方がないので、村にあるイモ類を分けてもらって料理を作ってもらうことにした。

 野菜の早急な確保が必要だな~。栄養素の開発が終われば、時間の流れをいじって野菜を量産させることにしよう。というか、開発しているパペット二体の時間の流れを、いじった方がいいのかな?

 「村長、ここは任せても大丈夫かな?」

 「ええ、まあ大丈夫かと思いますが、一体どちらへ?」

 「救援物資は届いているようなのだが、野菜が足りない。これでは栄養が偏って体調を整えることができないので、手を打とうかと考えている。その準備をさせてもらおうかと」

 「なるほど、誘導して仕事を紹介していけばいいですか?」

 「ええ、女性の方ならまずは料理屋などの仕事などがいいかもしれないな。先に食事をしてもらって一息つかれたら早速料理作りに参加してもらったらいいかもしれない」

 「そうですね。やってみます」

 「わからないようなら後でこちらが割り振ったりするので、とりあえずはよろしく。後は、難民の中で暴れそうな人はこちらで対処させてもらおう」

 「わかりました。よろしくお願いします」

 難民の行動などを司書パペットに監視させて、拠点へと転移する。あまり時間もかけられないので、早速パペットに魔法をかけて、高速で開発してもらうことにした。

 栄養剤の開発が終わった伐採パペットには街造りの方へと向ってもらい、農民パペットには再び種と共に高速行動してもらって、ビニールハウスで早速野菜を育ててもらう。丁度試験栽培にもなっていい機会だったかもしれないな。まあその場合は失敗すると悲惨だろうけれどね・・・・・・

 まあそんな感じで第一陣の野菜の収穫をもって時間の流れを元に戻し、再び野菜の管理をお願いするとともに花の品種改良を指示して、ここの農場で育ててもらうことにした。


 さてできた野菜を村人に運んでもらう為に一度運動場へと向い、早速運んでもらった野菜を使って、料理を仕事にする者達の腕試しを兼ねた料理対決をおこなわせることにする。

 「とりあえず、なるべく素早く量と味の美味しい料理を作ってくれ。上位三名にそれぞれお店を経営してもらいたい。その他の人はお腹が空いていると思うが、よく味わって美味しいと思う人の料理に投票をしてくれ。あなた方が選んだ料理が、今後この町の料理屋で食べられるものになるので、適当に選ぶと後で自分達が困ると考えて決めて欲しい」

 そんな感じで料理人採用試験とさせてもらった。村人達の方からも参加する人や審査する人などもいて、ちょっとしたイベントみたいで楽しんでいる感じだね。

 「村長、他の難民の人達の誘導に行って来るので、ここは任せる。さっきの場所にやって来ると思うので、同じ手順で誘導をお願いする」

 「わかりました」

 ここは任せてとりあえずはジェレントの元へと向った。


 戻って来ると、十人くらいの難民が残っていて、ジェレントと何やら話し合っていた。

 「ジェレントさん、そちらは移動しない人ですか?」

 「ええ、知らない場所には行きたくないと言いまして」

 「それならば、好きにさせればいいと思いますが?」

 「ですがそれではこの先、生きて行けるのかどうか・・・・・・」

 「僕はチャンスを与えたが、それも一度だけです。本人がそのチャンスをいらないというのならば、別に無理に来てもらう必要もないと考えるが、そうだよな?」

 残っている人達にそう言うと・・・・・・

 「ああ、俺達は他所に行かせてもらう」

 「ジェレントさん、彼らは自分達で自分の道を選んだのだ、今は他の人達の方を優先しよう」

 「わかりました」

 「では、他の難民達のいるところを教えてもらえるかな?」

 転移魔法陣を閉鎖して、多目的シートを広げて周辺の村の場所を表示させる。指定された場所へと向うと早速その場の難民達を転移魔法で送り、ここでも残る人が少しいたけれどそのまま次々と転移させて行った。


 結局全員とは行かないまでも、やっぱり四百人近い人がこちらにやって来ていて、マグレイア王国を知らないサフィーリアの司祭達も、難民を心配してこちらへと付いて来ていた。

 彼らにも手伝ってもらい、まずは運動場へと移動してもらい料理を食べて少しでも落ち着いてもらった後で、みんなでどんな仕事をするかの話し合いをしてもらった。

 仕事の割り振りは直ぐには決まらなかったのだけれど、村長も交えて話し合って徐々に決めて行ってもらえばいいかなって考える。そもそもまだ町は造りかけであり、一気に全員が家に入れる訳でもないのだからね。

 村人と難民の話し合いを離れて司祭達と見ていたところ、王子から通信が入ったようだ。

 『あー。聞こえているだろうか?』

 「聞こえるよ。話はついたかな?」

 『ああ、今話し合いが終わった。こちらの条件として、マグレイア王国に永住するのであれば、許可しようという話になった。行ったり来たりされるのは、都合が悪いって話だったかな』

 「なるほど。わかった、それで話は進めることにするよ」

 『では後は任せる』

 「ああ、また何かあったらよろしく頼む」

 王子とのやり取りが終わったので、今の王子の話しをジェレントにもしておくことにした。

 「ということで、難民の人達に確認をお願いできるかな?」

 「わかりました」

 付いて来ていた司祭と村の司祭も手伝って、難民達に確認をして行く。確認作業が終わった結果、どの道もう帰る場所が無くなっていたので、こちらに永住することに不満はなさそうだという話だった。

 これで正式に難民受け入れの作業は終わりって感じかな~

 後は仕事を見付けてそれぞれの家に移ってくれれば、町として機能して行くだろう。

 ジェレントと付いて来ていた司祭達は、今後の彼らを心配してしばらくこの町に滞在することになった。難民の中には親を亡くした子供などもいたので、今後が心配なのだろうね。

 村に派遣されていた司祭の元、勉強をしながら自立するまで教会で引き取られることになったようだけれどね。子供の数がそれなりに多いので、教会用の保護施設の併設も指示しておくことにした。


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