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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十二章  ようこそ魔王軍へ
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反乱の終結

 「ヤーズエルトはいるか~」

 「おう、いるぞー。進展があったか?」

 「大体の事情が判明したと思う。サラ姫にもどうしてこうなったのか説明しておいた方がいいかな?」

 「いや、俺がまず確認させてもらいたい」

 「決めるのは家来じゃなく、王族の役目だと思うのだがな。二度手間になるかもしれないがまあいいだろう。他に情報を知っておくべき者はいるのか?」

 「いや、俺だけだ」

 「じゃあ、初めに来た時に通された部屋にでも行こうか」

 「わかった」

 中には黒騎士もいたけれど、まあ特に気にすることもないな。向こうも特に何も言って来なかったしね。

 そういえば、音と映像がバラバラだったな。見せる前にずれを修正しないとだな。多目的シートをテーブルに広げながら、映像と音を修正しながら再生させた。


 「なるほど、偶然が重なったということか・・・・・・」

 魔術師ギルド長のグラレスの話が終わった後、ヤーズエルトはそう言ってため息をついた。

 「まあ、その偶然を利用して悪巧みを働いた者がいたようだがな」

 僕がそう言っていると、司書パペットから追加の情報が伝わって来たようだ。どうやら追加調査に加えた盗賊ギルドの方に、新たな情報があったようだね。

 魔道具によってダンジョンが開いたっていうのは事実で、起動させてしまったのが盗賊ギルドの一員だったようだ。その魔道具を起動させてしまったのを、王子のせいにしたのがグラレスで貸しができてしまった盗賊ギルドが、情報操作をしていたそうだ。

 グラレスのやった工作は、知り合いの商人に別の魔道具を持たせて、珍しい魔道具があると王子に触らせて、その魔道具を起動させたということだったらしい。

 ダンジョンを解放してしまった盗賊は既に粛清されており、商人も情報漏洩を恐れたグラレスの指示でこの世にはいなくなっているという。

 一緒にこの情報を見ていたヤーズエルトも、思わず唸ってしまった。

 「事実はどうあれ、証明するのは難しそうだな」

 とりあえず、盗賊ギルドの調査でわかった事実が、どこから出て来たのかパペットに聞いてみると、忍者パペットによる薬を使った自白によって得られた情報であると確認が取れた。

 グラレスも捕縛できているのでそいつも捕獲して、二人まとめて自白剤で公開裁判でもしてみたら、サラ姫の無実の立証はできるかな? それくらいが妥当な作戦だろう。盗賊ギルド員の確保を指示しておく。

 「今、盗賊ギルド員を捕獲させている。グラレスも捕まえてあるので、公開裁判でもしたら無実は証明できると思うが、サラ姫はこのまま王宮へ帰って上手くやって行けるのか?」

 「おそらくは、時期にどこかに輿入れすることになると思う」

 「結末として、お前はそれでいいのか?」

 「ああ、構わないとも。無実が証明されて再び王宮にさえ戻れればな。多少の気まずさもあるかもしれないが、そこは我慢してもらうしかあるまい」

 サラ姫に惚れて助けたとか、そういう話では無かったって事なのか・・・・・・身分を考えて自分の立場を理解しているからの言動なのか、わからないな。とりあえず本人が納得できているのならば、公開裁判という手で進めていくのがいいかもしれないな。

 以前と同じように王様の前に転移して、公開裁判を開催してもらうのがいいかもしれないなと思い、レイシアに手を差し出すと直ぐに手を取って来た。行動パターンが読まれたかな?


 「突然だがお邪魔する」

 身分を隠す黒尽くめのいでたちで、王座の間へと割り込んだ僕達二人は、そう言って国王に話しかけた。王座の間は、どこかの誰かとの謁見の最中だったらしいが、まあこっちの方が重要案件であろう。

 「何者だ!」

 「国王よ、今回のダンジョンの封印を解いてしまった者は別にいて、それを王子のせいにした者もこちらで捕らえてある。自白剤を用いて今回の騒動の説明をさせようと思っているので、公開裁判を開いてもらいたい」

 兵士が警戒して取り囲んで来たけれど、それを無視して国王の反応を窺ってみる。警戒するばかりで、こっちの話の内容を考えようともしていないような感じかな?

 「侵入者を捕らえよ」

 王の命令で剣を抜いた近衛騎士達の懐に潜り込んで、一人一撃で動けなくさせて行く。背後ではレイシアが同じように素手で騎士達を倒していた。以前素手でも倒せるかもとか言っていたのは、どうやら本当だったみたいだね。

 「王よ、手加減しているうちに、とっとと兵を引かせたらどうだ? それとも、王族を皆殺しにしなければ話も聞かんと言う感じかな?」

 「わ、わかった! 皆の者引け!」

 「先程の回答やいかに?」

 「わ、わかった。望むようにしよう」

 「お前はこの国の国王なのだろう? 脅されたら全て丸投げか? そんな風だから国が乱れるのだ・・・・・・今この場で王子に王位を譲り退位しろ」

 「そ、それは・・・・・・王子にはまだ早過ぎる・・・・・・」

 司書パペットにこの国で、王子を補佐できそうな人物に心当たりがないか聞いてみる。多目的シートを広げて、リストを見てみると、わずかながら適任と思われる人物がいそうだった。

 「そこで震えている大臣。王子とベルストリア財務大臣と、マイアクライン防衛補佐官をここに連れて来い」

 腰を抜かしていた大臣は、嫌々って感じで首を振っていた。根性がないな・・・・・・自分で連れて来た方がいいかな?

 「ここ、任せてもいいかな?」

 「ええ、大丈夫だと思う」

 レイシアに向き直ってそう言う。アルタクスもいるから大丈夫だね。そう思い、とりあえずはベルストリアの位置をねずみパペットから教えてもらって、転移することにした。


 「突然で申し訳ないが、お邪魔するよ」

 「何者だ!」

 素早く警戒して、こっち剣を向けて来た。文官って感じの人だったけれど、少しは剣の腕も立つのかもしれないな。

 「今はまだ名乗れないが、とりあえず今はサラ姫に協力している者と言っておこうか。ここに来た用件を言おう。これから国王陛下には退位してもらい、代わりに王子には国王になってもらおうと思っている。ベルストリア殿には王子を補佐してもらいたく、今から王座の間へと来ていただきたい」

 「突然過ぎるし余所者に指示される言われはない。今はまだ内乱中であるぞ」

 「国民には、自分達の町や村に帰ってもらっている。既に内乱は終息しているよ」

 「それは本当か!」

 「ああ、今日は国王に今回の騒ぎの首謀者に対して、公開裁判をするよう言いに来たのだがね。どうやら国がどれだけ乱れても気にしないといった感じだったので、勝手ながら退位していただくことにした」

 「まさか殺したのか!」

 「今のところは誰一人として殺してはいないな。ただ、本気で襲って来たならば反撃させてもらうけれどね」

 「鵜呑みにすることはできない、じっくり考えさせてもらいたいところなのだが・・・・・・今直ぐっていった感じだな」

 「あまり長いこと、王族の揉め事に国民を巻き込みたくないのでね。さっさと済ませたい」

 「とりあえずは、皆の話を聞いて判断させてもらう」

 「わかった。ではまずは王座の間にて、立ち会ってもらおう」

 まずは一人目として、王座の間へと転移して連れて行く。レイシアは無事だね。特に周りもおかしな事はしていなさそうなので、続いてマイアクラインのところへと転移した。


 「突然だが、お邪魔させてもらう」

 「貴様、魔術師ギルドの者ではないな。魔族が何の用だ!」

 おー、転移できたことでそこまで考えられるとは、かなり優勝な人材だな~。今は腰の剣に手をやりいつでも抜けるように警戒しているが、まだ武器を構えてはいない。これは抜いたら危険だって思ってのことかな? まあ、とりあえず会話できそうなのでよしとしておこうかな。

 「素性について今は言えないので、ここに来た用件を話そう。今回の内乱について、首謀者である者達をこちらで捕縛させてもらっている。国王に公開裁判にて自白させるように言ったのだがあまり乗り気ではなくてね、話も聞かずに騎士に攻撃させたので反撃させてもらったら、こちらの要求は全て応じるとか丸投げされたよ。まあ、こんな国王では国も乱れるだけだって事で、王子に国王になってもらいたいので、ベルストリア殿と一緒に補佐をして欲しい」

 「つまり私とベルストリア殿に、宰相になれということか」

 「そうだ。今から王座の間にて、簡単に引継ぎをしてもらいたいので、一緒に来てもらいたいのだがどうかな?」

 「何故魔族がそんな事をする必要がある?」

 「そうだな。今回はサラ姫の無実を証明するよう、依頼されて動いている。この国には当面の間は平和でいて欲しいのだよ」

 「お前とはいずれ、敵として戦うこともあるということだな?」

 「それはどうかな? 直接戦うことは早々ないと思うが・・・・・・この国がこの後、滅ぼすべき腐った国だと判断したら、潰しに来ることもあるかもしれないが、その時には既にお前はお前ではないのかもしれないな」

 「それはどういう意味だ?」

 「お前の今後の行動次第で、どうなるかが変わるということだ。話を戻そうか。王座の間にて略式の王位継承をおこないたいので、立ち会うかどうか」

 「貴様の話を全て信じるつもりはない。だが今は事実確認が先か・・・・・・まずは自分の目で見て確認させてもらおう」

 「それでいい。この国はお前達の国なのだからな」

 マイアクラインを連れて王座の間に転移する。後は王子を連れて来たらとりあえず王位継承ができるかな? とりあえずは王子を連れて来よう。

 転移して王子のいる部屋へと向ったのだが、王子は見た目まだ子供であった。六・七歳くらいだろうか? 難しい話をしても、上手く理解してもらえないかもしれないな。

 「お邪魔するよ」

 「だ、誰?」

 「これから略式ながら、王位継承をおこなうので、王座の間に来てもらうよ」

 「お、王様は、お父様だ」

 「現国王は今日で退位する。次の王様は君だ。こんな怪しい者と話していても落ち着かないだろう。まずは王座の間へ移動しようか」

 理解してもらうまで話そうとしても、あまり意味は無さそうなので、とっとと転移して合流することにした。


 「ベルストリア殿、略式ながら王位継承の儀式に必要な人材は他に誰かいるものか?」

 「それならば、アルファント教の最高司祭様の立会いが必要になる」

 そういえばこういうものって、司祭様辺りが王冠を王様の頭に乗せたりしていたな~。多目的シートで確認して見るけれど、王城の情報は集めたけれど、教会の方までは情報はなかった。さすがに、どこに教会があるかという情報はあったので、入り口から入って行けばいいかな? そう思って入り口上空へとまずは転移して、安全確認をしてから教会内部へと向った。

 中に入ると、その場にいた者達が一斉にこちらに注目して来た。まあ、全身黒尽くめで怪しいから仕方ないよね~

 「最高司祭様に話がある。取り次いでもらえるかな?」

 「あ、あの、どのようなご用件でしょうか?」

 近くにいた話しかけた神官ではなく、別の神官がそう言って来たのでそちらに向って用件を伝える事にした。

 「これから王城にて、略式ながら王位継承の儀式を執り行いたい。その立会いをお願いしに来た。できれば今直ぐにでも来てもらいたいと伝えて欲しい」

 「お、王位継承の儀式ですか!」

 「ああ、説明はこちらからした方がいいかな? それとも、取り次いでもらえるのかな?」

 おろおろとしていた神官の後ろから、話を聞いていた他の司祭の人が話しかけて来た。

 「とりあえずこちらへいらしてください」

 そう言って移動し始めたので、付いて行くことにした。案内されたのは応接室みたいな部屋で、そこに座って待っていて欲しいとのことだった。

 座って待っている間、調査のスキルで確認していると案内して来た司祭が、最高司祭の部屋に取り次ぎに行ってくれたみたいだな。少しの間、何やら話し込んだ感じの後、最高司祭と思える人がこっちへとやって来るのがわかった。

 とりあえず門前払いはなかったようで、ホッとしたよ。


 しばらくすると、最高司祭が部屋にやって来る。

 「お待たせしました」

 「いえ」

 「それで、王位継承の儀式をするとか聞いたのですが、随分と急な話ですね。もし仮に、その話が本当だったとしても、準備をするのにそれなりの時間というものが必要なのですが」

 「仮の継承儀式でもか?」

 「そうですね。仮にもこの国の未来に関わる神聖な儀式ですので」

 「後日正式な手続きでもって儀式をすることにして、今日は簡略化したもので済ませることは難しいのか?」

 「そうですね、次代を担うのに相応しい者かどうか、お伺いを立てなければなりませんので、それなりの時間というものが必要でしょう」

 「今現在の国王が、相応しい者とは思えないのだがな」

 「それは貴方がそう思っているだけで、アルファント神様のお考えではありません」

 「つまり、儀式をするつもりはないということか?」

 ここに来てまた障害が現れたって事になるのかな・・・・・・司書パペットにアルファント教会についての情報収集をするように命令を飛ばす。会話している間にでも、何かしらの情報が得られればいいのだけれど・・・・・・

 「しないとはいいませんが、今直ぐという話ではありません」

 「ちなみに聞くが、お前は神の声を聞いたことはあるのか?」

 「最高司祭を務めておりますので、何度も」

 「では神からの声を聞くには、毎回時間をかけた準備が必要なのか?」

 「そうですね・・・・・・緊急の時はそうではありません。アルファント神様からお声をかけてくださいますので」

 「では今回の継承に問題がある場合は、アルファント様の方から止めろと言われるのでは?」

 「それはそこまで緊急ではないのだろうと思います」

 宗教関係者は厄介だな~。いっそのこと、別の教会に頼む方向で行くのはどうなのかな? 特に戦闘を司っているという教会では、変に力を持たれると厄介事になりそうなので、ここらで別の宗教に変えた方がいい気がするな。

 「ある程度の状況はわかった。無理強いしていたようだな。別のところへ頼むことにしよう」

 「別のところですか? それは、フレスベルド国の歴史に泥を塗る行為ですよ」

 「ああ、気にしなくていい。そのうち国民全員が受け入れてくれるので。既に別の国で、受け入れてもらえているので、実績もある」

 「そうですか・・・・・・まあ、どうしてもとおっしゃるのなら仕方ありませんね」

 「では、邪魔したな」


 あまり時間もないことなので、その場でサフィーリア教会の本部へと転移する。中に入ると、やっぱり黒尽くめで怪しかったらしくその場にいた者達が警戒したようだった。まあ、とりあえず近場にいた関係者に話しかけてみるかな。

 「失礼する。フレスベルド国という国に、サフィーリア教会はあるか?」

 「え、えっと。国であるのならば、我々の教会は必ずあると思われます。その、多少大きかったり小さかったりというのはあると思いますが・・・・・・」

 「では、今はその国ではアルファント教が力を持っているとしても、サフィーリア教で王位継承の略式の儀式というのはできるものかな?」

 「え、王位継承の儀式を内でですか! そ、そういう話は、私ではちょっとお答えできないのですが・・・・・・」

 「今、関係者を待たせている状況なので、急ぎ話がわかる人に取次ぎをお願いしたい」

 「あ、はい、少々お待ちください」

 「あ、時間もないので、近くまで一緒に行かせてもらおう」

 「はあ、ではこちらへ」


 そうして向った先は、この教会で最高司祭をしているジェレントという人のところらしかった。案内してくれた司祭が部屋の中へと入って行くのを、廊下で待つことにする。

 そこまで待つこともなく、ひょっこり顔を見せた司祭が中へどうぞと言ってくれた。

 「突然で申し訳ない、邪魔する」

 一瞬ギョッとした感じだったが、何とか姿勢を戻して声をかけて来た。

 「王位継承の儀式の話でしたか。アルファント教がそれまで取り仕切っていたのならば、後々に内乱の火種になる可能性もあります。できれば、お断りしたいところですね」

 「まだ、可能性でしかない話なのだが、今フレスベルド国は内乱で乱れている状況で、その内乱を引き起こした者に協力している可能性がある。僕としては、王子に王位を継がせて内乱を終結させたいと思っているのだが、そこで儀式をおこなってもらうよう話をすると、儀式には時間が必要と言われた。それはどこもそういうものなのかな? 正式な儀式は後で、略式のものをと思っていたのだが」

 「確かに神へのお祈りなどで、時間は必要になりますが、どちらかといえばそれは精神的なものかと思われます」

 「精神的なもの?」

 「教会側ではなく、今回の場合は王位を継がれる王子様の、国を背負うという決意をする為の時間ですね。ですので、略式の王位継承の儀式の場合ですと、見届けるだけでいいかと思われますよ」

 「では、それが神の意志で決めなければいけないと渋ったのは、その司祭に何か考えがあったということになるかな?」

 「一概には否定できませんが、私達の場合でいけば、サフィーリア様は見守ってくれるという感じでしょうか。そこに向き不向きを信託してくださるとか、そう言ったことはないと思われます。逆に信託により選ばれる者であるのならば、教会を上げて王座に付くようにと、協力するはずですね」

 「では今回の場合、こちらに力をお貸ししてもらう為の条件などありますか?」

 「その状況でなお力を貸すとなると・・・・・・。まずは何をおいても身の安全でしょうか。そしてアルファント教に対して、明確な不正の事実があるのならば、力を貸せるかと思われます」

 やっぱり、いろいろと難しそうだな。何か問題でも抱えていてくれればいいのだけれどな~。何か情報がないか、多目的シートを広げて見てみる。それによると王子は第二王妃の息子で、正妃の子供は第一王女と書いてある。そして正妃が、アルファントの熱心な信者であることから、ここに何か繋がりがあるかもしれない。

 司書パペットに、正妃との繋がりを重点的に調べるように指示を出すと直ぐに反応が返って来た。

 どうやら、正妃からアルファント側に王子の継承儀式に反対するように指示が出されているようだね。

 「正妃がどうやら自分の第一王女に後を継がせたくて、アルファント教会の方に指示を出しているみたいです。この場合は、協力をお願いできると考えていいのかな?」

 「そうですね、確実な証拠に繋がる物があるのならば、協力しましょう」

 司書パペットに確認してみると、アルファント教会宛の手紙を抑えたという報告が上がってきた。

 「正妃がアルファント教会に宛てた手紙を、こちらで手に入れたようなのだが証拠には不十分かな?」

 「いえ、そこまではっきりした物であるのならば、大丈夫かと。そうなりますと誰を派遣するべきでしょうか・・・・・・」

 「先程どこの国にも教会があるという話でしたが、フレスベルド国にあるこちらの教会には荷が重い話なのか?」

 「そうですね。どちらかといえば、国民とのやり取りだけですので、王族とのやり取りは向いていないかと思います。ですので、こちらから一人派遣することになりますね。急ぎ旅の支度をさせましょう」

 「今現在、王座でみなが待っている状況なので、仕度は後回しでも構わないかな?」

 「というと? 何か移動手段がおありだと?」

 「申し遅れました。マグレイア王国で教育の人員を送ってくださり大変助かりました。訳あって、今回はフレスベルド国にて素性を隠して行動させてもらっている。僕の名前はバグという。以後お見知りおきを」

 今更ながら、仮面を外して深くお辞儀をした。

 「確かに、あの時と同じように突然ですね。私は、ジェレントと言います。もしよろしければ、この一件が終わりましたら、ご相談したいことがあるので、また来てくださいますか?」

 「わかりました。それでは直ぐにでも戻りたいところなので、一緒に行ってもらえる方を紹介していただいても?」

 「わかりました。少々お待ちください」


 そう言って部屋を出て行った。どうやら話が進みそうだな。今回の騒動はどこからどこまでが、誰の計画だったのだろう? まだまだやらないといけない事は多そうだな~

 「お待たせしました。今回フレスベルド国へと同行する、マフィリニア司祭です」

 「よろしくお願いします」

 女性の方か。まあ礼儀作法で問題なければ、別に問題になったりはしないかもしれないな。サフィーリア教は慈愛を司っていたしね。

 「突然で申し訳ないのだが、よろしく。早速始めたいがいいかな?」

 「あ、はい。魔道具で跳ぶとか言う話なのですよね?」

 「あれは僕以外の人が飛べるようにと開発した物なので、今回は普通に魔法で飛ぶ」

 「そうですか、わかりましたいつでもどうぞ」

 「それではジェレント様、彼女をお借りする。また近いうちに来るのでよろしく」

 「はい。こちらこそよろしくお願いします」

 挨拶も終わったので、早速マフィリニア司祭を連れて転移した。


 「遅くなって申し訳ない」

 「いや、それよりもそちらのご婦人はどなたかな? アルファント教の最高司祭様は、ゲムセア様だったと思われるが?」

 「申し訳ないが彼は正妃と内通して、今回の継承の儀式の妨害をしている為に、連れて来られない。そこでこの際アルファント教の力を削ぐ為にも、サフィーリア教に協力をしてもらい継承の略式の儀式をしてもらおうかと、彼女マフィリニア司祭様をお連れした」

 「なるほど、それで先程の不穏な発言は、根拠があるものでしょうか?」

 ベルストリア財務大臣の発言に、正妃が書いた手紙を呼び寄せて見せることで答える。

 「これは確かに、正妃の物で間違い無さそうだな。お前の意見は納得できるものだ。しかし、今一度状況説明から始めてくれるか? 今だよくわかっていない者もいるであろうから、今後についていろいろと考えておきたい」

 その要請に多目的シートを広げて、魔術師ギルド長の会話を再生して見せることにした。そして、こちらの推測も含めてまだわかっていない情報なども聞かせて行く。まあ、何も全部が全部を僕が解決しなくてもいいだろうしね。こっちとしてはサラ姫が無実だと証明できて、その後ヤーズエルトを仲間に誘いやすい状況に持っていければ問題はないはずだ。

 後のことは、残っている人達で何とかしたらいいと思う。

 多少の戸惑いや、まだ完全には解決していない問題などもあるものの、略式ながら王位継承が無事に終わり次に公開裁判の準備が進められた。

 状況がまだわかっていない国民が多く、結界に閉じ込めている状態を維持しているので、公開裁判の様子を町や村の一番目立つ広場で、テレビの生中継のように見せる魔道具を用意して裁判が開かれ、ようやく国中の人々が今回の騒動を正確に理解することができた。

 これによって内乱はやっと終わりを迎え、それと共にサラ姫に危害を加えようとしている者は、表向きにはいなくなったと思える。裏で企んでいた場合は、わからないのでそこは近衛騎士に任せよう。まあ無実がわかった段階でサラ姫に何かしても、何も変化はないのだろうけれどね。あるとしたら内乱をさせたい勢力がいる場合かな?


 「ヤーズエルト。これで今回の依頼は達成されたことになるのかな?」

 一応念の為に確認をしてみることにした。

 「ああ、十分過ぎる程だ。協力に感謝する」

 僕達は今、王城の一室で話し合っている。無事にサラ姫も城に戻れて、今は全体的に事後処理をしているって感じだね。後の話は黒騎士に任せておくかな~。そう思って黒騎士を見てみると・・・・・・

 「じゃあ仲間になってもらえるということで、いいのかな?」

 そう聞いていた。

 「ああ、約束は果たされたのだから、こちらも約束は守ろう」

 「では君にはこれから、遊撃四天将として活動してもらいたい。といっても今直ぐではなく、今しばらくはこのまま過ごしていてくれていいよ。活動してもらいたい時には呼びに来るからね。しいてやって欲しいことといえば、もっと強くなっておいて欲しいって感じかな? 人間の中ではそれなりに強い方だけれど、今のままでは足手まといだからね」

 「それなりには自信があったんだがな~」

 「それなりでは役に立たないよ。せめて彼女くらいの実力は持っていて欲しいところだな~」

 「そういえば、特技四天将の副官だって話だったな。そんなに強いのか?」

 レイシアが、ちょっとむっとした感じで答えた。

 「そう思うのなら、かかって来たらいい。ハンデ有りでも負ける気がしないわ」

 「女相手に勝負するっていうのはちょっとな・・・・・・」

 そう言ったヤーズエルトの首元には、いつの間に抜かれていたのか、日本刀の刃が光っていた。一応勘違いしないように言っておいてやろう。

 「副官は、剣士じゃなくて魔法使いだぞ。後衛職に懐に入られても反応もできない近衛騎士っていうのは恥ずかしいと思うのだけれどな~」

 「すまない、俺の目が曇っていたようだ。正式に謝罪させてもらおう」

 ヤーズエルトがそうやって謝った事で、レイシアは大人しく引き下がった。

 「では話し合いはこれまでとして、解散しますか。ヤーズエルトはがんばって修行でもしておいてね」

 そう言って黒騎士は姿を消した。

 「町や村の結界は解いておいたが、ダンジョンはとりあえずそのまま結界を張ったままにしておくぞ。こっちも途中で用事ができたので、一度戻らせてもらう。構わないか?」

 「ああ、協力には感謝する。用事とやらが済んだら、こっちに来るのか?」

 「ダンジョンのことがあるから、一度は顔を出すかもな。時期は未定だが・・・・・・」

 「そうか、ではそれまでは国内の安定の為に動き回るとしよう」

 「まあがんばれ。それと一応、今回協力してくれたサフィーリア教会が、嫌がらせされないように注意していてくれ」

 「わかった」

 話は済んだので、僕達はサフィーリア教本部へと向かうことにした。マフィリニアには先に帰ってもらっていて、後日正式にフレスベルド国へと派遣されるという話を聞いた。

 王位継承の儀式をサフィーリア教会主導でおこなうに辺り、新しく教会も建てられることになったので、そこを任されるという話になっている。教会の場所は既に手配され、建築はこちらのパペットに任せて建てさせているところだった。

 完成すれば元々こちらにあった教会から、信者の人達も新しい教会へと移り活動して行くという話になっている。

 まだ全てが終わった訳ではないので、こちらも独自に情報などを集めて、危害が加えられないように警戒をして行こうと思う。


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