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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十章  新設、王立冒険者養成学校
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バーライド家

 数日後、ブレンダから通信が入った。

 『今いいかしら?』

 「ああ、異形討伐か?」

 『いえ、レイシアさんの家の事なのだけれど・・・・・・』

 「レイシアの実家って事か?」

 『ええ。いろいろと問題があって、お取り潰しって事になっていたけれど、レイシアを当主にして再興しようって話が来ているのよ』

 「今更って感じの話だな」

 『そうね、多分異形と渡り合える力を、国に置いておきたいのでしょうね。後は戦争での切り札かしら』

 そういえば、隣国との戦争も始まっていたのだったか。

 まあ、どちらにしてもレイシアの意思を確認しないで、勝手に決められることではないな。

 そう考え、レイシアがダンジョンから帰って来るのを待つことにした。

 「お帰り~」

 「お帰りなさい、レイシアさん」

 夕方頃、拠点にブレンダを招いてレイシアの帰りを待っていた。

 「ただいま。いらっしゃい、ブレンダ」

 レイシアは、ちょっと意外そうな顔をして、ブレンダに挨拶している。

 まずはダンジョンに行ってお腹も減っているであろうと、夕食を先に済ませることにする。今日の夕食は、香辛料を集めまくって何とかそれっぽくなったと思う、カレーを用意した。

 キャンプなどで作った経験があったので、ルーさえできれば調理自体はそこまで大変ではない。後はお米っぽいやつも用意して完成である。

 香辛料が一杯入っているので、味は刺激的かもしれないのが、ちょっと受け入れられるのか心配だったけれど、どうやら大丈夫だったみたいだな。

 「何これ、初めて食べる味だわ」

 「うん、何か辛いのに不思議と次も食べたくなる感じだね」

 「体がぽかぽかしてくるわね」

 「美味しいよ!」

 好評なようで、よかった。

 受け入れられて安心したのでそれではとカレーを食べる。欲を言えば福神漬けとか、そういう付け合わせとかも欲しいな~

 そんな感じでご飯もひと段落して、食後のデザートを楽しみながら、お茶を用意するとブレンダが話を切り出した。


 「今日はレイシアさんに話があって来たの」

 「何?」

 「リンデグルー連合王国は、あなたを当主として家の復権をするようにと言って来ているわ。どうするのかあなたの意見を聞きたいと思って、今日は来ました」

 「何で今頃?」

 「隠しても仕方ないことなので正直に言うわね。あなたの冒険者としての実力が欲しいのだと思う。異形と戦える力を戦争の切り札にしたいと考えているのではと、私は考えているの」

 「そう。それなら私はもう貴族でもなんでもないわ。というよりも、私は生まれた時には普通の生活だったもの、貴族の生活ってものを知らないわ」

 「そうね。ただこの話を聞いて、お母様が喜んでおられるの。遠縁の貴族と一緒になって、家の再興の準備を始めているわ」

 不安に思ったのか、レイシアが手を握って来た。

 僕が勇気付ける意味で手を握り返してあげると、レイシアは決意した目でブレンダを見詰め返した。

 「お母様の所に行って、話をして来る」

 「わかったわ。じゃあ私の話しはここまでなので、今日のところは引き上げるわね。それじゃあねレイシアさん、バグ」

 「ああ、またな」

 「ブレンダ、おやすみなさい」

 ブレンダが帰って行き、僕らはその後特に会話もなく眠りについた。


 次の日の朝、僕達は早速レイシアの母親に会う為に、国へと帰ることにした。

 そういえば、レイシアの家族の話とか、聞いた事がなかったな~

 そんな事を考えながら、黙ってレイシアの向う先へと歩く。

 母親は、遠縁の貴族の屋敷に間借りして生活をしているという話なので、今僕達はその貴族の屋敷に向かっているのだけれど、僕らの服装は普段通りで貴族っぽくなかった。

 やっぱり見下して来るのだろうか、そう思うとあまりこの先には行きたくないなって思ってしまう。

 「レイシアです、母に会いに来ました」

 屋敷の門番にそう言うと中に通される。応接室に通された後、そんなに待たずにどことなくレイシアに似た女性がやって来た。

 「レイシア、よく無事で!」

 「お母様、お久しぶりです」

 二人がしばらく抱き合って、いろいろ確認のような報告をし合っていたので、僕は先にソファーに座ってくつろがせてもらった。

 しばらくして満足したのか、レイシアが僕の対面、母親がその横に座って今後の話をする。

 「話は聞いていると思うのだけれど、バーライド家の再興が叶いました。レイシア、よくやってくれました」

 「お母様そのことですが、私はこのまま冒険者として過ごしていきたいと思っています」

 「何を言っているの? 冒険者なんかやっていては、いずれ危険な目に合ってしまうのですよ。このまま家を再興して、貴族となれば、苦労することも無いのです」

 そこで僕は始めて、会話に参加することにした。

 「お話中失礼するが、今回貴族になった場合、レイシアは安全ではなくなる可能性の方が高い。戦争が始まっているから、レイシアが戦場に借り出されることが決定していると予測できる」

 「あなたは?」

 母親は、今更気が付いたって顔をしてこっちを見て来た。

 「冒険者仲間の、バグという。以後お見知りおきを」

 「そう、ですがこれからのレイシアは、貴族としていろいろと学ばねばならないので、申し訳ありませんがお帰りください」

 「失礼ですが、レイシアの自由意志を認めないということかな?」

 「そんなことは言っていません。これはレイシアにとって、とてもいいお話なのです」

 「レイシアを、戦場に叩き込むことがか?」

 「それは・・・・・・あなたの勝手な予想なのでは?」

 「では、絶対にありえないという根拠を教えてくれ」

 「貴族になれば、冒険者のように毎日苦労して生活をしなくて済むようになるのです。絶対に冒険者などよりまともな生活が出来ます」

 「そうか、そこまで冒険者が危険で貧しいと思い込んでいるのなら、僕達の今の生活を見て自分の目で確かめてみるがいい」

 そう言うと、レイシアも連れて拠点へと飛んだ。

 そして連れて来た母親は、突然知らない場所へとやって来た事に戸惑い、その次にリビングに溢れる、豪華な装飾の置物や、絨毯、それらの品々に驚きを見せた。

 下手な王侯貴族など、目じゃない程の品々が、ここには一杯置かれている。

 「見ての通り、はっきり言えばあなたの言う貴族などになると、レイシアの生活は豊かになるどころか、不便なものへと変わってしまう。これでも、冒険者よりも貴族になれと言えるのか?」

 その後お茶とデザートを用意してもう一度ちゃんと話し合った後、母親はやっとレイシアの話をちゃんと聞くようになり、このままでいることを認めた。

 話し合いが終わり、母親はそのままあそこで暮らしていくということで落ち着き、今回の迷惑料として遠縁の貴族へと少しばかりのお金を母親に持たせることで、事なきを得た。

 「疲れたな~」

 母親を転移で戻した後、僕はソファーでダラダラしていた。

 「ごめんね、バグ。お母様が迷惑をかけて・・・・・・」

 「別にあれくらいは問題ないよ。それよりも、ちゃんと話が出来てよかったな」

 「うん、ありがとう」

 レイシアも、どこかホッとした様子でいるようだった。


 レイシアも、母親と話せて気分がすっきりしたのか、冒険者をがんばるようで気合を入れてダンジョンへと向った。

 今日の僕は、いろいろ考えることがあったので、魔道具を製作することにした。

 まずはハウラスに作ったようなダメージの肩代わりと、危険になった時に緊急帰還の機能を持たせる。

 それとは別に、登録をした十箇所への空間移動が可能になる転移機能。

 これをレイシアに渡したら、いつでも母親に会いに行ったり、ブレンダに会いに行ったりできると思う。よくよく考えると、レイシアは自由に移動できなかった。いつも僕が移動とかやっていたからな~

 これで、好きな時に好きな所へと行けるようになるだろう。

 ちなみに拠点はデフォルトで登録してあるので、十箇所には含まれていない。十箇所は好きに消したり出来るので、一時的な登録なども対応できる。

 ペンダント型にすることにしてパペットに装飾などを頼み、チェーンもちょっと凝った物を付けて貰って完成した。

 ロケットにしたので、中に写真みたいなものか、小さな物なら入るようになっている。

 そういえば、この世界って写真が無いよな・・・・・・

 ついでにそっちも開発してみるかな。画家の人にはごめんなって言いたいが・・・・・・

 お前達の仕事を奪う気はないのだけれど、写真の方が一般的に使い勝手がいいので開発させてもらおう。

 内心でそんな事を考えながら、出来上がった写真機をブレンダに売り付けようと考えた。

 「ブレンダ、今時間あるか?」

 『何かしら? もう少し待ってくれれば、時間できるわよ』

 「家にいるならそっちに行くけれど?」

 『それじゃあ、応接室に来てもらえる? お茶の準備をさせるわ』

 「了解、じゃあまた後でな」

 『ええ』

 連絡も付いたので、写真機とお試しに焼き付ける素材に、羊皮紙と布などを持って、ブレンダの家の応接室へと転移した。

 しばらく待っていると、ブレンダがやって来る。


 「お待たせ~」

 「ちょっと魔道具を作ったので見せに来た」

 「へ~、じゃあ早速見せてくれる?」

 「ああ」

 そう言うと、とりあえず写真機でブレンダを撮影して、その映像を用意しておいた羊皮紙に焼き付けた。

 機能としては、デジカメみたいな感じで映像を保存。

 水晶を組み込んで、百くらいの画像を覚えさせることができるようにしておいた。

 それを机などに広げた焼き付けたい物に印刷する感じだ。

 出来上がったそれをブレンダに渡しつつ、問題点に気が付く。

 「悪い、少し改良するから待っていてくれ」

 「ええいいわよ」

 素早く工房へと移動して、写真機を改良する。

 よくよく考えると、何にでも焼き付けられるというのは、厄介かもしれないのと、手軽に撮影できてしまうのは、犯罪に利用される恐れがあることが予想できてしまった。

 今更ながら気が付いたよ・・・・・・

 とりあえずは焼き付ける為の紙などは、プリンターに紙を入れるように写真機に入れて、印字する感じに作り変える。

 後はセキュリティだな。

 新たなパペットを創造すると、製造された写真機とリンクさせて、取られた映像が問題のあるものかどうかを、チェックする役目を与える。

 そしてもし問題がある場合は、取り締まり機関へと情報を送るようにすればいいかな?

 ここら辺りは、ブレンダと話をしよう。そう考えるとパペットを連れてブレンダのところへと戻った。

 「すまん、待たせた」

 「いえいえ、これ一瞬で出来るのはいいわね。売れそうでこっちもちょっと楽しみだわ」

 「一部、問題が発覚したので急遽作り直したのと、その後の対応を話し合いたい」

 「聞かせてもらえるかしら?」

 「まず、何にでも映像を焼き付けるのは問題がありそうだったので、取りやめにした。下手をすると、人の肌とかにも映像が焼き付けられるから、ここに紙を入れてそれにしか焼き付けられないように、改造して来た」

 「はあ、確かにそれは嫌だわね。了解したわ。焼き付け用の紙とかもこちらで用意したらいいから、そっちは問題ないわね?」

 「ああ、次なのだが、こっちは犯罪に利用できてしまう可能性があった」

 「犯罪?」

 「お手軽に撮影できることを利用して、相手の弱みをこれに写して脅すなどの犯罪だな。その為の防犯対策を少し考える必要が出て来た」

 「は~。確かに、考えもしなかったわね。確かにそれは犯罪者が喜びそうで怖いわ・・・・・・よく気が付けたわね。大体こういうのは、普及した後で問題が出て来るものなのに」

 「あーなんとなく連想してしまっただけで、たまたまだよ。紙に転写していたら、人間の皮膚にも焼付けできるのはまずいっていうのから、それを利用されたらやばいって感じで犯罪の方にも思い至っただけだ。それよりも犯罪の方だ」

 「そのパペットと、関係があるってことね?」

 「ああ、このパペットには写真機とリンクさせて、取られた映像をチェックしてもらう為に作った。ただ問題は、実際の犯人をどうするかって方になるのだよね」

 「どうするって、捕まえればいいと思うのだけれど?」

 「これを悪用するのが、国王でもか?」

 「無いとは言えないわね・・・・・・少々面倒そうね」

 「ああ、後はこの写真機をどれくらい売るかで、捕まえる対象の数も増えると思っていいから、そこまでの人手だな」

 「うわー、ほんとにちょっと大変な作業になりそうね。こんなに便利なものが、犯罪が絡むだけでここまで厄介な物になるなんて・・・・・・」

 「売るのは止めた方がいいかな?」

 「ちょっと待って、何か対策を考えてみるわ。今日のところは保留にしてもらって、何かしらの対策ができたら知らせるわね」

 「わかった。じゃあ後は任せるな」

 「ええ、これ預かっていてもいいのかしら?」

 「ああ、かまわない。パペットは一応連れて帰るぞ?」

 「ええ、了解よ。じゃあまたね~」

 「ああ、またな」

 思い付きで作ってみたのはいいけれど、いろいろ大変な物になっちゃったな。

 まあ、悪用しない人には普通に便利なだけの物なのだけれどね~。まあそっちはブレンダに任せておこう。

 こっちは別に悪用とか考えなくてもいいので、レイシア専用の可愛いやつでも作ってみることにした。デザインなどはパペット達に任せて、心臓部の水晶を作ってパペットに内蔵とかをやってもらう。

 デザインで、水晶の配置なども変わって来るので、やって貰った方が助かるのだ。


 ダンジョンからレイシアが帰って来たので、ご飯を食べ終えてお茶をしている時に、早速出来上がったペンダントと写真機を渡すことにした。

 「ペンダントは、こっちの新しい方に、基本として拠点へ飛べるようにしてあるから、昔のやつと入れ替えてもらえばいいよ」

 レイシアは少しだけ微妙な顔をしたものの、受け取ってありがとうと言って来た。何故微妙な顔をしていたのかは、よくわからなかったのだが・・・・・・

 基本的な使い方など、写真機も含めて説明して、後はレイシアの好きなようにさせる。早速写真機を使って、いろいろ撮っていた。

 その後数日して、ブレンダから連絡が来た。

 『今いいかしら?』

 「ああ大丈夫だぞ。何か方法とか対策とか、できそうか?」

 『そっちはまだ考え中って感じかしら』

 「そっちってことは、異形の方か?」

 『いえ、今日はちょっと迷惑な頼みになるのかもしれないのだけれど、あなた達と勝負したいって人達が来ていて、その話なのだけれど・・・・・・最近こっちで行われた最強冒険者決定戦という大会があるのだけれど、その優勝者が貴方達と勝負がしたいって話らしいわ。どうかしら?』

 「非公式でか?」

 『それでもいいわよ』

 「それなら、まあ相手してもいいけれど、レイシアはどうかな?」

 『まあ、あの子も多分問題ないわよ、バグが出るなら来るわ』

 「ふ~ん、まあじゃあ日時を教えてくれ」

 『明日でどうかしら?』

 「まあ、僕は構わないぞ」

 『じゃあ、こっちはそれで話しておくわ。場所は家の庭でいいかな?』

 「ああ、大丈夫だろう」

 『それじゃあ、明日家に来てね』

 「わかった、また明日な~」

 そして、夕方に帰って来たレイシアに、この話をする。

 「明日、最強冒険者を決める大会というところの優勝者と、試合するって話になったのだけれど、レイシアはどうする?」

 「行く」

 「勝手に決めてわるいな」

 「別にいいよ」

 「じゃあ、明日ブレンダの家の庭で戦うって話だから、よろしくな」

 「うん、わかった」

 最近は、なんだかあちこちから何かしらの話が来ていて、忙しくなって来たなって思いつつ今日は眠った。


 翌日、レイシアと共にブレンダの家に移動すると、自信に満ちた顔をした冒険者達が、仁王立ちで僕らを出迎えた。

 「やあ君達がレイシア嬢と、バグだな。今日で君達の伝説も終わりになるかもしれないな。まあよろしく頼むよ」

 「まあよろしく、それと伝説って何だ?」

 「ああこちらでは、君達は怪物を倒して回っている凄腕の冒険者として、伝説級に語られているのさ。実際には、勇者様が武者修行のついでに倒して回っているそうじゃないか」

 「はあ、それで調子に乗るなってことかな?」

 「いやいや、僕達はそこまで言っていない。ただ僕達の方が優れていると証明したいだけさ」

 「ふ~ん。今回非公式にしてよかったのか? 証明したいって話なら、観客は多い方がいいのだろう?」

 「いや、自分達の中で証明したいって話さ。別にその他大勢に言われたいって事じゃないのでね。だから非公式でもこっちは全然問題ないよ」

 「なるほどね、いい戦いになるといいな」

 「ああ、全力で行かせてもらうよ」

 そう言って去って行った。まあ僕が言ういい戦いは、僕が本気になれる程強かったらいいなって話なのだけれどね。

 中庭に移動するとブレンダも来ていて、一応の舞台のようなものが配置されていた。

 「来たわね」

 「おう~、今日はよろしく~」

 「ブレンダ、おはよう~」

 「おはよう、レイシアさん」

 僕達は和やかにそんな挨拶を交わし、舞台の反対側にやって来た冒険者は、ストレッチなどをして体をほぐすなどして、気合を入れていた。

 しばらくしてブレンダが頃合いを見て、舞台中央へと向かう。

 僕達はそれに合わせて、舞台の端の方へと向かってそこで待機した。

 「双方、準備はいいですか」

 「こちらは問題ないのだが、バグ君は、武器など無くていいのかな?」

 「ああ問題ないよ、僕に武器を持って欲しければ、実力を見せてくれ」

 「君も自信があるということだね、わかった、本気を出させて見せよう」

 僕達の話が終わったとみて、ブレンダが話し始める。

 「それではお互い、相手に後遺症が残るような攻撃などは禁止で、清々堂々戦ってください。では、始め!」

 開始の合図と共に、僕とレイシアは前方に突撃をかけた。

 レイシアは日本刀を用意していると思ったら、どうやら召喚は使わないで、接近戦をするみたいだな。

 それならば、僕は視線で前衛っぽい二人の戦士を倒すと伝える。

 理解したのか、レイシアは軽く頷くと、後衛の方へと向かって行った。

 戦士二人の間を抜けざまに、それぞれの腕を掴み引きずり倒すと共に、後ろ手にして固めて動けなくした。

 これでこっちは片付いたかな。

 レイシアの方は、狩人と思われる人の方へとアルタクスを投げた後、そのまま後衛の魔法使い達の懐に潜り込んで、日本刀で峰打ちをしている。

 アルタクスは、狩人の顔を覆って窒息を狙い、もう一人の盗賊っぽい男には、触手を首に巻き付けて絞め落としていた。

 六人パーティーを相手に、そこまで数秒と時間をかけないで完封した瞬間だった。


 「お疲れ~」

 そう言って戦士を解放すると、アルタクスも狩人を解放して、レイシアの肩へと戻って来た。

 「レイシアも、実力を出す程ではなかったみたいだな」

 「うん! 私も大分成長したから!」

 「おー、えらいえらい」

 僕達がそんな事を言い合っている間、負けた冒険者達は呆然とこちらを見ていた。

 「どうした? 今回非公式だから、お前らの実績とかには、何も影響が出ないはずだぞ?」

 「ああ、それはありがたいが・・・・・・上には上がいるものだなと思ってね」

 「そうだな、レイシアなんか、まだまだだってダンジョンに毎日潜って、修行しているぞ」

 「それだけ強くてか!」

 「満足したら、そこで終わりだろう?」

 「ああ、確かにそうだ。僕達は自惚れていたようだな・・・・・・いろいろ失礼をしたようで申し訳ない」

 「いや、貴族連中と比べれば爽やかな方だったさ。まあ、がんばれよ」

 「ああ、また強くなれたと思った時には、相手をお願いしたい」

 「相当がんばらないとだな」

 「そうだな。今日は試合を受けてくれて、ありがとう。またよろしくお願いする」

 「またな」

 そうして、冒険者達は帰って行った。

 「それにしても、バグが強いのは知っていたけれど、レイシアさんもとんでもなく強くなっちゃったわね」

 「そうだな、魔法さえ使わないとか、予想外だったよ」

 「えへへ、一杯がんばったからね」

 どこか誇らしげなレイシアを見て、感慨深く思う。

 この子は出会った頃、おちこぼれって言われていたのにな~

 その後は昔話で盛り上がったので、ブレンダの家に泊まって行くことになった。

 まあ、たまにはこういう日もいいものだなって思ったよ。


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