王子の初めてのダンジョン攻略
ブレンダの住んでいる国、リンデグルー連合王国から、百人単位の旅行者がやって来た。
王宮から人手が出て転送エリアにて、危険物の持込などが無いのかどうかのチェックが行なわれている。
とはいうものの危険物のチェックは魔道具にて自動で行なわれているので、王宮からやって来た人は僕の魔道具が信用できないとか、そういう人達が勝手に送り込んで来た人員だった。
転移を行なう部屋はホテルのロビー横に造られていて、この部屋ではどんな魔法でも壊れない壁で造られている。
もちろん僕以上の魔力を持っていれば壊せるのだけれど、人間ではまずいないだろう。
そして部屋の中央に水晶が配置、転送エリアとして魔法陣が描かれていて、それを囲むようにガーゴイルが鎮座している。
鎮座している台座が魔道具で不審物をチェックしていて、上に乗ったガーゴイルが不審者を発見した場合に取り押さえることになっている。
非常時にはこの部屋自体が、いくつもの仕切りによって分断閉鎖され隔離出来るので、テロ対策は大体できているんじゃないかと考えている。
ちなみに、通過する時にステータスチェックをして名簿を作っていたり、偽装などを見破るシステムなども作ってある。まあ結構隙がないよういろいろと考えてみたものの、こんな田舎の小国に探るようなものなど何もないので、おそらくは過剰警戒って感じだろうと考えている。どちらかといえば他の場所で流用できる様に造ったので、機能が充実しているのだ。
やって来たお客さんは、この部屋を出てホテルのロビーで、チェックインする仕組みになっていた。
肝心のダンジョンには、時間になったら、ホテルから送迎用の馬車で移動することになっている。
ホテル内の施設については、まずお風呂は温泉がひかれている。これは室内と露天風呂もあり、覗き対策にガーゴイルが鎮座していて、ホテルロビーにて覗きを行なうと、命を保障しないという説明もされていたりする。
実際にガーゴイルには、命を保障するようには言っていない。覗く前にやれとは言ってあるけれどね。
ここら辺りは現代日本と違って、実際の命のやり取りをする世界なので、自己責任で行動して欲しいところだ。
さて、お風呂場の前にはそれなりに広いスペースがあり、そこには卓球台が配置されている。
またそれとは別に、レジャースペースが設置されていて、ボウリングやビリヤード、子供が乗れるようなゴーカートのコースとかもあったりする。
後はご飯を食べるところとお酒を飲むバーに、洗濯をするところなどが配置されていた。
ご飯を食べるところはホテル側以外にも、場所を貸し出して現地で店を開きたがっていた人達に提供されていて、好きな方に入ってもらえるようにしてある。
まあ品質がともなっていなければ、お客さんは来てくれないけれどね。
とりあえずは問題が出ない限り、こんな感じでスタートだ。
「何だこれは!」
オープン初日、ロビーでそんな事を叫んでいるのは、この国の王子であるサリラントであった。
「王子殿下、何か御気に障るところでもありましたか?」
いきなり叫びだした王子に、ブレンダが対応に向かった。
僕もその後ろに続く。
今日の自分の格好は、高級な背広みたいな服である。女性型パペットが気合を入れたので、服だけは王侯貴族並みに立派になっていた。
ファッションには頓着していないので、そのまま言われるがままに着て来たのだけれど、着慣れていないので結構恥ずかしいね。
「ううっ。王宮よりも立派ではないか・・・・・・」
そう言ってボソリと呟いた王子は、頭上でキラキラと光るシャンデリアを見ていた。
ああ、この細工はドワーフパペットが気合入れて作っていたやつだな。口には出さないで、ブレンダの後ろでそんな事を考えていた。
「特に問題がないようでしたら、御部屋の方へ御案内します」
一応の招待客である王子を、ブレンダが案内する。
これから王子が向かう部屋は、それなりに身分が高い人用の、スイートルームになる。
僕は黙って彼らの最後尾に付いて行く。護衛の何人かは、誰だこいつみたいな顔を向けて来ていたが黙っていた。いちいち進化のことを説明する必要もないだろう。
部屋に到着した後も、王子は別世界に来たような、驚きっぱなしの様子だった。実際に別世界の施設だけれどね・・・・・・
ある程度、部屋を見て回った後、いよいよ王子は初心者ダンジョンへと向かう。
ちなみに僕とブレンダは、このダンジョンに入るにあたっての護衛も兼ねている。王子に付いている護衛があまりに弱過ぎる為、念の為の護衛だったりした。護衛の護衛って感じかもしれないな。護衛を護衛する意味がよくわからんが・・・・・・
王子を乗せる馬車も、一般とは違い高級感のある物だった。
まるで揺れない造りで装飾なども凝っている。そんなところにも、王子は驚きを見せていた。まあ揺れないのはちゃんと舗装までしているからだけれどね。
ダンジョンの前まで来た時に、ブレンダはダンジョンに入った後の行動を確認する。
「ダンジョンに入るに辺り、とりあえずはお好きなように行動なさって下さい。危険を感じた場合は、こちらで手を出させてもらいますので、その判断はこちらに任せてもらいます。よろしいですか?」
「ああ、じゃあ、もう入ってもいいのか?」
「どうぞ」
「道を照らし出せ、ライト」
兵士の一人が光の呪文を使い、王子達は、ダンジョンに潜って行く。
そういえば、このパーティーも盗賊系がいないような気がするな。どうするか・・・・・・
レイシアのように眷属を出すって感じじゃないから、やっぱり魔道具辺りがいいかもしれないな。
そう思い、片眼鏡で罠検知の魔道具を創造。
盗賊が使う七つ道具っぽいやつで、鍵開け、罠解除の魔道具を創造した。
とりあえず王子辺りにはばれないように、盗賊の技術があるとでも言っておこう。そう思いながら片眼鏡を装着っと。
しばらく進んでいると、早速足元に落とし穴を発見した。
みんな気が付いていない様子なので、さりげなく話題でも振ってみるかな。
「そういえば、この中に盗賊系の技術がある人はいるのか? このダンジョンは初心者用とはいえ罠や、鍵のかかった扉、宝箱などあるのだが」
「そういえば、護衛といえばモンスターだとばかり思っていたわね」
ブレンダも、気が付いていなかったとばかりに発言した。
王子の護衛達も、首を振っていたりする。
僕もそうだけれど、間が抜けた集団だな・・・・・・
そう思いつつ小石を投げて、落とし穴を作動させた。
「落とし穴か! 全然気が付かなかったな」
王子と護衛が、油断したとかそんな事を言い合っていたりする。
技術がなければ警戒していても、普通に気が付かないだろうって思ったよ・・・・・・こちらでフォローするしかないな・・・・・・。まあとは言っても、初心者ダンジョンなので足元を見ていれば意外とわかるのだが、薄暗くてモンスターもいるダンジョンでは素人には見付けにくいだろうな。
その後、罠を見付けては知らせて、扉などでは僕が鍵開けなどをやって、モンスターだけ護衛に任せる感じで進んだ。
護衛が役に立たなくて危ない時には、ブレンダがフォローを担当。
ブレンダも気が付かないような部分があれば、僕が手を出そうって決めた。まあブレンダが初心者のダンジョンで、ミスをする訳がないと思うけれどね。
そんな王子達は、部屋の中にいたゴブリン達と戦闘をしている。
雑魚とはいえ、数は全部で十五匹と多いので、護衛が必死になって王子を守っている。
ちなみに、こっちに来ようとしているゴブリンには一睨みしてやると、近付いて来なくなった。野性の感、万歳である。
「燃え尽きろ、ファイアアロー」
ブレンダの援護射撃が王子の背中を狙っていたゴブリンに当たる。
「そういえば、ブレンダはまだ無詠唱は出来ないのだな?」
「ええ、そこまで冒険に出られなかったから、省略までね」
「こういう護衛の仕事をするのなら、経験稼いで無詠唱くらいにはなりたいところだな」
「そうね、それか私以外の冒険者を雇うかになるかしら?」
「そうだな、そうしたら盗賊系の冒険者も、当然いるだろうしな」
「そうね、ちょっとそっちの方向も考えてみるわ。冒険者に、貴族の護衛ができるパーティーっていうのは、そう多い方ではないと思うのよ。何かあった時には家の面子もあるしね」
「あー、今回のことに限ったら、ブレンダの家が完全に絡むから、そっちの心配もいるのか」
「ええ、面倒なのでしょうけれど、無視も出来ない頭の痛い問題だわ」
「ちょっと数が多くて、てこずり過ぎかな? 数を減らしてやったらどうだ?」
「そうね、先はまだ長いし少し減らしましょうか。燃え尽きろ、ファイアアロー」
護衛がなるべくなら王子に倒させようとがんばっている感じなのだけれど、その王子自体も上手くゴブリンを倒せていなくて、護衛の負担が大き過ぎるように思えた。
だから数を五匹程減らした感じで様子を見る。
今度は多少の余裕は確保できたようで、さっきよりは楽になったようだ。もう王子なんか気にしないで、護衛で倒しちゃえばいいのにって思ったよ。
王子は、ゴブリンとまともに戦えもしないのに、何でダンジョンに来たのだろうか?
ゼロからやり直して来て欲しいなって思ったよ。
「サリラント王子、剣の腕前はどれくらいなのだ?」
面倒事が好きじゃないので、直接聞くことにした。
「そうだな、近衛の者から基本を教えてもらった。後は毎日素振りや型を教えてもらっているぞ」
「では、その近衛というのは腕の確かな者なのかな?」
「確か、王宮の中ではそれなりに強いと言っていたか」
「そう聞いております、王子」
周りの護衛も賛同している。
でもこれって悪い予想だと、宮殿の中では剣術を使う機会がない人ばかりで、その中で強いって人になると、素人って言う可能性も出て来るのでは?
まだ入って直ぐだけれど、時間のかかる冒険になりそうだな~
レイシアは自分の経験稼ぎに行っているのだけれど、こっちに呼ばなくてよかったと思うよ・・・・・・
一応レイシアにも手伝いの仕事が割り振られていたのだけれど、仕事は午後からになっている。
午後に合流できればいいな~
しばらくの間あちこち歩き回り、次の部屋に行き着いて現れた敵は、ホブゴブリンだった。
数は十二匹で、先程のゴブリンとの戦闘を見ると、かなり厳しいのではないかと思われる。
実際に後ろで見ていると、護衛の騎士は防戦ばかりで、反撃の糸口が見えない状況に追い込まれていた。
王子もさすがに前には出してもらえない。
王子が素人で、遊び半分でダンジョンに来てしまったとするなら、自分の力で敵を倒せなくても、それなりに戦えれば満足するかもしれないな。
僕はホブゴブリンの群れの中へと突撃すると、王子が攻撃しやすいように誘導した敵を、無防備になるように集団から押し出してやった。
王子や騎士達も、はぐれた敵にチャンスとばかりに攻撃を加える。
その後も、僕としては作業のように、敵を送り出して王子達が楽しめるように誘導して行った。
今度は、ゴブリンよりは少し早く倒せたようだ。
これでも敵を倒しているので経験値にはなるだろう。止めだけだと、そこまで多くの経験は得られないと思うけれどね。
「王子は、やっぱり敵を自分の手で倒したいのか? それとも自分が指揮した戦術みたいなもので、倒したとしても問題ないのか?」
次の敵に出会うまでの間、王子に話しかける。
「そうだな、役割上指揮して倒す方がいいのかもしれないな」
「では次からは、騎士達に上手く指示を出して、敵を倒すようにしてみるといい」
「そうか、そうだな。何も自分が前に出て戦わなければいけない訳でもなかった」
王子は、次はどうしたらなど考えながら、移動して行った。
王子が指揮を執り、近衛の騎士達がその指示で動く。どうやら本来の形になったようで、隙を突かれなければかなり上手く立ち回れるようだった。
「右からオーク二匹、左に三匹、正面五匹。正面は防御に専念し、左右の撃破を優先しろ!」
「「ハッ!」」
正面の騎士が盾を前面に出して、オーク達を押さえ込みたまにバッシュを叩き込んで、他に流れないように釘付けにする。ここら辺りのやり方は僕が指示を出した。
盾はもっと上手く使えってね。今では防御しろと言われたら、ちゃんと盾を使って敵を押さえ込むことも出来るようになった。今までの騎士はどうやっていたのかと思う変わりようだった。
次に左右に展開中の騎士になるが、一人が防御してその後ろから攻撃に専念した騎士が隙を縫うように攻撃を仕掛けている。
こちらも盾を有効に使って、敵の体勢を崩したりしていて、後ろの騎士に攻撃を仕掛けさせている。このやり方も指導した。
そうじゃないと横並びで叩くだけで、防御も攻撃もどっちつかずになっていて、時間がかかって仕方がなかった。
まあ、この方法も初心者ダンジョンだから通用するだけで、相手が単純じゃなければあっさり崩されるのだけれどね~
そこまでの上達というか騎士を鍛える気はないので、そこまで指摘したり教えたりはしない。
ちなみにそれでも王子の後ろががら空きで、そっちに回られると、この作戦は元から崩れてしまうので。そっちに回ってきた敵は、ブレンダが倒していたりする。
王子達は、初めに比べてかなりいい感じでダンジョンを進めているので、ブレンダのフォローをそこまで気にはしていない感じだった。前しか見えていないね・・・・・・
僕は心の中で忠告をする。君達ブレンダがフォローしてくれなければ、全滅しているよ~・・・・・・とね。
まあ、そんな感じでダンジョンの中を、わりと楽しんで進んでもらえてとうとう最奥、近衛騎士隊長辺りの話では、誰も到達していないという場所までやって来たな。
前は確か、リザードマンがボスをしていたけれど、いつも同じなのかなってふと疑問に思った。
「行くぞ!」
王子もさすがにボスがいると聞いて、気合を入れ直すように騎士達を促がしていた。
部屋の中は前回と同じでかなり広く、ボスだけが前回とは違っていた。
「ゴーレムか、初心者には確かにボスっぽい相手だな」
思わずそう呟いていた。
ボスがストーンゴーレムで、取り巻きにサンドゴーレム、マッドゴーレムがいるようだね。
「でかいゴーレムを三名で押さえろ! 残りで取り巻きを殲滅する!」
「「ハッ!」」
王子の指揮の下、ボスとの戦いが始まった。
ちなみに、このパーティーには癒し手がいない。正確には僕には使えるのだけれど、よほどじゃなければ使う気がない。
当然ここまでのダンジョン攻略で、騎士も王子も傷を負うことはあったのだけれど、今回は事前準備で回復ポーションを持って来ている。
このポーションは、飲めば徐々に回復するタイプなので、ダメージを連続で食らうとやばい事になるから、使いどころというかポーションを飲んだ相手を、いかに下げるかがポイントになって来る。
下手に下げると他の騎士に負担がいってしまい、戦線が崩れかねない。
だからといってその場に留まるように言うと、連続でダメージをもらって動けなくなる。ここら辺りの采配なども、指揮をする王子の手腕が問われるところだろうね。
急にポーションの話を何故考え出したかというと、今まさに戦線が崩れそうになっていたからだ。
ストーンゴーレムに殴られた騎士が二人、ポーションを飲んで回復しようとしているのだけれど、下がることが出来ずに、ダメージが蓄積して行っている。たぶん回復した分をきっちり削られて瀕死寸前って感じじゃないかな?
周りの騎士も、取り巻きで手一杯になっていて、とても支援できるような状況ではなかった。
「おら王子! こんな時はお前が剣を持って、アタッカーになって来い。今は少しでも人手が欲しいところだろう?」
「あ、そ、そうか。確かにそうだ」
そう言って王子を前に押すと、剣を抜いて取り巻きゴーレムのところへと、王子が向かった。
「そっちに王子が向かった、取り巻きの相手をしている騎士の一人、ストーンゴーレムを押さえに向え。一人を回復に専念させるローテーションを作って、防御に専念しろ」
「了解です!」
今まで取り巻きと戦っていた騎士の一人が反応して、王子と入れ替わるようにストーンゴーレムへと向う。
盾が一人増え、一人が回復に専念できるようになって、やっとストーンゴーレムが安定した。
「誰か盾が一番上手いやつ、王子の前に出て敵を抑えろ。騎士なら王子に傷一つ付けないよう踏ん張って見せろ~」
「おう!」
僕の指示でまた一人の騎士が反応して、王子の前で絶対にここは通さないって感じに気合を入れていた。
これで、取り巻きも時間をかければ倒せそうかな。
ただ殲滅力、アタッカーが優秀じゃないと回復用のポーションが無くなってきつくなるのだけれど、どこまでいけるか見ものだ。
王子はあきらかにアタッカーではないので、期待はできない。
騎士達もそれ程強くはなさそうなので、これは厳しくなりそうだなって思ったよ。
しばらくして、王子の隣で戦っていた騎士達が、サンドゴーレムを倒す事に成功した。これで少し殲滅速度が上がるので、回復ポーションは持ちそうかな?
「回復ポーションの残量を報告!」
念の為に、状況を把握するように声を出した。
あちこちで声が上がり合計すると、残りのポーションは後五本といったところだった。ほんとに厳しいな。
「今ある回復ポーションを、ストーンゴーレムと戦っている騎士へと集めろ」
ここからは、取り巻きで回復する必要は無いと判断して、ポーションを一番きついところへと集めさせる。
それでも数が足りないので、ブレンダが魔法支援を始めたようだった。
ブレンダが加わったことで、残っていたマッドゴーレムもついに倒れて、最後のボスだけが部屋に残った。
問題はここからなのだよね・・・・・・
相手は石な訳だし騎士達の攻撃、ちゃんと通じるものなのかな?
そう思って見ていると、やっぱりカンカンいって、ダメージっぽいものが与えられていない感じがした。
さすがの王子も、これではどうにもできないといった様子。僕としては、このまま倒さないで帰還でもかまわないのだけれど、そうもいかないのだろうね。
今までざんざん口を出したり支援してきたりしていて、過剰だなと思っていたけれど、まだ支援する必要がありそうだ。
はぁ、仕方ないのかなと思いながら日本刀を創り出した。
「王子こっちに」
「うん? 何だ」
王子は一瞬迷惑そうな顔をしたのだけれど、これまでいろいろと支援されて来たことを思い出したのか、素直になってこっちへと向って来た。
「こいつを貸してやる。この剣は力で押し斬るのではなく、相手を撫でるように斬るのだ。出来そうか?」
「うーん、わからないがやってみよう」
剣を受け取った王子が、その場で素振りするのを見て、そうじゃないこうだと簡単に使い方を教える。
何度か素振りを試した後に、まあこんなものかという感じになったので、そのままボスへと送り出すことにした。
「王子が攻撃を仕掛けるぞ! 全力でストーンゴーレムに隙を作れ!」
そう声をかけると、騎士達が盾を使って、ゴーレムの体勢を崩させようとがんばり出す。そこに、王子が日本刀で上手いこと斬り付ける事が出来たのを見届けた。
「おお! 斬れる、斬れるぞ、こいつは凄いな!」
王子も周りの騎士達も、興奮気味に騒いだ。
さっきまでのもう駄目かって雰囲気は無くなり、やれるぞって雰囲気に変わったのがわかる。その後も騎士達が隙を作るのを待って王子が斬りかかり、そのたびに騎士達の歓声を受けて、王子はどんどん攻撃を繰り返していった。
調子に乗ったというのかどうか、おだてられた王子はそれから意外と直ぐに、ストーンゴーレムの討伐に成功した。
ボスの部屋の後ろに通路が現れ、僕達はそちらへと移動を始める。
「王子、剣を返してくれ」
「この剣、僕にくれないか? 何なら言い値で買い取るぞ」
「王子だから言えばなんでも思い通りと思うなよ」
剣を返すのを渋る王子にそう言って、睨み付けてやった。
ちょっと青い顔になった王子が、素直に剣を渡して来る。
ほんとに直ぐ調子に乗るやつだな~
まあ欲しければ、ブレンダから買えばいいのだけれどね。そう思ってブレンダに視線を送ってみれば、ブレンダからニヤりって顔をされた。あー、これは商人の顔だな。
別に、ブレンダの為に日本刀を使わせたのじゃあないのだけれどな~
まあいいや。
抜けた先の宝箱の鍵を開けた後、蓋を開けないで王子に場所を譲る。こういうのは、自分で開けて中を見るのが最後のお楽しみってやつだからね。
「おお!!」
箱を開けた王子が、興奮した様子で箱の中身を回収している。
後ろに控えていた護衛達も、やり遂げたって感じの爽やかな表情を浮かべていた。
こうして、王子のダンジョン探検が終わり、ホテルへと帰って行った。
王子は護衛達と少し仲良くなって、一緒に温泉を楽しんだという。
振り回されて周りは大変だったのだけれど、まあよかったんじゃないかな~




