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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第九章  新たな力
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新たな力

   第九章  新たな力


 僕は今、召喚の部屋で待機している。

 床には何重にも描かれた魔法陣があり、その中心で合成を待っている感じだ。

 素材となるモンスター達は、飼育小屋で待機中らしい。

 素材に合わせた魔法陣があるのと、彼らがデカ過ぎて、ここに持って来られないこと、そして今回の合成に水生生物も混じっているので、結局はこの部屋の中にいるのは、自分だけって事になったようだ。

 虎くらいは連れて来られたと思うけれどね。まあいちいち移動させることもないという話だった。

 どれくらいここで待機していたのだろうか、レイシアはそこまではかからないと言っていたのだけれど、ただ待っているだけの身からしたら、やっぱりそれなりに長い時間に感じられる。

 ボーっとしていると、魔法陣が段々と輝いて行くのがわかった。とうとう自分から望んだ進化が始まったようだ。

 できるのならば、ゴブリンみたいな退化しそうな進化だけはやめて欲しいな、そんな事を考えつつ視界が白に染まっていくのを受け入れた・・・・・・

 気が付くと、魔法陣の輝きが収まっている。

 早速自分の変化を確かめる為に、ドキドキしながらステータスを開いてみた。


 《名前 バグ  種族 シャドウエレメンタル-ヴァルキリー  年齢 2-3  職業 魔導王-創造者

 LV 76-81  HP 4713-6135  SP 9036-9719

 力 219-564 耐久力 583-729 敏捷 589-841

  器用度 228-546 知力 916-1057 精神 1929-2306

 属性 火 水 土 風 光 生命 無 空間

 スキル 吸収 腐敗 分裂-分身 無詠唱 自動回復+状態耐性 -完全回復 憑依 影渡り-空間移動 調査 眷属作製+合成魔法+魔生物創造+鍛冶+木工+裁縫+細工+武具創造+道具創造-創造 魔法耐性-完全耐性 飛行 言霊》


 なんだか、大幅な能力アップをしている気がするのだが・・・・・・

 ヴァルキリーって、確か天使じゃなかったか?

 確かこの世界には存在していなかった気がするのだけれど、やっぱり名前は違うけれど存在していたとか?

 まあ、そんな些細なことはどうでもいい気がする・・・・・・やっぱり女になっていたりするのかな?

 視線を下に向けると、確かに胸が盛り上がって見える。

 鎧を着込んでいるので、そこまで大きくは見えないのだけれど、何か錘が付いているような気がした。


 もういちいちチラ見するようなまどろっこしいのはやめにしよう。

 この部屋の壁全面を鏡に作り変えて、自分の姿を確認することにした・・・・・・

 頭の上には天使の輪が、背中にはかなり大きな真っ白い翼が、整った顔立ちで腰まで届く長い髪の毛。鎧は青を基調とした部分鎧みたいな物を着ている。

 ゲームなどでよく見る、ほんとにヴァルキリーじゃないか!

 せめて、男のヴァルキリーとかにして欲しかったよ・・・・・・そんなのがいるのかは、わからないけれど・・・・・・

 女になってしまった事実に呆然として、その場に崩れ落ちた・・・・・・

 「バグ?」

 レイシアの声で、やっと意識が覚醒する。

 「ああ」

 あー、声まで女性になっているよ・・・・・・

 立ち上がってレイシアに向き直ると、圧倒されたような顔をして、ボーっとこちらを見ているレイシアがいた。

 はあ、いろいろ考えなければいけないことはあるのだけれど、これは直ぐに次の進化をしないと駄目だな。確かに目的の一つである光属性は手に入れたのだけれど、変わりに闇属性が消えてしまっているのだ。それに女はさすがにきつい。

 「バグは女性だったの?」

 「はぁ、そんな訳ないだろう」

 レイシアも、頭が働いていないのかもしれないな。とりあえず、今日のところは検証とかする気も起きない。

 僕はレイシアを連れて、リビングでのんびりとした。

 ボーとしながら、忍者と鳥のパペットに、もう一度素材の調査を依頼する。リバイアサンとか、早々もう一体いたりはしないだろうなあ・・・・・・

 まさにどうしてこうなったって状況だった。退化じゃないだけ、ましなのだろうが・・・・・・


 翌日になりまだはっきりしない頭だけれど、こういう時は何か行動をするのがいいと考え通常の活動をすることにした。ギルドに行って依頼を受けて、日常を取り戻すのだ。

 そう思って、レイシアにも話しかける。

 「レイシア、とりあえず日常生活を過ごして落ち着こう。今までと変わりなく、ギルドで依頼とかを受けて」

 「そうね、それがいいのかも」

 ついでにレイシアも、それなりの経験を積んでいたので、まずはステータスをチェックしてもらうかな。


 名前 レイシア  種族 ヒューマン  職業 魂術師

 LV 49-55  HP 294-334  SP 633-706

 力 32-33  耐久力 27-30  敏捷 53-57

  器用度 64-69  知力 100-132  精神 89-96

 属性 火 水 土 風 光 闇 生命

 スキル 錬金術 無詠唱 指揮官 召喚武器 調理 上位変換(無生物) 進化 部隊召喚 拠点魔法陣 意思疎通(動物) 意思疎通(植物) 食材召喚 亜空間 待機魔法 意思疎通(精霊) 強化 アルファントの加護


 レイシアも、LVが50を超えて、かなり強くなったな~

 何かの加護があるな、これは神様かな?

 「加護ってことは、私は神官魔法が使えるようになったってことかな?」

 「アルファントって、やっぱり神様なのか?」

 「ええ戦闘の神様。冒険者で特に戦士の人には、ここの神様を信仰している人が多いわ」

 職業が魂術師だし、そのうちに死者の蘇生とか、やり出したりするのかな~

 まあレイシアは後方支援だし、回復魔法が使えるのはいいことかもしれないな。

 「とりあえずは、依頼でも受けに行くか」

 「そうね」

 別にお金とかは困っていないのだけれど、体を動かしていれば、そのうち頭もしっかり働くようになるかな。

 僕らは、連れ立ってギルドへと向かった。

 今までは影に入って移動していたけれど、天使になっちゃったし周りの人から姿を見られるようになって、久しぶりに他人からの視線っていうのを味わった気がするよ。これにも時期に慣れるのだろうか。

 二人で依頼を見てみると、緊急依頼を見付けた。

 内容は、森から大量のモンスターが出て来て、村などを襲っているというもので異形ではなさそうだ。

 相手は種族がばらばらで、強い者も混じっているが、大半は雑魚のゴブリンなどらしい。経験にはなりそうにないな。

 「緊急だけど、これはパス?」

 「そうね。でも一応受付で人手が足りているか、確認した方がいいのかな?」

 「あー、僕らはどっちでもいいけれど、村人とかにしたら、誰でもいいから来て欲しいかもしれないな」

 「うん。ちょっと聞いてみるね」

 そう言うと、レイシアは受付に向かう。

 「すみません、緊急依頼の件なのですが、人手などは足りている状況ですか?」

 「それが、予想以上にモンスターが多いようで、今はベテランは元より新人でも関係なく誰でも来て欲しいっていう話らしいのです。ですので、共闘依頼になりました」

 「それじゃあ、その依頼を受けさせてもらいます」

 「それでは、こちらにサインをお願いします。それでその後ろの方は?」

 「私は、守護天使です」

 この世界には天使がいないとはわかっているのだけれど、とりあえずはそういう設定ってことにしておいた。

 やっていることは、そう変わらないしね。

 「はあ、まあよくわかりませんが。ペアで討伐という訳ではないのですね?」

 「はい、私の役目は見守ることなので」

 手続きをしていたレイシアも、へーって感じで聞いていた。

 まあそれよりもだ、とりあえず緊急なので現地の場所を教えてもらった僕は、その場でレイシアに触れて転移して現場へと移動した。


 到着した現地は、ほんとに凄い数って感じだった。確か億単位の制作費を使った映画なんかで、こんな大群が進行してくる場面とかあった気がするな。

 さすがにこれでは、冒険者が足りないのも頷けるし、部隊召喚では間に合わないかもしれないな。

 地上のよく知らないところに転移すると、壁などにめり込む恐れがあったので現場上空に転移してみたのだけれど、かえってそれが地上の様子をよく把握できてよかったと思えた。でもって一緒に転移して来たので、抱えているレイシアに話しかけた。ちなみに、魔法を使うまでもなく飛べるので、今も二人で空中に留まっている。

 「敵の数を減らす? このままだと、村は飲み込まれそうな感じだけれど・・・・・・」

 「敵を倒すよりも勢いを削れないかな? そうすれば、私の部隊でも数倒して持たせられると思うのだけれど」

 レイシアも状況を確認してそう意見を出して来た。

 「じゃあ、ちょっとやってみるよ」

 一度地面へとレイシアを降ろした後、上空高くに転移して、そのまま地面に目掛けて突撃を開始する。

 武器はランスを作り出して、演出用に爆炎が広がるような感じの魔法をランスに施す。そして隕石でも落ちて来たかのように敵の目前へと落下することで、そこにはクレーターが出来上がりかなりの広範囲へと炎が押し寄せ、その炎にあおられたモンスター達が慌てて止まろうとしてもがいているのがわかった。

 そのままクレーターの中心で、モンスターを睨み付けることで、こちらの殺気をモンスターにぶつけて行く。視線を向けられた多くのモンスターが、怯えたように後ずさるのが確認できた。派手な演出をしただけあって、上手く行ったかな?

 「部隊召喚、グリフォン。部隊召喚、アラクネ。部隊召喚、ヘルハウンド」

 後ろからレイシアの声が聞こえ、以前呼び出した時よりも多くのモンスターが、敵に向かって突撃して行くのが見えた。

 少し前の部隊召喚では、大体十匹前後って感じの召喚数だったのだけれど、今回呼び出せていたのは、三十匹くらいはいたかもしれないな。

 その後、集まって来た冒険者達と、レイシアが呼び出したモンスターが敵の数をどんどんと減らして、やがて生き残りのモンスター達が慌てて森へと逃げ帰って行くのがわかった。

 モンスターを全滅させた訳ではないけれど、これで一応緊急の依頼は達成って感じじゃないかな?

 帰りは急ぎでもないので、レイシアはユニコーンに乗って、僕はせっかく翼があるので、レイシアの隣を飛んで帰ることにした。飛び方は体が知っていたので、直ぐに自由に飛べたよ。


 今回の緊急依頼の報酬は後日渡されるので、その間はいつものように普通の討伐依頼を繰り返す。

 レイシアのLVになって来ると、もうギルドで受けることができる依頼のほとんどが、任せても大丈夫になっている。ほんとに後ろで見ているだけって依頼が多くなってきたな~。

 依頼の中に、異形の依頼も混じる事があったけれど、今ではレイシアもそれなりに戦えるようになっていて、余程の数でなければ、問題なく依頼を受けられる感じになって来ていた。

 まあ、それでも六体くらいかな? 僕が軽く手伝ってなら十体くらい。それ以上になると、本格的に手を出していかないと、レイシアでも危ない。

 まあ、かなり強くなりましたってことだね。

 それにしても、何で他の冒険者は、異形と戦える実力がないのだろう?

 レイシアと違って、ベテランとか言われている人なら、戦えてもいいと思うのだけれどな~。疑問に思って忍者パペットに調べてもらった結果分かったことは、彼らがリアル冒険者だったという事実だった。

 僕の知っている冒険者とは、ゲームや小説の中のもので、強くなる為に冒険をして経験値を集めたりしている。

 しかし彼らは生活の為に冒険をしているので、お金をある程度稼いでいれば、そこまでの危険を冒したりはしないらしいのだった。つまり安全な冒険を繰り返しているので、長く冒険者をやっていたとしても、そこまで経験値が稼げていないのだった。

 夢がないな、リアル冒険者って・・・・・・

 それに対してレイシアは、強くなる為の冒険をがんがんしていて、本来は避けるような危険がある依頼でも、僕がその危険を排除してしまう為に、驚く程効率よく成長して行ったようだった。

 現実逃避気味に思う・・・・・・まあいいかってね・・・・・・

 そんな感じで依頼をこなしながら過ごしていると、僕らを訪ねてギルドにやって来た人がいた。


 「久しぶりね、レイシアさん、バグ?」

 「久しぶり! ブレンダ!」

 「おー、久しぶりだな」

 やって来たのは、学校卒業以来なので、三年近くぶりくらいに見るブレンダだった。

 「あなた達、今どこの宿に泊まっているのよ? ここで活動しているって話は聞いたんだけれど、どこにも見付けられなくて、結局ギルドに来ちゃったじゃない」

 「あー、わるいが秘密の拠点だ」

 「そうなの? まあいいわ、どこかで落ち着いてお話でもしない?」

 「ええ、じゃあ軽くお茶でも飲みながら話しましょうか」

 そうレイシアが受け答えて、僕達は、ギルド近くにあるカフェテラスに入って行った。

 「それにしても、バグはイメージが大分変わっちゃったわね」

 「そのうちにまた変わる」

 今のところドラゴンくらいしか、素材の当てはない。

 がんばってくれているのだとは思うのだけれどね。前回でも苦労したからな~

 「ブレンダは、卒業後はどうしていたの?」

 「私は、ほとんど家業のお手伝いかな? せっかく冒険者学校を卒業したのに、全然冒険なんかしていないわ」

 「ってことは、社交界デビューしてパーティーばかり?」

 「そうね、後はいろいろなところに顔を見せて商談とかかな? 実のところここに来たのも、目的はそれも含んでいるのよ」

 「会いに来たとかじゃなくて?」

 「私的には、自分の領地近くに貴方達が来ているのがわかったから、顔を見に行こうかって感じが本音なのよね。お父様とか、実家の関係者がいろいろ言って来たのよ。もう面倒だったわ。友達って関係を利用するのはやめて欲しいんだけどね」

 僕は会話に割り込んで、まずは面倒な話を聞くことにした、予想はできる気がするけれどね。

 「用件は僕だろう?」

 「簡単に言っちゃえば、魔道具の話よ。前に聞いた、ステータスカードもそうだし、最近の怪物を倒せる武器ってことで話が上がって来ている銃ってやつ。探し出してでも、技術を教えてもらって来いとか言われたわ」

 「やっぱりそういうことか」

 「ええ、それで技術提供はしてもらえるのかしら?」

 「結論からぶっちゃけるけど、ステータスカードはそこまで難しいものではない。調整とかあるので僕の魔法をそのままで持っていければの話だけれどね。銃の方は、僕個人のスキルで作っているので固有魔法だ。僕以外には使えない。ちなみに、今レイシアが使っている銃を奪ったとしても、僕とレイシア以外には、ただのガラクタとしての価値しかないよ」

 「まあ、そうでしょうね」

 「あ、便利道具なら、即答で売っても問題ないのがあるぞ」

 そう言ってパペット達が、技術をつぎ込んだコンロを取り出した。

 レイシアが使っている携帯用のやつは、一番初めの試作品をそのまま使っている。豪華になったやつと取り替えようと話したのだけれど、こっちでいいって言って手放さなかったのだ。

 多分、壊れるまでは使うのだろうな~。おそらく魔道具なので、壊れないと思うが・・・・・・

 まあそれはおいておくとして、ブレンダにコンロの使い方を教えた。

 「へ~、これはもっと早くから欲しかったわね。魔王がどうのとかなければ、即商談とか始めたいところだけれど、今は国が戦争状態に入っちゃって、怪物も出て来るし、そっちの対策が優先になっているわ」

 「まあそうだろうな・・・・・・あまり引き伸ばしても仕方ないから結論を言うよ。今の僕には困っていることも、助けて欲しいことも、特に求めていることもないから、別に技術を売る必要性が無い」

 「実家は、いくらでも言い値を出すとか言っていたけれど、まあ無理だとは思っていたわ。孤高の乙女だったっけ? そんなあなた達が、お金に困っている気がしなかったものね」

 こちらの話にきりが付き、ブレンダはレイシアとのお喋りを始めた。本当に一応確認してみただけって感じだな。さすが一時期とはいえ、一緒にいただけはあって僕のことをわかっているな。

 ふと、喫茶店でお茶を飲んでいて、そういえばレイシアは料理の方は作るけれど、お菓子は作っていなかったなと思い、必要な機材とレシピなら取引材料になるかもしれないなって思った。のんびりとお喋りを続け、お昼になった頃改めてブレンダは言い出した。

 「ねえ、何かあった時に、あなた達に力を貸してもらうとかはできないかしら? それと、できれば連絡を取る方法が欲しいのだけれど」

 「お前、何か厄介事にでも巻き込まれているのか?」

 「今の時点では何もないけれど、未来はわからないじゃない。少しでも保険みたいなものは、持っていたいってことよ。もうお昼だし何かおごるわ。何が食べたい?」

 「ブレンダならいいか?」

 そうポツリと小さく呟くと、レイシアが軽く頷いていた。

 ブレンダなら拠点へと誘っても、まあ問題ないかなって思ったのだが、レイシアも同じ意見だと思いたい。というか、僕の考えがわかったのかな?

 「なんなら僕の拠点へ来てみるか?」

 「是非に!」

 ブレンダも興味ありまくりだったようだ。


 カフェテラスを出た後、僕らは直ぐに拠点へと転送した。

 「うわー、何ここ、何これ、凄い所に住んでいるのね!」

 拠点に着いた瞬間、ブレンダは興奮しまくりだった。

 リビングに飾ってある置物やテーブル、食器、絨毯、あらゆる物に目を向けて、感心したように呟いている。

 「ひょっとして、私の実家より豪華な生活をしているのではないかしら?」

 「まあ、そうかもしれないな」

 「生活するうえで、ほとんどお金は使わないし、依頼を結構こなしているから、お金だけはどんどん貯まっていっている気がするよ」

 「羨ましい限りだわ。それとこの木のって、ウッドゴーレムってやつ? バグが作ったの?」

 「似たようなものだけれど、パペットと呼んでいる。ここの部屋の中の物のほとんどは、こいつらが作った物だよ。さっきの話で戦力になりそうなアイテムの話だけれど。レイシア、刀を出してくれるか?」

 「ええ、これよ」

 レイシアはそう言うと日本刀を取り出して、ブレンダに見せた。

 「こっちは魔道具とかそういう類じゃないけれど、作って渡しても問題ないぞ」

 「へ~」

 ブレンダは鞘から剣を抜いて、刀身をじっくり見ている。ついでに試し斬りとかするといいかなと思って、試射場へとブレンダを連れて行った。

 「ここで試し斬りをしてみるといい」

 「これ、本物じゃないのよね? なんだかリアル過ぎるのと、価値が高そうなのとで、試しで斬るにはもったいなさ過ぎるわね」

 パペットの作り上げた、本物そっくりの像に、ブレンダは恐る恐る触っていた。

 僕も初めは剥製か? って思って触ったことがあったけれど、普通に木や石を削りだして色を付けた物だったよ。まあ毛の生えたモンスターなんかは、本物の毛なのか、ふさふさしているのが、植え付けてあったけれどね。

 「まあ、僕もそう思わなくはないけれど、壊れたらパペットが喜んで次を作るから、遠慮はいらないな」

 「なんだか、技術を無駄に使っていそうで、それはそれで嫌な話だわ」

 そう言いつつも、ブレンダは何体かの像を試しで斬っていた。

 「何だかこの剣、凄いわね・・・・・・魔法剣って言われても、納得しちゃいそうだわ」

 「ちなみにその刀は、撫で斬るっていうのが基本だから、力任せに叩き斬ると性能が生かせないと思うぞ」

 ゆっくりと、撫で斬る動作をして見せる。

 ブレンダがそれを真似て、日本刀を動かしているのを見て動きを指導した。

 「うーん、確かに、さっきよりも切れ味が増した気がするわね」

 「後は、鞘とセットになっているから、居合い斬りっていうのができる」

 「え、それはどういう技なの? スキルではないのよね?」

 「武芸とかになるのかな? 剣を扱う技術の中の一つだと思うよ」

 そう言いつつブレンダに居合い斬りを見せる。

 能力値の器用度が劇的に上がった為に、居合いも美しく決まった。ただ、早過ぎて見えなかったかもしれないけれど・・・・・・

 目の前の像が五つ程まとめて両断されて地面に転がっている。

 僕達の後ろで、パペット達が新たな像を作っているのが見て取れた。そんなに慌てて作らなくてもいいのにな。

 「まあとりあえず、戻ろうか」

 リビングへと移動して行く後ろで、壊れた像から水晶を取り出しているパペット達が見える。ほんとにみんな生産大好きっ子だな~

 リビングでは、お昼時ということもあって、レイシアがご飯を作ってテーブルに並べているところだった。

 「あら、レイシアって料理作れたのですね。パーティー組んでいた時に、作ってくれればよかったのに」

 「料理を作り出したのは、調理のスキルを手に入れて、だいぶ経った後だから。あの頃は料理なんかしたこともなかったよ」

 「なるほどね。それにしても美味しそうですわね」

 「そうだな。最近では外で食べることはほとんどないから、毎日のように食べているけど、美味しいぞ」

 「へ~、楽しみね」

 そう言いつつ、みんなで料理を運ぶ。

 そうだ忘れないうちに、パペットに日本刀を十本作るように言っておく。もちろん鞘付きでだ。

 料理が並べ終わって、みんなが席に着いて僕らは食事を始めた。

 ブレンダも、美味しいと言いながら結構な量を食べている。

 あまり冒険に行かなくなったとか言っていたので、太らないといいけれどなって思ったよ。こういうことを言うと女性に嫌われそうなので、実際に思っても口には出さなかったけれどね。

 食事の後は、そのままくつろいでいろいろと話しをして、夕方近くにブレンダは帰ることになった。

 日本刀とは別に、ブレンダには通信用の水晶を付けたペンダントも用意する。

 「ブレンダ、とりあえず日本刀っていう刀と、僕と連絡する用のペンダントを渡しておくよ。日本刀が欲しい時は、デザートを作る道具といろいろなデザートのレシピで手を打とう」

 「了解。いろいろありがとうね」

 「いやいいけれど。それで帰りは家まで送って行こうか?」

 「この町まで馬車で来ているからいいわ。また何かあったら、連絡させてもらうわね」

 「ああ、じゃあまたな」

 「ブレンダ、またね!」

 レイシアと一緒にブレンダに声をかけた後、僕はブレンダを町の入り口へと転送させた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 状態耐性と魔法耐性て完全耐性じゃないんだ
2020/11/15 17:53 退会済み
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