二人旅
第七章 二人旅
目が覚めたレイシアといろいろと話し合い。僕達はしばらく体と心を休めた後、別の町へと旅に出ることにした。
僕はレイシアにとっての切り札として、今まで通り影の中に潜んで付いて行く事になった。
特に目的地などは無いので気の赴くまま、ユニコーンを召喚してそれに乗って旅をすることになる。レイシアは白い馬が好きそうだったし、ちょうど乙女だし似合っているな。
そうやって気ままに旅をして立ち寄った町のギルドで依頼を受けて、いい依頼が無くなったら次の町へと旅に出るって感じの生活になった。
ソロになったレイシアは、実際には二人だが今までパーティーで分けていた報酬を独り占めできることによって、余裕のある生活を送れるようになっていた。なんだか、かえってパーティーを抜けて良い事尽くめって感じだな。まあそれもソロで活動できるだけの実力が無ければ、危険な行為なのだけれどね。
そんなレイシアが立ち寄ったのが、学校のあった町をユニコーンで東に二週間ほど移動したところにある、ベルグサントと呼ばれる町だった。
大きさとしては、学校のあった町よりは一回り小さいくらいかな。活気があって、そこそこ賑やかでいい町っぽい雰囲気。レイシアは早速この町のギルドを訪ねた。
そして依頼が張り出してあるところで、一つの依頼表を剥がして、受付に持って行く。
「すみません。この依頼をお願いします」
「申し訳ありません、パーティーメンバーが揃った状態でお越し願えますか?」
「いえ、私一人でお願いします」
「すいませんこの依頼は、討伐対象になっているジャイアントスパイダーの数が、二十匹と多いので、五・六名のパーティーが推奨となっています」
「私は召喚術を用いて戦いますので、実際には複数人で闘うのと変わらない戦い方ができます。ですから問題は特にないかと思います」
「はあ、そうですか。では依頼表にサインをお願いできますか?」
ソロっていうので、少し長い問答になったけれど、とりあえずは依頼を受けることができたようだ。
これも段々信用されて、直ぐ受け付けてくれるようになって行くはずだ。早速依頼の討伐目標がいる岩場の場所へと、ユニコーンに乗って移動して行く。
普通の馬と違って、ユニコーンは召喚された下僕になるので、レイシアがあっちと思うと自分で判断して進んでくれるので、苦痛なく移動が可能になっている。
付き合いが長くなった馬なら、同じように阿吽の呼吸で動けるのだろうけど、ギルドとかで借りた馬とかだとそうはいかない。そういう意味でも、召喚された乗り物って言うのは楽だった。
僕なら、車とか出して移動したいものだ。
魔法で位置情報を伝えたら、自動で走ってくれるとさらに言う事がないだろうな~
そんな事を考えながら走って行くと、ごつごつした岩場が見えて来る。
さらに進むと、たまに蜘蛛の糸が絡まった岩なども見えて来たので、そろそろ蜘蛛のテリトリーに入ったかもしれない。ジャイアントスパイダーは、蜘蛛の巣を張って相手がかかるのを待ち構えるのではなく、倒した敵を蜘蛛の糸で縛って、巣に持ち帰るのだそうだ。
なので、急に飛び掛って来るかもしれないので、そろそろ警戒が必要だな。
「スパイダーネット」
警戒し始めて直ぐ出て来た蜘蛛がいたので、いきなりだが魔法の糸で絡め取らせてもらう。蜘蛛なのに糸に絡まって動けないっていうのも、中々間抜けだなって思ったよ。
「召喚、ゴーレム」
動けない蜘蛛を、ゴーレムが叩いて止めを刺す。そのままゴーレムに解体を命じて、討伐部位を回収。その流れのまま次の蜘蛛を探して移動を始める。
ゴーレムは足が遅いけれど、出しっぱなしで連れて行った。いちいち送還するのも手間だからね。
そんな感じで特に苦労もなく、二十五匹くらい倒してこれくらいでいいかなって感じでギルドに帰ることにした。
ちなみに討伐にかかった時間は三十分程であった。ほぼ流れ作業で終わったからね。相手もあまり頭はよくなかったみたいだし、どんどん襲って来たので時間はいらなかったよ。
「報酬で、美味しいものでも食べよう~」
レイシアもホクホクとしてギルドに向かった。
町に着いたのは、夕方の少し手前ってくらいの時間帯。これくらいの時間なら食堂も混まなくて、のんびり食事ができそうだな。
「すみません。依頼の報告をお願いします。これが討伐部位です」
ちょうど依頼を受け付けてくれた女の人が空いたので、早速完了報告に向かった。
「なんだか、凄く早かったですね・・・・・・」
「ええ、召喚で馬も呼べましたので、乗合馬車を使わなかったんです」
「はあ、なるほど。少々お待ちくださいね」
ちょっと不思議そうに報酬を用意して、それを渡してくれた。
「お疲れ様でした~」
ここのギルドも受付の横の方に食堂兼居酒屋があって、今日はギルドの食堂の味を確かめる為に、ここのちょっと豪華っぽい料理を頼む。
そして何を思ったのか、ちょっと残念そうな表情を浮かべる。今何を考えた!
気を取り直したように、料理を受け取り席に着くと、ポツリとレイシアが言った。
「そういえば、私まだ料理のスキルって、試していなかったわね」
その瞬間、背中にゾクリとしたものを感じたよ! ついに思い出しちゃった・・・・・・反射的にいない振りをしたことを、許して欲しい・・・・・・
「ねえバグ、作ったら食べてくれる?」
「いやいや、だからちゃんと自分で味見をして、まともなら食べるよ。味見なしのぶっつけ本番な料理は、食べたくありません」
「むー、わかった。私が納得できたら食べて」
「それなら、食べてもいい」
味見した振りとか味見のし過ぎで、舌が麻痺しましたとかいうのが、出てきませんように!
そんな感じでベルグサントの町に来て、初めての依頼が終了した。
ちょっとだけ上級な宿でゆっくりと休んだ後、僕達は再びギルドに依頼を受けにやって来た。
次に選んだ依頼は、街道に現れたサイクロプスの討伐、数は一体。身長が五メートルもある巨人族で、かなり強い上級の依頼らしい。街道に出たことから緊急の依頼みたいで、いい報酬額が付いている。
受けることができればこの先、生活が楽になって幸先がいいな~
昨日の受付してくれた人が待ち人後一人って感じだったので、そこに並ぶ。別の人にいろいろ説明するのは大変なので同じ人に頼んで、信用を積み上げるのだ。
「すみません、これをお願いします」
順番が来ると、早速依頼を受けようとした。そして案の定微妙な表情を浮かべる。ここは予想されていたので、素早く言葉を重ねる。
「召喚術で、強い子を呼び出して戦うので、問題ありません」
「はあ、では、サインをお願いできますか?」
何か言われる前にさくっとサインをして、依頼を受ける。
街道は、わりと近場だったので保存食などは準備しないで、さっさと討伐に向かった。
ユニコーンに乗って大体三時間、前方にでかい人影、遠いからそう思うだけで段々大きい巨人の姿が見えて来る。
サイクロプスの周りには、今まで襲ったと思われる乗合馬車の残骸や、商隊の荷馬車みたいなものも見受けられた。近付いて来るこちらに、相手も気が付いていて向こうから走って来ているのが音と振動からわかる。
「アースフォール」「召喚、ゴーレム」
魔法を使ったのは、僕とレイシア二人同時だった。
腰まで落とし穴に落ちたサイクロプスを、ゴーレムが三体取り囲むようにして殴り付けている。しかも機械的に殴っているのではなく、避けようと頭を動かしたら、死角にいるゴーレムがそこに殴り付けていた。
これは痛いって思いながらも、僕は追撃を加える。
「アースボム」「焼き尽くせ、ファイアアロー」
うーん、段々とシンクロして来た?
僕らの魔法の攻撃も加わり、サイクロプスは穴から抜け出すことなく、やがて動かなくなった。
討伐部位を回収した後、巨体が邪魔なので、そのまま穴の中へと埋めて僕らは帰還する。
またもや早く帰って来たレイシアに、ギルドの受付の人は、レイシアの事を上級冒険者だと判断したようで。ニコニコ笑顔を浮かべて、対応してくれるようになった。
報酬を受け取った後、今日は外で食べ歩きをするようで、早速町の散策に出かける。
これからの拠点にする予定なので、どこに何があるのかとか、知っておくのは重要な事だろう。
わりとのんびりとした時間を過ごし、僕らは宿屋へと帰って来た。それから寝るまでの時間を、レイシアに付き合って雑談などをして過ごし、レイシアが眠った後、最近になって理解できた自分のスキルを利用することにした。
何気にスライムの時に、増殖でもするのかな、そして自分と同じ考えとか持っていて、俺が本体だとか言い出したら嫌だなと思っていた分裂というスキル。どんなスキルなのかが判明したのだ!
体の一部を切り離し、レイシアの影の中に潜ませる。これで僕はどこにいても、レイシアの周辺で何が起こっているのかが、どこにいても手に取るようにわかるってスキルだった。
意外と、便利なスキルだったよ。あくまでも分裂した影のようなものらしく、こっちの方で戦闘とかそういうことはできないみたいだけどね。何かあった時に分裂先に本体を呼んで、直ぐに元に戻ることができるので、危ない時はタイムラグ無しで活動ができるみたいだ。
ということでしばし離れて、ちょっと生産活動をやってみようかと思った。
魔道具は作ることができたので、何かしら道具系の生産機能を身に付ければ、身の回りの環境を、自分の手で思い通りに整えることができると思う。
箱庭系のゲームで自分の家の内装とかを、造ったり採って来たりして好きに飾れるような感じだ。
今欲しいのはソファーなのだけれど、これは自力で作れる気がしない・・・・・・
なので、まずは部品とかを作製していく感じがいいかもしれない。それか、そもそもの加工をする為の道具の方が、先だろうか?
のこぎりとか、チェーンソーみたいなのとか。
そっちの方が、魔道具っぽくて、似合っているのかもしれないな。
まあ当面の生き甲斐というか目標として、生活環境を構築して行くことを目指してみるとしますか。こうして、僕は夜中にこっそりと道具作りに没頭することにした。
ベルグサントで活動するようになって、一週間がたった。
レイシアはギルドで上級の冒険者として認識され始めて、今ではギルド側から依頼を持ちかけられることも増えて来た。
「おはようございます、レイシアさん、こんな依頼があるのですけど、どうですか?」
「どれですか?」
ギルドに入って直ぐに、受付の人に声をかけられた。内容は緊急の依頼でここから北へ二日くらい、もちろん馬での移動みたいだね。休眠期だったドラゴンにちょっかいをかけた冒険者がいたらしく、火竜が暴れまわっているというもの。
少し南下すると小さいけれど村があり、村民が不安がっているそうだ。
依頼は火竜の退治。又は大人しくさせることらしい。
とうとう来ましたドラゴンの討伐! 分裂して早速情報を探りに北へと影渡りする。
正確な位置がわからない為に、何度か影を渡ってそれらしい場所へと到達。こっそりと遠目でステータスを確認させてもらう。
その結果、魔王程強くはないでしょうって結論、僕なら倒せそうだとわかった。
油断すると危ないけれど、強敵では無さそうなのでちょっと安心できた。
帰って来ると、さすがのレイシアも微妙な感じだな。倒せるのかどうか、判断ができなくて迷っているようだった。
ギルドの人もレイシアの実力がどれくらいかわからない為、レイシアの様子を窺っている。多分断ったら、別の冒険者に依頼するだけで問題ないのだろうと思われた。
「一応僕なら倒せるLVだと思うよ」
一つの情報として、判断材料を伝える。もちろん小声で、レイシアだけに聞こえるように発言した。それを聞いたレイシアは、何事か決めたようでうんうんと頷き出すと受付の人に返事をする。
「もしよろしければ、受けてみてもいいでしょうか?」
「そうですか! ではいつものようにサインをお願いしてもいいですか?」
「はい」
こうして、ドラゴン退治の依頼を受けることになった。
レイシアは、錬金術で作ったポーションなどを一杯持って行くことにしたようで、作戦なんかも移動中の間にいろいろ話し合ったりする。さすがにドラゴン相手に、気軽に突き進めないからね。
なるべくレイシアにがんばって戦ってもらいながら、適宜僕が支援する。
やばそうなら僕が思いっきり全力攻撃で、沈めよう。
ユニコーンで移動すること二日、僕らは南下した所にある村というところに到着した。
村の食堂でご飯を食べるだけで、特に依頼で来た冒険者とかそういう話はしない。
これは道中で話し合ったことだけれど、ドラゴン退治で依頼を受けた冒険者がやって来たら一人だけってなると、ギルドの面子に関わって来ると思われた。ただでさえ、冒険者が余計なことをしたらしいから、印象は最悪だろう。
それにギルドに見捨てられたと思われるのは後々の関係に影響するので、冒険者としてはそのように思われそうな行動は避けたかった。
なので、僕らは一人旅している風変わりな旅人ってことにしておいた。まあ、これもいろいろと無理のありそうな設定なのだけれどね。
いろいろ突っ込まれても、無視したらいい。さすがに女性一人なので冒険者なら戦って来いよとか、言われないだろうしね。いや、この場合は行ってきますって言えばいいのか?
そんな訳でお昼ご飯を村でいただいた後、特に観光する訳でもないのでそのまま北に向かい山に入って行く。
グガァァー
そんな咆哮が聞こえて来たのは、山の中腹辺りを進んでいた頃だった。
もう少し上の方に進むと洞窟があって、そこを降りて行けば火口付近に竜の巣があるという話だったので、できたらそこで戦いたかったのだけれど、どうやらテリトリーに侵入した人間の気配でも感じたのか、火口から飛び立ってしまったようだ。
「召喚、バリスタ! 召喚ゴーレム」
急遽、この場所でドラゴンを迎え撃つ準備を進める。
今回はバリスタ六台に、ゴーレムも六体。移動式のバリスタで、ゴーレムが力任せに操ることになっている。
セッティングされたバリスタの矢尻の部分に、僕が魔法を込めて行く。これは、矢がドラゴンに当たったらそこから冷気が溢れ出して、体を凍らす仕掛けである。
とりあえず、これで上手く撃ち落せれば、地上戦に持ち込めるかなって作戦だ。
しばし待っていると、ドラゴンが向かって来るのが見えて来た。
「いよいよね」
「上手くゴーレムの指揮をしないとだな」
おそらく、レイシアの指揮官のスキルは、こういう召喚との連携行動を得意とする能力だ。だからレイシア次第で、上手く戦えるはず。あくまでも予想だけれどね。
どんどんと大きくなって来るドラゴンの姿に、焦って指示を出してしまいそうになりながらレイシアは、それにじっと耐える。
巨体が相手なので、タイミングが難しかったのだけれど、十分に引き付けられたと思えたところで命令が出された。
「撃て!」
レイシアの命令に反応したゴーレムは、三体。全部が攻撃してしまうと、次弾が素早く発動できない為に、全部は撃たないようにしていた。
どれだけ発射するのかは、角度とか距離、位置などの関係で、出たとこ勝負だったが・・・・・・結果は二発が外れて、一発が命中した。
ガァァァー
痛みの咆哮と、怒りの咆哮がミックスされてドラゴンから響いた。
「撃て!」
すかさず次弾を攻撃するように指示が出される。
少しでも動きが鈍っている間に、地上に落とさなければ手負いのドラゴンは危険過ぎるので、残りのバリスタ三台から同時に矢が放たれた。
ここで矢を残しておいてもタイミングを逃す恐れがある為だ。
第二射撃目は動きの鈍ったドラゴンに全弾命中させることができて、体のあちこちを凍らせたドラゴンは予定通り地上へと落下した。
「送還、バリスタ、送還、ゴーレム。召喚、ファイアゴーレム。召喚、フェンリル」
即、地上戦準備へと移る。ここでモタモタしていると、氷が溶かされてまた空へと逃げられてしまうからだ。
そして何で火属性のドラゴンに火属性のゴーレムかといえば、この子達は攻撃が役割ではない為である。
つまり、ドラゴンが空に逃げないように、地面に縛り付ける役割を持っている。
呼び出されたファイアゴーレムは、早速ドラゴンへと肉薄する。
グガアアァー
ドラゴンは動きの鈍った体を必死で動かし、何とか距離を取ろうとしているが、三体に囲まれてついには尻尾を押さえ込まれてしまう。
そしてドラゴンが首をめぐらして振り払おうとした隙を狙い、残りのゴーレムがドラゴンの足へと取り付いた。
ここで、ドラゴンへの押さえ込みが完全に決まることになった。
怒ったドラゴンが、首を回してゴーレムを攻撃している。属性のダメージは入らないけれど、単純な牙によるダメージだけは入るので、もたもたしていると拘束が外れてしまうだろう。
そこで満を持して、フェンリルが登場する。
動けないドラゴンへと、吹雪が吹き付けられる。
ゴーレムに当たると、ゴーレムの拘束が外れてしまうので、狙うのは頭と体の部分だ。そして、隙をついての首への噛み付き。
ちょっとフェンリルだけでは攻撃不足を感じで、僕らは魔法の援護射撃を始めた。
「フリーズブリット!」「凍て付く刃を、アイスソード!」
ドラゴンの生命力はさすがで、中々に持ち堪えていた。
僕らは次々と魔法を唱えて、少しでもHPを削るようにがんばる。
レイシアは作って来たMPポーションで、回復をしながら魔法を唱え続ける。
まあ僕はMP一杯あるのと、この呪文自体低級のやつなので、MP回復の必要は無かった。
僕の手加減は、これがレイシアにとっての冒険である為に、あくまでもサポートしているっていう状況だからだ。どうでもいいやつになら、勿体無くて経験値を渡さないように倒しちゃうよ。
こうして、ドラゴンは無事に討伐された。
ちなみに帰り道というか、ついでなので竜の巣も漁ってお宝などを回収したり、生産に興味があったので鉱石っぽい物も一杯拾って帰ることにした。
どこに収納したのかっていうのは、僕の拠点横にいずれ工房部分を造ろうと思っていたので、そこら辺にドラゴンの屍骸を移動させ、お宝の方は拠点の部屋の中へと送り込んだ。
この回収でどこに送っているのかとかは、レイシアにも秘密にしてある。
単純に大荷物でも、回収する手段があるよって事だけを伝え、僕の方で一回預かるねって話をした。
ドラゴンの討伐部位は角だけらしいのだが、ドラゴンは全身が高級素材であり、持ち帰ることができれば持ち帰れた分だけお金が手に入るのだ。だから持って帰れるなら、持ち帰るのが一番。
ただ出し入れでどんな魔法なのかスキルなのか、聞かれるかもしれないっていうのが、厄介なところかもしれないね。
いろいろと回収が終わった僕達は、村を経由してギルドへと戻って行った。
村への報告は、ここでもしなかった。
下手をすれば一人で無謀な突撃をして、村に被害が出たらどうする気だとか言われるかもしれないのだ。報告とかはギルドに任せよう。
ギルドに到着すると、早速報告をおこなうことにした。
「マリエさん。依頼が終わったのですがドラゴンの屍骸を持って来たので、大きな場所を用意してもらえませんか?」
いつもの受付をしてくれていたギルド受付嬢、マリエさんを見付けてそう報告する。
「討伐に成功しましたか、さすがですね! えっとそれで場所ですか、少しお待ちください」
しばらく受付を変わってもらったマリエさんは、ギルドの奥へと移動して行った。
十分くらい待たされたかな、帰って来たマリエさんが、僕らを先導する。
「大きさが足りるかちょっとわからないのですが、ギルド所有の倉庫を用意しました。ドラゴンの屍骸は、馬車か何かで運んでいるのですか?」
やっぱり聞かれるか・・・・・・
「えっと、ちょっと特殊な魔法で運んでいるのです」
「はあ、そんな魔法があるのですか」
やっぱり不思議というか、微妙な表情で納得していない感じだった。
しばらく歩くと、ギルドの裏手にそれなりの広い大きさがある倉庫へと案内された。
「ここでどうですか?」
レイシアでは判断できなかったのかどうしようって表情をしたので、僕がこれくらい広かったらいいよと耳元で囁く。
一応合図はもう決めてあるので、それをレイシアが唱える。そういえば、レイシアは方向音痴だったから、こういう空間把握も、苦手なのかもしれないな。
「召喚、アイテム」
地面から沸き出すように、ドラゴンの屍骸が倉庫の中に出て来る。実際には影を利用した影渡りのスキル効果で、影から出て来ているのだ。
「うわー、これがドラゴンなんですね・・・・・・。こんなのを倒しちゃうんだ・・・・・・レイシアさんは、しばらくこの町にいますか?」
「ええ、特に予定はないので、しばらくは大丈夫ですよ」
「では、しばらく査定させてもらって、結果が出たらお声をかけさせてもらう形でいいでしょうか?」
「はい、じゃあそれでお願いします」
僕達は、再びマリエさんに先導されてギルドへと戻った。
そしてそのまま依頼料の方を貰って宿屋へと帰ることにした。
さすがに疲れたようで、そのまま寝るそうだ。眠るレイシアを見ていると、落ちこぼれだったのが嘘のように思える。いろいろと討伐の知恵や指示などをしたけれど、ドラゴンをほぼ一人の実力で倒せるほどまで成長するとは、さすがに思ってもいなかった。
倒せたとしても、もっとずっと先になると思っていたのだけれどね・・・・・・よくやったって心の中で呟く。




