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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第二十九章  混沌の時代が始まる
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名無し勇者の実力

 倒れて動かない眷属達を前にして、慌てて駆け寄る。邪神にまで上り詰めたホーラックスがやられるなど、誰が想像出来るものだろうか・・・・・・それだけではない、ホーラックスが直々に創り出した四天王もそうだ。

 この五人を相手にして、まともに戦える存在など早々いない。

 お約束の運命で縛られていた時の僕とは違うのだ。

 過去を振り返れば、ホーラックスを相手に勝てた者など、強くなったレイシアだけだろう。

 「むぅ」

 何故と悲嘆にくれていると、目の前でホーラックスが目を覚ました。

 え? ああ、そういえばホーラックスはただの眷属ではなかった。ダンジョンマスターとして死に戻るのが役目であったから、自動復活スキルを持っていたのだった。

 それは当然、四天王も同じだ。彼らも時期に目覚めるだろう。

 ホッとすると同時に、ふと気が付く。

 確かに彼らは生き返るが、フィリオは違う。メリアスと同じ役職として配置したが、進化して魔人になっただけの一般人だ。メリアスは大丈夫だな。彼女も一応ダンジョンで敵として戦うから、自動復活を持っている。

 だがフィリオには慌てて蘇生をおこなう。魂が残っていればいいのだが・・・・・・


 無事フィリオの魂を繋ぎ止める事に成功し、この場の全員に何が起きたのか情報を聞き出す。原因はおそらく勇者だっていうのは判明しているのだが、ホーラックス達を倒した手段がわからない。

 異世界召喚で、チート能力でも手に入れたのか? そもそも元の世界がここより隔絶した強さの世界だったのか?

 果たしてどんなカラクリがあるのか・・・・・・

 「私が説明いたします。今回の勇者は魔法が一切効きませんでした。純粋な力などはこちらの方が上でしたが、何て言えばいいのか・・・・・・戦いのセンスというか、技とか技術といった感じのものが並外れていたのです」

 「そんなに強かったのか?」

 「ええ、隙がまるで見付かりませんでした」

 確か特異体質で、魔法が使えないという報告は見ていた。実際は、周囲の魔法も無効化していたという事だろう。

 おそらく仲間の魔法支援も受け付けないのだろうな。その分肉体能力を極限まで鍛えた存在って事か。

 力押しで何とかなると考えるのは、厳しいか?


 どこへ行ったのかわからないが、とにかくあの勇者は放置すべきではない。メリアスから得た情報を元に、どう倒せばいいか考えていると、頭の中に複数の悲鳴が響き渡った。

 ここ最近は、信者達の祈りや助けを求める声など聞こえていなかったのに、ここに来てどうして・・・・・・一瞬浮かんだそんな考えは、鬼神のように暴れまわる勇者の姿を幻視させられて吹き飛ぶ。

 こいつ、無抵抗な女子供も容赦なく、惨殺して回っている!

 つまり奴の目的は直ぐ隣の城下町。そこでフォーレグス王国の国民を、根こそぎ殺して回る事らしい!

 おのれ!

 転移で移動した先は、まさに地獄だった。勇者の姿は既にない。

 呻き声の響く中、動いている者の姿は見られなかった。おそらく今かろうじて呻いている者も、このままでは幾ばくも持たないだろう。

 今すぐ勇者を倒しに行きたいところだが、この瞬間にも助けを求める声で頭が痛い程の惨状だ。それに蘇生の奇跡も魂が戻って来られなければ意味は無い。

 優先順位は国民の命だった。

 「主さま、お手伝いします」

 「バグ様、私も手伝います」

 「任せてください」

 ビフィーヌとリース、それにベルスマイアが転移して来た。三人とも、フォーレグス教を広める事を趣味にしていて、蘇生の奇跡が使えるようになっている。

 普段は広めるなって言いたい気持ちばかりだったのだが、今日ばかりは信仰してくれていた事が助かっている。今は一人でも手伝いが増えてくれた方がいい。しかし、勇者が近くにいるのならここは危険過ぎる。

 「あまり僕から離れるなよ。それと蘇生させた者は、なるべくまとめておけ。移動して勇者に会ったらまたやられるぞ」

 「「「はい」」」

 現場は酷い有様だったが、手当たり次第蘇生を続けた。

 まあ、奇跡の力自体はどうやら僕から引き出しているようだったけれどね。やはりおいそれとは使えない力なのだろう。


 生き返った国民達は、ビフィーヌ達を拝んで感謝していた。まあそこまではいい、もはや頭痛と変わらなくなりつつある悲鳴を聞きながら、蘇生を続けていると・・・・・・その場にいる人々のほとんどが僕にひざまずくようになっていた。

 おいおい、何もばらさなくてもいいだろうに。どうせ感謝するなら僕にって言って回ったのだろう。

 だが、今はそれを気にしている余裕も無い。一刻も早く、この苦痛とも言える悲鳴を止めたいところだ。

 作業のように黙々と魔法を使っていると、いつの間にやら僕達の背後は大名行列のようになっていた。違うところは、街道に残る人々がいないところだろうか。

 全員が後ろを付いて来る。まあ付いて来るように指示をしたのは僕なのだが、凄い数だな。

 それにしても、蘇生させるべき人々が途切れない。勇者にも追い付けない。この状況に終わりはあるのだろうか。

 向こうは破壊を撒き散らすだけで済むのだろうが、こちらは救済していかなければいけない。移動スピードに差があり過ぎる。

 「ホーラックス。勇者を見付け、足止めしろ」

 『我が主よ。我が勇者を滅ぼそう』

 「無理はするなよ」

 勝てなかった相手に挑むよう指示出すのは本位ではないが、今はホーラックスに頼りたい。こっちは分身のスキルを活用してまで救済している状況だが、まだ人手は足りないからな。

 蘇生の奇跡に時間制限がなければ、一部の分身を迎撃に回せるのだろうが・・・・・・どうせ相手をするのなら、逃がさないように戦いたい。これだけやられて、逃げられたでは納得がいかないからね。


 《神格 を取得しました》

 苦悶の声ではなく、女性の声でこんなメッセージが聞こえて来た。どこかで聞いた様なって考えてみると、ダンスの教師役をさせる為に創った眷族のモーリスの声だとわかった。という事は何かしらのスキルを手に入れたのだな。

 ステータスを見直して以降、特に変化が無いままだったから忘れていたぞ。

 結局異形相手に経験稼ぎをおこなってみたけれど、得るものは特に無かったからな。これが最初の成果になる。

 しかし神格って何だ? どんなスキルか予想もつかないな。

 ・・・・・・神の力を行使する時に必要不可欠な力の源。信者の数あるいは想いが一定量集まる事で神格は得られる・・・・・・

 おそらくは新たなスキルなのだろうが、どんなスキルなのかなって考えたら、何やら説明が思い浮かんで来た。便利だって思いはあるが、唐突過ぎて付いて行けないぞ!

 いや、今はこんな事をしている状況ではなかったな。蘇生が間に合わなくなったら大変だ。そっちに集中しなければ!

 そして気が付くと、僕の体の中から複数のモンスターが湧き出て来るのが見えた。これは何だ?

 幽霊? モンスターを殺し過ぎて、化けて出て来たのか? とも考えたのだが、出て来たモンスターの内一体を見て違うと確信する。

 何故かそいつを見た瞬間に、一番初めに合成進化した時に素材として捧げられた狼だと理解した。

 他にも大型のワイバーンや、ゴールドドラゴン・・・・・・これはどう見てもエンシェントドラゴンで間違いは無いだろうな。やはり合成進化で消えて行ったモンスター達らしい。サキュバスとかもいる。

 その彼らが僕に襲い掛かるでもなく周囲に散らばり、死者を蘇生し始めた。手伝ってくれるようだな。

 状況が把握出来ないけれど、今は助かる!


 不本意ながら、町に散らばる死体の数々が勇者の居場所へと導いてくれる。それにホーラックスが先に勇者と戦って、足止めしてくれているはずだ。出来るだけ急いで前へと進んだ。

 そして癒し手が増えたおかげで、とうとう勇者の下へと辿り着くと、そこにはボロボロになったホーラックスが・・・・・・

 それを見た瞬間、久々に感じる怒りが体中を駆け回った。

 「貴様!」

 「ふん。新たな魔族か。貴様も我が屠ってくれる」

 転移で死角へと潜り込み、滅属性の魔法を付与した槍を生み出し襲い掛かる。例え受けられたとしても、武器か防具はこれで壊せるはず。

 しかし事前情報にあった通り、槍のまとっていた属性は打ち消され、素手の掌によって軌道をそらされた。

 武芸の達人。

 見た感じ、それ程素早そうには見えないのに、こちらの攻撃は二度三度とかわされる。

 そもそも僕は元廃ゲーマーではあっても、運動は得意な方ではなかった。そのゲーム自体も大学に入ってからのめり込んだだけの、俄かのゲーマーと言ってもいいかもしれない。

 そんな僕が本気で武芸に励んだ相手を前に、まともに通用していたのも能力差があっての事だ。実際素早さもパワーも負けている気はしない。それなのにこちらの攻撃は全て、受け流されてしまっている。

 圧倒的に速度は上回っているのに、何で当たらないのだ。しかし、勝機がまったく無い訳ではないだろう。

 勇者はこちらの攻撃を捌くのに必死で、今だ攻勢には至っていない。消極的な意見だけれど、このまま何日でも続ければ確実に疲労して倒れるはずだ。

 ここまでされて、そんな決着は望まないけれどね。


 さらに手数を増やそう。

 勇者が集中して防御する事でこちらの攻撃を凌ぐのならば、攻撃の回数を増やしてしまえば飽和させられるはず。

 二十人の分身を呼び出して、それぞれに死角や防ぎにくい場所へと攻撃を仕掛けていった。もちろん武器もそれぞれ違うものを用いてみる。

 これならどれかが当たるだろう。

 だが、予想に反して攻撃は次々と受け流されて行く。しかも受け流しているのはこちらの武器でだ。せっかくの分身が、お互いを邪魔している? いや、そう仕向けられているのだ。

 こんな屈辱初めてだぞ!

 やっていること事態は理解出来る。

 弾いた武器を次の武器に当てて、攻撃を受け流している。剣も槍も鞭も、弓さえも当てる事が出来ない。これが勇者の力なのか・・・・・・それとも武芸を極めた者は、この領域に到達するものなのか・・・・・・

 おそらく僕が真似しようとがんばっても、この域に達する事はないだろう。せいぜいスキルで近いところまで持って行ければいいのではないだろうか。

 さらに手数を増やす為に二刀流にしてみたり、銃器で狙撃までしてみたけれど駄目だった。弾丸すら両断するって一体、どんな反射神経をしているのだ!

 これは無理だ。そんな諦めにも似た気持ちが湧いて来る。


 その時、脳裏に僕がいなくなった後のフォーレグス王国の姿が浮かんだ。

 誰一人動く者のいなくなった町で、勇者が最後に残った者を斬り捨てている姿・・・・・・駄目だ。ここで諦めたらレイシアも、ビゼルも殺されてしまう。

 諦めかけた気持ちを鼓舞するように、最悪のビジョンが脳裏に浮かんだ。いや、可能性の高い未来じゃないのか?

 《未来予測 を獲得しました》

 だがこれだけの猛攻を続けて、かすり傷一つつけられない相手にどうしろというのだ・・・・・・

 わずかな可能性にかけて魔法を使ってみても、勇者の体に触れる前に魔法は散ってしまう。体内爆破などの技ならどうかと考えてみても、そもそもの攻撃が当たらない。

 集中だ。集中してまずは一撃。

 時間をかければこちらが徐々に、有利になって行くはず。

 念動力を使って瞬間的に体勢を崩させようとしたが、超能力に分類される力も打ち消されたようだ。

 逃げ場を奪うような一斉攻撃も、アクロバティックに飛び跳ねて余計に攻撃が当たらない。こちらの時間差攻撃が、まとめて回避される始末だ。

 それどころか危なく包囲網を抜けられるところだったので、一斉攻撃は危険だな。

 攻撃を捌けているのは武器があるからだと武器破壊を仕掛けてみたのだが、素手でも平然としている。どうやら元々格闘が得意な様子だ。武器が破壊されてから、逆に身軽になった気さえしてくるぞ。


 その後も思いつくがまま、攻撃を仕掛けていったものの、膠着状態が続いていた。お互いのダメージは今のところ無い。

 当初予想していた疲労を狙う計画は、今のところ成果が見られなかった。

 いったいどんな蛮族だよ。もう十時間くらいは戦っているように思えるのに、まるで疲れる様子がみられ無いぞ。

 それでいてその表情には焦りも苦痛も無い。ロボットか何かのように、淡々と攻撃を受け流しているだけだ。こちらの方が精神的に疲れて来る。

 しかし手は抜けない。

 戦闘開始早々に見た不吉な未来。ひょっとして未来視ではないだろうな? スキル獲得とか表示されたのは未来予測だったか、あんな未来を現実にすることは出来んぞ。

 せめてもの救いは、こちらの攻撃を凌ぐ事に力を使っている為、攻勢に出られないよう封じ込めている事だろう。それもいつまで続けられるかはわからない。


 決め手も無いまま、夜がやって来た。

 僕の周囲は戦闘の余波で瓦礫の山と化している。その山の上に眷属と、さらに彼らを囲むように死の軍団達が並び、巻き込まれる国民が出て来ないよう防壁を築いていた。

 アニメや小説などでは子供が飛び出して来るかもしれないが、そんなミスを許す眷属達ではない。

 だが戦後処理はかなり大変な事になるだろうな。

 ますます目の前の勇者、いやもうこいつは魔王と呼んでもよくないか? 破壊の権化を許す気にはなれん。召喚した国もだ! 後で必ず制裁してやる。

 しかしまずはこいつからだ。

 そういえば名前さえも知らないままだな。たいした会話すらも無く、戦闘を続けている。

 もういい、こんな奴は名無しで構わん。どうせ生かして返すつもりなど既に無い。それが例え本物の勇者で、次代の魔王だったとしてもだ。この世界のシステムなど知った事か。

 運命で定められていたのだとしても今こそ、その運命ごと捻り潰してくれるわ!

 その運命がなかなか手強いのだけれどね・・・・・・


 朝日が昇る頃、依然生命力旺盛な名無し勇者を前に、いい加減嫌気がして来た。これいつまで続くのだ? もういい加減死ねよ・・・・・・

 こちらが引き下がるつもりは毛頭無いのだが、ここまでしつこいと嫌気がする。

 魔法が効かないというのはここまで厄介なのか・・・・・・まあそうだろうな。ファンタジー全否定にもなる。

 それでいて戦い続けているこいつは、本物の化け物だ。どれだけ体力馬鹿なのだ。

 しかし魔法は通じない。魔道具も効果が消失するので、絡め手も通じないのだ。

 そこでちょっと考えてみた。魔法が直接絡んでいない手段はどうか。

 始めは魔法で高温に熱した剣で攻撃を受け流させたのだが、わずかに火傷を負っていた。二十時間かかってやっと明確なダメージを負わせたのが、この火傷っていう・・・・・・何こいつ。ラスボスなのか?

 でもこれで止めまでは行けそうにないな。


 ふと、魔法が効かない特異体質っていうのがいけないのだと考えた。何とかこれを解消出来れば、あっけない程簡単に倒せるのでは?

 銃弾は斬り捨てられるのは既に見ている。なら斬れない弾とかどうだろう。

 科学技術で出来ていながら魔法ではない攻撃。レーザーガンとかいいのではないだろうか。これなら下手に触れないし、そもそも素手で受け流せる類の攻撃もない。そして弾速は光の速さだから、回避しにくいはずだ。

 試してみる価値はあるだろう。

 その結果やっと明確にダメージを与える事に成功していた。

 これでも致命傷を負わせる事は出来ていないけれどね。皮一枚で回避している事が多く、逆にこちらが同士討ちになりそうな状態だ。

 まあ二十人にも及ぶ分身で攻撃していれば、回避された攻撃が飛んで来て当たるなど、当然の結果なのだがね。

 そこはミラーの魔法で反射して再攻撃に使っている。これがまたいい感じに不意が突けて、ダメージに繋がっているようだった。

 それでも倒し切れないのが口惜しいところなのだがな・・・・・・


 「手間をかけさせてくれるな、魔族め!」

 あちこちに線を引いたような火傷を負った名無し勇者が、楽しそうに言って来た。どうやら何か勘違いしているようだな。

 永遠に続くような攻防に、次第に頭がボーっとし始めた僕は、初心に立ち帰る事にしただけだ。

 系統樹のスキルを使い、体をスライムへと変化させたのだ。

 ただのスライムではない。いうなればボススライム? ゲーム世界で日本側との接点に配置したボスが、スライムだった。

 あそこには僕の原点ともいえるスライムをボスとして配置してある。ちょっとしたジョークのようなボスだったのだが、これがかなり強い。

 そもそも簡単に突破させるつもりが無いボスだったので、ほぼ全ての攻撃を防ぎ切る仕様にしていたのだ。まあその分攻撃力は弱いのだがな。みんなで協力して戦いましょうって感じで配置させていた。

 でもこの局面で唐突にそれを思い出していた。

 そっちが魔法を阻止するのならば、こっちは物理攻撃を無効化してやればいいんじゃないかと!

 別にこれで倒せるようになる訳ではない。嫌がらせにしかならないのだ。攻撃を続けるのに疲れたともいう。


 名無しの勇者がこちらの攻撃が緩んだと見て殴りかかって来るものの、逆の立場になったこっちは痛くもかゆくも無い。

 今までの仕返しのつもりか、嬉々として連続攻撃を仕掛けて来るのを、正面からスライムボディーで受け止める。

 おそらく疲れたか何かで、本性を現したとでも思ったのだろうな。

 「ぬうっ」

 初めは余程鬱憤が溜まっていたと見えて、笑いながら殴りかかっていたけれど、段々その表情が曇って来た。それはそうだろう。先程の僕のように、まるで手応えが無いのだから。

 やり返される気持ちはどうですかね? 今のうちに好きなだけ攻撃するがいい。

 お前が魔法を使えない事くらい、調べはついている。物理攻撃では一生かかっても一ダメージも与えられないぞ。

 その間こちらは分身達もスライムへと変化させて、包囲網を完成させる為に動いていた。

 不利になったら逃げるのがセオリーだろう。まあ魔法が使えないから、転移するとかは考える必要はない。物理的に逃げ出す事を考えれば、これでおそらく詰みだ。


 名無し勇者を包囲するのはあっけない程簡単だった。それだけ鬱憤が溜まっていたのか、自分の勝利を確信していたのだろうな。

 お互いに勝てないのだが、もう逃げる事も出来ない状況は作り上げた。

 おそらくどうやっても勝てないと判断すれば、逃げるか他の目標を見付けて殴りかかるに決まっているのだ。だから逃がさない。それ以上にここまでてこずらされて、逃げられましたなんて許せない。

 勝算は低いが、寿命が無い僕は既に勝っているも同然なのだ。こいつの寿命が尽きるまで、こうしていれば勝てる。

 いや。初心に帰れば勝てるのかも?

 スライムの特性を生かし、足元の逃げ場を無くす。そして名無しの勇者の上空を覆いつつ、包囲網を一気に縮めて行った。

 さすがに一体で捕らえに行けば避けられるが、包んでから迫れば逃げられまい。隙間なんて無いからな。

 既に地面の下も上空も、逃げ場は皆無になっている。このまま包み込むのには空気が邪魔だから風船から空気を抜くように喚起はするが、勇者は逃がさない。

 そうすると当然、勇者はスライムの体内へと取り込まれる形になった。

 そう、初心も初心。息を止めてしまえば、どんな生き物でも確実に殺せるのだ!

 結局これが一番最強って事だよね・・・・・・いや、スライムが最強なのかも・・・・・・


 散々苦労した名無しの勇者の死体を見て、腹いせに燃やしてやろうと考えたのだが、死してもまだ魔法は受け付けないようだった。なんて忌々しい・・・・・・

 まあそれはそれとして、かなり厄介な体質だったのでサンプルを回収させてもらおうか。これもいつか何かしらの役に立つかもしれない。せいぜい利用させてもらおう。

 さて、こんな厄介な勇者を呼び出してけしかけて来た国は、滅ぼさねばなるまい。

 もし勇者を倒した事で、人類が滅ぶような事があったとしても、こっちとしては一切関知しない。襲って来る方が悪い。襲わせる馬鹿共が悪い。

 こっちは一応周囲に溶け込んで生活している、ちょっと国民達が変わっているだけの国でしかなかったのだ。それが邪魔だというのなら、そんな相手こそが邪魔なのだ。排除される前に排除しよう。

 えっと、それでどこが勇者召喚をおこなったのだったかな・・・・・・

 「バグ様、グミナラフ魔法王国です」

 「ありがとう、メリアス。ああ、それと戦後処理も頼む」

 「承知しました」

 そうだ、散々痛い目にあったホーラックスも連れて行こう。二人で暴れれば国の一つや二つ、そう時間もかげずに滅ぼせるだろう。

 何せ生命の神と邪神だからな!


 眼下には滅び去った国の姿が晒されていた。空爆でもしたかのように、無事な建物は無い。

 周辺の国々には一応警告と、これからグミナラフ魔法王国に報復活動をする旨は伝えてある。蛮族じゃないのでいきなり問答無用で戦争は仕掛けない。

 グミナラフ魔法王国自体はいきなりだったけれどね。それはこっちもそうだったから、そのままのやり方で攻めただけだ。

 とはいえ、あきらかに一般市民だと思われる人間には、危害を加えてはいない。ただし建築物などは破壊され尽くしているけれどな!

 命があるだけ、ありがたく思ってもらおう。

 フォーレグス王国の国民は、女子供でも容赦なく殺されたのだ。生き返りはしたものの、これくらいの報復で済んだのなら、まだ優しい方だろう。

 国の関係者は例え女子供でも、容赦する気にはなれなかった。

 言い訳なのか、国王がフォーレグス王国を襲えとは命令していないとか言ってはいたが、そんな事は知らん。現実問題として攻めて来ただけでなく、惨殺して回っていたのだ。やられたら相応の仕返しをしなければ、こちらの気がすまないだろう? 絶対に手は出すなと、躾しておかなかった自分達を恨め。

 とはいえ、今の目の前にある状況は、見ていて楽しくもないな。

 仕返し自体は終わって鬱憤晴らしは済んだものの、別に本物の魔王みたいに人間を虐げて喜ぶ趣味はない。逆に右往左往している人間を見ていると、何か出来ないかって気持ちすら湧いて来る。自分で破壊しておいて今更って思うがな。

 これから彼らがどうなって行くのか心配にはなるのだが、それが自分達の国王が選んだ道だ。受け入れるしかないだろう。


 用事を済ませて帰って来たのだが、まだまだやる事は残っている。

 その一つが新たに手に入れたスキル。神格だな。 未来予測も手に入れたのだが、まあこっちはわかりやすいので置いておこう。

 そしてスキルなのかその他の要素でもあるのか、スキルの詳細がわかるようになっている事も疑問だ。

 例えば保管魔法とは何だ?

 ・・・・・・保管魔法とは直前に使われた魔法を異次元に収納し、任意のタイミングで取り出して使用可能にする魔法補助スキル・・・・・・

 このように、今までわからなかったスキルの詳細を知ることが出来る。ある意味便利な能力を手に入れたものだ。

 これが神格の能力なのかな?

 ・・・・・・これらの説明は、神々の叡智へのアクセスによってもたらされるものである。神格を手にし、神へと至った者が権利を得る・・・・・・

 説明が出ちゃったよ・・・・・・そして何やら聞き捨てならない説明が?

 神へと至った者・・・・・・僕って生命の神だったよな? 違うのか?

 ・・・・・・種族としての神は数多く存在する。しかしそれは称号のようなもので、神ではない。神の名を抱く種となり、神格を得た者だけが神と名乗る存在へと至る・・・・・・

 つまり、今までの僕は自称神とかだったって事かな? ホーラックスも邪神になってはいるが、あれも称号になるのか・・・・・・

 まあ僕の場合、既にフォーレグス教で崇められているし、今更なのかな~

 違いがよくわからない・・・・・・


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