ステータス機能の変更
「なんだかバグが二人いるみたいね!」
「そんな事はないだろう。僕は僕だ」
「私は私だ、寝ぼけたこと言っていないでさっさとしろ」
目の前でレイシアがテッシーの指導で素振りしている。てっきりダンジョンで敵を倒しているのだと思っていたのだが・・・・・・何となく当てが外れたな。
それにしてもそんなに僕とテッシーは似ているのかな? まあ僕の細胞から作ったホムンクルスだから、知識や性格なども似ているのかもしれない。
そこはまあいいのだが、これではステータスチェックが出来ないではないか。
「ところでこれは何をしておるのだ?」
何故か付いて来たビゼルが問いかけるが、おそらくはスキル習得の為の訓練ではないだろうか?
「事前の特訓によって、スキルを習得出来る可能性がある。レイシアは剣も使うとの事だったから、魔法だけじゃなく剣術の訓練も必要だろう」
「ほー。レイシアよ。頑張るのだわ!」
「うん、頑張るよ。そして追い付くね!」
テッシーの説明にやっぱりと思う。
そしてビゼルの激励に応え、レイシアが気合を入れて素振りを再開した。
さてこっちはこっちで筋トレでもして、最大HPを上げる努力でもしてみるかな。
ちょっと前のホーラックスとの戦いで感じたのだが、体力が桁違いに多いっていうのはかなり有利だと感じた。それに僕はスキルの超回復自体を既に持っているのだし、最大HPを増加出来れば無敵とはいかないまでも、そうそうやられる事はなくなるだろう。
何とか増やせないものかなー。なんて考えてこんな事をしていた。
何かしらのスキルとか手に入るかもしれないので、この機会にレイシアと一緒にトレーニングをしてみようと考え付いたのだ。
まあ特訓メニューは別だから、近くであがいてみるだけだけれどね。
それでもレイシアは嬉しいようで、張り切って木刀を振り回していた。
「あ! 今頭の中で、剣術を習得したって言われたよ!」
そう。それが新しく追加したステータスの機能だ。
わざわざダンス担当の眷属に指示を出して、声優みたいに音声を録音させてもらったのだ。彼らには芸術関係の才能を与えておいたからなー。ちなみに男女の声で録音したので、聞こえる声は異性に設定してみた。
だがしかし・・・・・・おそらく剣術がLV一になったはずだというのに、ステータスには表示されていない。
やっぱりLVが上がらないと出て来ないって事か? 内部数字では一になっていても、カウントされていない気がする。
一応習得されたみたいなので、いろいろと試してもらったものの、本当に剣術LV一なのかどうかがわからないな。習得前と後での違いが分からない。
LVを上げないと剣術スキルとして効果が発揮されないとかかな?
明確にゼロと一の差が出るスキルで検証しなければ、データが取れそうにないな・・・・・・
結局レイシアにはそのまま次の訓練に進んでもらって、データ取りはこっちでアルタクスに協力しておこなう事にした。スライムに魔法を覚えさせて、魔法が使えれば一になっているはずだろうって事になった。
ただのスライムではSPが無く適正も無いだろうが、魔法が使えるスライムを用意しては意味がない。適性が無いからこそ特訓をして習得出来た時のデータが取れると予測した。
SPが無い所は加護を与える事で底上げしてある。
後はどれくらい頑張れば魔法を覚えるか、だな・・・・・・
横目で様子を窺いつつ、こっちはこっちで筋トレを続けることにした。レイシアは続けて剣術ではないな・・・・・・刀術を教えられているようだ。
似ているようだが、必要とする技術はまるで違う。
剣術は西洋の両刃の剣を使って力で押し斬る戦い方なのに対し、刀術は片刃の日本刀で撫でるように斬る技術だ。刀術には刺突の様な突き技なんかも多いみたいだな。
そもそも何でホムンクルスは刀術なんて教えられるのだ? この分だと居合斬りとかも教えられそうな気がするぞ・・・・・・神だから何でも知っているとか、そういう事なのだろうか?
僕も後で教えてもらおう。
あれから何日か過ぎ、そう簡単に魔法を使う事は出来ないのだなって考えながらトレーニングを続けていると、ホーラックスから連絡が来た。
『主よ。勇者が来たぞ』
「それは自称ではない方か?」
『ああ、おそらく今代の勇者だ』
確かアギトって名前の魔法使いの勇者だったはず。何でハウラスの方に行かないでこっちに来たのだ? あちこち移動するハウラスを見失ったから、場所がわかっているこっちに来たのか?
「今どんな感じだ?」
『もう直ぐ我の前に着くだろう』
さすが勇者だな。いや、勇者ならそれくらいあっさりと突破してもらわなければ、ハウラスを倒すとか無理か・・・・・・とりあえず様子を見に行こう。
「わらわも行くわ!」
「あ、じゃあ私も連れてって」
転移して移動しようとしていると、ビゼルとレイシアが一緒に行くって言いだした。どこに行こうとしているのかわかって言っているのか?
いや見たところ何処かに行こうとしているから一緒に行きたいって感じか。
とりあえずレイシアは危険だから連れて行けないな。巻き込まれたらたまらない。
「ビゼルはいいが、レイシアは危険だ。ここで待っていてくれ」
勇者がもっと勇者らしければレイシアを巻き込もうとはしないと思うのだが、あいつは巻き込んでも魔王を倒せればいいって考えかねない。実際にそんな性格をしているのかどうかはわからないがな。
万が一を考えると連れて行きたくはないな。
「むー。わかった。二人とも気を付けてね!」
「うむ。任せるがいいわ!」
そう言うとレイシアは早く僕達に追い付く為か、訓練を頑張り出した。
人間の特訓程度では僕らに追い付けないと思うのだがなー
LVも百程で限界に達するので、どう頑張っても追い付く事は無いだろう。やっぱり人間に拘るのではなく、モンスターとかにでもなっていればよかったのに・・・・・・レイシアならヴァルキリー辺り似合いそうだ。
いや、黒髪だと違和感があるか?
まあ実際になれるかどうかは別なので、期待は出来ないか・・・・・・怪物になったら引きこもりそうだしな。
城にある玉座の間に転移すると、勇者との戦闘は既に始まっていた。
四天王がかつて僕と戦っていた時のような配置で、勇者パーティーを相手にしているのがわかる。
僕がやって来た事に気が付いたらしいホーラックスが、玉座から立ち上がり身振りで座るように促して来たので、せっかくだから特等席で見学でもさせてもらおうかな。
律儀にも隣にビゼル用の椅子まで用意してくれたしね。
というか、この配置って王様と王妃様が並んで座っているような感じだな。まあビゼルは僕の妻になるので、ある意味間違ってはいないが・・・・・・後でレイシアに睨まれそうで怖いな・・・・・・
さてホーラックスの定位置を奪ってしまう感じになったが、そのまま王を守るよう前に進み出たのに合わせ、癒し手の四天王もホーラックスと同じ位置まで移動して行く。邪神なのに近衞と神官のようだな。
勇者パーティーの方はメンバーが総入れ替えしていて、盾持ちの戦士が二人。おそらくは盗賊職で弓持ちが一人。接近もこなせそうなメイス持ちの神官が一人。勇者以外全員が女性の五人パーティーのようだった。
あいつ、どう考えてもハーレム狙いでパーティーを揃えやがったな。
おかげで前衛の女戦士が火力不足で、こちらの戦士の四天王一人相手に押し切れないでいるじゃないか。
もう一人の大剣の四天王の相手をしている戦士は完全に防御専念で、状況が好転するまで耐え抜く構えになっている。それも見ていれば時間の問題っぽい感じに見えるがな。
勇者本人の火力が結構高いのが唯一の救いだろうが、ハウラス相手にこのままだと押し切れないだろうな。
趣味など捨てて、もう一度バランスよくパーティー集めをした方がいいのではないか?
「貴様はあの時の・・・・・・魔王と邪神か!」
何とか火力を集中して、盾持ち戦士の四天王を崩そうと魔法を放った勇者が、こちらを見て僕に気が付いたようだ。
どうやら研究施設で出会った時の事を思い出したようだな。こちらは半分以上忘れていたのだが、結構記憶力がいいのかもしれない。さすが魔法使いの勇者だけあって、知能は高いのか? いや、知能ではなく記憶力がいいだけだな。
盾持ち戦士の四天王が受けたダメージを、癒し手が回復するのを見つつ勇者の問いに答える。
「久しぶりというべきか、何度もフォーレグス王国に来る理由が知りたいな」
勇者に話しかけている間に、戦士の四天王の傷が癒されたようだ。相変わらずさすがの体力だな~。そして癒し手の回復量が半端ない。まさにボスって感じで、勇者泣かせとも言えよう。これで四天王は無傷となり、振出しに戻ったようだ。
「いい気になるなよ邪神め! 必ず貴様らを撃ち滅ぼし、我が祖国を取り戻してみせる!」
「そう言う事か・・・・・・邪悪なる悪魔の国の先兵として、この平和なフォーレグス王国に攻め入って来たという事か。さすが悪逆非道な人間共だ。勇者などと呼ばれているからどれ程高潔な男かと思えば、お前こそ魔王という称号がふさわしい」
「何だと!」
わざわざ煽るようにそちらが悪いのだと言ってやれば、勇者が一気に不機嫌な声で反応して来た。
確かこの勇者の生まれた国は、先程侵略したウルクスダルト国だったはず。
つまり祖国が逆襲された逆恨みで襲って来たってところなのだろうな。本当にこちらからすればいい迷惑ってやつだ・・・・・・
「トルグブルト国だけに飽き足らず、ウルクスダルト国まで征服しておいてよく言えたものだな」
どうやら勇者の語りに入ったようで、会話が聞こえるよう戦闘は一時的に控えめになったようだ。とはいってもお互いに剣で押し合っているので、完全に止まった訳ではないみたいだな。お互いに律儀な仲間を持ったものだ。
戦闘の真っ最中に敵と会話っていうのも変なのだが、お互いの仲間が大きな音を立てないように控えめに戦うって・・・・・・打ち合わせでもしたのかって言いたい。
せっかくの気遣いなので、お前らが悪いのだって言ってやるかなー
「このフォーレグス王国を建国してから六百年余り。人間の同盟国すら有り、先程まで一切戦争を仕掛けられても侵略はしなかった国に対し、邪悪で危険な生き物だからと言い張って侵略戦争を仕掛けて来たのはお前達の国ではなかったのか? こちらの国にはお前達が言う邪悪な生き物とかいう友好種と、人間が普通に手を取り合って生活しているところに攻め込まれたのだ。ちょうど国が発展して来て手狭にもなって来た所だったので、逆に侵略したところで文句を言われるいわれも無いのだがな?」
「くっ・・・・・・。だからといって他国を侵略する理由にはならんだろうが。その土地にはそこで過ごしていた人間が住んでいたんだぞ」
「それはこっちも同じだ。戦争など起こせば少なからず死人も出て来る。だったら二度と戦争など起こさない国が隣にあった方が、こちらとしても安心だと思うのだがな? お前達の国がフォーレグス王国にちょっかいをかけて来たのは一度や二度ではないからな。これ以上こちらが我慢して耐える理由などない。逆侵攻して蹴散らしたところで文句は言わせんぞ」
勇者は何とか反論しようと言葉を探しているように見える。
しかし危険だ危険だと言いつつ六百年以上にも及んだ平和な時間が、どんな言い訳をしたところで邪悪ではない事を証明してしまっているのだ。結局のところは気に食わないと適当な大義名分をでっちあげて、平和な国へと押し入って来た事実は変えようがない。
殴られるのが嫌なら殴って来なければいいという話しだな。
既に手を上げてしまったのだし、誤解でもなかったのだからどんな言い訳を並べたところで、彼に正当性などもはや存在してはいない。
それどころか、難癖つけて戦争を起こしたら逆に攻め込まれてボロボロになり、逆切れして乗り込んで来ただけだしな。もはや勇者側には大義も正義も何もないだろう。
ごねればごねるだけ勇者としては見苦しいだけである。
どうやら僕と勇者の会話を聞いていたようで、自分達の分が悪いと気が付いたのか勇者の仲間達の動きが止まった。形の上ではまだ剣を突き合せてはいるものの、既に押し合ってはいない。
そしてそれは四天王も同じで、剣を当ててはいるもののこちらも押してはいなかった。
どう見ても邪悪な相手ではないと証明されてしまっているなー
とても理性があり、話し合いの余地もあるのに無理やり乗り込んで、難癖付けて襲っているようにしか見えない状況だった。
しかもこれが人間の国なのだとしたら、相手国の王様の前まで土足でやって来て、暴力で自分達が正義だと喚き散らしているようにしか見えない。最低の行為だな。
「邪悪で暴力でしか物事を測れない野蛮人共よ。今更になるが、わずかな礼節すら今だ持ち合わせていないのか? 自称でも勇者を名乗るからにはさっさと自分の使命を思い出して、魔王討伐に向かったらどうだ? 本来ならそれが勇者の役割というものだろうが。平和な国に押し入って力尽くで相手を押さえ付けるような、魔王の様な行いをするのがお前の言う勇者というものなのか?」
キン
前衛として戦っていた相手戦士の一人が、剣を鞘に納める音が玉座の間に響き渡る。それを契機に他の仲間達もそれぞれの武器を納めて行く。
「今回の数々の無礼、申し訳なく思う。どうか許してもらいたい」
「すみませんでした。私達も自分達の国が侵略されて、冷静になれなかったようです」
なんとなく釈然としない様子ながらも勇者の仲間達がそう言って、これ以上は戦う気が無いと告げて来る。
どうせもう魔王になったハウラスには、状況を告げるだけの理性ももはや残ってはいないだろうから、自分達がこれから戦う相手について前もって教えて苦悩させてやろうかとも考えたが。だがそれは黒騎士の役目だろうな。
もう終わった事ながらここで僕が教えるのは、何かしら魔王のシステムに影響を与えかねない。どうも今だに黒騎士には勝てる気がしないので、こんな事で反感は買わない方がいいだろうな・・・・・・
今だ謝りもしない勇者に真実をばらして、苦悩する姿を見てみたいとも思ったがやめておこう。
その代りにここは嫌味でも言って憂さ晴らしして、とっととお帰り願うか・・・・・・
「よかったな、世界の運命を握る勇者一行で。どんな悪逆非道な行いをしても処罰する訳にもいかないからな。そうでなければその首跳ね飛ばすところだろうに。とっとと使命を果たす為行動を起こせ。そして二度とフォーレグス王国には立ち入るな」
男のプライドが邪魔をするのか、素直に謝罪する事も出来ずに仲間に連れられ立ち去って行く姿を見送る。
結局最後まで礼儀知らずって感じかな。
ついでのようにハウラス達の様子を見てみると・・・・・・もう完全に理性を失って暴れるだけの魔王と化していた。これからこの世界は大変そうだなー
ちなみにブレンダ達も似たり寄ったりの状況で、もはやレイシアを連れて会いに行ったところで、こちらを認識してはくれないだろう。
ブレンダとシリウスも、隠れ潜んでいた森から出て来て、周辺で暴れているらしいと情報が上がって来ていた。
ほとんど魔物と化した彼らも、死ねばちゃんと輪廻転生して来られるのだろうか? 願わくば次の人生は平穏なものであればいいのにな・・・・・・
勇者という名の暴徒を追っ払った後、僕らは再び経験集めと訓練に戻る事にした。
「お帰りなさ~い」
「お邪魔してます、バグさん」
戻ると佐渡さんも一緒にいたようで、レイシアと共に声をかけて来た。ダンジョンの方はいいのか?
「ただいま。佐渡さんはいらっしゃい。ダンジョンの方は休憩か?」
「あっちはMP切れでお休みかな」
「何ならポーションを出すぞ。町でも売っているのだが買えなかったのか?」
一応昔の迷宮都市に顔を出していたのなら、換金してお金くらい持っていそうだが・・・・・・ポーションも結構高くつくからな。僕はそれが嫌で生産しているようなものだ。消耗品を買うより自分で作って使いたい。
おかげであまりお金を必要としなくなったけれど・・・・・・
佐渡さんもあまりお金を使っていなくて、ポーションを買えないのかな?
「あー、MPポーションはそれなりに確保出来てますよ。ただ・・・・・・もうしばらくは飲みたくないのよね・・・・・・」
ずっとダンジョンを造ってはポーションを飲んでって繰り返して、お腹がタプタプになったのか・・・・・・それは休憩もしたくなるよな~。意外とダンジョン造りって地味で大変なのだな・・・・・・
ついでに穴の中に一人でいる時気が滅入って来るだろうし、誰かと会話したくなったのかもしれない。
さすがの僕でもずっと一人で過ごしていれば、人恋しくなるだろうしな。
その場合は眷属とかと会話したりするのだろうが・・・・・・せっかくレイシアと知り合ったのだし、女子同士会話とかしたかったのかもしれない。
テーブルが用意されて料理パペットが隣にいて、お茶とかデザートとか用意していた。
ついでにホムンクルスもデザートを味わっている。僕から生み出されてはいても女性って事かな?
「そう言えば、佐渡さんが初めて作ったダンジョンに、行ってみるか?」
佐渡さんに会った時に想い出したのだが、あの時のロボットダンジョンマスターに会わせて上げたいと思っていたので、休憩している今ならどうかと思って提案してみる。気晴らしにもなるだろう。
「え! でも、あのダンジョンは暴走しちゃって、中に入れませんよ? せっかく苦労して封印したんですから、解除しちゃうとモンスターが溢れちゃって危険です」
「知っている。というか偶然なのだが、そのダンジョンの封印は既に解けていて、モンスターが溢れ出して大変だったようだが既に対処した後だ」
「へ・・・・・・」
「こっちで勝手に設定を弄らせてもらって、訓練所として利用させてもらっているぞ。まあ管理はそのままロボットに任せて、訓練しているのはその国の兵士とかだろうがな」
「そうだったんですか・・・・・・それはありがとうございます」
なんとなく実感が無いのか、茫然としながらそんな回答をして来た。
でも気にはなっていたのか、なんとなく嬉しそうな、懐かしそうな表情を浮かべる。
「あの、連れて行ってもらってもいいですか? 逃げ出しちゃった後、どうなったのかわからないままで、気にはなっていたんです。どこをどう逃げて来たかも忘れてしまって、今じゃあ場所も想い出せませんし」
「構わないぞ。今から行くか?」
「はい! 連れて行ってください!」
「私も行く!」
こっちで勝手に話をまとめていると、レイシアが手を上げて主張して来た。まあレイシアは付いて来るって言うと思ったよ。そうするとビゼルにも声を変えておいた方がいいな。そういえばビフィーヌがいない。二人共どうせ来るのだろうし、声をかけておくかなー。声をかけないと後々拗ねるだろうしね。
『少し外に出るが一緒に来るか?』
『行くわ!』
『どこへでもお供します』
連絡してみれば案の定、即答で返事が来た。
いつものメンバーに佐渡さんを含め、僕達はフレスベルド国にある平原のダンジョンへとやって来た。
昔は平原にポツンと存在しているダンジョンだったのだが、かつての同僚が建てたと思われる宿泊施設を基にして、いつの間にやら町が出来上がっていたようだ。
これはもう立派な迷宮都市だな。規模は小さめだが・・・・・・しっかりとした壁も出来ている。
いつかのようなモンスターの氾濫を防ぐ為かな?
門を塞げば町は完全にモンスターに占領されるだろうが、周囲の村などには被害が無いだろうな。
これはダンジョンの上に町を造るリスクだろう。調整したのでもう大丈夫だと思うが・・・・・・
まあ小さめだけれど都市は都市だ。
という事は、佐渡さんは迷宮都市を二つ持っているって事か・・・・・・そう考えると結構な大物感があるな。本人はただの一般市民みたいなのに・・・・・・
それにしてもここのダンジョンは、たった四階層しかないダンジョンじゃなかったか? こんなに発展する程実入りがいいのだろうか?
ダンジョンに寄る前にとりあえず町中を窺ってみる。
ちょっと見て回ると理由は結構直ぐに判明した・・・・・・今ではもう手に入らなくなったといってもいい、モンスターから取れる素材が売られていたのだ。
ダンジョンで生まれたモンスターの素材なので、養殖素材とでもいえばいいものかもしれないな。
「えっと・・・・・・モンスターの種類を変えた方がいいのかな?」
僕が注目している物に気が付いた佐渡さんが、そう聞いて来る。
「ああ、その方がいいだろうな。町は混乱しそうだけれど・・・・・・似た様な素材が取れれば問題ないだろう」
考えてみれば当時はモンスターの種類とか気にもしていなかったな。ちょうど今日立ち寄った事だし、帰る前には設定を弄って行こう。
しばらく更新をストップします。
再開は未定です。




