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卒業

   第六章  卒業


 まずはミリアレス先生に聞いたように、ギルドで詳しい依頼の内容を確認することになった。

 受付で遺跡調査の話をすると、応接室に案内されて、ちょっと学者っぽい人が依頼の詳しい内容を説明してくれる。

 応接室は日本の会社みたいな長机があって、会議室っぽい感じがした。僕的には懐かしさのあまり少しテンションが上がってしまったよ。

 「えっとまずは、遺跡までのできるだけ正確な位置の把握。出入り口の詳細、これは複数の出入り口があるようでしたら、わかるだけ全部報告してもらった方がいいです。遺跡内部の地形及び、年代がわかりそうなアイテムなどの確保。こちらは、遺跡を破壊しないでもらいたいので、持ち運びできるアイテムに限るのと、移動させることで発動する類の、仕掛けのあるアイテムは持ち出さないように気を付けてください。

 次に、内部にいるモンスターの種類と生息する生物のできるだけ詳しい情報。危険なモンスターや生物の場合は、既にわかっているモンスター、既存生物はできうる限り排除してください。未知のモンスターや生物の場合は、できるだけ危険の排除をした後生け捕りが望ましいです。無理ならその屍骸でもかまいません。生きていた時の情報を、できるだけ覚えておいてください。

 最後に、遺跡内で入手された財宝などについてですが、基本は全てギルドの方へ持って来てください。歴史的な価値、遺跡由来のものでない物に関しては、ギルドで買い取りか、現物をそのままか話し合いで決定するようになっています。除外された財宝は、今回に限り学校への評価となりますので、そのように御理解願います。何か質問はありますか?」

 ブレンダがみんなを見回して、何かないか窺うけど誰も発言はなさそうだと理解し、代表して答える。

 「特にありません。依頼、受けさせてもらいます」

 「では、こちらの依頼表にサインをお願いします」

 それぞれサインをして、僕らはギルドを後にした。

 特に依頼の期限らしきものはないけれど、大体一ヶ月のうちに達成するのが望ましいらしい。

 連携訓練なども新人が入った訳ではない為、そこまで時間が必要なものもなく、それぞれに準備ができたら遺跡へ向かうことになった。


 まずは消耗品や痛んでいたり、壊れた装備の補充をする為に、今日のところは解散する。

 レイシアは特に補充するものや、修理とかもなくのんびりと過ごすようだった。まあそれでも念の為に、錬金術を使って薬の類、ポーションなどを作ったりしていたけれどね。

 こうして見るといちいち買い物しなくていいから、生産系の人は強いよな。今度暇な時に、何か自分に有利になりそうな魔道具を開発しよう。

 魔導師だからやっぱりMP回復系の物が欲しいな。限界を感じたことはないけれど、保険の為に・・・・・・

 次の日の朝、みんな準備万端だったのでそのまま携帯食だけ補充して、さっそく遺跡に出発する事になった。

 乗合馬車でセリアットの町へと向かう。そこからは歩きで森の手前まで行って野営し、朝から森の中へと入って行った。

 「確かこっちだったわよね」

 ブレンダのその発言を受けて、レイシアが鷹と狼を出して前に通った道を辿る。

 大体の方角とか位置しかわからない為に、辿り着くまでにかなり時間がかかったりしたけれど、何とか入り口まで辿り着くことができた。今日はここで野宿だ。


 「そこ違う、確かこんな感じの地形だった」

 野宿の準備をして見張りを立てた後、一つ目の依頼の入り口の正確な位置っていうので、みんなでわいわい言いながら、周辺地図を作り上げている。

 この世界には衛星写真とかそういうのがないので、上空から見た感じの正確な地図が無い為かなり苦労しているようだ。作成される子供の落書きみたいな地図を見て、あーあーと思いながら、仕方がないなと手助けをすることにする。

 「もうお前ら、空に行って地図作って来いよ。レビテーション」

 ごちゃごちゃ言い合っている四人をまとめて空に浮かせた。この魔法は飛ぶのではなく浮かぶだけのものだ。

 「うわ、うわ、飛んでる! 飛んでる!」

 「ちょっといきなりはやめて!」

 ぎゃーぎゃー騒がしい。

 まあ、しばらくすればそのうち慣れるだろう。冒険していればこんな体験も、そのうちするものだよ。多分・・・・・・

 どれくらい騒いだ後か、やっと落ち着いて依頼をこなし始めるメンバーを、やれやれって感じで見詰めている。さすがに上空から現在地を確認できる為、絵心がなければそれでも無理だろうが、それなりに立派かなって思える地図が描きあがったようだ。

 僕は影の中にあるバジリスクの革を眺める。最初あまりにも下手だったので、魔力を流して写真のように上空画を描いてみたやつだ。

 うんカラフルで、油絵かなって感じの物が描かれている。

 これを見せたらこいつら凹むのだろうなって思い、出すのをやめた物だ。この革意外と使い勝手がいいのだよね。

 みんなが地面に降りて、怖かったよーって騒いだ後、今日のところはこのまま寝ることになった。

 寝ている間、一度オーガが洞窟から出て来て戦闘になったけれど、新しいスキルもあって前回より余程効率よく倒す事ができた。そういう意味でも、今回の依頼は幸先がいいものとなった。


 翌日特に疲れもないようで、気合十分に洞窟内へと入って行くことになった。

 今回は内部の地図を作りながらなので、歩いた歩数や横道があればそっちも調査しながらゆっくりと進んで行く。

 大抵の横穴には何者かがいた形跡が残っていて、食べかすなどもありめぼしい物は何も見付からない、ただのマッピング作業って感じの探索になった。

 しばらく進んだ後ふとマッピングしている地図を見て、これってこんなに真っ直ぐな道のりだったか? って思いそういえばこいつら方位磁石とかそういう物も知らないし、この世界には存在していなかったなと気が付いてしまった。

 そしてよく考えたらマッピングしているレイシアは、方向音痴じゃねえか! 方向音痴にマッピングなんかさせているんじゃねえよ・・・・・・

 「おい、この地図狂っているぞ」

 「え?」

 全員が地図を覗き込んでいる中、書いていた本人のレイシアはどこがって顔していた。

 「そもそも、ここは天然の洞窟を生かした洞窟なのだから、グネグネ曲がっているはずだ。こんなに真っ直ぐに、左右対称な訳はないだろう。どこに十字路の場所があったのだよ。横道があるところは全部T字路だったぞ」

 「はーい、みんな入り口へ戻るわよー」

 ブレンダがしまったって顔をして、みんなに指示を出した。

 みんなに付いて歩きながら、レイシアはどこが違うって顔をして自分の地図を見ていた。えー、違いわからない? 方向音痴はんぱねぇ!

 「細長い小さな金属の破片って何かないか?」

 入り口まで戻って来たみんなに、そう声をかけた。

 「うーん、こういう物でもいいかしら?」

 ブレンダが取り出したのは、針金みたいな金属の棒だった。ちょうど良さそうだな。

 「じゃあみんなはここで待機していてくれ。ブレンダはそのまま外の木の側まで移動してくれ」

 「わかったわ」

 みんなを入り口に残し、ブレンダは木のところまで移動した。僕はブレンダの影に入って移動して行く。

 「そこで少し後ろ向いていてくれ」

 「よくわからないけど、なるべく早くね」

 「うーん、そんなには時間かからないはずだ」

 (ウィンドカッター)

 そう言いつつ木の表面を無詠唱風魔法、風の刃で切り取りその木片の表面に、日時計みたいな目盛り付きの円を焼く事で描き出した。それの中央に針金を配置して、魔力を通す。これで即席の方位磁石もどきが完成した。

 「ブレンダ、これを持って合流してくれ」

 足元に残した方位磁石もどきを拾ってもらって、とりあえず指示通りみんなと合流してもらった。さて、とりあえず使い方を説明しないとな。

 「針金の一方に木の破片が付いているだろう? それが入り口に対して、常に垂直になるように固定されているのだが、この先道が曲がったらどれくらい曲がったか、目盛りでわかるようになっているから、それで方向を確認しながら地図を作成してくれ」

 「へぇ~、なるほどなるほど」

 ブレンダはその場でグルグル回したりとかいろいろ試して、使い方を学んだ。しばらく何やら考えて、納得できたのか出発の合図を出した。

 「大体わかったわ。じゃあ次は私が地図を書きながら進むから、みんなは警戒とかよろしくね」

 「「了解~」」

 ブレンダはその後、ひたすら方位磁石を見ながら進み、よく転びそうになっていた。

 途中で地図を覗き込んでみたら、結構精密な感じの地図に仕上がっていた。実際に正しいかどうかはわからないけれど、そこまで大きく違ってはいないんじゃないかな。

 その後もオーガが出て来たりマイコニッドが出たりはしたけれど、地図の方は順調に描けていっている。ちなみにブレンダは敵が出て来ても、地図ばかり描いていた。

 そしてたまに、邪魔するなって感じで魔法を撃っていた・・・・・・

 モンスターの方が哀れに思うよ・・・・・・せめてまともに相手してあげて・・・・・・

 レイシアは仕事を取られて寂しいって感じの表情をしていた。ちょっと不満そうだな。でもこればかりは任せられないけれどね~


 洞窟の中は一日中暗くて現在時間がわからない為、適度に疲れたら休憩お腹の減り具合でそろそろ寝ようかって判断をしながら行動していた。さすがにずっと地図を描いているブレンダは疲れやすいみたいで、結構な頻度で休憩をしていた。

 まあそれでも敵がいつ出て来るかわからない場所にいる為に、眠たげに移動する人はいなかった。

 ただし、暇を持て余して眠たげなモンスターならここにいた。そんな訳で、ブレンダの影に潜んでそのまま引きずられるように移動している。

 ちなみの補足、魔法の光を出しているのでみんなの影ができていて、僕はそれを利用して動いている。

 多分だけど、ここで明かりを消して移動したら、僕は置き去りにされるな。まあその時はその時ってことだよね・・・・・・

 ふとそこまで考えて、今回はレイスが全然襲って来ていないなと思いいたる。

 前の時は、結構なペースで襲って来ていたのだけれど。何が違うのだろう?

 「なあ、今回レイスを全然見かけないよな」

 「そういえば、レイスもいましたね」

 思い出したって感じで、ブレンダが地図から顔を上げた。少しみんなも考えてそれぞれ意見を言う。

 「前回で全滅したとか?」

 ランドルのは、楽観的な感想だな。

 「僕らがいなくなったので、別の場所に獲物を探して移動したとかでしょうか?」

 フェザリオの意見はありそうなので、その場合は周辺の村や町に警戒してもらった方がいいかもしれないな。

 「それはありそうな意見だから、ちょっとメモしておくわ」

 ブレンダがそう言って、忘れないようにメモを取っている。地図にメモを書き込んでいるので、ギルドの方で勝手に判断して警戒してくれるかもしれないな。

 「後あるとしたら、別の部屋に集まっているとかもあるかもしれんな」

 それだと、そのうち襲って来るってことだな。これはシリウスの意見。

 「じゃあ、何者かが召喚しているパターンも、あるかもね」

 「ああ、その時は死霊系を使えるネクロマンサーとかが、ここのボスだな」

 召喚術師らしい、レイシアの意見だった。

 「後は何があるかしら? オーガやマイコニッドの犠牲者が、レイスになっていたとか?」

 これはブレンダの意見。ぱっと思い付くのはそこら辺りかもしれないな。

 いつレイスが襲って来るかわからないなら、のんびり寝ていられないな。もうちょっとがんばって起きていよう。

 一度止まったメンバーは、移動を再開させた。


 さらに移動した後、ブレンダはそこで野営を指示した。

 大体の横穴は出入り口が一つなので、そこに見張りを立てればレイス以外を見逃すことはない。

 さっきのレイスへの警戒で目が覚めたので、今は眠くもなんともなくなったので見張りもできそうだな。

 MPもほとんど減っていないので、このまま起きていてもいいや。

 たまにやって来るオーガを見張り担当を支援して倒し、そのままレイスも出ないままみんなが起きる時間になる。

 腹時計で大体アバウトにやっているので、ちゃんとした休憩になっているのかどうかは不明のままだけど、みんなはそのまま今日の活動を始めるようだった。


 洞窟進入二日目。

 今のところ洞窟に人の手が少し入っている以外、人造物や価値のありそうな物の発見には至っていない。下手すると遺跡ではなくて、ただの人が住んでいた洞窟って線で、終わっちゃうこともあるのかもしれないな。

 いろいろと不安を残しながら、僕達は先へと進んだ。

 オーガやマイコニッドを倒しながら進んで行くと、たまにレイスが出現し出すようになって来た。

 「レイス、出て来たな。どこかの部屋に集まっていたとか、それが正解かな?」

 「どうでしょうね。まだ判断できないわ」

 「だね」

 そしてここに来て、初の敵が前方から現れた。

 「あれはスケルトンと、今度こそゾンビかな?」

 「死霊系ダンジョンで、正解ってパターンか!」

 ランドルがそう言いながらも、盾を構えて油断なく進んで行く。

 ここら辺りの敵なら、雑魚と呼べるので数が出ても、そこまで苦戦することもなく倒せるだろう。

 数が来たら、面倒だなってくらいかな?

 そう考えているうちにも、ランドルとシリウスでどんどん倒して数を減らして行く。後衛が出るまでもなさそうだ。

 そして進んだ先の横穴には初めてというのか、昔人が住んでいましたよって感じの生活感が残っていた。僕らは休憩がてら念入りに、持って行ける物がないかを調べていった。

 「うーん、骨に付いていた指輪くらいかな?」

 「これは持ち出したり、外したりしても問題ないのかしら?」

 ここで心配なのは、何かしらのギミックが仕掛けられているかどうかだ。指輪に魔力が感じられなかったとしても、それ自体を鍵の役目にすることはできるだろうから、決して油断できない。

 魔力を使って、骨の方を調べてみることにした。骨と壁を比べることによって、おおよその年代の違いを調べてみる。何年前の物だっていうのはわからないとしても、差があるかどうかならこれで判断できるだろうっていう、ちょっとした思い付きだった。

 その結果は、かなりの差があることがわかった。ひょっとしてこの骨は、結構最近のものなのかもしれない。

 「この骨、どうも昔の人間の物じゃなくて、かなり後の時代のものらしい」

 「へーってことは、下手をしたらこの指輪が原因で、この人はここで死んだっていう状況もありそうね」

 「ありそうだね」

 悩みどころだな。

 「じゃあ、洞窟からは持ち出さないってことにして、とりあえず奥の方へは、持って行ってみるのは?」

 ふむ、逆パターンでこれが鍵になって開く扉とか、そういうのがあったりすることも考えられるか。

 「そうね、じゃあとりあえずはそれで先に進みましょう」

 僕達は、指輪を回収して先へと進んだ。指輪と骨以外はぼろぼろに崩れていて、運べる物がなかったよ。


 めぼしいアイテムなどが見付からないまま横穴の部屋を調べつつ前進して行くと、天然洞窟って感じから遺跡の通路って感じの石畳の道へと変わった。

 ここからがほんとの冒険だってみんなで気合を入れて、慎重に移動して行く。

 天然の洞窟と違い、ここからは罠の可能性も注意しなくてはいけない。後は隠し部屋などもそうだな。重要な部屋、財宝部屋などがあるならばガーディアンだっているかもしれない。

 緊張しながら進むと、左右に扉が見えて来た。

 さて遺跡をなるべく傷付けることなく、中を調べなければいけない。だけれど、僕らの中には盗賊系のスキル持ちがいない・・・・・・罠が仕掛けられているかどうかさえ判断できない。

 しばらく進むと倉庫っぽい建築物が左右に見えて来る。そこには当然ながら扉があって、その扉は閉められていた。

 「僕が扉を開けよう。ここで待っていて」

 そう言い残してまず右の扉から調べる。罠はなかったけど、鍵はかかっていた。

 影渡りって便利だなって感じで部屋の中に移動して、内側から鍵穴の中に入り中の構造をいじれば開けることができる。幸い思っていた通り現代の鍵ほど複雑な作りではなく、構造が理解できれば開けられそうだった。魔法的な仕掛けだと、無理やり壊すしかないだろうけれどね。

 「開いたけど、中は確認していないぞ」

 「ありがとう、バグ」

 ブレンダがお礼を言って、指示を出して行く。

 「レイシア、ゴーレム呼び出して、扉を開けて」

 「うん、わかった」

 罠や敵を警戒して、ゴーレムで安全を確認するのだな。

 まあ毒ガスとかだったら、離れていないと駄目だろうけれど。

 何かあれば、直ぐ動けるように準備はしておこう。

 ゴーレムが扉を開けるけど、モンスターもトラップもなかったようだ。一応、まだ警戒を続けながら見張りを残して中を調べに行く。

 中は、意外と状態のいい雑貨品があった。

 どの時代のものなのかはわからないけれど、歴史的な価値くらいはあるのかもしれない。残念ながらお宝っていえる程、高級な感じはないので、僕らのお小遣いにはならないな。

 さて、次は反対側の方を開けてみよう。

 左側も鍵だけで罠とかは無さそうだった。みんなもとりあえず運び出すのは後にして、ちょうど右の方から出て来た。

 「左の扉、開いたぞー」

 「了解。ゴーレムでお願いね」

 「うん」

 手順は同じで、また見張りを置いてみんなで調査をする。こっちは貯蔵庫だったのか、昔に何か食料を保管していたのかなって痕跡を残すだけだった。今はもう無くなっている食材の発酵したような匂いが結構きつかった。

 「価値のありそうなものは、何もなかったね」

 ちょっと残念そうにレイシアがそう呟く。

 「だな」

 ランドルも早々見付からないかって、微妙な受け答えだな。そして周りを見回していて、道の角っこに壊れた物体を発見した。掌サイズの丸い物かな? 地面に埋め込まれている台座から、割れてこぼれている。

 「道の端っこに、壊れた丸い物があるぞ」

 そうみんなに知らせる。指とかさせれば直ぐわかるだろうが、まだ姿は隠しておく。油断はしない!

 「あ、これかな」

 みんなで道沿いを探していて、フェザリオが一番にそれを見付けた。

 なので、今回はこいつの影に潜んでおくかな。移動して壊れた玉を見てみると、魔法のアイテムだったのがなんとなくわかる。微かにだけど、魔法の痕跡が残っていた。

 「何かの魔法のアイテムだったみたいだな。道の反対にも台座が残っているから、おそらく結界系かもしれない」

 「ほんとだ、反対にもあるわね。壊れたのはどう見ても最近じゃなくて結構前なのか、大昔ね」

 既に壊れていたので、この欠片は持ち帰ることになった。

 僕達には判断できないけれど、専門家なら何かしら情報を掴めるかもしれない。まあほとんど魔力も残っていないので、ただのガラクタっぽいけどね。


 先に進むと十字に道が交差していて、正面に洞窟の壁を削って埋め込んだ大き目の扉、手前に石造りの家が道の両側に建っているのが見える。

 道の右側にも数軒の石造りの家。左側は大きめの木造だったと思われる家と、柵で囲われていたのだろうなっていう感じの草がぼうぼう生え放題の広場、これは家畜とかでも飼っていたのだろうか。

 そんな感じの建物なんかの跡があった。

 見回してみると、少人数で暮らしていけそうな村って感じのものだと判断できそうだ。

 残念ながら古代遺跡みたいな、大掛かりなものではないようだね。

 まあ所詮はこんなものか、ちょっと未発見だったから夢を見過ぎていたようだ。

 それから僕らはここが終点だと判断して、正面の扉以外を調べて回ることになった。

 さっきの家畜がいたであろう家の裏に湧き水があり、そこから壁の向こうへと流れはあったけれど、人が通れるようなものではなく、地下水脈みたいなものであると判断できる。

 ここからどこかに流れて行くのだろうな。そこ以外の道とかは発見できなかったので、扉の向こうに道がなければ冒険はここの探索が済めば、終わりだろうって思えた。

 崩れていない家などを調べて回ってみたけれど、重要な手がかりになりそうな物は特になく。家もどちらかといえば手作り感があり、食器も木を削って手作りされたと思われる物がほとんどで、歴史を特定するような物はほぼ見付からなかった。

 「歴史の特定に繋がりそうな物っていったら、これくらいかしら?」

 かき集められたものはひび割れたお皿、割れてしまった壷、そんな物が五・六点。世間から隠れた村だとすれば、こんなものなのかもしれないな。

 後は人骨なんかも家の中にはあったけれど、現代科学がある訳でもないこの世界では、それでどの時代の人だったのか判断することはおそらくできないだろう。


 「さて、残るは扉ね」

 「小さな村って感じだから、あまり期待はできないな」

 ブレンダとランドルがそう呟いていた。

 「これはそうとも限らないぞ。扉にそれなりに芸術性のありそうな彫り物がされているから、神殿か何かかもしれない」

 じっと扉を見ていたシリウスが、そう言って来た。

 みんなで扉を見てみると確かに金属でできた扉で、それなりに敬意を持って作られたんじゃないかって思わせる作りの物になっていた。それにこの扉からは魔力が感じられる。

 「この扉は、魔法がかけられているな」

 なのでみんなにはどんな魔法かわからないので、うかつに触らないように警告をしておく。

 「少し扉の向こうを見て来るから、ここで待っていてくれ」

 「頼むわ」

 ブレンダがそう言って、僕を送り出す。

 影を渡り扉の向こう側へと移動してみると、そこは確かに神殿っぽい作りの大きな部屋になっていた。ただし神を祭っている感じの場所ではなく、剣を奉納しているって感じの場所。剣の安置場所だな。

 扉を開ける為の手がかりがないか、とりあえず調べてみるかな。そう考えると、部屋の中を調べて回る。

 本や書類の類でも出てくれば、何かわかるのではと思ったのだけれど、その手の物は一切なかった。

 財宝に相当する物なら、一応見付かったのだけれど、これは扉が開いてからでいいだろう。

 仕方がないのでとりあえず扉の魔力を読み込んでみる。何か手がかりが掴めるかもしれないからね。魔法の構造みたいなものがあるのがなんとなくわかったので解析を試みてみると、これは暗号かメッセージかな?

 「リードランゲージ」

 しばらくすると、意味の不明な言葉の集まりみたいなものを発見したので、文字の翻訳がわかる魔法を行使した。

 それによればこの扉は、キーワードで開くよう設定されている物だということがわかった。

 情報を手に入れたので、まずはみんなと合流しよう。

 「ただいま、どうやらこの扉は合言葉で開くようだ」

 「その合言葉は、わかった?」

 「一応わかったよ。(我は悪しき者にあらず、世界を導く為、力を欲する者なり)」

 僕が言語の違う言葉でそう言うと、扉が静かに奥へと開いていった。なんかこのキーワードフラグっぽくて嫌だな・・・・・・

 どうか面倒事に巻き込まれませんように!

 そんな事を考えている間に、みんなは部屋の中へと入って行った。

 「おー、結構広いな」

 ランドルがそう言って周りを見渡す。天井が崩れてこないようになのか、左右に三本ずつ計六本の柱が並び、真ん中には色あせた絨毯。

 正面には少し高い段差があってそこに石で作られた台があり、一本の剣が横たえられている。

 その台の右横手には宝石やさまざまなアイテム、台を挟んだ反対側には大きめの箱が置かれている。

 「箱の鍵、開けたぞー」

 僕は箱の鍵も開けて、それをみんなに伝えた。

 「こっちは金貨ですね。これは、かなり古い時代の金貨だな」

 多少の知識があったのか、シリウスが金貨を見てそう言った。残念ながらどれくらい前の物かは、思い出せなかったのか知らないのか、正確な情報は持っていなかったみたいだけど。

 「問題は、この剣ですね」

 「そうね、これは触ったり動かしたりしても、大丈夫な物なのかしら」

 フェザリオとブレンダが、どうしようって迷っていた。なので魔力を感知してみて、罠などがないか探りを入れてみることにした。

 結果としては、魔力を感じるのは扉だけってのがわかる。ああ後は剣もになるか。

 次に台に細工がないか、中を調べてみても、こっちもただの石らしいことがわかり、動かしても問題ないのでは? って思えた。

 「魔力があるのは扉と剣だけ、台に仕掛けは無さそうだな」

 わかった情報をみんなに教える。剣自体が呪われていた場合は、僕にはどうしようもないかな。

 「じゃあ、剣に危険がないかどうかだけだな。それはわからないのか?」

 ランドルの質問に・・・・・・

 「そっちはよくわからん」

 と答えて、後は彼らに任せることにする。手伝える事はこれくらいだな。

 「それじゃあレイシアさん、悪いのだけれど、またゴーレムに持たせてもらえるかしら?」

 「うん、わかった」

 あー、その手もあったな。意外とこのゴーレム使い勝手がいいな・・・・・・

 その結果、剣は問題なく持ち運びできることがわかった。

 まあゴーレムが生物じゃないから誰かが触ったら、呪いが発動するパターンもあったのだろうけどね。そういう心配も、必要が無かったようだ。


 それから僕らは、持ち運べる限りのアイテムを回収して、帰る準備を進めた。

 洞窟内の敵は掃討済みでレイスも帰りは出て来なかったので、入り口までは思っていた以上の速さで移動でき、さすがに疲れていたこともあって遺跡前で一泊することになった。

 寝ている途中でゴブリンが襲って来たけれど、それは直ぐにみんなで倒して問題なく朝になった。みんなの冒険なのでその戦闘はノンタッチ。

 危なくない限りは生暖かく見守り、再び町に向けて移動を開始する。

 いろいろと貴重品なんかも持っているということで、町には入らないで手前の森でさらに一泊して早朝町に入り、乗合馬車で学校のある町へと帰還して来た。

 到着して直ぐ僕達はギルドへと報告に行き、応接室にて持ち帰って来た品のリストを作成してもらい、後日分配やどういったアイテムがあったかの報告をもらうことになり、これで卒業試験が一応の終わりを迎えることになった。


 ギルドからの呼び出しがかかるまで、みんなは訓練もしないでのんびりと過ごす事にして、結局呼び出されるまで三日の間だらだらと過ごし、僕らはギルドに向かうことになった。

 「まずはアイテムの前に、わかったことを説明させていただきます」

 依頼の説明をしてくれた学者風のギルドの人が、今回も説明を始める。

 「みなさんは、ゲオノースという人物について知っていますね?」

 いやいや、そんな人物知らないって。

 僕は心の中で突っ込んだけれど、みんなは普通に頷いていた。そっか、この世界では知っていて当たり前の有名人の名前なのか。そう思いながら、心の中で続けてくださいって言ってみる。後で聞けばいいや。

 「彼は魔王を討伐した後の消息が、不明でした。どうやら今回発見した遺跡が、魔王討伐後の彼の過ごされた地であったことがわかりました」

 「失礼ですが、その根拠はなんですか?」

 ブレンダがそこに疑問をぶつける。有名人かと思ったら、勇者様でしたか・・・・・・

 そしてやっぱりこの世界にも、魔王っていたのだな。

 ひょっとして変なフラグ立っていないよね? 魔王が復活しました勇者よ魔王を倒して来なさいとか、嫌だな・・・・・・

 「根拠は今回持ち帰って来た剣が、ゲオノース様の使っておられた聖剣であると、判断されたからです」

 「聖剣って割には、そんなに聖なる波動のような物は感じられませんでしたが・・・・・・」

 フェザリオが、神官として疑問を感じたようだ。

 「ええ、聖剣としての力を失っているのか次の勇者が現れた時に力を発揮するのか、まだいろいろと不明な点はありますが本物であることは間違いないようです。ですので、ギルドからは専門知識を持っている研究家の方達にお願いして、調査をすることになりました。とりあえず今回の遺跡に関してはそんな感じですね」

 「なるほど、わかりました」

 ブレンダが頷く。

 正直、またその調査とか行けって言われるのかなって思ったのだけれど、そういう話はなかったみたいだな。

 「それではアイテムの分配についてですが・・・・・・」

 そう言いつつリストを取り出して、これは歴史的な価値があるのでギルドで引き取ります。こっちのアイテムは売りますか? 持ち帰りますか? そんな話をしばらく続けて、全てのアイテムの分配が終わったのは昼を少し過ぎた辺りだった。

 「長々と、お疲れ様でした。またよろしくお願いします」

 最後にそう言うと、ギルドの人は挨拶をして部屋を出て行った。

 「それでは私達も学校へ戻りましょうか。アイテムの分配は、学校で食事でもしながら話し合いましょう」

 「「了解」」

 全員で回収したアイテムを持って、学校へと戻る。

 そして昼食を取りながら、まずはお金をみんなで分けて、その後アイテムをみんなで分け合っていた。

 勇者様関連の依頼だったけれど、高級な物はなかったので穏便な話し合いで分配は終了して、みんなそれぞれやれやれって感じでその日は終わった。


 泊りがけの冒険になったので、帰って来て文明に触れているとなんだかホッとするな。

 やっぱり現代っ子だった僕はこういう何気ない日常が一番落ち着くのを感じた。

 疲れていたのかレイシアもベッドに入って早々に眠ってしまったようだ。寝顔はまだまだ幼い少女って感じで可愛いものだ。

 そんな少女を見ながら僕も寝ることにした。


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