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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
サイド:レイシア  絆
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クレアの人生

 その後、私は何度も転生を繰り返しては冒険者になり、同じパーティーの戦士と恋をしては結婚を繰り返していた。客観的に転生した後の自分の行動などを知ると、どうしても冒険者になりたいって思いが強いみたい。確かに私も冒険者に拘っていたところがあったけれど、バグと冒険を続ける途中からは、そこまで冒険者に拘っていなかったと思う。

 だから無意識にバグとの出会いを求めて、冒険者になろうとしているんだと思えた。でも、どうしてもバグ以外の男性に惹かれる自分を止める事が出来ない。これが邪魔者の仕業なのかな・・・・・・

 この黒騎士が造った空間でならいろいろと考えることが出来るのに、どうしても転生した後の私では邪魔者の存在に気が付くことが出来ないでいた。焦りにも似た焦燥と共に、再び魂が地上へと引っ張られて行く・・・・・・今度こそ邪魔者を排除して、バグの元に・・・・・・


 何不自由なく育って来た私は、どうしても憧れを捨てる事が出来なくて、冒険者になる為に実家を飛び出した。そのまま家にいれば、将来的にいけば父の商売を継いで苦労する事なく過ごせたはずだけど、私はそれを良しとはしない。たまたま幼い頃に商隊を護衛していた冒険者からお話を聞いた私は、その頃から冒険者への憧れをずっと抱き続けて両親にその事を相談していたんだけれど・・・・・・当然のように許してはもらえなかった。

 たぶん子供が私しかいなかったっていうのも理由の一つだったんだろうね。何処かの商人と結婚して、父の商会を継ぐのが当たり前だと思われていたみたい。あの時冒険者の話を聞かなければ、私もきっとそんな未来を進んでいたんじゃないかな? でも聞いてしまった私は、自分の気持ちを抑える事が出来なかった。

 家を抜け出した私は身に着けていた服や装飾品などを売り払って、それっぽい格好で冒険者ギルドへと向かった。

 戦う術のない私が、まともに冒険者としてやって行けるかどうかわからないけれど、とにかく冒険者ギルドに登録しなければ最初の第一歩すらまともに歩き出せない。まずは登録と考え、真っ先に向かったのが冒険者ギルドだった。

 世間知らずでもあった私は、当然そこでの試験に受かる訳もなく冒険者の資格が得られなかったけれど、それでもチャンスを掴む事が出来たわ。それは初心者講習。冒険に必要な知識や技術を少しだけ教えてもらえるみたい。そこである程度技術を覚えれば、私は冒険者になれる可能性が出て来るらしい。もちろん私はそれに飛び付いたわ。

 「クレア。どうやらお前には魔法の資質があるみたいだな。本格的に勉強したければ魔術師ギルドで習うのがいいんだが・・・・・・直ぐ冒険者登録がしたいんだろう?」

 「はい、教官。出来れば直ぐにでも冒険者として活動してみたいです」

 「そうか。どちらにしても習ったからといって、直ぐ魔法が使える訳じゃないんだがな。まあ、頑張れ」

 教官に言われ、中級冒険者の指導員で魔法使いの先輩の指導の下、勉強することになった。とはいっても、担当魔法使いの先輩がいつもいつでもいる訳ではないので、冒険の合間に暇を見て指導してくれるって感じになった。先輩が冒険に行っている間に教わった事を何度も復習して、少しでも早く自立出来るよう頑張ってみる。


 先輩魔法使いのフレリックさんに指導を受けること一ヶ月くらい・・・・・・ついに私は初級魔法を使う事が出来るようになった。まあとはいっても使えるってだけで、実戦で役に立てるには詠唱時間と威力を上げなければ足を引っ張りかねないんだけれどね・・・・・・でも、ついに魔法が使えるようになったんだわ・・・・・・

 フレリック先輩には後は独自の練習をするようにって言われて、以降の指導は受けられなかったんだけど・・・・・・でも大丈夫! ここからは何とか自力で頑張ってみよう!

 初歩の魔法が使えるようになったので、冒険者ギルドに登録する事は出来たけれど、劇的な変化はないわ。

 生活の為、引越しの手伝いやお年寄りの介護、町の清掃など・・・・・・冒険者ってもっと華々しい活躍ばかりと思っていたけれど、地味で目立たないような雑用ばかりしていた。でも、仕方ないわよね・・・・・・私にはまだモンスターと戦うだけの力が無いんだもの・・・・・・

 時間を見付けてはギルドの訓練所で魔法の練習をする。早くパーティーを組めるように、練習は欠かせない。

 「君、ちょっといいかな?」

 「はい?」

 今日も今日とて練習をしていると、声をかけて来た人がいた。これでも結構忙しいんだけどって思いつつも見てみると、五人組の冒険者パーティーがそこにいた。話しかけて来たのは若い男の戦士かしら? たぶんこのパーティーのリーダーさんね。

 「何か用ですか?」

 「ええ、もしよければ内のパーティーに入りませんか?」

 一瞬何を言っているのか理解出来なかったけれど、意味を理解するとさらに混乱した。私まだ満足に魔法が使えないのに、いきなりパーティーに誘われるなんて、考えてもいなかったわ・・・・・・

 「あ、えっと・・・・・・見ての通り、私まだ満足に魔法が使えません、よ?」

 「ああ、大丈夫です。そういうのは活動している間に上手くなって行くものですよ。初めは見習いって事で分け前も少なめにするので、一人前になるまでは軽い気持ちで付いて来てもらえればいいですし。それなら気兼ねなく参加出来るんじゃないかな?」

 「はあ・・・・・・」

 なんかちょっと強引なところがある感じね。確かに冒険者になりたいから、少しでも早くパーティーに参加出来れば嬉しいけれど、見習いか・・・・・・魔法以外の事を実地で覚えるにはいいかもしれないわね。

 「素人だけど、いいのかな?」

 「ええ、内のパーティーには魔法使いが不足していましたから、入っていただけるなら歓迎しますよ。いきなり即戦力とはいかないでしょうが、おいおい頑張ってもらうって事で」

 「わかりました。よろしくお願いします」

 なんか急展開だったけれど、こうしてギルドでパーティー登録をして冒険者として活動して行く事になった。


 私の初めてのクエストは、グールの討伐だった。アンデットの一種でスケルトンやゾンビよりも上位のモンスターで、墓を暴いて死体を漁る化け物として知られているモンスターなんだそうだ。出現場所は町の共同墓地。なので移動距離は近く、遠出することなく、その点はお手軽な仕事といえる。甘く見ると痛い目に合うから、そんなに気楽って程じゃないんだけれど、初仕事としてはぼちぼちって感じゃないかしら?

 「いいかクレア、君はまだ素人だからとにかく俺達とはぐれないように、そしてチャンスがあれば魔法を使ってくれ。無理は絶対にするな。危険だと判断したらとにかく逃げて俺達に任せろ」

 「はい」

 初任務って事もあるし、魔法を使って初めてモンスターと戦うって思うと、ちょっと緊張していたけれど・・・・・・仲間がいてくれるっていうのは心強いな~。そう思いつつ私は彼らに必死に付いて行く事にした。というか、結構歩くのが早くて付いて行くだけで凄く大変だったわ。これが普通なのかしら?

 体力が持ちそうにない・・・・・・今はまだ町中だからいいけれど、そのうち森の中とか移動したりするだろうし、魔法ばかりでなく基礎体力を付ける訓練もして行こう。今はとにかくはぐれないように、頑張って付いて行く!

 もうちょっと警戒しながら進んだ方がいいんじゃないかって速度で移動していると、先頭を進んでいた盗賊のハイロンさんが立ち止まって手を上げていた。素早くみんなが警戒してハイロンさんの見ている方を見ると、グールが三体いるのがわかる。向こうはまだこちらに気が付いていないようね。

 みんながハンドサインといわれる合図で連絡を取っているんだけれど、私はまだ意味がわからなかった。なのでリーダーのジェリドさんが耳元で指示を出してくれる。

 「俺達が仕掛ける。クレアは攻撃出来そうだったら攻撃してみてくれ」

 「はい」

 耳元で喋られるので、こそばゆくてむず痒いけど我慢し小声で詠唱準備をする。

 「根源なるマナより燃え盛る息吹を呼び覚ます――」

 みんなの動きを注意深く見てタイミングを測ってみる。みんながある程度接近に成功すると、さすがにグール達も接近者に反応して威嚇の声を上げた。ここだ!

 「――ファイアアロー」

 グールに気が付かれたのでこっそり接近するのはやめになり、一気に駆け出したジェリドさんを追い抜いてファイアアローがグールの先頭にいる奴に当たる。人生初の魔法攻撃がこうして先制で決まった瞬間だった。ダメージ自体はそこまで強い訳でもないけれど、グール自体が火に弱いみたいで襲い掛かろうと動き出した相手の動揺と足止めに成功し、あっという間にグールが斬り伏せられる。さすが冒険者。見事な腕前だわ。


 ハイロンさん達がグールの討伐部位として犬歯を回収する間、リーダーのジェリドさんがこちらにやって来る。私の横には神官戦士のメルサさんがしんがりと私の護衛に付いていてくれた。そのおかげで墓地にいるのに心細くなく、敵の心配もなく呪文に集中出来た。初めての戦闘参加で失敗なんてしなくてよかったー

 「クレア、よくやった! 今みたいな感じでこれからも頼むぞ」

 「はい!」

 出来れば、私の攻撃魔法の一撃で仕留められたらよかったんだけれど、さすがにそれは高望みが過ぎたよね・・・・・・

 その後もあちこち墓地を駆けずり回ってグールの討伐を繰り返し、何とかみんなに守られながらだけれど精神力を使い切るまで魔法を使い続けた。今日の私はもうこれ以上魔法が使えそうにない。あまり役に立っていないのに、さらに攻撃手段がなくなって申し訳ない気持ちになる。

 「ごめんね、これ以上魔法は使えそうにないです」

 「いやいや、今日が初めてのクエストだろう? それでこれだけ出来れば十分だぞ。それより、このグールの数はちょっと異常だな。自然発生だとはどうしても思えない。みんな警戒して行動してくれ」

 「ああ、そうだな。いくら何でもこれだけの数のグールがいたんじゃ、町に被害が無いはずがない。原因が何かあるはずだ」

 「だな。って言ってもこんな事をしでかしそうな奴は、ネクロマンサーぐらいだ。とするとリッチくらいしか思い当たらないが・・・・・・それかダークプリーストか?」

 「ダークプリーストは厄介ですね。何が目的でしょうか?」

 何やら難しい話をしているようだけれど、結局のところ原因を特定して解決する方向で話はまとまり、そのまま調査する事になる。私、精神力が尽きてやれる事が無くなっちゃたんだけれど・・・・・・

 みんなの後に付いて行きながら、いろいろ今後の事について考えてみよう。今回戦ってみて、魔法が使えるのは凄いなって思ったけど・・・・・・精神力を使い切ってしまったら足手まといになる。

 じゃあ今から剣を習おうかなとか考えてみたけれど、ゼロから始めるくらいなら魔法の腕を今以上に鍛えた方がずっといい気がした。帰ったら教官に聞いてみよう。

 改めてグールを警戒しながら調査を進めると、墓地の片隅近くに祭壇のような物を発見する。

 「これは、どうやらネクロマンサーの祭壇のようだな。おそらくこれでグールを召喚していたんだろう」

 「肝心の術者の姿はないか・・・・・・足跡もどうやら見当たらないな。さすがに証拠は残さないか」

 「よし、こいつは撤去して持ち帰れる物は全部持ち帰ろう。それでもう一度ひとまわりして帰還するぞ」

 「了解!」

 祭壇とはいうものの、簡易的に石を組み合わせて地面に魔法陣を掘り込んだだけの物だった。石自体は何の価値もなさそうな物で、生贄らしい動物が捧げられている。しかし、一度呪術として使われた石なので、何らかの痕跡があるかもしれないという話しなので、持って帰れるのなら持ち帰る方針になったみたい。分解したら何とか持ち運べるとはいうものの、こんな重い物を持って行くって・・・・・・引っ越しの荷物よりも重労働だわ・・・・・・


 その後冒険者ギルドに報告をして、祭壇の件がどうなったのかはわからない。その先はどうやら別の仕事になるらしく、私達には関わりのない別件という事になったようね。何か自分が関わったクエストなのに、その先を知る事が出来ないっていうのはもやもやするわね。せめて何かしら進展があったのかどうか、聞いてみたい気がするけれどそれよりも先に自分の活動方法を気にしなければいけない。

 精神力を使い果たしたらお荷物になる。そんな状況に何とかきりを付けたい。

 「教官、魔法使いは精神力を使い果たした後、どうすればいいですか?」

 「あー、まずは全てを出し尽くすのはやめる事だ。切り札は最後の最後まで出さない。そうでなければ生き残れないからな。全てを出し尽くすっていうのは、後は死ぬだけだと思え。それと精神力が尽きそうならポーションを用意する事だ。体力を回復するポーションの他に精神を回復するポーションもある。魔法使いなら常に最低一つは持っているものだぞ」

 「なるほど! ありがとうございます!」

 そういえば父の扱っていた商品の中にもポーションという物があったわね。見習いなので大した額ではないものの、今回のクエストで報酬が手に入ったのでポーションを見に行くことにした。ポーションなどの商品は、冒険者ギルド内の販売所でも取り扱っているようなので、さっそく見に行く。ギルドの外なら雑貨屋か薬屋で扱っているみたい。

 値段を見てみると、体力を回復するポーションは銀貨十枚。これは教会で傷を癒してもらうのも大体これくらいの寄付金を要求されるので、回復の奇跡一回分の効果があるのだと思う。私はこちらではなく、精神力を回復してくれるポーションが必要ね。

 肝心の精神力を回復するポーションは、銀貨三十枚。結構高い。銀貨一枚あれば、宿屋で一泊することが出来る。宿の内容で前後はするけれど、大体目安になるのが普通の宿屋とされているわ。そこから考えると宿に三十回泊まることが出来る値段。何とか一つくらいは買える値段だけれど・・・・・・一回の戦闘毎にポーションを使っていたら、間違いなく赤字になりそうだった。

 これは非常手段として持っているのには効果的だけれど、精神力を枯渇させない戦い方が必要になって来そうだわ。そうなると、魔法の使い方や使いどころ。いろいろな面で効率化して行かないと、この先の冒険者生活はきつそうね。誰か、先輩魔法使いに人に話を聞かないと・・・・・・


 「そうだなー。適度に手を抜くっていうのか、剣で片が付くなら魔法を使わないって感じか。何が何でも魔法でっていうのを辞めれば何とかなる事が多いぞ」

 「なるほどー」

 「まあそうしたらお前何でここにいるのって感じに言われる事があるから、俺達魔法使いは元々後ろからパーティー全体を見ている事が多いだろう? 後衛の視点であれこれ指示を出したり、何だったら支援するっていうのが俺達に求められている仕事だな。魔法使いだからって、魔法を使った仕事ばかりじゃない。サブ司令塔みたいな役割の方が俺達には求められている仕事だろうな~」

 「ふあ~、凄いですね!」

 「魔法使いは頭の出来が違うからな! 元々そっちに適性があるんだろうさ! 頑張れよ、後輩!」

 「はい! 貴重なお話、ありがとうございました!」

 たまたま見かけた魔法使いの先輩にためになる話を聞くことが出来た。そっかー、魔法使いってそれだけが仕事じゃないのか~。確かに精神力を使う職業だから、魔法ばかり使っていたら消耗が激し過ぎて一日中仕事していたりなんて出来ないよね。適度に手を抜くか・・・・・・でも今はまともな仕事もこなせないから、まずは認められる仕事をする事が大事かな?

 みんなに見習いって思われたままでなく、一人前って認められたら先輩の言うように後方で指示が出せるような魔法使いを目指してみよう。それにはまず、魔法の威力と詠唱速度、精神力の消費の効率化を特訓しないとだね!

 冒険者とはいったものの毎日活動する訳じゃないので、クエストに出かけない間は魔法の練習に時間を使う事にした。クエストと練習、みんなに一人前って認めてもらえるように頑張って練習を繰り返す。そのかいあってか三ヶ月程が過ぎた頃、魔法詠唱の一部を省略して使うことが出来るようになったわ。それを持ってはれて、私は見習いを卒業しみんなに初級冒険者として迎え入れられた。魔法の威力も若干強くなったみたいだしね!


 正式な仲間になれて数ヶ月が過ぎた。まだ素人臭さは抜けないまでも、一応冒険者として活動できていると思う。そこの部分は今後も経験を積んで行けば大丈夫だと、ジェリドさんも言っていたかな。なので焦らずみんなに付いて行く事にした。

 前に先輩魔法使いの人に相談したけれど、その時の注意点をパーティーメンバーにもしておく。というのも、ジェリドさん達もパーティーに魔法使いを入れた事が無いらしく、詳しい事は知らないみたいだったんだよね。だから、魔法を使い続けると精神力が足りなくなるっていう事を、言っておかなければいけない。本当は新人の私がこんな事を言うのは生意気かなって思うんだけれど、全体的な事を考えると言っておかないときつい場面なども出て来るかもしれないからね。

 「なるほど、確かにもうちょっと考えておかないといけないな。メルサがいるから気付いていなければいけなかったんだが・・・・・・これはこっちのミスだな」

 「仕方ないわよ。私の場合は怪我をした時が本番、そうじゃない時は戦士として戦っていたからね。クレアちゃんは初めての後衛専門職になるんだし、勝手が違うわよ」

 「だな。分類上でいけば俺も後衛になるんだが、戦士に転向したからな。そう考えると俺も矢の無駄撃ちを避ける為にあえて戦闘に加わらないようにしていた事があったから、それと同じだな」

 「ああ、確かにそんな感じだな」

 ジェリドさんに続きメルサさんがそう言って、元後衛で狩人から戦士に転向したレクグトさんがフォローしてくれた。

 パーティーのメンバーを軽く説明すると、ジェリドさんがしっかりした盾と鎧を着こなす重戦士でリーダーさん。パーティーの盾役で片手剣だけれどしっかりとした攻撃も出来る頼りになる人かな。二十代後半に差し掛かった感じなんだけれど、年の割に落ち着いた感じのちょっとかっこいい人です。

 そしてもう一人の戦士でエキゾルトさんは丸い小型の盾を持っていて、バスターソードという片手でも両手でも扱える剣で戦う重戦士。普段はジェリドさんと一緒に盾役をこなしてくれるんだけれど、盾を捨てれば両手剣を振り回して暴れまわるパワフルな人かな。エキゾルトさんは三十過ぎなんだけれど、パワーが有り余っているって感じの戦士の人です。

 レクグトさんはさっき言った通り昔は狩人をしていたらしいんだけれど戦士になったそうで、今では弓をメインに小型の盾と片手剣を使いこなす革鎧を着た軽戦士。森の中とかだと頼りになる人かな。

 ハイロンさんは盗賊で、パーティーメンバーの中では一番年上のおじさまって感じの人です。四十代前半らしく、まだまだ冒険者として活躍出来るっていつも言っている。

 メルサさんは元々神官だったところ、私と同じように精神力が尽きた後する事が無くなるし、怪我人が出ないと暇ってことで剣を学んだ神官戦士なんだそうだ。信仰している神様自体が戦闘を司っているアルファント神様だから余計なんだそうだけれど、それで戦士として戦えちゃうのは凄いよね~

 まあ軽く紹介してわかるとおり、このパーティーは私以外みんな戦士として戦えるんだそうだ。ある意味過剰戦力だともいえるんだけれど・・・・・・さすがに物理攻撃の効かない、効きにくいモンスターなんかに出会ったりすると苦戦するんだそうで、魔法使いをパーティーに入れたかったんだそうな。

 しかし魔法使いで冒険者をしているような人はめったにいないか、既にどこかのパーティーに入っている事が多いんだって。だから魔法使いをパーティーに入れたいなって思いつつも機会が無かった時、たまたま訓練所で私を目撃して誘ったんだとか。

 理由はそれだけじゃなく、私が女性だからっていうのも関係しているらしい。これは変な意味じゃなくて、パーティーの中に女性は今までメルサさんだけだった。ただでさえ魔法使いの数は少なく、機会がないところに新人だけれど魔法使いで女性の私を見かけて、これだ!って感じで声をかける事にしたんだそうな・・・・・・実力的なものは二の次だったみたいだね。というのも、戦力は揃っていたかららしい。

 結局私としても運が良かったというか、いい巡り合わせだったんだろうね~

 普通なら即戦力を欲しがると思うので、そうそう仲間が見付かるとは思えなかったからね。下手をすると、いかがわしい目的込みでパーティーに誘われる事もあったかもしれない。これは後になってギルド側から聞かされた事だった。結構な数の女性冒険者が、こういった事件に巻き込まれているんだそうだ。そういう意味でも、私は運が良かったんだろうね。


 結局メンバーと相談して魔力切れになった時に弓を使う事になった。弓自体はレクグトさんが教えてくれたので、特に問題はないのだけれど・・・・・・そうすると魔法発動体である杖が持てなくなる。その対処として、弓の持ち手を加工してもらって杖の代わりになるような細工をする事になった。まあ弓を使ってみてものに出来たらって話だけれどね。

 正直剣を教わるって言っても、このパーティーにこれ以上接近職はいらないって話になって、じゃあ弓はってレクグトさんに言われたんだけれどね。レクグトさん自体が弓専属って訳ではないので、魔法か弓かどっちを選択しても遠距離支援を担当して欲しいって事になった。ちなみに私用の弓を準備するとなると、オーダーメイドになるのでかなりのお金が必要になって来るんだけれど、そこは自分達が頼むのだからって理由からパーティーでお金を出し合うって事になった。

 私が出す費用はこれからなるべくこの弓に注ぎ込む事になったけれどね。その前にまずは弓を鍛えないといけないけれど・・・・・・私の場合、魔法もまだまだ特訓中なのにな~

 しばらく忙しくはなるけれど、結構充実した日々を過ごす事になった。


 どれくらいそんな生活を続けていたかしら・・・・・・四ヶ月くらいは経ったと思うけれど、私は弓で十分戦って行けるくらいには上達する事が出来たわ。その間、みんなで報酬の良さそうなクエストをこなしていた事もあって、専用の弓を発注する運びとなった。

 今までは弓で参戦出来るかどうか試されていたので、オーダーメイドを発注する事を控えていたのもあるし、そもそものお金が足りなかったからね。それがやっと条件が整ったので、発注をかける事になったわ。出来上がるまでにしばらく時間がかかると思うけれど、弓に魔法発動体を仕込む作業にどれだけ時間がかかるかわからないので、しばらくは杖と初心者用の弓を持ち替えて頑張る事になる。

 しかし、発注をかけてからクエストで町を一週間空けて戻って来ると、私用の弓が完成していたようでギルドの方に連絡が来ていた。早速お店に向かうと受け取る事にする。

 「お待たせしました。こちらがオーダーを受けた弓になります。ご確認を」

 「はい」

 受け取った弓は、持ち手に水晶が埋め込まれた真っ白い弓だった。随所に金色で装飾が施されていて過度な装飾はないが上品で、派手さがない代わりにどこか神聖な感じがした。一目で気にいったんだけれど、これって値段以上の出来栄えじゃないのかな?

 「あのこれって、注文したよりも値段高いんじゃありませんか?」

 「いえいえ。決して赤字になるようなものではありませんよ。ちゃんと予算内に収まるように作られているそうです。作り手の方が気合入っちゃったようで、そんな感じになったんだそうです」

 「そうですか。あの、素晴らしい弓をありがとうって言っておいてください」

 「はい。作り手の方も喜んでもらえて嬉しいと思いますよ」

 私はお礼を言うと、店を出てみんなの待つ冒険者ギルドの食堂へと向かった。


 「綺麗ね!」

 「ちょっと上品過ぎやしないか? これ実戦で使えるのか?」

 「これは使うのがもったいない出来だな。貴族とかが家に飾っていそうな感じだ。使う時に躊躇しそうだな」

 「クレア。ちょっとそこで試してみろよ」

 「そうね、ちょっと試してみるね」

 予想以上に綺麗な出来だったので、実戦に耐えるものかどうか、心配になったみたい。どちらかといえば装飾剣みたいに、使うようではなく飾り用の弓の様な気がしていたりする。心配になったので、私も実際に使っておきたかったので、みんなと一緒に訓練場に向かった。

 的に向かって第一射。


 ズバン


 今まで初心者用の弓を使っていた時と比べ、あきらかに命中精度も威力もありそうね。本当に実戦用の弓としての性能があるみたいだった。というか使った感じ、しっくり来た。流石オーダーメイドって感じだわ・・・・・・

 「なかなかいい弓だな」

 レクグトさんが、なんだか物欲しそうな目で見て来た。なんとなく気持ちはわかるかな・・・・・・

 「弓としての性能は十分だな。魔法の方はどうだ? そっちも大事だろう?」

 「あ、そうね。そっちも見てみないと」

 ジェリドさんに言われてハッとする。私は魔法使いなんだから、そっちも確認しないといけなかったわ。

 「焼き尽くせ、ファイアアロー」

 現れたファイアアローが的に命中する。今までよりも発動速度も、威力も上がっているように思える。精神力の減りもわずかだけれど少ないんじゃないかな? いつもより体から抜けて行く力の流れが少なかった気がした。

 「ばっちりだな。よし、これからガンガン活躍して行ってくれよ!」

 「はい!」

 新しい専用武器を手に入れ、私は力強く頷くと、気合を入れて返事をした。私も早く、この弓を実戦で試したくなった。


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