アギトパーティー
キメラの研究区画を抜けるかどうかというところで、かつて対峙した人間のパーティーと遭遇することになった。こちらは相手の存在を把握していたので特に驚くことはなく、意外と早く奥まで来たのだなーくらいの感覚だったのだが、相手の人間達はこんなところで何者かと遭遇するとは考えていなかったようだ。
「くそ、まだ隠れている奴がいたのか。いや、異変を察知して駆け付けて来たのか?」
「あのまま知らずに逃すよりは、関係者がいたことに気付けて良かったというべきじゃないか? 下手したら他所で研究を続けられるところだったんだからな」
「確かに。ならとっとと始末して、資料を処分するぞ」
おそらくはリーダーであろう戦士と、魔法使いらしき男がそんな会話をしてこちらに武器を向けて来た。どうやら相手はやる気満々って感じだな。
「おい、ちょっと待て・・・・・・っいきなりボス戦ってどういうゲームバランスしてやがるんだよ・・・・・・」
「どうしたアギト。ひょっとして完成したキメラだったのか?」
いきなり戦闘に突入するのかと思っていたら、アギトと呼ばれた魔法使いがこちらを見ながら厳しい表情を浮かべてそんなことを呟いた。
それに引っ掛かりを覚える。
ゲームバランスと言ったか・・・・・・確かにゲームを作りはしたが、ここは一応異世界ではあってもリアルではある。これが長い夢だっていう可能性はなくもないだろうが・・・・・・例え夢だとしても何十年と目覚めず続く夢など存在はしないだろう。そう考えればこれは現実に起きた出来事で間違いはない。
相手が寝ぼけているのだとしても、おそらくはフォーレグス王国に来たことはないのだろうと予測できる。それは以前友好種と戦闘するという現場を見れば、こちらとの接点が無い事が窺われた。もし知っているのならば敵対するようなことはなかったはずだ。
それにしてもゲームバランスという言葉が出て来るのはおかしいな。地球はとっくの昔に氷の星になっているはずなので、召喚された者っていう事はないだろう。ボードゲームなどを指してゲームと言ったにしては、脈略がないのでRPG系のゲームを指して口にした単語である気がするのだが・・・・・・
「ホルコス、油断するなよ。どうやら女は魔王で、男の方はおそらくは邪神だ」
「何! ・・・・・・撤退できるか?」
? ひょっとしてステータスを見られるってことか?
ますます地球から来た者って可能性が出て来るが、そう考えるとここで逃げられるのは困るな。
(ジャミング)
以前同郷の人間も魔道具などの力を借りてテレポートしていたから、その厄介さは理解している。それにこいつが転移を使って逃げているのも知っているので、ここで逃がせば後々何かしら厄介なことが起こるに決まっているだろう。そう予測して魔法を使えないよう無詠唱で妨害空間を設置した。下手に誤解したまま逃すのはまずいだろう。
「仕方ない。今は報告して対策を立てるぞ! 転移!」
案の定逃げて勝手に大騒ぎするところだったようだ。危ない危ない・・・・・・
「くそ、やばい。対策された!」
「逃げるぞ!」
さすが冒険者。生き残ることを最優先してどうにかして逃げようと考えたようだ。まあここで背中を向けて逃げれば、背後からやられるって判断してじりじりと後退して行っているのだが・・・・・・逃げられると勝手に騒いだ挙句、見当違いな対策を立てて戦争を仕掛けて来そうだったので、逃がす訳にはいかないだろう。全くなんでこいつらって話し合うってことをすっ飛ばすのだろうか・・・・・・戦闘狂ばかりだな~
(創造)
幸いといえばいいのか、ここからの脱出口は彼らが通って来た出入口だけである。それを塞いでしまえば退路を断つことが可能であった。ここがキメラ研究ラボで、万が一の事があった時に直ぐ封鎖できるようにって構造なのだろうが、それにしてはそれに準じた隔壁みたいなものはないようだな。そこで代わりに魔法にも強い金属の壁を設置させてもらった。まあ、彼らにとっては幸いではなく絶望的な状況だろうけれどね。
「くそ。閉じ込められた!」
「さすが魔王と邪神だ。そう簡単には逃がさないらしいな」
「ねえ、本当にあれは魔王と邪神なの?」
「ああ、間違いない。ステータスに書いてあるからな」
弓を持った女の質問に、アギトとやらが答えた内容は、やはり同郷の可能性があるという事だった。しかし今回も敵対者として対峙するってことは、脅威にしかならないな~。まあ転移者とかがやって来るとしたらほとんどの場合、人間の味方であるのが普通なので、どうしてもこちらに敵対する者ばかりになっても仕方はないのだろう。こっちはモンスター側だからな・・・・・・
しかし、話し合いもしないで戦闘を選ぶやつが多過ぎないか?
何でこう好戦的な人間が多いかなー
「一つ聞きたい事があるのだがいいかな?」
退路を断たれ魔法を封じられた人間パーティーが、唯一の出入り口を前にガンガン叩いてどうにか逃げ出そうとしているところに声をかける。
「何だ!」
それに反応したのはリーダーらしき戦士の男だった。さすがに若干声が震えているようだな。特に威圧とかしていないのでぱっと見は普通の人間のように見えると思うのだが・・・・・・まあ今はいいか。
「先日この施設での事なのだが。檻の中に捕らわれていた同胞のハーピーを殺したのはお前達か?」
「・・・・・・そうだ」
「ハーピーを救助する為にやって来た、友好種パーティーを殺そうともしていたな。それはフォーレグス王国に対する宣戦布告ということでいいのか?」
「・・・・・・それは・・・・・・」
さすがに一国家に対して戦争をするのかって言われれば、はいそうですって答えられないようだな。
「フォーレグス王国では共存出来るモンスターを友好種として受け入れ、平和に暮らしている。その中でここに捕らえられていたハーピーも、友好種として共に生きる仲間だった。ハーピーを捕らえ、そして殺したお前達を我々フォーレグス王国は敵対者と判断する。ウルクスダルト国は以前にも戦争を仕掛けて来た。お前達がその先兵だと判断していいのだな」
「いや、いやいや、ちょっと待ってくれ。我々に戦争を起こす意思はない。ここには禁忌の研究をしている者がいるという情報を得て、それに関連している者の処分と研究内容の処分をしに来ただけだ」
さすがに国に対して喧嘩を売る気かと言われて、慌ててそんなことはしないって返事をした。どこまで情報を持っているのかは知らないけれど、さすがにフォーレグス王国を敵に回すのはまずいって考えたのだろうな。
「ならばフォーレグス王国の国民を殺し、その救助の為にやって来た友好種の冒険者達に危害を加えた謝罪として、この施設内に残っている資料は譲渡してもらうぞ」
「そ、それは待ってくれ。ここで行われていた研究は禁忌に属するものだ。それを悪用されるような事態は避けねばらない。それを他国に渡すのは認められない」
「ここで研究されていたキメラは、フォーレグス王国に襲撃をかけて来たものだとしても、その資料を渡す気が無いという事か?」
「え?」
「つまり、フォーレグス王国に対する兵器開発の資料の開示を要求したのだが、今後の事を考えて切り札にしたいから渡せないという事なのか? 徹底抗戦を望むというのであれば、こちらもそれ相応の対策を講じるだけだが?」
「え・・・・・・いやいや、こちらにそんな意図は決してありません」
リーダーの戦士は段々と手に負えるような案件ではないと気付き始めたようだった。こっちとしてはフォーレグス王国の代表者とか名乗ってはいないのだが、魔王や邪神だって思い込んでいるのだからそういう風に勘違いしても不思議ではない。そして会話の内容からこの案件が、国と国の駆け引きに発展しているという状態に戸惑い出していた。
さすがに一介の冒険者が国を代表して勝手に決めることなど出来ないのであろう。
「失礼だが、貴方が言っていることが真実だという証拠はあるのですか? キメラがそちらの国を襲ったという証拠と、それがここで研究されたものだという証拠が無ければ、ただの言いがかりだろう?」
しどろもどろになっているリーダーの男の後ろから、アギトとか言われた魔法使いがそう意見を出して来た。証拠が無ければこちらのいう事を聞く必要が無いってところか・・・・・・確かに精霊キメラに襲われたっていう証拠を提示出来なければ、難癖つけているだけって突っぱねることも出来るかもしれないな・・・・・・
さてどうしたものやら・・・・・・
「バグ。こっちは終わったよ~」
どう話を持って行こうかと考えていると、資料などを確保していたレイシアが作業終了を伝えて来た。ということは、もうここには用がないってことだな。後は目の前の人間達だけれど・・・・・・はっきり言えば同郷の者であったとしても、こっちにちょっかいを出して来ないのであれば特に問題はない。今回はお互いに依頼を受けた者が、たまたまぶつかって会話無く戦闘になってしまっただけのようだし。そこら辺りの注意と、今後こっちに手出しして来ないよう言い含めておけば大丈夫かな~
レイシアにはわかったって頷いた後、少し待っているよう指示して人間達の方を向く。
「今回はこちらに必要な資料は貰って行く。証拠が欲しいというのならそこの精霊キメラの研究が中途半端に残っているものがある。あれを精霊使いに見せ、精霊に確認させるがいい。今後フォーレグス王国に手を出すようなら全力で叩き潰すからな。よく覚えておけ」
何が何だかわからないって感じの人間達をそのままそこに置いて、僕達は拠点へと帰って行った。
しばらくは手に入れた資料の解析だろうな~
司書パペットと一緒に精霊キメラと、ホムンクルスについての情報をまとめて行く間、レイシアの経験値稼ぎは分身体を向かわせてSP回復だけ手伝って行った。
ビゼルがSPを受け渡したり出来ればいいのだが、彼女はどっちかっていうとサポートタイプではなく、魔法アタッカーだからな~。しかし危なくなれば手助けすることくらいは出来る。それと一緒に経験値稼ぎをって思って、LV一のモンスターに変身して参加していたのだけれど・・・・・・まるっきり経験値が稼げなくて僕が一緒に参加する意味がなかった・・・・・・
まあLV一とはいっても基礎能力がそのまま受け継がれている為、余程の敵であっても素手で倒せる程になっている。そんな能力を持っている者が雑魚を殴ったところで、経験値など手に入る訳がなかった。なのでSP回復だけ担当して、後はビゼルに見ていてもらうことにした。
一応分身なので会話したり、どんな状況か見ていることも出来るので、二人にとっては一緒に行動しているようなものだろうな。メインがこっちで資料を眺めているだけって感じだろう。
こっちはそこまで急いで強くなる必要もないので、まあお喋りしながらのんびりと活動して行ってもらえればいいだろうな。
しばらくそんな感じで並行して活動していると、ホムンクルスと精霊キメラの事は大体理解できた。
まあ精霊キメラの方は、そういうキメラを作る方法がわかったって感じか。応用するのならせいぜい精霊の属性を変えるって感じだろうが、これを作ると精霊が発狂するようなので、知識としてそういう技術があったと覚えておけばいいだけだと判断した。いずれまた敵として出て来るかもしれないしね。これを自分達で作るメリットは完全にないし、狂わない精霊キメラを研究するつもりもなかった。ということで完全に凍結させる技術だな。
一方ホムンクルスについてになるのだが、こっちはまさに禁忌の術って感じだった。
研究の要所要所で人体実験を必要とするようなのだが、さすがに研究していた者もこれには不快感があったようで、代用品としてクローニング技術が使われていたらしい。まあそれでもこれは倫理的には許されない研究だろうな。
まあ研究資料によれば、妻に当たる人物をクローニング技術で作り、肉体と血をそこからとって来て妻の蘇生をするって計画だったようである。正確にいえば妻にそっくりなホムンクルスって感じではあるが、実際のところはまだ研究段階のようだ。というのも問題はホムンクルスの寿命の問題であった。
研究報告では大体長くて一ヶ月半くらいしか生きられないようだな。
そんな寿命では研究していた男も納得出来なかったようだ。まあそれはそうだろうな。こっちのホムンクルスも、長くて一年だろうと思ってはいたが、実際に死ぬまで様子を見たりはしなかった。下手をすれば同じように一ヶ月くらいで死んでいた可能性もあるな。
しかし僕が創ったホムンクルス達は経験値を稼ぎ、進化することで最終的には六十から八十歳くらいまで生きていた。人間の次なる進化じゃないかって考えていたバッカーライという種族になっていたからかもしれないが・・・・・・それにより人の一生と同じだけ生きることが出来たのである。
結局のところ、魔王軍で戦っていた時の三人以外には創っていないので、その後ホムンクルスを創ろうって考えもしていなかった。魔王軍で一緒に戦っていた仲間内で死んだ者は、結局のところそのホムンクルス三人だけという結果である。他の者はドラゴンやジャイアント種の上位者やノーライフキングなどの指揮官クラスで、どちらかといえば神に近い存在とされる者達だった為、寿命からすればまだ若いといってもいいのかもしれない。
ドラゴンとか、何千年も生きるって聞くからな~
まあ別にホムンクルスを作る必要性がある訳じゃないのだけれどね。ちょっと資料に触れる機会があったので知っておきたかっただけだった。
さてさて、そうはいったけれど僕の手元には賢者の石が二つある。これは死に別れた研究者が長年研究して開発した技術の結晶ともいえた。それが同じくホムンクルスを研究する者の元に辿り着いたっていう事には、何かしら縁があるようにも思える。なのでいっちょホムンクルスとしての蘇生という研究成果を見てみたくなった。
失敗したのならそれはそれで別に構わないしね。特に何かしらの責任や義務はこっちにはないのだ。上手く蘇生できれば何かしらホムンクルスの知識がもっと手に入るかもしれない。現代日本で生きていた僕には情報というものの価値を良く知っていた。まあ頭はそれ程良くなかったけれど・・・・・・知っていればどこかで役に立つかもしれない。
そこで旅をしているトールティを呼び戻し錬金パペットを呼んで、司書パペットと共に賢者の石を使った蘇生を試してみることにした。
トールティは死霊系の力を持っているけれど、一見ホムンクルスには何の関係が無いように思える。しかし禁忌に指定されるホムンクルスと同じく邪法扱いされている死霊系は、同じく生命を弄ぶ技術として認識されているものだった。そこで何かしら参考意見が聞けるかもしれないので、呼び戻してみることにしたのである。
「わざわざ来てもらってわるいな」
「いや、構わんよ。バグ様に頼られたなら来ない訳にはいかんだろう」
「まあ微妙に分野違いかもしれないが、何か気が付いたとことかあれば教えてくれ」
「任せておけ」
そんな感じで四人チームを組み、まずは研究者だった男のクローニングから始めることにした。必要になるのは肉と血だからね。
「バグ様、ちょっといいか?」
クローニングで研究者だった男の肉体を培養していると、トールティがそう声をかけて来た。どっかのマッドサイエンティストのように、僕達の前には円筒形の筒の中でスクスクと育つ塊がある。人の形をしている訳ではないけれど、これがあの男の細胞から出来ている肉塊で間違いはない。しかしこれにはきちんと肉と血が通っている為、ちゃんと条件を満たしたものになるはずだった。
クローニングから一週間といったところなので、まだまだ錬金術に使う量には届いていない。
「どうした。何か気が付いた事があれば、遠慮なく言ってくれていいぞ」
やはり分野が違っているからか、ここまでトールティには大した出番はなかった。
「この培養槽の中の液体には、成長促進剤の様な物が入っているのだろう?」
「ああ、必要素材に肉と血が必要だからな。今急速に育てているところだ」
「この資料によれば、この血肉を使った錬金術でホムンクルスを創るとあるが、おそらくそのせいで寿命が一ヶ月と短いのだと思う」
「うん? 成長促進剤が問題になっているのか?」
「あくまでも予測だがその可能性が高いんじゃないか。これで行くと、急激な細胞の活性化が肉体や血の培養をしているみたいだが・・・・・・その効果がホムンクルスになった後も持続しているんじゃないのか?」
「つまりホムンクルスの老化速度まで加速しているってことか?」
「たぶんな」
ふむ、それはありそうだな。SFものとかのクローン人間なども、調整とか何とかで寿命を延ばすとかいう話を聞いた事があるが、それが細胞の分裂速度とか? 何かそこら辺りの調整だとするのなら、トールティの言っている通りかもしれない。
「そうすると、ただの栄養剤にして自然と育つのを待つ方がいいかな?」
「うむ。ただし、成長させるのにはこちらで手を加えることにしよう」
「何か方法があるのか? その方法は寿命を縮めたりしないのか?」
「ああ、そこはファンタジーなんだろうな~。死霊系の術で何とかできるぞ」
「おお! っとすると、この肉片は破棄か?」
「だろうな」
四人で目の前の成果を見詰めるが、これは既に使い物にならないとなるとまあ仕方ないのだろう。再度培養し直すこととなった。
新たにただの栄養剤入りの溶液に培養された細胞を入れて、トールティに成長させてもらうこと三週間。もうすぐ必要量に達するかってくらいに大きく育って来た。それにしても僕達が創ったホムンクルスの作製の過程とはかなり違う工程だな。僕らが創った時はもっと科学的な感じだったのだけれど、こっちは研究過程を見られるのはちょっとやばい感じだ。パッと見で人体実験をしているようで、悪の研究者っぽいな。
それに対してこちらがおこなった作製工程は、人体を構成する元素などを集めて段階的に錬金合成を繰り返して作り上げた。水素、炭素、窒素、酸素や、カルシウム等々・・・・・・人体を構成するそういう元素を集めて、まずは原初の細胞と呼ばれるスライムみたいなものを作り出した。
次に作り出したのは精霊の欠片や魔力結晶などを合成した無垢なる魂魄。精霊の欠片といってもこれは精霊を倒したとかそういう物質ではなく、精霊界ではないこっちの世界で精霊の力が多く集まったところに稀に誕生する結晶を確保した。ただ一属性の力が集まった物がこの精霊の欠片といわれる結晶で、他属性の影響を受けると直ぐ崩れてしまうことから早々手に入る物ではなかったりする。かといってこの精霊の欠片があれば精霊魔法みたいな力が発現するかと言われれば、特に何も起こらないので希少性はあるものの、価値は恐ろしく低かったりする。
まあこちらは精霊に頼むなどして人工的に作れる為、僕達なら入手がそれ程難しくない物だった。一つ作るのに多少の時間は必要だったけれどね。
最後は回復薬になるポーションだった。高品質なポーションを濃縮したような液体を合成して作り、その中に血を一滴混ぜることによって生まれながらに高い知能を持たせることが出来るようだった。後、血の持ち主を自分の主とか、父親みたいに感じるようになるみたいだな。
この三つをさらに合成することでやっとホムンクルスを創ることが出来た。
まあそんな訳で、今創っているホムンクルスとはまるっきり作製工程が違っている。資料によれば、こちらのホムンクルスは子供の姿になるようだな。ちなみに僕が創ったホムンクルスは掌サイズの小人になった。
「準備に結構時間がかかったな」
「おそらく特定の人物を創り出そうと考えなければ、ここまで時間を取られなかったんじゃないか?」
『これはあくまでも特定人物を、ホムンクルスとして蘇生させる手順かと』
トールティに続き司書パペットも意見を言って来た。まあ確かに、ただ普通にホムンクルスを作るとしたら血肉はそこまで拘らなくてもいいのだろう。善悪を気にしないのであれば、どんな人間でもいいので捕まえて来たら素材になる。ある程度善悪を気にするのなら死んでも構わない人間で代用すればいい。人を使うということに嫌悪感があるのであれば、僕達が今回使ったようにクローンが一番いいのだろう。まあこの資料を見る限り、死刑囚とかを素材とかにするのはどう考えてもないなって思うけれどね。下手をすれば犯罪者を蘇生することになってしまうだろう。
「じゃあ素材の準備も出来たし、錬金合成を始めるぞ」
みんながそれぞれ担当範囲に異常がないかチェックをして、頷いたのを見て魔力を流して行く。それにより魔法陣が輝き、その光が収まった後に残ったものは・・・・・・胎児を思わせる肉の塊だった。
それを躊躇なくトールティが持ち上げると、培養槽の中へと沈めて行く。微妙に半透明な体の中には賢者の石が入っているのが見受けられた。
「バグ様。後はこちらである程度成長させるから、そうだな・・・・・・大体一ヶ月くらいでここから出せると思う」
「そうか、準備も含めると結構時間がかかるなー」
「まあ、バグ様が創ったホムンクルスとは手順がまるっきり違うからな~」
「そうだな。こっちで創った方法は、禁忌って感じがしなかったからな。普通に化学の実験みたいだった」
「まあそういう意味でも、こっちのホムンクルスは邪道な研究何だろうなー」
「だな」
どう見てもこの資料通りの手順を踏むと、非人道的な研究にしか思えない。クローニングの技術を使っているとはいっても、肉や血を使うとか・・・・・・犯罪臭しかしないぞ・・・・・・
ちょっと作製過程で鬱になりそうだったけれど、ようやくこれで一息付けたって感じだった。後は資料通り本人が目覚めるかどうかってところだろうな~
そんなことを考えながら、レイシアの経験値稼ぎを見守って経過を見て行くことにした。
クローニングで想い出したのだが・・・・・・キメラの研究施設で出会った同郷の人間っぽい男・・・・・・アギトといったかな? 今後こちらと何かしら接触などがあるかもしれないので、念の為転移などで逃げられた時に直ぐ追えるように忍者パペットに髪の毛を一本持って来てもらうことにした。これから遺伝子情報を手に入れることで、昔に使った探知の指輪をいつでも起動できるように準備をしておこうと思う。これでいざ戦うことになって転移で逃げられたとしても、どこまでも追い続けることが出来る。その時が来たら神の力とやらを思い知らせてやるわ!
まあ見た目は金髪に碧眼。どうも日本人っぽくなかったので、確証は得られなかったのだけれど・・・・・・ステータスを見たり出来たことから地球から来た人間だと考えておいた方がいいだろう。そうすると以前の異世界から来た勇者のように、チート能力を持っていたりする可能性もある。こっちに被害が無いのなら、好きに活動してもらっても構わないのだけれど、前回のように何かのきっかけで襲って来てはかなわないからな~
用心はしておきたい。
おそらく僕自身については、魔道具にさえ気を付ければ特に気を付ける必要はないだろう。そう考えるとネックになるのはレイシアが狙われた時かもしれないな。相手が善性の塊ならば、人質に取ろうって考えはないだろうけれど・・・・・・そこまで相手を信用出来ない。そうなるとやっぱり保険が必要だと考えたので、経験稼ぎの邪魔にならない程度に昔使っていた魔道具をレイシアには持たせておいた方がいいかもしれないな。
身体強化のリングとかあるようだけれど、ここら辺りは僕の加護があるのでこれ以上は必要ないだろう。転移ペンダントとイヤリング、幻術のリングに活性化リング。後は自分のステータスをチェック出来るように水晶を渡しておけばばっちりだ。それと外にいる時はこっそりと護衛を付けておけばいいだろう。
まあフォーレグス王国に侵入して来たらすぐにばれるだろうけれどね。後はアギト自体をパペットに監視させておけばいつでも対処出来るだろう。
好きに活動してくれていいが、こっちにとばっちりが来なければいいなー




