過ぎ去る時間
今回は結構時間が進みます。
後々レイシアサイドでここら辺りを埋めてみようって感じなので、それを考慮して読んでもらえると嬉しいかも・・・・・・
ノームですら警戒される結果になったので、次に選んだ種族はホムンクルスだった。とはいっても初期の状態では手のひらサイズの小人であるので、進化した状態とでもいえばいいのか? 第二段階のホムンクルスになって会いに向かった。
パッと見でなら子供なので、これなら男って警戒されることもないだろう。完璧だな!
まあそんな訳で、無事レイシアと触れ合うことが出来た。とはいってもやはり気になるのか警戒されているのか・・・・・・母親の直ぐ近くで、見張られているような気がしてならないのだけれどね。おかげで前世を覚えているかどうか聞けやしない・・・・・・
それでも人見知りしないのか、それともやはり僕達の事がわかっているのか、僕とビゼルに嬉しそうに抱き付いて来たりして可愛いなって感じた。あ、これは単純に赤ん坊が可愛いだけかな? まあいい、とにかくレイシアに合えて嬉しい限りだ。
鉱山の落盤事故以来、今までフォーレグス王国はサフィーリア教の勢力が強かったのだけれど、爆発的勢いでフォーレグス教が広まってしまった。というのも他の宗教もそうなのだが、蘇生の奇跡は死んだばかりの人間で、肉体の損傷が激しくない者にしか効果がない。僕限定になるのだけれど、他の教会に行っても蘇生出来ない者を蘇生出来るっていうのは、それだけ力を持った神だと思われているみたいだな。そのおかげで、国内は一神教とまではいかないまでも、フォーレグス教信者が圧倒的割合を占める事になった。
神様自体はそれ程モンスターを差別したりしないのだろうが、友好種からしたら今までの宗教は敵対勢力みたいなものだったので、仕方ないのかもしれないな。そもそもがモンスターの崇める神というものが存在していなかったしね。実際国内にいる人間種は今まであったアルファント教とか、ディクラム教の信者とかそのまま信仰している。彼らは新しく出て来た、本当にいるかどうかわからない新興宗教にちょっと嫌な顔を見せていた。
しかし、実際に奇跡が起こったという実績がある以上、そんな神はいないって指摘することも出来ないようで、忌々しそうにしているのがわかった。おそらく神々はそこまで気にしたり拘っていないのだろうが、教会関係者は信者が減らないかどうか心配しているのだろう。
でも多分フォーレグス教に飛び付いた国民は、単純に今まで無宗教だった友好種だと思うので、そこまで気にする事はないはずだ。人間種でこちらに流れてくる信者は、ほとんどいないと考えている。こっちは今まで通り仲良くして行きたいというか・・・・・・自分を祭るのはやめて欲しかった。今更だけれどね・・・・・・
それ以外はおおむね悩みもなく平和な状況が続いている。平和って言っても僕達の周辺って意味で、世界各地を見れば戦争しているところなどは結構あったりする。それと今だに友好種の事を受け入れられない国などもあるらしいので、こちらに対して何かしら対策を練ったりしているのかもしれない。戦力差を考えて受け入れないって態度だけの可能性もあるけれどね。今のところ表面上は喧嘩を仕掛けたりする国は、見当たらないようだ。
時代の流れというか、人間の本質といえばいいのか・・・・・・同盟するに値する国は片手で数えられるくらいまで減ってしまったものの、おおむね自分の周りは平和でいられたので、レイシアと遊んで暮らせるようになった。
三年ぐらいが過ぎ、レイシアも六歳になると以前のパターンといっていいのか、レイシアは冒険者に憧れるようになった。あー、一応言っておくと、レイシアとしての記憶をそのまま持って転生して来たようだ。
国内で冒険者が必要になることは無いものの、どうやら冒険者になる事だけは譲れない事なのだそうで、今は学校で冒険者としての技術を習いに行っている。本当は技術的な物は、わざわざ習う必要が無くてカムフラージュの様なものだけれどね。
フォーレグス王国の王都にある学校は、義務教育として誰でもタダで通うことが出来るようになっている。基本的には読み書きや簡単な計算、歴史といった基礎知識を学ぶ所なわけだけれど・・・・・・前世の記憶を残しているレイシアにはそれらは必要ではない。そして、将来的には冒険者になりたいという希望があるので、その授業を受けてもいいのだけれど・・・・・・そっちもレイシアには不要な授業だった。足りないのは知識ではなく、新しい肉体に対しての実践経験である。
新しい母親は、冒険者という危険でなおかつあまり稼ぎにならない職業に反対しているそうなので、義務教育として学校に通っているという振りをして、ダンジョンに潜っていたりする。まあ・・・・・・僕はそれに付き合う形で、一緒に経験稼ぎをしていたけれどね。
「ビゼルはこんな所に来ても暇じゃないのか?」
「まあ、暇と言われれば暇だわ。でも・・・・・・仲間外れは酷いわ!」
「と言われても、ランクが違い過ぎてパーティーも組めないだろうが」
「確かにそうだけど・・・・・・」
「まあ良いじゃない。危なくなったら助けてもらえるんだし・・・・・・万物の根源足るマナよ、燃え盛る――」
レイシアがビゼルにフォローを入れながら魔法詠唱を始める。
僕と違い、転生によって絆以外のスキルを消失したレイシアは、無詠唱はもちろん簡略詠唱すら失ってしまった為に、長々と詠唱する必要が出て来た。そのサポートをする為に、僕はまだLV上げをしていない種族に変身して、経験集めついでに前衛をしている最中だった。種族としてのLVは一から始めるのだが、能力値が下がる訳ではないので、その有り余る基礎能力値を使って前衛を勤めていた。同ランクの強さなので経験値を余分に吸い取るようなことにはならないだろう。
まあ行動による経験が入るのだけれど、はっきりいって棒立ちでもどうにかなるような雑魚相手に、微塵も経験値が入って来ないのには正直まいっている。レイシアの方は、ダメージが無いだけなので、しっかり魔法を使った経験値が入っているので良しとしよう。そう考えるとランクがかけ離れていても、パーティーを組むだけでは経験値の損失はないのかもしれないな。ここら辺りはゲームとは違うようだ。
まあどの道レイシアには、必殺技のような攻撃手段がない為、地道にコツコツ経験稼ぎをするしかないのだ。召喚魔法を使えば楽に経験を稼げそうな物なのだが・・・・・・LV一召喚で呼び出せる下僕は蝙蝠かスライムである。はっきりいって使い捨ての消耗品か、偵察みたいな使い方しか出来そうになかった。戦力にならないのだ・・・・・・
それに新しい体は、召喚術に対する適性もないみたいだからな~
本当に地道な経験集めが必要なようだ・・・・・・
今のレイシアは簡略詠唱で召喚を使えない代わりに攻撃魔法を普通の威力で発動することが出来た。というより普通の初心者魔法使いと同じになったといった方がいいかな? 昔に思い悩んでいたような弱々しい魔法ではなく、しっかりした威力が感じられる。まあしかし、だからといって敵を一撃で仕留めるような威力はないのだけれどね。なので一気に経験値を稼ぎたくても、一足飛びに倒すことが出来なくて、コツコツとやって行くしか方法が無かった。
まずは魔法抵抗が低そうで、なるべく体力がない雑魚敵をどんどん倒すことで少しずつ経験値を溜めて行っている。そこは大体どのRPGなどでもお馴染みなので特に問題はないのだが、戦士と違い魔法使いは魔力というか精神力というか、この世界だとスキルポイントを消費する。つまり連続して戦闘を続けることが出来ないのだ。
レイシアはというか初心者は特に最大SPが少ないので、魔法オンリーで戦い続けると直ぐにSP切れを起こし、使い切ってしまうと気絶してしまう。これでは経験値集めもかなり時間がかかってしまうという、なんとも面倒な現実が立ち塞がっていた。
こういう時はゲームでもお馴染みの方法だが、ポーションを使って強制的にSPを回復し、連続戦闘をするのがセオリーである。ただしこの方法はポーション代でかなり赤字になるのだが、お金が稼げるのならそういう経験稼ぎの仕方も存在している。金にものをいわせた経験値集めって言われるやつだな。
ただし、今回は雑魚敵を狩っているのでそこまでお金が稼げなくて、大赤字になってしまう方法である。普通なら座るか寝るかしてSP回復をするっていうのか、初心者にとれる方法なのだがそれではあまりにも効率が悪過ぎるので、僕はレイシアをサポートすることにした。
「マナ ディヴァイドゥ」
この魔法というか奇跡は神聖魔法になるので、ビゼルには使えない。その効果というのはSPを譲り渡すこと・・・・・・つまり僕の精神力をレイシアに譲り渡す奇跡の力だ。ビゼルがこの奇跡を使えれば、ただ見ているだけじゃなくレイシアの手伝いが出来るのだがな~。まあ出来ないものは仕方がない・・・・・・
まあ僕をSPポーション代わりとしてガンガン経験値を稼いでいるって感じだった。これもある意味強制レベリングってやつになるのだろうな~
本来は学校に通って教育を受けている午前中の時間を、ダンジョンでの経験値集めに費やした僕達は学校の食堂で昼食を食べた後、ゲームセンターへとやって来た。日本とは違い、こっちの学校は午前中だけで終わりにした理由は、別に親の手伝いをしろとかそういう意味ではない。単純に仕事仕事みたいな生活をしないよう、ゆとりを考えた結果だった。勉強が好きな者はこの後も学校で自主的な勉学に励んだりする。他にもレイシアみたいに冒険者の特訓をしたりする者もいたりした。まあレイシアに限っては学校で何かを学ぶよりは、実地訓練をした方が効率はいいのだけれどね。それは他の子供達では危険過ぎるというか、基礎が出来ていないのでレイシアは特例って感じだろう。
しかし親に内緒で経験値稼ぎをしているので、学校が終わってからもダンジョンに潜るっていう無茶は出来なかった。そこで僕達は午後からゲーム世界に入って遊ぶことにした。午前だけでお別れっていうのもつまらないからね。
そこで初めは新キャラを作って一から遊ぼうと思っていたのだけれど、これは嬉しい誤算になるのだが初期に遊んでいたレイシアのキャラクターでゲームを再開することが出来た。おそらくこれは、ネットゲームで遊ぶ時のアカウントがいっしょと判断されたのだろう。そうするに魂がまるっきり同じだった為、ゲームシステムに本人と認められたっていう感じだろうか? 別の人格がまるっきり混じっていないという事なのだろうな~
その代り、かつてエクライとして遊んでいた時のキャラクターは使えなくなっていたようだ。LVや種族や能力でいえば、初期のキャラクターの方が優れていたので、まあこれはこれでいいのだけれどね。
そんな訳で僕らは再びパーティーを組んでゲーム世界でも遊ぶことにした。メンバーは僕とレイシア、ビゼルとビフィーヌにアルタクスとキメラスライムである。
キメラスライムはその後、アルタクスの妹みたいな感じで、ずっと一緒に活動していた。そしてゲーム内で選んだキャラクターはコボルト・・・・・・なぜコボルトなのかはわからないけれど、人間でいうところの職業は物理遠距離の代表である弓を選択していた。今はそこそこ育っていて種族名がコボルトアーチャーの最上位種で闇夜に踊る銀狼になっている。狩人と考えると、鼻とかも優れているのでなかなかいい選択といえるんじゃないかな?
スライムと同じで最弱種族ではあるものの、だからこそ進化させたりするのは凄く簡単だった。ただ普通のボスくらいなら十分な戦力になるのだけれど、強いボスになって来るとやれることが少ないかもしれないな。
まあ僕は楽しく遊びたい派なので、サボらず出来ることをしてくれるのであれば、どんな職業を選んだとしても問題ないけれどね。効率重視の連中には付いて行けないのだ・・・・・・
「久しぶりだからかな? なんとなく上手く扱えないかもー」
「ふむ、しばらくは体に慣れる為の特訓が必要そうだわ」
多少LV差があって、一緒に遊ぶのには難しい状況かもしれないけれど、それでも初心者をパーティーに入れるよりは即戦力だろうって思っていたのだが・・・・・・転生して今は六歳児・・・・・・そっちの体に慣れるも大変で、さらにアラクネの体の感覚を想い出さないといけないって感じでなかなか大変そうだ。しばらくしたら段々慣れて行くだろうが、ブランクがかなりあるよな~
まあ焦る必要はないだろう。じっくり遊んでもらうことにしよう~
そう考えゲーム内ではリハビリっぽいクエストなどをしながら、みんなで楽しんで行く。リハビリっぽいクエストっていうのは採取クエストで、崖の途中にある薬草を手に入れようみたいな、体を動かすクエストなんかを受けたりしてみた。道中に出て来るモンスターを討伐していれば、戦闘の感覚も想い出せるだろう。
ゲームから戻って来ると、レイシアとは別れてビゼルの相手をする。さすがに結婚しているので、レイシアだけを構っているのは不公平っていうか、贔屓し過ぎだろうからね。なるべく二人とも平等に付き合って行きたい。大体そんな感じで日々を過ごして行った。
リアル経験値稼ぎの方は、ぼちぼちって感じで成長している。僕のような必殺技って感じの攻撃方法がない為、地道に倒せる敵を倒して行くって感じなので急成長はしないな。それでもLVが上がれば知力やSPが上がり、魔法の威力や持続戦闘時間も段々伸びて行っている。雑魚をちまちま倒して行く作業はあまりにも効率が悪そうだったので、どうにかできないものかと考えていると昔を想い出した。加護を与えれば底上げで来たじゃないか・・・・・・
忘れていたのだが昔は戦士としてもそれなりに戦えていたのだから、そっちでも経験値を集められないのかなって考えていたら、そう言えばレイシアが戦士として戦えていたのは加護を与えたことで基礎能力が底上げされたからだったよ。
そんな訳で加護を与えてみると能力が一気に底上げされ、中級のモンスターを相手に戦えるようにはなったみたいだ。戦士としては雑魚なら通用するな。初級のモンスターとだと、まだ体がしっかり出来上がっていないのでちょっと厳しいだろうな。六歳児なので雑魚と戦えるだけでも凄い事なのだ。
ゲームの方は、一週間もしたら昔のように操作出来るようになったので、ダンジョンなどを攻略しに行くなどして戦闘にも慣れて行くようにした。こっちも感覚を想い出したら連携などの訓練をして、大型ダンジョンなどにも潜って行きたいと考えている。
この大型ダンジョンとは、日本側と繋がっているダンジョンだ。
いろいろなプレイヤーが攻略に挑んでいるのだけれど、そもそもの攻略難易度が高いこともあってそこまで攻略は進んでいない。到達階層は三十六階層くらいって言っていたかな? 僕は率先して攻略する気がないので、ダンジョン内をくまなく探索するとかそういう冒険をしようと考えている。何階層かくらいは攻略してもいい気はするけれどね。基本何も知らないプレイヤーに任せして攻略して行って欲しい。何ならレイシアが先頭に立って攻略するのなら、サポートしてもいいだろうな~。本人がそれを望むのとそれだけの実力が付いたらの話だろうけれどね。
そんな感じで日々は流れて行った。
それにしてもレイシアの今の母親は、随分と敵対的だった。レイシアが人間以外と接触するのを極端に嫌がっていた。
そもそもフォーレグス王国は人間以外と共存して反映している国である。そんな中に合って人間以外は認めないという勢力は、実はごく少数ながら存在している。元を正せばフォーレグス王国の前身であるファクトプス国の血筋なのだろう。彼らはフォーレグス王国の在り方に賛同してこの国に来たのではなく、強制的にこの国に取り込まれたのである。当時友好種という言葉すらなかった時代、自分の直ぐ隣をモンスターが闊歩する生活に危機感を抱いて、国外に逃げ出そうとする者はそれなりにいたのである。
しかし町中に人間と同じようにモンスターが暮らすという異常な日常は、魔王軍復活を思い起こされる危険があった為、モンスター達を危険とみなす者を国内から出す訳にはいかなかった。そんなことをすれば、即座に周りの国々から自称勇者達がやって来て、こちらの生活を引っ掻き回すに決まっている。友好種も今では人間のように理性的に過ごしているものの、当時はモンスターそのものだったしね。辺にちょっかいを出されて、友好関係を崩されたくもなかったっていうのと、いずれは人間とも普通に付き合って行ける関係を築く為に残ってもらいたかったという思惑もあった。
そしてフォーレグス王国の優れた文化のおかげもあって、大半の人間が共存するっていう思考になったのだけれど、やはり当時から気に食わないと思ったまま変な思想を脈々と受け継いで来ている人間も確かにいたのだ。今回の場合、レイシアの母親がその一族といってもいいだろう。
ちなみに父親の方は同じような一族なのだが、フォーレグス王国の技術力に懐柔されつつある感じだ。おそらく親の教育が反面教師みたいになって、こちらに傾いて来ているのだろうな。
そりゃあ、昔は比べ物にならない程不味いご飯だったとか、生活が厳しかったとか聞いてそっちの生活に戻りたいって考える人間はいないだろう。両親もそんな都合の悪いものはわざわざ教えたりはしない。だが何故そんなことがわかったかっていえば、学校の授業で教えられたのである。とある歴史の授業の一環で、フォーレグス王国が出来る前の生活を体験してみようって企画が持ち上がり、学校に泊まり込みで一日体験生活を行ったのだ。これは新人教師が始めた教育の為、そこまで歴史のある授業ではなかったけれど、一部の者には衝撃的なものとなったようだ。
まあそんな授業を受けたレイシアの現父親は、昔に戻りたくはないなって考えたのである。ちなみに母親の方はでっち上げの嘘だと決め付けて否定しているそうだ。そういう意味では人間至上主義者達の思想にどっぷりと染まっていたのだろう。母親もその思想をレイシアに叩き込もうと考えていたのか、ファクトプス国の在り方についてレイシアに言い聞かせようとしているらしい。
レイシアは前世の記憶を残しているので、その母親の言い分を全て聞き流しているようだけれどね。母親だとは思っているものの、レイシア自体は距離を取って付き合っているようだった。
まあそんな両親だったので、成人である十二歳の時に自分の進路を冒険者にすると初めて親に伝えたようだ。母親はもちろん、これには父親も反対したものの、自分の進路を変えるつもりはないと言って独立宣言をしていた。それにしても寿命の関係もあって成人年齢がかなり若いとは思ったけれど、十二歳って凄い世界だよな~。まあそれを言ったら五・六歳で冒険者の修業を始めるのも、おかしい気がするのだけれど・・・・・・実際にはその英才教育ともいえる教育のおかげか、熊を普通に格闘技で倒せるような逸材が誕生しているのだろうから文句も言えないだろう。戦士なら大体素手で倒せるようになるのだそうだ。
もちろんそれなりの修業や特訓などをしてLVが上がったらだけれどね。何の訓練もしていない一般市民や、初心者冒険者は素手で熊を倒したりは出来ないらしい。おそらく加護を与えたレイシアなら、訓練もなくLV一で熊を倒せるだろうな。
まあとにかく国内にモンスターはいないものの、レイシアは親の反対を押し切り冒険者となった。
モンスターなどいないのに、冒険者なんかになってどうするのだろうか・・・・・・
フォーレグス王国にはレイシア以外にも冒険者と呼ばれる者達が何人も存在する。数でいえばどの国よりも少ないかもしれないが、その質においては他の追随を許さないだろう。これは種族差が大きい。そもそもが最弱種族のゴブリンやコボルトといった最弱種族であっても、基本のスペックが人間を凌駕しているのである。そんな友好種が冒険者になれば、それは人間しか冒険者をしていない国など軽く超えてもおかしい事ではないだろう。そして友好種族は経験をある程度積むと進化する。種族によるが基礎能力値が大幅に上がるのである。そりゃ人間など敵わないだろう・・・・・・
そんな彼らも国内に求めるような冒険が無ければ、成立するはずもない職業なのだが・・・・・・ここにもフォーレグス王国の特殊性が出て来ていた。本来なら未発掘のダンジョンを探索し終えた場合、それで終了してしまうダンジョンなのだが、フォーレグス王国では何度でも潜ることが出来るのである。それは出て来る敵だけではなく、仕掛けられた罠、冒険者を魅了してやまない財宝、そして冒険者ではない者からも求められる素材達。この国に存在するダンジョンは多くの者に求められているのであった。
まあ一部の者から言わせれば、人工的に造られたダンジョンはつまらないのだそうだが・・・・・・本物の冒険を求めて国を出て行った者達もその後半分以上の者が帰って来ていた。だって未攻略のダンジョンなんか、そうそうある物じゃない。国外にあるダンジョンのほとんどは、既に攻略されつくされておこぼれなど残っていない廃墟みたいなものなのだ。そんなものを見せられても、冒険心は満足しないだろう・・・・・・フォーレグス王国にあるダンジョンの方が、余程夢があるというものだ。
まあそんな感じなので、一応フォーレグス王国にもある冒険者ギルドに行けば多少の依頼もあるし、モンスタードロップなどからお金を稼いで暮らして行くことも可能であった。一応数は存在していなくても、国内に冒険者がいるのはそういう事情によるものだったりする。
そしてそんなある意味レジャー感覚でダンジョンに潜っている者達は、他所の国の者より質が高くなるのもうなずけるだろう。生活費を稼ぐ為の冒険者は、この国には存在していない。
お金を稼ぎたいのなら、冒険者以外の職業がゴロゴロしているのだから、危険な道に進む者はいないだろう。それがわかっていて冒険者になる者は、そもそも冒険を求めている者か荒事というか戦闘が好きな感じの者が多かった。だからそういう者は、稼げていたとしてもダンジョンへと潜って行っていた。すると自然経験も積めて強くなって行く。
レイシアはそういう変わり者というか、物好きの一員ってことだな。
そんな冒険をしてゲームをみんなで遊んでと繰り返し、たまに起こる事件などを解決して過ごしているとあっという間に何十年という月日が過ぎ去っていた。僕やビゼル、眷属達にはどれだけ時間が過ぎ去ろうとも気にすることもない事なのだが、人間であるレイシアはそうもいかない。品種改良によって健康を考えた食品などのおかげで、寿命が異様に伸びて来たといっても、さすがに七十を過ぎれば死期が近付いて来るというものだった。
「レイシア、人間を捨てることになるかもしれないが、進化合成をしてみるか?」
「このままで・・・・・・私はまた戻って来るから・・・・・・」
僕は魔人とかになれば寿命を気にしないでもいいと思い、そう提案してみたのだけれど・・・・・・やはり人間のままがいいみたいだな。出来ればずっと一緒にいたいと思って提案したのだが、以前と同じで拒否された。メリアスの旦那であるフィリオは、結婚した後段々老いて行く途中で進化合成を自分から申し出て来たのだけれどな~
まあ、途中でいろいろなモンスターに変わっていって、最終的には魔人になったのだけれど・・・・・・トカゲ顔の魔人となったので、人化のスキルを使い元の人間の姿へと変身していた。それ以降はずっと仲のいい夫婦として過ごしている。
レイシアもフィリオと同じで、最終的に人化のスキルを使えばずっと一緒にいられる気がするのだがなー
さすがに本人が望んでいないのでは無理に進化させるのは駄目だろう。僕はレイシアとは違って、無理やりの進化は望んでいない!
まあただ・・・・・・僕だけでなくビゼルも寂しい想いをするのだろう。
「また次の人生もバグの元に戻って来るよ。また会おうね・・・・・・」
「またな・・・・・・」
そンな会話をした数日後に、レイシアは寿命を迎えた。
以前僕達の事をまるっきり覚えていない時期、何度もレイシアとは死に別れていたので、今回も寂しい想いはするもののそこまで落ち込むことはなかったと思う。次の再開はいつになるのだろうとは考えたけれど、いずれまた会えると信じることにした。
レイシアの魂が戻って来たのはその九年後、結構時間が空いた後の事だった。そして帰って来た場所は再びフォーレグス王国だったことから、今回も記憶を持ったまま戻って来た可能性が高いとみんなで喜んだ。
事実数ヶ月して目が見えるようになると、レイシアは僕達に反応しているように感じられた。まあ単純に見ているだけなのかもしれないけれど・・・・・・ビゼルと一緒に暇を見付けては会いに行ってみるとその都度反応を示しているのがわかった。
何となく二人で会いに行くと自分達の子供っぽくて、照れくさい気もしたのだがビゼルは毎回くっ付いて来るので、一緒に会いに行っていた。
その後も成長を続け三歳を過ぎる頃、僕達が顔を見せるとこちらに寄って来ることから前世の記憶があるのだと判断した。実際まだ言葉を上手く話せないようだったけれど、こちらから質問するとちゃんと反応出来ていたしね。
成長したレイシアは、スキルなどの肉体的能力を失ってはいたものの、知識は全て覚えていた。まあ知識というか記憶だろうけれど、それは残っていたけれど魔法技術などは覚え直しになってしまった。ここら辺りは生まれ変わった肉体の能力もあるので仕方がないのかもしれないな。呪文自体は記憶に残っているらしいので、暗記する必要はないだろう。どちらかといえば早口言葉を特訓って感じだろうな。
その後他国とのごたごたもあったりするものの、どうとでも出来る程度の問題しか起こらなかったので、再びレイシアと一緒にのんびりと過ごして行けた。レイシアは次の転生をしても再びフォーレグス王国に転生して、記憶も失うことは無かった。何度も転生を繰り返したけれど、昔のように僕達を忘れ絆が無くなるようなことはなくなったので、その度にまた次の人生で会おうと言って別れることが出来た。
それでもさすがに転生する度に全てをやり直すっていうのは虚しい気がする。
僕のようにスキルを受け継いで転生出来るのなら、経験値集めも圧倒的に楽になるのだけれど・・・・・・レイシアの場合は毎回最初っからになるのだよね・・・・・・そこまでして人間でいたいものなのだろうか?
「レイシア、転生の度にゼロからやり直すっていうのは虚しくないか? どうしても人間でいたいのか?」
「いつまでもバグ達と一緒にいたいとは思うよ。でも私は何度生まれ変わってももうバグを忘れたりしない。もう間違えたりなんかしない」
「もしレイシアが望むのなら、そのままで不老の力を与えようか?」
「え? そんなことが出来るの?」
「ああ、疑似的なものでいいなら寿命を止めることも出来るぞ。一応不死も可能だけれど、それだと人間っぽくないかもしれないからな~」
不死になると自動で肉体を再生するので、他人の目の前で傷が治って行ったりして恐れられそうだ。レイシアが人間っぽさを求めているのなら不死まではやり過ぎな気がした。不老も時代の流れがあるので、怖がられるだろうけれど・・・・・・フォーレグス王国でならそこまで気にする程でもないだろう。千年だろうが生きている種族もあちこちにいる。
加護の力を調節したら眷属でなくても不老くらいは何とでも出来そうだ。
しかしレイシアは迷っているのか俯いて考え込んでいるようだな。やはり自然な感じの付き合いがいいのだろうか?
「それって今現在の姿から変わらなくなるんだよね?」
そう言ったレイシアはビゼルやビフィーヌ達を見てから僕の方に視線を向けて来た。
「ああ、エルフとかの成長と違って今この時を維持する感じだと思う」
子供の時にヴァンパイアの眷属にされたロリッ子とか、小説などによく出て来たな~。まああんな感じで姿が固定されると思う。
「じゃあ! もう少し成長するまで待って!」
「わかった」
人間っぽさがなくなるって感じで悩んでいたのではないのか? それとももう少し考える時間が欲しいって感じなのだろうか・・・・・・そう考えているとレイシアの視線が周囲の女性に向けられているのがわかった。何故に異性ではなく同性を見る? いや別に浮気して欲しいとかそう考えている訳ではないのだが、ここで女性を見る意味が分からない。
そして正確には女性を見ているのではなく、自分の体形と周囲の女性の体形を見比べていることに気が付いた。そういえば・・・・・・一番最初に一緒にいたレイシアは、発育が悪くどちらかといえば子供っぽい体形のまま寿命を迎えた。その後転生して来たレイシアは、成長したら女性っぽい体形ばかりだった気がする・・・・・・つまりぺったんこって程ではなく胸が薄かったのが、転生後のレイシアはずっと大きい胸だった気がした。ひょっとして気にしていたのか?
僕としては胸の大きさで好き嫌いになったりしないのだがな~
そんなことを考えながら、それでもレイシアが望むまで成長を見守ることにした。進化合成を望まない理由はよくわからないままだな・・・・・・




