久しぶりの冒険
あの後、暗くなるまで訓練をして、食堂でミーティングを始めた。
「さて、そろそろ次の依頼を受けに行きましょうか」
「おー、そうだな、そろそろ行ってみるか」
ブレンダと、ランドルが乗り気でそういう。
「僕もLVを上げて、新しいスキルを手に入れたいな」
フェザリオがまだ未練があるように、カードを眺めながらそんな事を言った。僕がいないとスキルが増えていても、わからないのにな~
「では、いよいよ僕の華麗な剣さばきを披露する機会がやって来るのだな」
シリウスは余程双剣の相性よかったのか、自信満々でそんな事を言っている。前は渋っていたのにな。
そんな中レイシアは無言で、特に賛成も否定もしていなかった。
その後は雑談になって行き、明日の朝ギルドでクエストを受けることになったようだ。
翌朝、ギルドで依頼リストを確認するレイシア達。僕がいないので大物はもちろん外して、無難に渡されたリストから依頼を選ぶようだった。
今回の受付は、最初に依頼を受けたギルドの人だった。混んでいなければ見知った受付に行くのが、ブレンダの行動パターンかもしれないな。ちなみに僕はレイシアの影に潜みっぱなしである。
「この、オーガ討伐っていうのにしましょうか」
「相手としては、ちょうどいい感じじゃないか」
ブレンダの意見に、ランドルが答えを返す。
「それなりに大物っぽいが、僕の剣がどれほど通用するのかを確かめるのに、ちょうどよさそうな相手じゃないか」
シリウスも今日は気合が入っているみたい。
「討伐数は十体、そこそこ多いみたいですけど今の僕達ならいけそうな気がしますね」
フェザリオも、前向きに賛成する。レイシアは問題ないって感じで頷いて賛成を示していた。
「では、オーガ討伐の依頼をお願いします」
「こちらにサインをお願いします」
受付の人は素早く依頼表を渡して、サインを確認すると、笑顔でいってらっしゃいませと言った。
いつものようにギルドで携帯食糧を買い込み準備が整うと、乗合馬車で依頼場所近くの村へと移動して行く。ここら辺りはもうかなり手馴れて来て、さくさくと進むようになったな。
移動中もちゃんと警戒していたし、問題なく村に辿り着けた。
「しばらく休憩したら、早速森に入るわよ」
ブレンダの号令で、みんな思い思いに休憩をする。
移動の間の疲れがなくなったと判断したブレンダが移動合図を出して、パーティーは陣形を組んで森へと入って行った。
移動中はほどよく警戒しているのか、会話は少ない。がちがちでないので、たまにぽつぽつといった雑談なんかすることもある。あまりうるさくすると敵に気付かれることもあるので、緊張を持続させる為の軽い会話、適度に緊張をほぐす為の冗談なんかを言っていたりする。
こんなところを見るのも、冒険者として随分と成長してきているのだなって思うよ。
森へと入ってどれくらい経ったか、最初のオーガとの接触があった。
やって来たのはオーガ三体、身長は成人男性よりも、頭二つ分は大きな体をしたゴブリンって感じで、木を引っこ抜いて作ったのかなって思える棍棒を持っていた。
ガタイもいいのでちょっと怪力かなってイメージだね。相手はまだこちらに気が付いていなくて、どうやらこちらが先に相手を発見することに成功したようだ。
ブレンダがハンドサインで突撃を指示、レイシアが召喚していた狼二匹を突入させると共に、ランドルが正面からシリウスが側面に回りこんで突撃を仕掛けて行く。
「大地に穴を穿て、アースディグ」
相手がこちらに気が付いた辺りで、ブレンダがオーガを落とし穴に落とす。
といっても全身ではなくて動きを束縛するくらい、腰くらいまでかな?
三体がズボッて感じで穴に落ちる。狼のサポートを受けながら、ランドルが正面から引き付けて、横からシリウスが攻撃を加えて早々に一体を倒した。
「右からオーガが来ます」
フェザリオが新たなオーガを発見したらしく警告を発する。ランドルが右から来るオーガに対応する為に、そっちへと走り、入れ替わりでシリウスが狼のサポートで、穴にはまったオーガの相手をする。
流れとしてはいいペースだな。影からみんなを見ながら安心していられた。
新たにやって来たオーガ二体を倒すのにも、それ程の時間をかけないで難なく倒した後、討伐部位の回収をして行く。
その回収作業の最中、それは起こった!
地面に穴が開いて、パーティー全員が下に落ちてしまったのだった。
「ブレンダが、穴なんか掘るから~~~~」
そんなランドルの叫びが暗い穴の中に反響した。
どれくらいの深さの穴なのか、僕の目には闇を見通して回りがよく観察できた。
まずはみんなの無事を確認してみると、落下のダメージが思いのほかきつかった。ほぼ全員が重症って感じで意識もなく、このまま放置したらパーティーは全滅といってもいいかもしれない。
「ヒールオール」
とりあえず、全員の回復を優先させることにする。
幸い生命の属性、たぶん回復系統の属性は消えていなかった為問題なく回復ができる。
みんな意識は失ったままだけど、命の危険は無くなったことを確認できた。とりあえずはやれやれって感じかな。
でもって次は状況確認ってところか。落ちて来たと思われる天井を見上げてみると大体五メートルくらいはあるのかな、これは登ることはできないね。そして現在地は天然の洞窟っていうよりは、少し人の手が入っているところを見ると、遺跡だと思われる。
未発見の遺跡なのか、発見されたものなのかはわからないけれど、とりあえずは全員が目を覚ますまでは警戒していようかな。
周りの探索なんかは、彼らが起きてやってくれるだろう。どうせ探索しなければ地上には出られないようだしね。
レイシア達が目を覚すまでの間、やはりというか当然というか、モンスターの襲撃が何回かあった。
敵はどれも同じで、ステータスで確認したところ、レイスと呼ばれる死霊系だった。
ということはここにはゾンビやスケルトン、そういったモンスターが一杯いるのかもしれないな。
あるいは森の中で亡くなった人間が、レイスとなって地下にやって来ているのか、まあどっちにしろ探索が進むまでは詳しいことはわからないね。
「ここは、どこかしら?」
ブレンダが、目を覚ましたようだ。
「何も見えない。誰かいないの?」
辺りを探りながら、こわごわと声をかける。
他のメンバーは目を覚ましていない為に、彼女に答える者は誰もいないので相当心細いはずだ。しょうがないな、ここら辺りで合流してやるとするかな。何も見えない中で周りを必死で探る彼女を見ていて、声をかけてやることにした。
ほんとは、光くらい出してやろうと思ったのだけれど、光属性無くなっちゃったのでどうにもできない・・・・・・
ピンポイントで使えねぇ~
「とりあえずみんな無事だよ。今はみんな気を失っていて、起きているのはブレンダだけだ」
「バグ? 側にいたのね」
今の僕の声は、前より少しだけ男性っぽさが出た感じの声だった。若干聞き慣れない声だったようだが、僕が側にいたと気が付いたようでホッと安心したような声を出した。
「道を照らし出せ、ライト」
安全が確認されたからか、ブレンダが光の魔法を使った。
そういえば、ブレンダは光の属性を持っていたな。そしてやっと周囲の状況下確認できたことに安心していた。まあ僕は相変わらず影の中だから、どこにいるかわからないだろうけれどね。
「ここはどこかしら?」
「見た感じ、遺跡みたいだな」
ばらばらに倒れていた仲間を一箇所に集めた後、ブレンダがそう聞いて来た。何か、話していないと不安なのかもしれないな。
「とりあえず、出て来たモンスターは、レイスだった」
「敵が出て来ていたの? そうか、守ってくれてありがとう、バグ」
「目の前で死なれるのは、気分が悪いからな。ブレンダ達は平気なのだろうが」
ちょっとばかり意地悪を言ってやる。やられたことを思えば、これくらいは言ってやっても問題なかろう。
「あ、あれは進化であって、死んだり消滅したりって危険はないわよ」
うろたえながら、ブレンダがそう慌てて、言い訳をした。
「もう僕は主従関係ではない。こっちの了承もなく勝手に進化させる言い訳にしては、随分と軽い理由だな」
「ごめんなさい。もうしないわ」
「こんなことは一度たりともするなよ。馬鹿なのか常識がないのか、あんまりふざけていると捻り潰すからな」
怒気を孕んだ声でそう忠告する。これは誇張ではなく種族差なのか、それだけの力の差ができていた。怒り自体も今では結構薄れて、どちらかといえば言い訳する態度自体に怒りたい気分にさせられた。
「わかったわ、もうしませんごめんなさい」
一応は反省していることだし、この場はこれで終わらせておこうかね。
(メンタルバースト)
ブレンダとやり取りしている間にも、たまにレイスがひょっこりと出て来ることがあるので無詠唱魔法を撃ち込んで、即時排除していった。たまに僕が撃ち込む魔法によって、レイスが倒される音を聞きブレンダがビクビクしていたりするけれど、その都度レイスだって言って納得させる。
レイスは物理攻撃が効かないある意味厄介な存在だけど、闇系統精神攻撃の魔法は相性がいいようで、一撃で消滅させることができた。
メンタルバーストという魔法は、肉体には一切ダメージが無く精神にダメージを与える魔法なので、精神体の精神そのものを攻撃できる魔法は非常に効率よく相手を倒す事ができる。
まあ学生じゃない普通の冒険者だと光魔法でさっくり苦労しないで倒せたり、または神官辺りを連れて来れば浄化させることができるのかもしれないのだけれど、僕はその手の属性がないからね。無念を晴らすとか成仏させるとかはできない。
多少は可哀想かとも思うけれどそこまでの優しさは持ち合わせていない。まあ手加減しても襲って来るのだから結果的には倒すのが正解なのだろう。
「ここは、どこだい?」
次に目を覚ましたのは、シリウスみたいだった。
「どうやら地下に遺跡があったみたいよ」
ブレンダがそう説明している。
「未探索の遺跡かな? それなら大発見になるかもしれないが、まあ生きて帰れたらの話だろうね」
「ええ、そうね」
シリウスも当面は危険がないと判断したのかホッとしたようだ。たまにレイスがやって来るから、安全ではないのだけれどな。
それから程なく全員が目を覚ました。
みんなが状況の理解と、今後の方針などを話し合っている間、やって来るレイスを淡々と倒して行く。レイスさん経験値をありがとう・・・・・・
「それにしても、バグがいてくれなかったら、俺達ここで終わっていたな」
レイスが倒される音を聞きながら、ランドルは助かったとホッとしている。
「ですね。この高さから落ちてまともに動けない間に、レイスに襲われたのでは全滅は確実ですからね」
フェザリオも、その意見に同意した。
シリウスも、初めは格下扱いしていたから居心地が悪そうな表情で、確かにって同意している。
「ではそろそろ行動を開始しましょうか。これだけレイスがやって来ていますし、外にはゾンビやスケルトンなど不死系の敵がいる可能性が高いです。各自準備をしておいてください」
そう締めくくって、とりあえず今いる空間の探索から開始する。
人の手が加わった空間なのは間違いがないようだけれど、ここには生活感のようなものを感じさせるものはなくて、広場あるいは待機所みたいな感じの場所だったんじゃないかって予想できる。
人がいた名残のように、壁の一部には、落書きのようなかすれた絵がかろうじて残っているのが発見できた。残念ながらそれが何を描いたものかはわからなかったけれどね。待機所ではないかと思われたものとしては、この部屋のあちらこちらの床に残っていた、殆ど土にまで分解された藁の後があったからだった。
まあ調べてわかったことは、これくらいしかなかったよ・・・・・・
ちなみにみんなが探索している間、僕は相変わらずレイシアの影の中に入ったままだ。声はかけたけれどまだみんなには姿を見せてはいない。姿を見せると種族などの情報を与えてしまうので、一応警戒していた。
次は絶対に騙されないという、意気込みを感じて欲しい。
レイシアは、ちょっと前までの思い詰めていた感じが薄れて、どこかホッとした感じになっていた。
まだ姿を見せていないせいか、硬さみたいなものはあったけれどね~
部屋の中をあらかた調査しつくして、いよいよ外に出ることになった。
レイシアが呼び出した狼が扉の外の音を聞き分け、問題なければ下がって、新たに呼び出したゴーレムに扉を開けさせる。
このパーティーには盗賊系のスキル持ちがいない為に、罠などがあってもそれを解除や鍵開け等ができないのだ。なので、力押し!
扉を壊して通路へと出て行くゴーレムを見て、みんなも通路へと出て行く。
通路は人が一人通れるような広さのところや、二人くらい並べそうなところなどがあって、おそらく狭いところだけ削ったのだろうなって感じの曲がった道が続いていて、ところどころに横道のような穴が開いていた。
目に付く範囲では特に敵の姿は発見できず、とりあえずは安心できた。
「まずは脱出を優先するか、この遺跡を調査するかですね」
フェザリオが珍しく積極的な意見を言う。
「だったら未知の遺跡だ。危険がない限り調査したいところだな」
シリウスも、遺跡調査に積極的な感じの意見を出す。
「俺は調査自体には同意するが、せめて退路の確保はした方がいいと思うけどな。いざ強い敵にぶち当たった時も、直ぐに逃げ出せる準備だけはしておきたいぜ」
お、ランドルは中々優秀な冒険者になりそうだ。確か何かの小説なんかに、冒険者は冒険しないとかそんな話があった気がする。未知の場所では、臆病な程生き残れるってものだ。
「そうね。まずは退路の確保をして、それから改めてどうするか話し合いましょう」
「ふむ、了解だよ」
シリウスもここでは反対しないで、冷静にその方がいいかと判断したようだ。
ということで、とりあえず傾斜が上になっている方へと進むこととなった。
穴に落ちたってことは、上に向かえば出口があるだろうっていう判断だね。まあ必ずしも上になっている訳ではないだろうけれど、それ以外の判断材料は見付からなかった。
しばらく進んでいると前方から人型の、かくかくした動きの者がゆっくりと移動して来ていることに気が付く。
相手がこちらに気が付いているのかどうかは、ここからでは判断できないが動きからすると、ゾンビ辺りではないかな?
まだそれなりの距離があって、詳細はわからない。
みんなは、前方に何かしら動きがあるのはわかったみたいだけど、暗闇の為何がいるのかはさっぱりわからなかったようで、とりあえずの警戒態勢を取ることにしたみたいだ。
「何かいるわね、警戒を強めて慎重に進みましょう」
こちらからは向こうがわからないが、向こうに知性があるのなら、こちらの魔法の光で侵入者の存在には気が付いているだろう。
こっちの先制攻撃はできないが、せめて不意打ちは防がなければいけない。
ゆっくりゆっくりと互いの距離が狭まるにつけ、僕には相手がよく見える距離にまで近付いた。ぱっと見はゾンビ、だが体のあちこちにはでこぼことした物がくっついている。そのでこぼこした物からはたまに歩く振動によってなのか、粉っぽい物が周りへとばら撒かれていた。
なんとなく予想が付いていたけれど、念の為にステータスを調べて、相手を確認してみると予想通り種族名はマイコニッド、ようするにキノコの化け物であった。
初心者には警告が必要な相手だと判断して、彼らに相手の事を教えることにした。
「あれはマイコニッドだな。キノコの胞子を飛ばして相手が気付かなければ寄生して体を乗っ取るっていう、ちょっと厄介な相手だったと思う。胞子は毒に該当するのだったか?」
「バグは詳しいわね。了解よ、みんな聞いた通りとりあえず討伐、その後で胞子の対策をしっかりするわよ」
「わかった! 相手は植物だ、そこまで連携を気にする程じゃないな、がんがん行くぞ」
ランドルがブレンダの指示を受けて前に出る。
「力押しだね、まあ美しくないが了解だよ」
その直ぐ後ろにシリウスが続いて、あっさりとマイコニッドの群れを討伐することができた。
魔法を使う程でもなかった為、後衛職の三人は周りの警戒だけしていた。
こいつは討伐部位といえる物がない変わりに、キノコを素材として売ることができるので、キノコ部分だけを回収していくことになる。
それと今回は胞子対策としても、回収する必要がでてきた。レイシアが解毒剤作成用として一つだけ消費することになる。冒険で錬金術が役に立つとは、中々優秀なスキルだな。進化とか合成は余分だけれど・・・・・・
しばらく移動して場所を変えた後、休憩をかねて落ち着いたところで、レイシアが早速薬を作りみんなに配った。
「これで今回の討伐中は、またマイコニッドに出会っても胞子対策は必要ないと思うわ」
魔法の解毒だと、その都度解除する必要があるが、薬による対策ならば一定時間の抗体を作るようで、しばらくはこれで問題ないようだ。
全員の準備が整い軽い休憩が終わった後、また道なりに上を目指して移動を開始した。
その後も人型だけではなく、モンスターや動物などのマイコニッドが数体現れることがあったけれど、基本的に胞子を何とかしてしまえばただ歩いて来るだけの植物でしかなく、苦労することもなく進んでいけた。
そんなわりとのんびりとした探索がしばらく続き、少し緊張感が途切れて来た頃、狼がふと立ち止まった。
耳をぴくぴく動かしている姿を見ると、何者かが動く音を聞き取ったようだ。
ブレンダが改めて緊張したようにハンドサインで、ゆっくり前進って指示を出す。
前方にいたのは、オーガの群れだった。
既にこっちのことはばれていて、雄叫びを上げながら我先にと、こっちに向かって来ている。
幸いな事は、道幅がそれ程広くない為に、一体ずつでしかこちらに来られないってところか。まあその代わりに、こちらも一人ずつしか前に出られないけれどね。
程なくランドルとオーガが激突して、戦闘が開始された。
前に人がいる状態の為、こちらもランドルの支援がしにくくほぼ任せるしかない状態。
怪我などした時の為にフェザリオが直ぐ後ろに付いて、その後ろに何かあれば交代できるようにとシリウスが移動する。配置換えが終わったと思った時、後ろに下がらせていた狼が唸り声を上げた。
「後ろからもオーガが来たわ!」
レイシアがそれを素早く確認して警告を発する。
「シリウスお願い!」
それを受けてブレンダが直ぐに対応するようにと、シリウスにお願いする。
一応戦士だけど正面からの戦いでは多少の不利があるものの、シリウスは指示通り戦士として女性達の盾になるべく、後方に素早く躍り出る。
「任せるがいいさ」
まあ相変わらず自信満々で、かっこ付けていたけどね。
その配置換えを受けて、フェザリオもシリウス側の後ろへと移動する。
盾持ちの戦士と軽装備の戦士なら、補助しなければいけないのは軽装の方だ。
ランドルには、がんばって耐えてもらわないといけないだろう。
ブレンダがランドルの後ろで隙を見ては魔法を叩き込みに行って、中央でレイシアがどちらかが危険になった時に、ゴーレムを呼び出せるよう待機した。
正面のランドルとブレンダは、数が多いものの上手く立ち回っていて手助けの必要はなさそう。盾強打のスキル・・・・・・ようはバシュといわれる相手を気絶、脳震盪の状態異常にするスタンという状態にする技で敵の動きを封じたところへ、ブレンダが魔法を叩き込んで相手を倒すという連携で安定した戦いをして行く。
ブレンダとランドルのMPが続くうちは問題がないだろう。
ちなみにランドルの使う技で消費するのもMPだった。初めはSTっていうスタミナを消費すると思っていたのだけれどな。MP自体がマジックポイントじゃない可能性もあるな。
さて問題は後方のシリウスの方だ。
攻撃力、殲滅力ならランドルより上なのだけれど、無傷で敵を倒すことはできないようでたびたび敵の攻撃に晒されて、苦痛の声を上げていた。
だけどここで避けたり逃げたりはできない。避ければ後ろのフェザリオが危険になるし、下がれば押し込まれて、前方で戦っているランドル達も戦いに集中できなくなってしまう。
シリウスは、苦痛に耐えながらフェザリオの回復を受け戦い続けた。
「レイシア、後方オーガの後ろにゴーレムを」
「わかった! 召喚、ゴーレム!」
一歩後方へと移動してゴーレムを呼び出す。ゴーレムは呼び出されると同時にレイシアから指示を受け、シリウスと戦う為に背中を向けていたオーガに殴りかかった。
ガッ
オーガが苦痛の呻き声を上げて後ろを振り向く。
「ゴーレムに命令。背後から来るオーガを攻撃」
さらにレイシアに指示を出す。振り向いたオーガはシリウスに任せれば倒せるだろう。倒した後は少し休憩できるはずだ。
その間、ゴーレムには後ろにいるオーガの相手をしてもらうのがいいだろうという判断だ。
ゴーレムはレイシアの指示で振り返ることなく武器を持ち替えてそのままオーガに殴りかかる。ゴーレムは人間じゃないので、肘が逆に曲がらないとか首が180度回らないとかないので、いちいち振り向く必要性が無く、また特に裏表もない為にロスも少なく背後に攻撃を続けることができた。
「助かったよ、ありがとうレイシアさん」
余程殴られたのが堪えたのか、シリウスが弱々しい笑顔を向けながらお礼を言って来た。まあ、僕へのお礼ではないけれどそれはいいや。
しばらくその状態での戦闘が続き、ゴーレムが破壊されそうになると送還。ゴーレムの抜けた穴をシリウスが押さえて、その背後に別のゴーレムを召喚、フェザリオは、戦士二人に回復を飛ばすという感じで戦闘を続けて行った。
結構な時間をひたすら戦い続け、これ無限沸きしていないか? って思い始めた頃やっとオーガの群れを倒し終えることができた・・・・・・




