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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第二十六章  趣味
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隣国からの刺客

 特殊な方法ではあるものの、経験値の稼ぎ方が判明したので、頑張って経験稼ぎを始めた。それから半年、特に事件らしいものは起こらず平和な時間が過ぎて行ったので、おかげでこちらは経験稼ぎに専念することが出来る。一応一ヶ月前くらいに精霊キメラが精霊界に送り込まれて来たものの、眷属達で何とか対処出来たみたいだな。しかし肝心のどこから送り込まれたのかが、わからずじまいだったそうだ。

 眷属には申し訳ないと謝られたけれど、こればかりは仕方ない。特に被害があった訳でもないので、次に頑張ってもらうことにして引き続き精霊界の事は任せている。最悪また巣を作られなければいいのだしね。

 そして再びこの日の夜、精霊キメラが精霊界に送り込まれて来たそうだ。前回役立つ情報を手に入れられなかったことが、相当堪えていたのか今回は頑張ってくれたようで、ある程度絞り込めた予測地点を報告してくれた。その情報によれば、おそらくサーゼルウト国という隣国が一番怪しいことがわかった。

 この国は、かつてフォーレグス王国の周囲にあった国々が連合を組んで襲い掛かって来た際、逆に撃退したところ国力が低下して軍事国家だったサーゼルウト国に滅ぼされ併合された経歴を持っている。その後難民を利用して大義名分を作り、ちょっかいをかけて来た国でもあったので、フォーレグス王国の戦力などもある程度なら把握出来た国でもある。

 まともに戦っては勝ち目がないと考え、今回の騒動を引き起こしたのだと考えれば、いろいろと納得することも出来るな。問題はサーゼルウト国のどこに、精霊キメラプラントがあるのかということだな。ある程度情報が絞り込めたので、精霊キメラの反応を諜報パペット達に調べさせる。すると一日がかりで大まかな場所の特定が完了したようだ。

 プラントがある場所は、他の国との緩衝地帯・・・・・・つまりサーゼルウト国の領土内ではなく、一応自国ではなく国外扱い出来そうな場所の地下に造られているようだった。これはもし見付かった時の言い訳用で、こんな場所に造ったとみるべきだろうな。つくづく謀略の類が好きで、そして用意周到といえばいいのだろうか・・・・・・用心深い国だな。

 まあ、こっちにはそんなもの関係なく攻めるけれどね・・・・・・喧嘩を売られて、まともに付き合ってやる必要を感じない。


 「ヴァルキリー。敵プラントに奇襲を仕掛け、精霊キメラを殲滅する事は可能か?」

 「バグ様、相手の数にもよりますが、奇襲が成功したのなら、ある程度可能かと思われます」

 絶対に出来るとか、任せろって言わないだけ、頼れる回答だな。これならば出来る範囲で上手く立ち回ってくれるだろう。

 「アルタクス、チルナ、モッポ、マークス。傭兵部隊を出動させて、ヴァルキリー達の支援を頼めるか?」

 「問題ない」

 「バグ様、任せて」

 「できる」

 「頑張る」

 ヴァルキリー達だけでは必要人員が少な過ぎて、漏れがある可能性がある。そこで以前趣味で傭兵部隊を育てていたアルタクスと、友好種のリーダーとして創った眷属達に支援を頼むことにした。精霊キメラが大量に襲って来た時の為に、超遠距離狙撃の魔道具を、ある程度大量に生産していたかいがあったというものだな。後手に回らなかったことを考えれば、これはかなりこちら側に都合がいい機会だろう。

 これでおそらく打ち漏らしは出ないのではないだろうか? まあ何事にも例外はあるだろうが、おそらくは大丈夫だと考えておこう。ただ、呪いは距離や時間に関係なく発動するので、対抗処置はしておいた方がいいな。自分が呪いのスキルを扱えるようになって、いろいろと対抗処置を考えて来たのだが、今だに完全には防ぎ切れる自信はない・・・・・・ただ一つ絶対に有効な対抗処置があるのを発見していた。

 それはより上位の呪いを受けている場合、下位の呪いは弾かれるという特性である。二重に呪われる事はありえないってことだね。そして何が上下を決定付けるのかといえば、想いの強さだ。この場合の想いとは、怨み妬みという念だけではなく、愛や希望、願望などといった正の感情も含まれる。

 「ギアス、一日一善!」

 そこで僕はフォーレグス王国に関係する全てに正属性の呪いをかける事にした。正なのに、呪いっていうのは変な感じだろうが、例えば善行などを強制したとしても、そこに他人の意思が介在し強制されたとするのなら、それは呪いであると僕は考える。今回フォーレグス王国に張り巡らせた魔道具により、正の感情を集めて強化したこの呪いは、一見すれば何てこともない善行を行えという簡単な指示にも思える。しかし、もしこれが病気になって寝込んでいる者に課せられた指示だとしたらどうだろうか?

 起き上がるのさえ辛い状況で、人助けをしろというその指示はまさに呪いそのものと言ってもおかしくはない命令だろう。だからこそ呪いとして成立する力となる。まあはっきりいって、正の感情より負の感情の方が大体強いのが普通なので、どこまで効果が及ぶのかは不明なのだが、フォーレグス王国中に溢れる正の感情を集めて強化した呪文なので、人間一人の怨みくらいなら楽に弾けると考えている。

 ただ時間や場所、そういうものを易々と越えるのが呪いの力で一体どこの誰に、あるいは土地とかに呪いがかかるか特定できないし、全体を包むように呪文をかけたので、上手く行くかどうかは自信が無かったりする。一応持てるSPは全て注ぎ込んだのだが、中には百年生きた生き物の怨みを、魂を捧げて呪いに注ぎ込むとかそういう強い怨念もあるからな~。勝算ははっきりいって、あまり期待しない方がいいだろう。あくまでも保険って感じだった。

 呪い発動前に、殲滅して欲しいところだなー


 とりあえず、眷属達に精霊キメラの相手を任せると、こちらはサーゼルウト国そのものへの制裁をすることにした。こうしている間にも、SPは回復して行っているので、国を落とすくらいは簡単に終わるだろう。司書パペットから排除対象の情報を貰い、さっそく魔法で攻撃すると今までさんざんちょっかいをかけて来ていた連中を、一掃することが出来る。これで精霊キメラの方に変な命令をする者もいなくなったので、呪いの被害も抑えられたのではないだろうか?

 まだSPが回復し切ってはいないけれど、ヴァルキリー達の様子を見に向かった。

 今回排除対象は、地下深くに潜ったりしていたのでいつもの誘導弾ではなく、座標指定のアースボムによって、撃破している。おかげで精霊キメラのプラントで働いていた職員達も根こそぎ排除出来ていたので、ヴァルキリー達の仕事も邪魔されることなく迅速に進んでいるようだった。サポートに回っている傭兵団の攻撃も、特に問題なく一方的に行われていたので反撃らしい反撃もなく、一方的に攻撃して掃討する事に成功したようだな。

 作戦が終わると、一応後始末として忍者パペットに精霊キメラ関連の資料などが残っていないか探索を指示して、残っていた場合はその処分をお願いしておいた。

 これで結構長い間続いていたちょっかいも、無くなったかな? 精霊キメラの技術が、他所に流出していなければこれで終わりだろうけれど、まあ油断だけはしないでおこう。後、こちらで掛けた呪いの解呪をすれば、一件落着ってところだけれど、今はSPが足りないのでまた明日だな~


 翌日さっそく解呪をした後リアル側の問題が片付いたので、日本側の様子見とか眷属達との交流、後は経験集めをすることにした。後、日本ほど仕事仕事って感じではないので、そこまでイベントに拘ることはないと思うけれど、国民が楽しめるようなイベントを毎月何かしら考えたりしてみるのもいいかもしれないって思い付く。そういうイベントがあれば、もっと眷属とかと楽しめたのだよな~

 収穫祭とか新年会、文化祭とかいろいろやって来ているのだが、一般の者に暦などを教えていないので、こちらが適当な時期に開催しているのだけれど、もうそろそろしっかりと決めたりして適度に楽しめるような環境を作って行くのがいいかもしれない。

 まあ、フォーレグス王国は今までもかなり緩い条件で生活出来るように調整されているけれど、みんなが楽しめる企画とかは日常生活をより飽きさせないように、不満なく暮らせるようにする為に必要なものだろう。

 まあそういう行事はホーラックスというか、司書パペットが管理していてくれるからアイデアとかを提示して行けば、大丈夫かな? 不満が出ないようにだけ一応注意しておいてもらおう。友好種族の方は、特に気にせず毎日楽しそうに暮らしているようだけれど、ある程度知能がある者はこの日常に慣れて来ると、何かしら不満を抱くものだからね。

 特に人間は・・・・・・

 とりあえず学校と同じで、体力が有り余っている者の為に体を動かすイベントと、頭を使う者の為に文化的なイベントを用意してみよう。ある程度得手不得手があるので、スポーツの種目を決めてオリンピックみたいな競技をさせるのもいいかもしれないな。

 頭を使う方は、せっかく作ったのでサバゲーの指揮官みたいなものをして、リアル戦略ゲームみたいなものとか、普通に学術論文の発表とかさせてもいいかもしれない。

 眷属達と会議でもして、そういう国を挙げてのお祭り企画を考えて行くのもいいだろう。


 イベントについて早速みんなで会議をして、一度整理してみる事にした。

 まずは一月の新年祝いだろう。二月はバレンタインってイメージなのだが友好種族の様子を見てみるに、別に好きな相手に告白出来ないみたいな連中はいそうになかった。こう好きだって思ったらもじもじしていないで、直接本人に好きだーって感じで突撃している感じだ。

 どちらかといえば知能の高い者ほど、上手く告白出来ていない様子だな。いろいろと考えてしまうのだろう。だからフォーレグス王国だけに限って言えば、そこまで告白イベントを作らなければカップルが出来ないというような環境ではないみたいだ。それならば、普通に感謝を伝える日でいいかもしれないって感じで、恋人はもちろん親や友達、教師などの尊敬できる人、職場の関係者等々に感謝する日っていう感じのイベントを作ることになった。まあ内容はまた二月が近付いてからだな。

 三月は日本では雛祭りなどがあったけれど、わざわざ男女で分ける必要もないだろうからまとめて、子供の日みたいな感じにすることになった。これは子供にお菓子とかおやつとかあげる日でいいだろうな~。ある意味ハロウィンだな。

 四月は花見とかがいいだろうが、この世界は別にそれ程四季みたいな気温差が無い。当然冬で植物が枯れてしまうって現象も起こらないので、特別花を見ましょうみたいな感傷を持つこともなかった。まあ普通に花が好きって感じの個性はあるだろうけれどね。

 しかし情操教育にもいいので、花を綺麗だって感じで鑑賞出来る機会は作ってもいいかもしれないよな~。言われてみれば、国内に薬草や以外の花屋さんは存在していなかった。こっちの世界で花屋といえば植物専門の薬草やか、野菜などの種や苗を扱うような店だけだった。

 せっかくの機会なので、花を見て綺麗だなって思う日って感じのイベントでも作ってしまおう。日本の様な酒を飲んで騒いじゃうと肝心の花を見ないので、花を一輪でもいいので買って飾ったり団子を食べる感じでいいだろう。


 五月といえば、こどもの日か・・・・・・しかし三月にイベントを作ってしまったのでこちらは体育の日とでもしておこう。オリンピックのように色々なスポーツや対人戦など、とにかく体を動かす競技をピックアップして、みんなで競ってもらおう。他国と勝負とかしたら盛り上がりそうなのだが、フォーレグス王国は人間以外の種族が一杯いるので、条件を同じに出来ないのだよな~。だから国内の町とかの対抗戦みたいな感じだと楽しめるかもしれないな。

 六月は・・・・・・そういえば梅雨があったり結婚の季節とかいろいろあったように思うが、特にイベント事とかは無かった気がするな~。こちらの世界には特に雨ばかりが降る日などないので、ここにどんなイベントを持って来るのがいいか悩みどころだ。

 そうだな・・・・・・多目的シートでいろいろ情報を見ていて目に留まったのは、水泳パペットの趣味だった。梅雨とか水のイメージがあったこともあり、水遊びのイベントやアイテムなどを研究している趣味を取り上げる事にした。何かしらの水遊びのイベントをすることにしよう。これも内容はまた六月が近付いて来たら考えればいいや。

 七月は七夕が有名かと思うが、この世界では特に関係のないイベントだろう。願いを叶えるとか眉唾というか妄想だろうしね。そうだな、夜のイベントということで花火大会でもここに入れておくかな。せっかく花火職人もいる事だし、こういう機会にでもやらないと勿体ないし、いつも特に日程を決めずにそろそろやってみるって感じのノリで上げていたので、ここら辺りで時期を決めてしまってもいいだろう。

 八月は墓参りだろう。だが大体毎年この時期にコボルト達の収穫祭を開いていたので、八月は収穫祭を開くことにする。

 でもって九月、八月の墓参りイベントはこっちに持って来るかな。

 この世界ではあまりこういう死者を弔うとかそういう習慣はなさそうだけれど、せっかくなのでそういう機会を作ってやるのもいいかもしれないな。モンスター達は結局弱肉強食なので、死んだらそれで終わりって考えの者達が多い。今のフォーレグス王国のような明確な親子関係とか、お互い襲い合わない関係とか今までなかったので、彼らにとっては新しい概念になるだろう。一応お墓自体はこの国にも存在しているのだけれどね。この世界は明確にアンデットという存在がいるので、どちらかといえばアンデットにしない為の場所というか、逆にアンデットを作る場所ってイメージの方が強そうだ。

 人間は一応墓を建てて死者を悼むくらいはするらしいが、毎年墓参りに来るっていう程熱心ではないみたいだな。未練があるのなら神官が払ってしまうし、それでなくても転生の概念が日本より強く、魂のまま漂っているなんてことはこちらの世界ではないみたいだった。ようは幽霊として出て来るのならば、アンデットのゴーストって感じの敵扱いになってしまうのだそうだ。

 あまり死者を弔うって習慣が人間にもないってことだね。あるとしたら人間が死者に対して思い入れがあるくらいだ。感傷から墓を建て話しかけたりする感じ。

 まあフォーレグス王国では命を大切にしましょうって感じや、先祖に感謝の日って感じでいいかと考える。


 さて十月、読書の日っていうのは地味な感じがするので、頭を使った文化的なイベントを開く日にしよう。これも内容は実際にその時が来たら考えればいいな。

 十一月、年配者を敬ったりとか働く人に感謝とかそういうイベントでいいかもしれないな。そんなにセコセコ働いているイメージではないけれど、まとまった休日を過ごせばいいかもしれない。夏休みみたいなものだろうか? 国民みんなが揃ってのんびりする休日イベントって感じかもしれないな。

 十二月、年末出しクリスマス的なイベントをここでするといいな。後フォーレグス王国では一月が入学なので、一応卒業シーズンでもある。義務教育の方の学校の話だけれどね。芸術学校の方は入学こそ一月だけれど、卒業は各自になるので卒業シーズンは存在していない。

 まあいろいろ締めくくりの月ではあるな。

 イベントは月に一回しかやったら駄目とかそういうルールもないので、一応こんな感じで行事をするってことにしておこう。なんか遊んでばかりって感じだけれどね・・・・・・


 その後もう少し詳しいイベント内容をみんなで考えながら過ごしつつ、とりあえず日本側の様子も窺ってみた。

 余震も一年前からなくなって、やっと安心出来たのか一つの町に二千五百万人も集まっているのは、食糧事情とかいろいろと大変らしく、段々と周囲に活動地域を広げ始めたようだった。おそらく生き残った日本人の末裔達は、大陸の大きさをまだ把握していないだろうけれど、今いる人数で考えればかなり広大な広さがある。いつまでも固まっていては勿体ないだろうね。

 今のところモンスターもほとんどいないので、一気に生活圏を広げて行って欲しいものだ。ある程度落ち着いたらモンスターを配置して行く予定だからね。

 何というか箱庭ゲームのようだな・・・・・・まあ、まだたいした魔法も使えないので、モンスターのランクもかなり低めから始めて、徐々に強くして行こうと考えている。そこら辺りはGMをしているみんなと相談しながら進めて行こう。


 精霊キメラの脅威がなくなったことで、僕達の生活は日常的なのんびりとしたものへと変わった。毎月何かしらの行事イベントを開催しつつ過ごして行くと、月日が流れてベビーブームで増えた子供達が冒険者として活躍するようになったのだけれど・・・・・・ただでさえそこまでモンスターがいなかった国内から、友好種以外のモンスターが絶滅してしまったようだった・・・・・・これは喜べばいいのか、やり過ぎだと考えればいいのだろうか、どちらなのだろう?

 とりあえずわかることは、フォーレグス王国内だけで考えれば、もう冒険者は必要が無くなったということだろうね。冒険に憧れる者にとっては住みにくい国になってしまったかもしれない。とりあえずワクワクドキドキ出来るような冒険は無理だろうが、経験集めなど強くなりたい者を育成する為に、国内に何か所か人工ダンジョンを造って、冒険者達に経験を稼がせることにした。

 せめて何かあった時に自衛するくらいの力は残しておきたいからね。まるっきりの武力放棄は望ましくないだろう。まあ戦争が起きれば、僕達が対処するのでそこまで武力は必要ではないけれどね・・・・・・


 そして世の中の時間がそれくらい進んでいるということは、レイシアというかエクライもかなりの高齢となってそろそろ寿命を迎えようとしていた。見た目は不老の指輪によって若々しく保っているのだけれど、魂の寿命が来ているようで、最近はあまり目を覚まさず眠り続けるようになっていた。

 「そろそろレイシアとエクライとはお別れなのだな」

 「そうなるな」

 眠り続けるレイシアを見守りつつ、ビゼルがどこか寂しそうに呟いた。絆のスキルが復活したとはいっても、再び転生したらまた消える可能性の方が高い。次に記憶が戻るのはいったいいつになるのか・・・・・・こればかりはいくら本人が強い想いを抱いていても、想い通りにはいかないだろう。それがわかっているだけに、ビゼルも別れを惜しんでいるのだろう。

 僕も再び絆が蘇っていたし、レイシアと離れ離れになるのは嫌だと思うのだが・・・・・・レイシアは人間であることを望んでいるのだろう。メリアスの夫であるフィリオのように、人という種を捨て、ずっと一緒になる道を選択はしなかったからな。

 愛情がその程度だとは考えてはいないけれど、出来れば転生後も記憶を持ったままで再会して、でもってずっと一緒にいられることをついつい望んでしまう。ひょっとしたらレイシア自身も、自分の気持ちを確かめたくて、人間のままでいる道を選んだのだろうか? ってこれは考え過ぎかもしれないな。

 前世の記憶を想い出し、やっと再会出来たけれど、次が来るのかどうかなどわからないからな。今ここで人という種を捨てて、一緒にいる道を選ばなければ今後一生、レイシアとは一緒にはいられない可能性が高い。そういう可能性をレイシアは理解していないのかもしれない。いずれにしても、レイシアが望まないのであれば、強制的にレイシアの人生に介入する事は僕には出来なかった。

 僕に寿命はおそらく無いので、次の再開が何千年先になったとしても、待ち続けようと腹も括ったしね。まあ、それにビゼルもいてくれるので、転生して来たレイシアが、再び僕を認識しなくなったとしても耐えて行けるだろう。

 レイシアが目覚めなくなったのは、そんな状態が二ヶ月程続いた後だった。モンスター達には葬儀みたいな風習もないので、レイシアの葬儀は身近な関係者だけを呼んで行った。その中には魔王軍の生き残りも含まれている。あいつらも、一緒に過ごして来た時間はかなりのものだったので、普通にレイシアの事を覚えているのだな。

 外見が変わっていたので混乱していた者も当初はいたのだが、エクライとして生きて来た人生の中で、再び仲良くなってこうやってその死を悼んでくれる程、仲良くなっていたようだ。


 それからしばらくの間、僕だけでなく眷属達もどこかしんみりした雰囲気になっていた。これは僕の感情が影響を及ぼしているのか、それだけレイシアとの付き合いが深かった為なのか・・・・・・レイシアとの別れも今回で二回目なので、以前程衝撃は受けていない。眷属達の為にも早く気持ちを切り替えて行かないとなって考える。

 事件みたいなものは起こっていないので、全然忙しくはないのだけれど、見て回るところならいろいろあるので出来るだけ仕事をして過ごすことにした。まあやることが無くなったら経験集めをするのもいいだろうしね。

 そして今日はビゼルとアルタクス、ビフィーヌと一緒にゲームへとやって来た。そこまで熱心にゲームをしていた訳ではないのだが、これでも僕達パーティーはトッププレイヤー集団の一員でもあったので、応援要請を受けていた。

 今日は未到達区域にいるフィールドボスを、トッププレイヤー達と臨時でレイドパーティーを組み、攻略する予定になっている。

 運営側の情報としては、このボスを撃破した先に日本側と繋がるダンジョンの入り口が存在しているのだ。ダンジョンは僕が造ったものなので、ある程度の情報も保有している。こちら側から中間地点にある両世界の門までに二百の階層が存在し、日本側にも同じだけの階層が存在している。合計四百の階層と両方の世界を守護するボスが二体存在しているのだ。

 攻略するのにはかなりの手間暇がかかることだろう。

 ちなみに今回相手をするフィールドボスも、ある意味世界を司る守護ボスみたいな位置付けなので、どう頑張っても一パーティーでの攻略は出来ない程の強さを持っている。だからトッププレイヤーパーティーが複数集まってレイドパーティーなんてものを作る必要性があった。

 初めはどちらかといえば運営の立場である僕は、この戦いに不参加の予定だったのだけれど・・・・・・どうやらトップ集団達には元から戦力として数えられていたようで、どうしてもと言われて断り切れなかった。

 「なんだかこういう大規模な戦いは、久しぶりだわ」

 「そう言えば確かにそうかもな~。LVもかなり上げ過ぎている気がしたし、リアルの方でいろいろやることがあったからあまり冒険とかしていなかったからな」

 まあ、レイシアがいなくなって、あまりゲームをする気分でもなくなったっていうのもあるしな。レイシアが記憶を取り戻してエクライと一緒にゲームをしていたけれど、僕らパーティーとのLV差が激し過ぎて、一緒に冒険っていうのは難しかったっていう事情もある。やっぱりLV差があるパーティーで冒険っていうのは、お互いに上手く行かないものだ。


 大手のトッププレイヤーと簡単に打ち合わせをすると、僕達は基本好きに動いていいと言われる。まあこれは初めからわかっていた事だ。どうしてかって言うと、パーティー人数の問題とでもいえばいいのだろうか?

 僕のパーティーは全員で四人なのに対し、他所のパーティー人数は十人以上。多いところは五十人くらいでパーティーを組んでいたりする。

 日本で経験して来たMMORPGでは、最大パーティーメンバーは最大で八人くらいが一番多い数だったかな。少なければ三人っていうゲームもあった。システム的にあまり多いとサーバーに負担がかかったり、扱い辛かったりするのだろうな。

 まああまり一杯パーティーメンバーを入れると、仲間の体力表示やバフ状態などで画面が埋め尽くされてまともに移動すら出来なくなったりしそうだしね。このゲームも一応メンバーの体力などが表示されたりしているけれど、意識すれば表示、邪魔だと思えば勝手に消えてくれるので、その点どれだけメンバーが増えたところで障害にはならなかった。だから五十人とかでパーティーが組めたりしているのだろうな~

 それに普段からそんな大人数を組むこともないだろうし、レイドパーティーを組めるゲームすら珍しいところだった。それに対しこのゲームはほぼリアルと変わらない自由度を持っている。現実ならば確かにパーティーを組むのに人数制限などないので、このゲーム世界でも出来て当たり前って感じで実際に組めたりする。

 まあパーティーを組めたからといって経験が流れる訳でもないので、あまり恩恵は無いのだけれど・・・・・・仲間と会話が出来る、所属がわかりやすい、それぞれの状態を知りやすいってところくらいだろうか? これだけわかれば十分パーティーを組む利点だな。とにかく、各ギルドでまとまってパーティーを組んでいるので、少数メンバーのこちらは好きに遊撃隊として行動しろってことだった。

 これはこちらも好き勝手に動けるので、助かる提案だったりするけれどね。

 「久しぶりだから、武者震いして来たわ!」

 ビゼルはそう言って早く戦いたいと、そわそわしている。こういうところは魔族だなーって感じだな。最近のビゼルの行動を見ると、どこにでもいそうな女性にしか見えなくて、魔王だってことを忘れそうになるよ。凶暴な面は一切なく、一緒に料理を作ったり腕を組んで出かけたり。見た目が人間そのものだからどこにでもいそうないいところのお嬢さんって感じの女性に見える。気品みたいなオーラがあるので、どこぞの貴族にも見えるかな。まあレイシアがいなくなってからは近くに寄って来るのだけれど、イチャイチャした感じではないけれどね。

 さてこっちは久しぶりに前衛をするので、上手く出来るか少しだけ不安がある。アルタクスは普段通りでビフィーヌは・・・・・・全幅の信頼を寄せているのか? こっちを見て微笑んでいたりするな・・・・・・

 みんなそれぞれに準備は完了しているようだ。

 「そろそろか」

 「うむ。わらわ達なら問題ないわ!」

 フィールドボスは既に視界内に見えていて、超ド級の巨人が平原の真ん中に胡坐をかいて座っているのが見えていた。姿形はギリシャ神話に出て来そうな薄布を巻き付けただけのマッチョ男性って感じ。能力もまるで神の如き圧倒的な能力を持っている敵だった。


 「みな準備はいいか・・・・・・それでは突撃!」

 現在トップの戦闘ギルドであるギルドマスターのカカマがそう号令をかけ、僕達はフィールドボスに向けて進軍を開始した。ボスの索敵範囲に入った為か、巨人が動き出し立ち上がろうとしているのが遠くからでも見て取れる。ただその動作だけで地震のように揺れる大地に、数人のプレイヤーがバランスを崩して地面を転がったのがわかった。相当な質量があるようだな~。その後こちらだけでなく、巨人もこちらへと向かって来るのが見えた。

 僕のキャラクターはスライムなので、元々足は無くどれだけ地面が揺れても特に影響を受けずに移動出来る。まあ歩くというか這いずると時間がかかるので、適当に触手を伸ばし、触手の先へと体を引き寄せて移動するのだけれど・・・・・・その移動方法に、ビゼル達も巻き込んでいるので、僕のパーティーは普通に最前線へと躍り出ていた。

 他のパーティーはバランスを崩していない者もいるのだが、全速力で向かうといったことはさすがに出来ていないみたいだな。ただ、これは地面を走る者に限っての事で、空が飛べる者は僕より早くボスの下まで移動出来るだろう。しかし、大抵の場合、空を飛べる者という種族は身軽な者の方が多い。つまりボスに対して盾役を務める事は本来の仕事ではないのだ。役割が違うので、さすがにこればかりは文句が言えないところだろうね。

 それならば盾役を抱えて飛べよって言いたいところだけれど、ボスを相手にそんなことをすればおそらく叩き落されて即死だろう。防御力が低い飛行種族に、そんな無茶は言えないだろうな。まあそんな訳で僕達が現在トップで突き進んでいた。

 「バグよ、このまま行くとわらわ達が一番乗りになりそうだわ」

 「だな。まあ後で変わってもらおう」

 「主さま、攻撃が来ます」

 こっちはいたって平常通りボスに向かって移動して行った。

 そして巨人の踏み付け攻撃に対し、接近スキルを発動して逆足のところにまで移動すると、さっそくビゼルとアルタクスが攻撃を仕掛け、ビフィーヌがデバフを施して行った。僕は盾役なので、みんながダメージを受けないよう位置取りとか攻撃を遮断したりなどするのが役割だ。まあ今は忙しくないので、こちらも見ているだけでなく攻撃に参加して行くけれどね。

 巨人はこちらを見失っていたので、こちらパーティーの攻撃をまともに受けていた。おそらくは蚊に刺された程のダメージしかいっていないと思われる・・・・・・これは弱点探しからしないといけないだろうな~

 属性攻撃から始め、ダメージが効きそうな場所を探していろいろと攻撃して行くことにしたのだが、そもそも攻撃が効いていそうな様子が無い感じだった。これは本格的にLV不足とか、そういう感じかな? それかこれだけの体格差があるのなら、体内に入って攻撃って方法が効くのかもしれないな。まあ、それは一番最後の方法だろうね・・・・・・

 後は何かしらのギミックがあるのだろうー


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