精霊キメラの脅威
精霊のキメラが、何者かの手によって作られたものだとしたら、今後も出て来るかもしれない。対策としては大元を潰したいところなのだが、奴は精霊界を通じてこちらにやって来たようなので、精霊界のどこかで作られたのかどこかから精霊界に送られた後、こちらに出て来ていたのかがわからなかった。そうなると、出て来たキメラに対抗する方法しかないみたいだな~
幸い狂っているようだったので、知能はそこまで高くはない。呪いの特性が厄介なので、戦う方法をちょっと工夫しないときつそうだけれど・・・・・・おそらく相手に気が付かれない遠距離からの攻撃で、仕留めるのがいいだろう。後は被害が出ないよう、早期発見だろうな~
そうだな属性が混沌なので、聖属性を持つヴァルキリー達に対処できるような狙撃銃でも作っておこう。昔レイシアに作った狙撃銃をさらに改良して、超長距離から攻撃できるように改造し、普段から僕の魔力をエネルギーとしてチャージさせておけば、十分に対処できるだろう。早速狙撃銃を開発して、ヴァルキリー達に装備させることにした。
まあ相手が大量に出て来たら、焼け石に水って感じなのだろうけれどね~
できる事はそこまで多くないので、これ以上今は思い付かない。何か元凶を探る良い手があればいいのだが・・・・・・まだ出て来たのは一体だけだったので、フォーレグス王国が狙われたとも限らない。しばらく様子見をして情報を集めて行こうと考え、再び眷属達との友好を強化する為に、それぞれの趣味を見に行くことにした。
次はホーラックスの副官であるメリアスかな? 彼女の場合はフィリオと一緒にいるので、そっとしておいた方がいいのだろうか? しばらく悩んでみたけれど、一応様子だけ伺ってお邪魔虫っぽかったら次に行くことにしよう。
「メリアス。一応お前の趣味を見に来たのだが・・・・・・フィリオもいるので遠慮した方がいいか?」
メリアスは今現在、城ではなくフォーレグス王都内で、一軒家を借りて家族で生活をしている。家族構成は結構昔に長女が生まれ、ちょっと前に二番目の娘が誕生したので、四人家族になった。生まれてきた娘達の種族はメリアスと同じサキュバスで、長女の方は最近、いい男が少ないって言って騒いでいるのだそうだ。
「バグ様いらっしゃいませ。どうぞ入ってください」
「お邪魔する」
「失礼しま~す」
僕達は挨拶もそこそこに、家の中へと入って行った。というか、僕が連れている連中も女性ばかりなのだが、ここでも女性比率が高かった為、何とも居心地が悪い気がするよな・・・・・・。家にいたフィリオもそう思ったのか、僕の隣にやって来ていた。こちらのメンバーはレイシアにビゼル、それからビフィーヌなのだが、この家にいる女性も三人のサキュバスなので何とも居心地が悪い・・・・・・
それに家に入ってからこちらを見る長女の目が、獲物を前にした猫のように見えて、何とも落ち着かない気分にされた。こちらからしたら、メリアスは娘のようなものなので、その長女ともなると孫のような存在になる。見た目若いままだろうが、さすがに孫を相手にどうこうなるつもりは毛頭ないので、そんな目で見ないで欲しかったよ。
結局趣味は抜きにしても、レイシア達が女性同士会話を弾ませていたのでそのまま雑談などをして過ごすことになった。
翌日は家畜などの管理を任せているイオルドのところに行くことにしたのだが・・・・・・彼の趣味は釣りなのだそうだ。これまた調教とかそういう僕の与えものと、まるっきり関係のない趣味に行ったものだな。まあでも、それでこそいろいろな可能性が生まれるというものだろう。せっかくなので僕達も釣り道具一式用意して、一緒に魚釣りへと向かった。やって来た場所はフォーレグス王国内にあるわりと広い川で、僕達に合わせて初心者が楽しめるポイントに連れて行ってもらった。
入れ食いとまでは行かないのだが、ここは初めて釣りをするっていう人でも大抵失敗無く釣れる場所らしく、僕達の他にも家族連れで来ている者達がそこそこいるようだった。
そんな子供などが釣り糸を垂らしている中に混じって、早速僕達も釣りを開始する。釣り餌はよくわからないものを練り込んだものを針の先に付けて投げ込むのだが、思いっきり投げるとこの餌が針から外れて飛んで行ってしまうので、振り子のようにそっと揺らして適当なところで川の中へと沈めて行く。
まあ魚を釣るのには虫の方がいいのだろうが、今回は練り餌と呼ばれるもので釣って行くのだそうだ。日本の女子とかだと虫を針に付けるのは嫌がるのだろうが、こちらの世界の者達はそういうのは気にする者がいないのだろうな~。では何故虫ではなく、練り餌なのかといえば今回イオルドが持って来た餌はイオルドが特殊調合したもので、魚の食い付きがいいものなのだそうだ。
おかげで釣り糸を垂らした傍から食い付いて、魚との引っ張り合いが始まった。
釣り自体は一度食い付いてしまえばそれ程難しいテクニックは必要なさそうだな。単純に魚を岸の方へと引き寄せ、ただ釣り上げるだけでいい。強烈な引っ張り合いなどは無いので、じゃんじゃん釣って行った。
「バグ様、ここいらで一度休憩をして、魚を食べてみますか?」
「あっ! 食べたい!」
「まあレイシアもああ言っているし、一度食べてみるか~」
「うむ。わらわもお腹が空いて来たわ」
元々僕達が釣りを楽しんでいる間に、釣った魚をイオルドが捌いて、塩を擦り込んで串焼きにしてくれていたので、その第一陣が焼き上がったようだ。こういう出来立て焼き立てのものはかなり美味しいのだよな~
どんどん釣れるので、食べる量も全員分ちゃんとあるし、お代わり分まで焼けていた。最近冒険などしていないので、たまにはこういうキャンプみたいなものも、楽しく感じる。元々僕はアウトドア派ではなかったのだけれど、こっちの世界に来ていろいろと冒険して来たので、なんかこういうのもいいなって思えて来たよ。
『バグ様、例の精霊キメラが再び現れました。警戒中のヴァルキリーが迎撃に向かい、無事に仕留められたようです』
「被害などは無かったのか?」
『そちらは大丈夫でした。迅速に発見出来たのと、出現地点周辺に特に破壊されるような施設が無かったので、ヴァルキリー達が超長距離狙撃にて問題なく撃破したようです』
「そうか、警戒ありがとう。それでやはり相手の出所は不明のままか?」
『そちらは申し訳ありません。精霊界からやって来ていることしかわかりませんでした』
「まあ仕方ないな。引き続き頼む」
『はい、また出て来た時は報告します』
元凶の情報が得られないっていうのはきついな~
「また例のキメラが出たの?」
「ああ、でも直ぐに討伐できたようだ」
「バグが作ったという銃器で、問題なく対処できたんだな?」
レイシアに続いてビゼルも会話に参加して来た。
「とりあえずはあの狙撃銃で対処できそうだよ」
「ふむ。あの呪いはかなり厄介であったからな~」
「まあ、バグ様がいれば、問題ないでしょうねー」
「はい、主さまならば、どんな敵がやって来ても問題などあるはずがありません」
イオルドとビフィーヌがそう言って、絶対の信頼を寄せて来るのだが・・・・・・今回に関してはそう楽観もしていられないと思うぞ。新たな敵も出て来たので、経験集めをしようって思ったのだが・・・・・・強敵と戦ってもまるっきり経験になりはしなかったのだがらな~
さすがに今後出て来るであろう敵に対して、LV一で戦って行くのはきついものがありそうだ。そっちも原因というか、対処方法を探して行かないといけないな。
こっちもこっちで、経験値をどう稼いだものかわからないので、今日のところはこのままのんびりとさせてもらおう。
夕食にみんなで食べる分の魚を確保して帰ると、今回は塩焼きにした魚をみんなで食べて騒いだ。その翌日。
次に様子を見に来たのはピアノ演奏の為に創った眷属のイグラスで、今は拠点のリビングで手の空いている眷属と集まって一緒にコーヒーを飲んでいた。というのもイグラスの趣味というのか美味しいコーヒーを入れる事なのらしい。
コーヒーの豆自体は日本から持って来たものなのだが、こちらで品種改良などしているので味は別物になっていた。ちなみにこの品種改良は、農民パペットにお願いして栽培しているそうで、焙煎などの工程はイグラスが自分でいろいろ試すことにしているそうだな。まだ始めたばかりなので、これは仕方がないだろう。
そんな訳で、独自の趣味を持てっていってから今日までの間に出来たコーヒーを披露するって目的で、味合わせてもらっていた。レイシア達には苦過ぎて何がいいのかわからないって感じだったのだけれど、ミルクと砂糖を入れてやったらとたんに気に入っていた。
ビゼルは苦くてもまあ平気だって感じだったのだが、同じようにミルクと砂糖を入れたやつを飲んだ後は、ブラックのコーヒーは飲まなくなったよ・・・・・・
そういう僕も、さすがにブラックは苦くて駄目だったけれどね・・・・・・ブラックの香りを楽しむっていうのなら、なかなかいいコーヒーだって思えたな。
そのままコーヒーを味わい、今後そのコーヒーを研究して行った後どうするかなど話したりして過ごすと、翌日は次の眷属のところへと向かった。
まだどんな趣味にしようか考え中って者もいるようなのだが、僕が顔を出した時に急きょ決めたらしく、商売をしてみる事にしたそうだ。これから始めるって感じなので、まだどんな方向性にするかも未定らしいので、参加者プラス僕らでちょっとした会議をしつつ決めて行くことにした。
「まず商売するのなら基本的に、魔道具は禁止な。どうしてもって場合は販売しても問題ないか、相談してくれ」
「わかりました」
「じゃあ、趣味で生産された物とか集めて、売ってみようか?」
「ああ、確か皿とか壺とか、他にも縫いぐるみとか料理とかも作っていたな。みんなの趣味の物を持ち寄れば、結構いい稼ぎになるかもしれないな~」
「資材は一杯ありますし。私が武具を生産してもいいですよ」
こんな感じで意見が出て来る。ちなみに、商売を企画したのはヴァイオリンとフルートの演奏眷属ヴィリアとアンモルトが発案者だ。他の参加者は、魔王軍で鍛冶全般をやっていたプレグミリアと、同じく魔王軍で雑用を担当していたビルトフォック。この四人で何かしらの商売をして行くそうだな。
演奏者の二人は完全にノリとかでの参加になるだろうが、生産方面で興味が湧いたというプレグミリアがいて、雑用でいろいろな知識があるビルトフォックがサポートに当たるので、結構安心して見ていられるかもしれないな~
「とりあえず、小さくてもいいからまずは店を確保だな」
「確かに、売り場所も必要でしたね」
そう提案すると、プレグミリアが店の確保をする為に、司書パペットに問い合わせをしていた。立地条件に拘らなければ、そう苦労することなく店は確保できるだろう。
その後の話し合いで、当面の間はみんなが趣味で作った生産品を売って行くことにした。他所の店との違いというか特色としては、眷属やパペット達の技術力をこれでもかって注いでもらって、高品質な物を売ることで他の店を圧倒して行く方針になった。まあ、食堂兼雑貨屋って感じだな。
レシピ開発をしている料理担当達も、実際に完成したレシピがどこまで通用するのか、もっと他に改良の余地が無いかをここで調べて行けるって言って、店への参加を了承してくれたようだ。
その肝心の店を建てる場所については、王都でこれから始めるには町外れにしか場所が無く、商売を始めるには条件が悪いようだ。そこで今度一般の温泉街を造ろうって計画もあったので、そっちのわりと良い立地条件の所に建てることになった。
さてさてお店がどうなるのかは、温泉街が正式に稼働してからになるので他の眷属の様子を伺に向かう。
看守を任せているトレントのブリクトンは、趣味にうつつを抜かしている程暇ではないようだな。どこもかしこも平和そうに見えて、影ではやはり絶えず犯罪が起きたりしているようだ。まあ罪の内容に関してはそれ程重罪の者は少ないようだけれどね。一応任せっぱなしになっているので様子は見ておこう。
お互いに近況報告とか、何か足りない物が無いか、やって欲しい事が無いかなど話を聞いてその日は過ぎて行った。
翌日は、魔王軍で調教を担当していたリースと、回復役をしていたベルスマイアのところへとやって来たのだけれど・・・・・・こいつらマジで何してくれちゃっているのだ!
本来空きなどないはずの王都の一角に、結構立派な教会なんか造っているなって思っていたら、新興宗教などを立ち上げているじゃないか・・・・・・しかもご神体は上手く誤魔化してはいるようだけれど、宗教自体は生命を司る神を崇めているのだそうだ・・・・・・それって僕じゃん・・・・・・
「おいおい二人とも、こんな宗教を造ったりして、詐欺でもするつもりなのか?」
「いえいえバグ様。ちゃんとご加護はあるのですよ」
「はい、ちゃんと祈りは聞き届けられて、奇跡の力を行使することも可能ですよ」
「は? ってことは、僕以外の神様が力を貸しているってことか?」
僕が力を貸したって言えるのは・・・・・・死にかけパーティーだったミノタウロスウーマンの時くらいじゃないか?
「いえ、私は生まれた時から、バグ様よりお力を頂いて、数々の奇跡を起こしていますので」
あーなるほど、確かに以前ちょっと気にはなったのだが、ベルスマイアは特にどの神様の加護も受けてはいない様子だったな。それなのに確かに神官魔法を行使出来ている。そう考えれば、僕が力を与えていると言えるので、たった一人だけだけれどベルスマイアの崇める神って見方もできるだろう。まあこんなマイナーな神様か、神様不在っぽい教会なんかに信者は集まらないかもしれないな・・・・・・あくまでも趣味って感じなら特に気にする程ではないか?
「一応無理な勧誘とか、詐欺まがいなことはやめろよ? 信者が増えられても困るからな」
「あの~。ベルスマイアさん・・・・・・私も入会していいですか?」
言っている傍から入信者が出て来た・・・・・・後ろを見ると、どこかうっとりとした表情のビフィーヌがそう言っていた。
「ええ構いませんよ。あなたは十分資格を持っていますので、ぜひ一緒にバグ様を支えて行きましょう」
まあ・・・・・・身内ならいいか・・・・・・
「ところでこの宗教の名前は何というのだ?」
「バグ教?」
そう疑問を呟くと、すかさずレイシアがそんなことを言い出した。それだけは嫌だな。というか、個人名を出してしまってはご神体をぼやかしている意味が無いだろう・・・・・・
「フォーレグス教では駄目でしょうか?」
ベルスマイアがすかさずそう言って来る。国の名前がそもそも信仰している宗教の名前っていうところも、結構あるだろうからな。別に問題にはならないだろう。
「好きにしろ」
どうせお遊びのようなものだし、特に気にすることでもないだろう。どっと疲れたのでここは立ち去ることにした。
ビフィーヌがその場に残って、三人で経典とかルールを作るとか言っていたので、やる気を失くした僕はその日を拠点でダラダラ過ごすことにした。
「しかし実際にフォーレグス教に入信したら、神の奇跡とやらも使えるようになるのだろうか?」
デザートを食べながらビゼルがそんなことを聞いて来た。
「種族は確かに生命の神になっているが、これってある意味称号みたいなものじゃないのか? 以前レイシアが僕の加護を持っていた時も、特にこちらから力を与えるみたいなものは無かったしな」
「以前の私は、アルファント神の加護を受けていたからね。あまり参考にはならないと思うよ」
「まあ本来の神様とは違うから、偽物の宗教って感じだろうな。奇跡とか起こらないから、そのうち皆もお遊びだってわかるだろう」
そのうち飽きてくれないかなって考えつつも、他の眷属の様子を見に行くことにした。
次に来たところはダンスの為に創った男女ペアの眷属で、ダムガシアとモーリスがいるところだった。といっても拠点のリビングにいるようで、二人で何やら相談しているようだった。
早速二人の元へ行って話を聞くと、どうやらダンス以外にも芸術関係の知識を与えて創ったので、その知識を生かして芸術系の才能を伸ばすような学校を運営したいのだそうだ。これは二人にちょうどよさそうな趣味? 趣味にしては大規模過ぎるので仕事といった方がいいのかもしれないのだが、まあこちらにとってもメリットがありそうなので、支援する事にする。具体的には学校の教師をしていたこともあるので、その経験を生かしてどんなことをするのかとか、いろいろとノウハウを教えて行くことにした。
まあ例によって、王都にはちょうどいい場所は空いていないので、新しくできる温泉街の町にねじ込むように校舎を建ててもらうことにする。なんというか、生徒は毎日のように温泉が楽しめる環境になりそうだな~。わりと自然などが多い場所に町を立てているので、芸術性を磨くにはちょうどいい環境になるかもしれないな。せっかくなので、町全体をそんな感じにして行ってもらおう。
町の近くに湖なども造って、風景画を描くにはばっちりの風景にしてみたり、表面を凍らせたらアイススケートが楽しめるようにも考えてみた。いずれフィギアスケートみたいなスポーツも出て来るといいかもしれないな~。温泉といえば山って感じで山の近くに温泉街を造ったので、芸術を磨くにはなかなかいい素材が溢れていると思う。
さすがにちょっと学校規模の運営になって来ると、一日やそこらで相談し開始できるようなものではないので、何日か案を出すのに時間を取られてしまう。
ある程度まで意見やアドバイスなど、口出しし終わると残りの作業は二人に任せよう。手伝ってって言われれば手伝うのだが、あくまでも二人の学校運営なので、必要以上に手出し口出しはしないように心がける。上手く行くといいな~
さて眷属の方も次で最後になるかな?
やって来たのはどうやらアルタクスと同じ場所に集まっているモンスターのリーダーとして創った眷属達のいるところだった。というか、どちらかといえばそれぞれのモンスターがまとまって、傭兵団を結成しているようで、アルタクスがそこのスライムを率いているって感じだろうか? 傭兵団スライム部隊って感じだろうな。スライムは弱い存在なので、参加者には眷属のスライムしかいないけれどね。
主な活動方針は普段の経験稼ぎみたいで、後は有事の際の戦力として活動しようって感じだった。要請があれば他国にも支援に向かう準備があると言われたので、今後はいろいろと手助けしてもらえるかもしれないな。まあ、現時点では各地で暴れている友好種族になれなかったモンスターの討伐や、人間相手のいざこざの相手もできるだろうが、ちょっと前に出て来た精霊キメラみたいな大物を相手にするには力不足って感じだろう。
その為の経験稼ぎを行っているそうだ。
みんなの実力が上がったら、ヴァルキリーに与えたような銃器をみんなに配備させてもいいかもしれないな~
しばらく一緒になって経験集めをしてみたけれど・・・・・・何故か少しも経験にならないでLV一のままだった・・・・・・みんなはちゃんと経験を稼げているのだけれどな・・・・・・
精霊キメラの方は、初めに何体か出て来たけれど、今はそれ程襲って来てはいない。ひょっとしたら狂っているのは予定外の試作品で、捨てるような感覚で送り出しただけなのかもしれないな。でもって今は完全体を研究しているのかもしれない。事実そうだとしても、相手の本拠地が特定出来ていない現状では、止めようがないのだが・・・・・・一応一番怪しそうな元神聖ウルクスダルト国を念入りに調査してもらったのだが、キメラの研究をしている様子は見られなかった。
こんな世界でもかなり広くて数々の国がある為、そうそう全てを調べることなどできないのだよな~
いずれ大量に出て来ることを想定して、みんなにはなるべくLVを上げておいてもらい、ヴァルキリーに渡したような銃器も量産しておくのが得策だろう。元凶を潰すことができないので、後手後手に回ることになるが今はそうやって対処するしかなさそうだ。
さて眷属達やフォーレグス王国など、いろいろ現状維持って感じになったので、久しぶりにゲームの日本側の様子を見に行くことにする。発展し過ぎてかなりギスギスした雰囲気になってから、日本側にはあまり行っていないのだよな~
MMORPGとかでもよくファンタジー作品に混じってSFものっていう作品が出て来ていたのだけれど、大体SFものっていうのは出た当初こそ遊ぶ人もそれなりにいるのだが、結局は長続きしないで運営中止になっていた。僕としてもどちらかといえばSF物よりファンタジーものの方が好きだった。
今の日本はそのSFっぽい世界観になりつつある。
まあ実際にはまだファンタジー世界に銃器を多く取り入れた感じなのだろうが、文明の発展が進んで行けば、もうファンタジー色は完全に消えて無くなるのではないかって思われる。どうしてこうなったのだろうな~
「これからどうして行けばいいんだ?」
「久しぶりにバグさんも来たことだし、ちょっと真剣に今後の話でもしないか?」
日本側に来ると、以前一緒にこの世界を構築した駒田さんの同僚達に、会議をするからと連行された。今いる場所はこのゲーム世界の天国のような場所で、ようするにGM部屋だ。部屋の中は日本の会議室だけれどね・・・・・・
お金を貰って働いている訳ではないので、飲み物とかお菓子とか好き勝手に飲み食いしながら会議できるようだけれど、さすがに今回の会議内容は、今後の日本世界の未来を左右するという話しらしく、みんな真面目な表情で臨んでいた。そんな中にゲーム運営についてはド素人の僕が混じって、いったい何をすればいいのかって感じなのだがな~
「まず初めに、今のままこの世界を維持するのに賛成な人はいるか?」
議長をしている人の発言に、賛成と答える者は僕を含めて誰もいないようだった。それを見回して一つ頷いてから再び話し始める。
「では今現在の状況を改善する為に、どうするべきか話し合いを始めよう」
「具体的にはどうするつもりなんだ?」
「銃器の技術を退化させられないかな?」
「あー、確かに銃が出て来てから、世界観が思いっきり狂ったように思えるよな~」
そこからはみんなの理想のゲーム世界観について話し合いっていうよりは、夢を語り合う感じになった。やっぱり剣と魔法の世界が好きなようで、銃は邪道だよな~ってみんなが話している。その意見は僕も賛成だけれど、実際には日本人に剣で戦えっていうのは無理な話だったのだよな~。魔法の適性もまるっきり無かったしね・・・・・・
うん? そういえばかなりの年月が過ぎたと思うが、日本人の寿命ってこっちの世界に来てどうなっているのだろう? さすがにこの世界が出来てから軽く百年は過ぎているので、寿命が設定されているのなら生き残っている日本人は数えるほどしかいないように思えるのだが・・・・・・
「一つ聞いてもいいか? このゲーム世界に移住して来た日本人は、まだ生き残っている人がいるのか? つまり寿命が無い状態なのか?」
「いや、本来のゲームみたいな不老は無しの方向になったので、もう生き残っている純粋な日本人はいないんじゃないかな?」
「そうだな。百を超えて生きていた人も少数だがいたけれど、今はもうそんなお年寄りも生き残ってはいないぞ」
寿命がある設定だったか。
「みんなは神様的な役割だから不老不死設定?」
「いやいや、確かに不老ではあるようだが、死なない訳ではないらしいよ。まあ下にはめったに降りないから怪我をするようなことは無いけれどね」
やっぱりこっちの世界の神様って立場らしいな。そういえば実際に神様の称号みたいなものを持っていたな。海の神とか・・・・・・僕もこっちでは生命の神だったか? まあいいやー
「それならば、一度文明をリセットしたらいいのではないか? こういうゲームでは大体そういう過去のテクノロジーの方が優れていたみたいな歴史があって、剣と魔法の世界の下に近未来の遺跡なんかが眠っているだろう?」
まあこっちの世界が銃器廃止っていうのなら、向こうの世界の銃器対策も抑えて行かないといけない気がするけれどね~。まあ銃器そのものをゲーム世界に導入していなかったので、モンスターを減らせば問題は無くなると思う。
「そうだな。一度何かしらのイベントを起こして、今の科学文明を無くす方向で考えて行くか・・・・・・しかし、技術を持っている人が生き残っていたら直ぐに文明も復帰するだろうな」
「だからといって、せっかく今いる人類を失うのはどうかと思うぞ」
「いやいや、ファンタジー世界にするにはこの人口密度が高過ぎるのが問題なんだ。人口を維持するには技術を結集して食料を確保しなければいけないだろう」
そんな感じで一度文明のリセットをすることには決まったものの、大震災とかを起こして一気に破壊っていうのは嫌らしく、穏便に技術を破棄させる手段を検討する話し合いで、会議は揉めに揉めた。
穏便に技術を消失する方法か・・・・・・単純に技術者をまとめて殺すのが手っ取り早いだろうな。人口も減るだろうし。他には記憶操作で技術を忘れさせる。他にはそもそもの世界の基準・・・・・・常識を狂わせるっていう手もある。火が燃えるのは酸素が必要であるって常識があるとしたら、それを酸素があると火が消えるみたいにしてしまえば今ある科学技術は全て役立たずに変わるだろう。
まあ常識を変えちゃうのは、運営側もいろいろ不自由になってしまうけれどね・・・・・・人死にを出さない方法なら、やはり記憶消去だろうな~
揉める会議を見詰めつつ、僕一人のんびりとコーヒーを飲んでまったりしていた・・・・・・




