転生クエスト対策
詳しい話を聞こうにも時間が無かったので、リアルに帰還してから会議をすることになった。本来ならばこのまま寝て明日の十時にゲーム再開ってなるところなのだが・・・・・・転生クエストの内容に関わることだったので、みんなで話を聞いておくことになったのだ。ちなみにアルタクスは何とかぎりぎり時間内にクエストを終了させることができたようで、無事に転生することができたようだった。種族名は、流星の如く煌く槍・・・・・・これって、種族名というより通り名とか、称号の類じゃないか? まあいいが・・・・・・報酬アイテムはランスだったようだ。
全員がペットを貰えるとかではないのだな~。僕の場合は何故、ペットだったのだろう? そういえばレイシアのペットはまだ卵のままだ。そっちも早く見たかったのだが、なかなか余裕がないようだね・・・・・・
とりあえず一通りというか愚痴みたいなものを聞いたところ、出題される内容がマニアック過ぎて全然予測もつかなかったのだそうだ。しかも間違えると即ダンジョンから追い出されてクエスト失敗になるという。さらに出題内容はランダムらしく、同じ問題が出て来るとは限らないのだそうだ。おかげで手当たり次第っていう方法が使えず、クリアでき気がしないのだそうだ。そこまで聞いて、僕達はとりあえず解散する。もう夜も遅いし、対策も直ぐ立てられそうなものではなかったからね。
そして十時になって、僕達はゲームへとログインする。
親バカといえばいいのかずるになりそうなのだが、レビルスの筆記の方は念話で答えを教えて行く方向で突破することを考えている。とはいえ、ゲームの世界では通用しない方法で、現実の体から念話のスキルで直接レビルスと通話する方法を取ることにした。
まあリアルの方で、夢に干渉するスキルが出て来たことで使えるようになった方法なのだけれどね。これが上手く行ったら、他のメンバーの筆記も手伝うことができるかもしれないな。そういう意味でも、試す価値はあるだろう。
まあレビルスの方はそんな感じで、レイシア達の方は次の進化アイテムを集める為に移動する。三人とも、かなり収集系のスキルが上がって来たのか、サクサクゲットできるようになって来たな~。まあ敵からのドロップもあるので、収集ばかりではないけれどね。
進化及び転職アイテムは特に手間取ることなく集め終わり、僕達は町へと戻って来た。さすがにトップ冒険者と言えるくらいの実力を持ったメンバーなので、こんなところでつまずいたりはしない。NPCに、持って来たアイテムを渡してさっそく最終進化を終わらせる。レイシアがクイーンアラクネになり、ビゼル姫はヴァンパイアロード、ラデラ女王はアークウィザードという職業に就いた。
これで転生クエストを受ける為の条件を満たしたはずだ。レビルスは現在、凡ミスをしたり問題を説明する時間で時間オーバーになって何度かチャレンジを繰り返している状況だった。レイシア達の手伝いが終わったら、本格的にレビルスの夢というかゲームに干渉して導いていこうと考えているが、まだラデラ女王とかどうなるのか、判明していないのでもう少し待ってもらうかな~
人間は転生して別の種族とかにならない気がする。そうなると他の種族と違ってかなり不利になりそうだけれど、そこら辺りどうするつもりなのだろう? みんなで転生NPCの下へと向かって、早速クエストを受けることになった。
レイシアとビゼル姫はそのままクエストを受けてさっそく消えて行った。ラデラ女王の方はやはり転生したりはしないようで、特別な身分を得られるというクエストがあるみたいだった。そのクエストが発生するのは転職NPCからだったので、引き返すと早速クエストを開始させた。とはいってもインスタントダンジョンに行く訳ではなく、複数の討伐依頼をこなすといった内容みたいだね。
僕の方のダンジョンソロ攻略ともまた違うので、こっちの転生クエストは後回しかな~
ラデラ女王のクエストは手伝えそうだったので、レビルスの相手もしながら一緒にクエストを進めて行くことにした。えっとまずはリーズ町の四方にいるであろうモンスターの討伐かららしい。クエスト達成条件は、討伐の数が関係して来るという話なので、こっちは危なくなった時の盾役かな? つまりいつものパーティープレイみたいな感じで行けそうだ。ただし僕は攻撃禁止って感じだな。まあいいだろう。レビルスの筆記を手伝いながらなので、そこまで複雑な行動はしたくないしね~
リアルスキルの夢干渉だが、もっと深く潜ることでレビルスが見ているものと同じものを見て、感じることができるようになった。こうして他人としてクイズを見ていると、自分がやっていた時程焦らず落ち着いて考えることができるな。おかげで今のところ順調に進めていられる。やっぱりいきなり出題されるのはパニックになったり、緊張して冷静さを欠くよね。ある意味他人事のように参加しているので、焦らずに考えることができている。ラデラ女王の方も特に問題は発生していなくて、ただ淡々と敵を引き付けて後はお任せーって感じだった。
しばらくして四方のモンスター討伐を終わらせると、早速クエスト完了の報告へと向かった。結構あっさり終わったな。人間のクエストだから、こんなものだったのかな? そう思ったのだが・・・・・・
「バグよ・・・・・・どうやらクエストはまだまだ続くようじゃ」
『あー、段階を踏まえたクエストだったか・・・・・・次はどうしろと?』
「うむ、フィールドボスの討伐をして来いと指示されておる」
『まあフィールドボスなら、そこまできつくはないだろう。じゃあ行くか』
「すまんな」
『構わんよ』
迷惑をかけているなって感じで話しかけつつ背中に登って来るラデラ女王を乗せて、さっそくフィールドボスのところまで飛んで行く。フィールドボスをソロで相手すると、周辺の状況次第ではさすがにきつくなりそうだけれど、そこはこっちで雑魚の相手をしたり、ボスのヘイトだけこっちで引き受けることでそこまで苦労しないで討伐することができた。
これくらいならそんなに手間ではないな~。防御力が低いって欠点を除けば、攻撃力はピカイチだしね。町へと戻りながらそんなことを考える。
クエストはまだ続き、今度こそソロでダンジョンを攻略して来いという指示を出されたので、これで僕の手伝いも終わりって感じだろうか? ダンジョン前までラデラ女王を運ぶと、僕もソロダンジョン攻略を始める為に指定されたダンジョンへと向かうことにした。
ちょうどタイミングが良いことに、レビルスの筆記も終わりになり、後は自力で実技の方を突破してもらえば終わりって状況になる。ここで失敗して戻って来られるとさすがにきついな~
そんなことを考えつつ、ダンジョンへと入って行った。
僕が指定されたダンジョンは合計十層からなるダンジョンで、攻略自体はしたことのあるダンジョンだった。ただし、地図のスキルを習得する前の事だったので、次の階層への出入り口のある場所が不明である。大規模ダンジョンのように攻略したてだっていうのなら、どっちに行けばいいのか覚えているものだろうが、さすがに昔に終わったダンジョンの構造までは覚えていなかったので、もう初攻略とそこまで変わらない状況だった。
とはいっても僕が来るランクのダンジョンではないな。物理攻撃だけでなく、魔法攻撃すら吸収し切れてしまえるダメージしか来なかったので、一ダメージが来たところで自然回復のスキルがあれば全快してしまえる。そんなモンスター達を接近スキルの的にしつつダンジョンを進んで行った。
とにかく接近スキルでの移動をしていると、たまに分岐点で直感スキルが働き、正解の道へと誘導してくれるので、どんどんダンジョンを降りて行ける。このダンジョンにはギミックとか仕組まれていないので、出入り口を見付けたらサクサク降りて行けば問題ない感じだった。おかげで早ければ五分程で、手間取っても十五分くらいで出入り口を発見して下に降りて行ける。
十層にいるボスのところへと到着するのに大体一時間半ちょっとって感じだったかな? ほぼ移動していただけで到達することができた。ふとゴースト系のモンスターだったなら、ダンジョンの壁とか通り抜けて移動できるだろうから、もっと早く突破できたのでは? と考え付く。まあ結局は地図が完成していないので、出入り口を探すという意味では同じような時間がかかっていたかもしれないけれどね。でも、機会があったら試してみようと考える。
ダンジョンマスターが見たら泣きそうな攻略方法だけれどね・・・・・・
直前にそんなことを考えていたからなのか、ボスはナイトメアっぽい馬の幽霊みたいなモンスターが待ち構えていた。自身に魔法抵抗アップの魔法をかけることで、こいつは既に怖い相手ではなくなるけれど、こちらの攻撃もそこまで効かないところが厄介なところだ。
ちまちま戦うのは性に合わないのでソロという状況を生かし、まずは分身を召喚・・・・・・出て来た分身の数は十三体。そして邪魔になったり妨害することを気にしなくてよくなった腐敗の風を発動させると、思惑通り分身達も腐敗の風をボスに対して吐き掛けてくれた。まあこのままだとこっちまで影響を受けてダメージを受けるのだが、すかさず風魔法で腐敗の風を誘導し、ボスの周囲へと密集させて行く。その間、分身達は魔法攻撃でちまちまと攻撃をしていた。さすがにAIで行動しているとはいっても、自滅するような行動はとらないところが優秀だといえる。
ボスの立ち位置に気を使いつつこちらも魔法攻撃を加えて行くと、それほど激戦みたいな戦いもなく、ボスは倒れて行った。さすが必殺の切り札だな~
しかも能力が落ちるとはいえ、十三体もの分身体から同じように腐敗の風を吐きかけられれば、さすがにこのランクのボスはたまったものではなかったようだ。ダンジョン攻略報酬を受け取るととにかく外へと出て、町に向かうことにした。ラデラ女王はおそらく時間ぎりぎりまでダンジョンにいるか、時間が足りなくて失敗するかって感じかもしれない。
地図のスキルとかおそらく持っていないだろうし、接近のスキルもないだろうからな~。帰りは強制ログアウトで帰って来ると思うので、迎えはいらないだろう。
転生NPCのところへとやって来ると、さっそく僕はダンジョン攻略を達成したとの報告をする。すると体を黒い炎が包み込んで、転生が完了したことを実感した。さすがにインスタントダンジョンとかではないので、鏡とか出て来ないな・・・・・・まあ出て来ても、ただのスライムだと思うけれどね~
一応触手を伸ばして色だけでも確認しておこうかなって見てみると、闇色と言ったらいいのか? 黒より吸い込まれそうな漆黒の色の触手が、闇のオーラに包まれていた。サブキャラもそうだったのだが、僕ってそんなにダークサイドに偏っているのかって一瞬自己嫌悪しそうになったよ。
まあ、どう見ても正義の味方ではないので、お似合いだとは思ったけれどね。キングスライムだった時の王冠やマントは無くなってしまったようだ。見た目は何かドロドロとした流動体に球体を幾つも表面に浮かべたヘドロっぽい感じかな? 球体は中に何か詰まっているのだろうかと触ってみるものの、どうやらただの気泡らしく、特に意味は無いようだった。
さすがにこの姿は仲間達に気味悪がられそうな感じだな~
ちょっと前のスライムに戻りたいって気がして来たぞ・・・・・・大きさというか、体積もかなり増えたようで、人間の子供より少し大きいくらいの盛り上がりがある。おそらく小型種ではなくなっただろうな。あー、そうなると宝玉は集め直しになりそうだ・・・・・・アルタクスは宝玉を余らせていないだろうか? っていうか、レイシア達も宝玉は使えなくなっているだろうから、みんな装備を作り直して宝玉を集め直す必要が出て来るかな~
つくづく前のスライムに戻りたいって思っていると、NPCから声をかけられた。
『転生おめでとう。君は転生することで、宝玉を使えなくなったようだね。装備も含めて体格に合わせた物を用意しよう。もちろんタダという訳にはいかないが、交換して欲しい物とお金を渡してくれたら、引き換えるよ』
あー、ちゃんと救済措置はあるのだな~。思わずぼったくりかって言いたい程の金額を要求されはしたが、宝玉を一から集め直す必要はなさそうだった。
周りを見るとアルタクス以外は仲間が誰もいない。まだ時間がありそうだったのでちょっとスキルを習得しに行ってみるかな~。もうスライムから他の種族に変わる気が無くなったので、スライム特性のスキルとかチェックしたくなった。転生したことで幾つかスキルを覚えているようだけれど、他にもスライムならではの面白いスキルが有りそうだ。
名前:バグ 種族: 混沌に漂う不定形生物 体力 15234/25163 精神 6342/12621 スタミナ 100/100
所持スキル:刺突無効∞ 打撃耐性92 状態耐性89 強酸5 触手鞭90 危険感知84 斬撃耐性91 物理耐性95 魔法抵抗93 罠探知82 生命探知85 熱探知83 音探知81 発見96 自動修復12 魔法の才能94 回復魔法56 火属性攻撃魔法67 水属性攻撃魔法63 風属性攻撃魔法64 土属性攻撃魔法68 光属性攻撃魔法62 闇属性攻撃魔法66 強化魔法74 支援魔法71 召喚魔法63 収穫主13 採掘主3 錬金魔道11 収納85 移動補助88 伐採98 大地の加護56 土ダメージ吸収91 炎の加護57 火ダメージ吸収93 空の加護54 風エネルギー変換6 海の加護54 水ダメージ吸収97 深淵の加護60 闇エネルギー変換2 金属の加護88 金属エネルギー変換9 太陽の加護51 光ダメージ吸収93 魔力向上70 消費MP減少72 肉体強化83 瞑想78 活性化89 鞭技術95 射撃技術96 打撃向上93 攻撃速度上昇4 強撃77 気功法83 鍵開け61 潜伏58 奇襲41 共鳴86 気循環67 腐敗の風63 万の加護6 追跡42 鍛冶23 木工22 裁縫20 細工18 料理21 生産の加護71 道化96 解析75 接近86 分身51 直感26 地図47 肉体変化1 闇のオーラ1 飛行1 分裂1 捕食1 偽装1 剣術1 槍術1 音楽1 呪歌1 絵画1 絵創1 ポイント381
所持アイテム:核石(攻撃力・防御力・魔法抵抗) ハイポーション ハイMPポーション STポーション 仙人のポーション 劣化蘇生ポーション 生産道具 素材 換金アイテム
サブキャラの方も闇のオーラが出ていたのだが、こっちにだけスキルが追加されたのは何でだ? 向こうは演出上ものってだけで、こちらはちゃんと効果があるものってことなのかな? 効果としては周囲の魔力を取り込んで体を修復するのだそうで、盾役の僕にはもってこいの効果だった。
後スキルをいろいろと見て、音楽とかも覚えておくことにした。面白いところだと、絵創ってスキルかな。描かれた絵を呼び出して使役するスキルなのだそうだ。リアルに表現できるほど能力値が高くなるそうなので、スキルLVだけでなく絵心が必要らしいけれど、まあ覚えるだけ覚えておいた。ちなみに特殊な筆とインクが必要で、それぞれ自分で生産しなければいけないという制限もあるみたいだ。
後は見た目がこんなんになってしまったので他の生物の見た目を真似るという偽装というスキルも覚えてみた。表面的なものを真似るだけなので、全然能力とか使えないらしいけれど、人間のように細かい作業などはできるようだね。
一応スライムのままでも肉体変化というスキルでそういう細かい作業もできる様なスキルを、覚えてみたけれどね。これは単純に体の一部を変化させられるスキルなので、人間の手を作り出したら、生産とかの作業ができるようになる。見た目さえ気にしないなら、手を八本出すとかもできるみたいだ。
実際これらのスキルを使う場面が来るのかどうかわからないけれど、必要な時にスキルが無かったっていうのは避けたいからな~
スキルを学んで転生NPCのところまで戻って来ると、レビルスが帰って来ていた。周囲が騒めいていることから予測できたことだけれど、どうやら転生クエストを無事クリアできたようで、その体からは揺らめく炎が鱗粉のように舞っているのが見て取れる。おー、これがエンシェントファイアドラゴンか。種族名としては別のものが付いているようだが、なかなか迫力のある姿に変わっていた。
『父上、手助け助かった。おかげで無事に転生できたよ』
ドラゴン顔だから表情からはわからないけれど、チャットで思いっきり嬉しそうなことが理解できる。この分なら、全員上位種族の転生は何とかなりそうだな~。手助け無しにっていう意味ではなく、人数制限の方でクエストをクリアしても、転生できないって事態は避けられるだろう。
ビゼル姫が少し心配か? まあ、二・三日以内にクリアできれば、問題ないだろう。
そう考えていると、レイシアとビゼル姫が目の前に現れる・・・・・・姿に変化は見られないので、どうやら失敗して戻って来たのだろう。
「ううぅ・・・・・・おのれ、いちいちNPCの名前なぞ全員分覚えてなどおれるか!」
「はあぁ、こっちも魔法の全てを理解なんてしていないわよ」
そう言ってビゼル姫とレイシアが怒ったり落ち込んだりしていた。これって、手助けするべきなのか? それとも他のプレイヤーに遠慮して、正々堂々とやらせるのがいいのかな? どちらを選ぶとしても今から手伝ったところで、強制ログアウトで今日はもう終わりだろうな~
そう思ったのだが、転生に成功したレビルスに散々愚痴ったビゼル姫はクエストを受けて消えて行った。
「バグ、今から上手く行ったとしても、もう時間きちゃうよね?」
『ああ、そろそろ落ちる時間だな』
「そっかー、それとバグ。転生おめでとう! ちょっと見た目はめでたい感じじゃないけれど、上手く行ったんだね~」
『一応人型も取れるぞ。次からは人型にでもなっておくかな~』
とりあえず転生が成功したよって感じで、姿を見せておこうと考えていただけなので、人型を維持したりはしていなかっただけだ。やっぱりあまり歓迎できる感じじゃなかったか・・・・・・そう考えると早速擬態で人型へと変わる。おや、人間に変化したのはいいが、オーラは出っ放しで引っ込められないのか・・・・・・
「いつものバグだね~」
「ああ、まあそうだな」
ふむ、偽装すると普通に喋ることができるのか。偽装は表面を変化させるだけなので、内臓は存在していなくてスライムのままなのだけれど、声は作れるようだな。物じゃないのでこの場合は擬態といった方がいいのかな? とにかく他者を騙すうえで、声を出すということも相手を騙すことに必要だと判断されて、声帯を作ったのかもしれないな。人間並みに作業もできて、声も出せる。こんなスライムが隣を歩いていたら、誰も化け物だって気が付かないだろうな~。やっぱスライムは最強だな! オーラが出っぱなしだけれど・・・・・・
その後時間ぎりぎりまで試験に慣れる為だって言って、レイシアがクエストを受けてその場から消えると、時間が来るまで僕達は雑談しながら二人が戻って来るのをそこで待っていた。
レイシアは頑張れば何とか行けそうかもしれないけれど、ビゼル姫はちょっときつそうだな。いちいちNPCの名前とか、魔法やスキルなど覚えるつもりはないそうで、何なら自分が取得したスキルすら理解していない程だった。こういう暗記するというか、勉強は苦手なのだそうで強制ログアウトした後はもう、このままでも別にいいかなーって言っていた・・・・・・まあそれでいいのなら別に僕自体は構わないのだが・・・・・・みんなが強くなっている中で一人だけランクの低い種族って、肩身が狭くならないかな?
あ、ちなみにラデラ女王は本当にぎりぎり攻略に成功したとかで、夜にクエスト報告をして特別な身分とやらを手に入れるのだそうだ。おそらく人間を選ぶ者もかなり少ないので、問題はないだろう。
「レイシアは、自力で頑張ってみるのか? 何なら手助けしてもいいが」
「そうね・・・・・・今日の夜やってみて駄目そうだって判断したら、明日手伝ってくれる?」
「ああ、構わないぞ」
やっぱりレイシアはできるだけ自力で頑張ろうとするか。真面目だな~
「ビゼル姫はどうだ?」
「あー、わらわはおそらく駄目だわ。実技だけなら自信があるのだがな~」
「ならやっぱり手助けするか?」
「む~」
プライドが邪魔しているのかな? 元々魔王だし、誰かに助けられるっていう立場は、気に入らないのかもしれないな。でもそうしてプライドを取ると、今後みんなから置いて行かれるかもしれない・・・・・・ジレンマだろうな~
しばらくうんうん悩んだ末、ボソリとこちらに言って来た。
「頼むわ」
「ああ、じゃあ今日の夜さっそく手伝おう。実技の方は、頑張れよ」
プライドを捨て切れないのか、無言で頷いていた。実のところビゼル姫がゲームにのめり込んでいたり、こっちでのんびり過ごしている間に、僕は既にガンガンLVを上げて追い越しているのだがな。必殺技とかも用意したりしたので、今ビゼル姫と戦えばおそらく僕の方が強いのではないだろうかって考えている。おそらくと判断したのは、さすがに二千年にも及ぶ経験は伊達ではないだろうから、その経験からの戦闘技術を駆使されればどうなるかがわからない為だ。
まあもう僕達が争う必要性も可能性も残ってはいないのだろうがな~
ふとそんなことを考えていたので、リアルでも体を動かしたくなった。夜まで時間もあることだから食事をしたらダンジョンで経験集めでもしてこよう。目指せLV九九九っていうのも、なかなか楽しいかもしれないな~
ビゼル姫が何となく複雑な心境のようだったので、昼のご飯は久しぶりにカレーを作って振る舞ってみることにした。まあついでに眷属達も呼んで、みんなでカレーパーティーっていう程ではないけれど、食事会でもしてみよう。そこそこ人数が多いので、料理パペット達を呼んで手伝わせると、とにかく一杯作って行く。カレーはもし残ったとしても寝かせることでさらに美味しくなるから作り過ぎて困るっていうことはない。
何なら臨時で売り出してもいいだろうしね。
昔と違い香辛料になりそうな食材なども農家に作らせているので、日本原産の素材を使わない方法でカレーを作ることに成功している。なのでこっちの世界の食材で作ったカレーをみんなに振る舞おうとしていた。まあ香辛料の配分では結構な苦労があったけれどね。僕自身がまあいいのではって判断した後も、改良を何度か繰り返したので、日本のカレーに負けないぐらい美味しいものになっているはずだ。
ちなみにそれだけの苦労をして作り上げた物なので、レシピは公開していない・・・・・・料理担当のモンスター達が、同じような味を出そうと研究したようだけれど、成功した者は今のところいない幻の料理と言われている。まあそんな料理なので、ビゼル姫の機嫌もこれで直るだろう~。駄目ならおやつだな・・・・・・
ちなみにビゼル姫は予想通り機嫌をよくして町に遊びに行ったのだが、この話をレイシアとの雑談で聞いたらしく、自分も食べたかったと文句の通信がラデラ女王から来ることになった。
『何故私も誘わないのじゃ! ああ、想い出しただけでも涎が出そうじゃ! 我慢ならん、今からそちらに行くから用意せよ』
そう風魔法を使って通信が入ったその後ろで城の者が、仕事が残っているからやめてとか騒いでいるのが聞こえて来ていたよ。そこまで騒ぐ程のものなのか・・・・・・そう考えたけれど、まあみんなが食べて自分だけ食べていないのは、なんだか仲間外れにされたような気になったっていう事もあるかもしれないな。お代わりする者とかいて、予想していたよりは余らなかったけれど、まあ持って行ってやるか・・・・・・これも同盟国だからってことにでもしておこう・・・・・・
特別に転移してカレーを運ぶと・・・・・・仕事を放り出しさっそくそれを食べ始める。
「相変わらず美味であるな! どれだけ研究させても内の料理人ではこの味は出せんのじゃ。やはり老後はフォーレグス王国で過ごしたいものだのう~」
「それ、本気だったのか?」
「私は本気だぞ。既に後継者は育てているからのう~」
そういえばラデラ女王って結婚していないような・・・・・・旦那さんを見たことはないよな? 平均寿命が五十歳って世界で、今だ結婚すらしていないとか・・・・・・行き遅れ感半端ないな~
「なあ、ラデラ女王は結婚しないのか?」
「むー、なかなかに嫌なことを言うものじゃ。ドラグマイア国では腐敗を嫌って、世襲制を廃止しておる。その関係もあって伴侶を作らぬのがこの国の習わしなのじゃ」
「つまり、引退しなければ結婚も許されないということか?」
「まあ、そうなるのう。今更結婚と言われても、困るがな」
お国柄っていえばいいのか、そんな風習があったのか・・・・・・今から結婚っていうと、子供ができたら高齢出産とかもありえるのかな? そういうのはいろいろと大変そうだ。だから今更結婚とか考えてもいないってことなのだろうが・・・・・・頑張って国を発展させたり維持したり、頑張って来た結果が一人寂しく余生を過ごすとか可哀想な話だな。
最近レイシアも年齢を気にするようになって来たようだし、何か考えてみよう・・・・・・
リアルダンジョンにて、経験稼ぎをしながら魔道具の開発構想を練ってみた。以前に作った不老不死の魔道具に近いものだけれど、実際には不死でも何でもないただ細胞を活性化させる効果を与える魔道具だ。ただし、細胞の劣化を防ぐような効果を持たせたので、肉体年齢を若い頃のままに抑える作用があると予測している。これによりレイシアが気にし出した皺とか肌のシミなどは解消されるのではないかな? ラデラ女王の場合は実際年齢だと高齢になるのかもしれなくても、肉体的には問題なく子供を作ったりできるのではないかと考えている。おそらくは魂の劣化はあると思うので、寿命は変わらないと予測しているけれどね。
あくまで寿命が来るまで若い肉体を維持できるのではってことだね。後で二人に渡そう・・・・・・
魔道具の構想も終わったので、経験稼ぎの方に集中することにした。




