パーティーメンバー
『早速だがまだ時間があるので狩にでも行きたいんだが、時間は大丈夫か?』
「入って直ぐギルドに来たから、時間は大丈夫だ」
『そうか、ではなるべく強い敵を倒しに行こうと思っているんだが、いいか?』
「こっちも経験を稼ぎたいからいいぞ」
『そうか、ならさっそく出発しよう。時間がもったいないからな』
「わかった」
そういうとさっそく移動して行った。レビルスもこちらのスキルというか、構成を聞いて来なかったな。情報の大切さをもう少し教えておいた方がいいな~
そんなことを考えたりしたけれど、まあこっちから特に説明はしない。できたら自分で判断して、理解してもらいたい。失敗も時にはいい勉強になるからな~。なんでもこちらが教えて痛い目に合わないようにすればいいというものではない。というか、痛い目に合った時の方が理解というのは早くなったりするので、遠回りはいいことだと考えている。
こちらが注意を促すのは、致命的なミスの時でいいかと思う。後はどうでもいい相手かな? この丁度いい情報の与え方っていうのはなかなかに難しいのだよね~。僕もこれはまだまだ勉強途中と言わなければいけないだろう。
さてやって来たのは、上級の敵の中でも中級ランクの敵がいるところだった。敵の名前はTP01。これは何かの略なのか、何なのだろうな? まあとにかくこの敵は基本群れで生活していて、かなり素早く動き回って襲って来るので、なかなか厄介な相手だった。ちょっと恐竜っぽい外見なのでレイミーをさらに小さくして、ネズミと掛け合わせたような外見だな。
早速レビルスがそいつらに向かって攻撃を仕掛けて行った。ブレス攻撃である。
扇形の範囲攻撃なので、こういうちまちました奴らを倒すにはうってつけのスキルだろうね。ただ、僕とかアルタクスは範囲の敵には向かない気がするよな。
特にこっちはお腹とか狙われると即死しそうで怖いので、さっさと木の上に退避させてもらい、糸を飛ばして戦いやすい環境を作らさせてもらうことにした。アルタクスは今回剣を振り回しながらちまちまと横から顔を出す敵を切り裂いて撃退している。おー、手慣れた感じだな~
「アースシェイク」
範囲を限定し、地震を起こすことで群れ全体の足を止める。地震によるダメージと、足が止まったことで攻撃しやすくなった事によりブレスを吹き付けられた敵が、バタバタと倒れて行く。そして範囲外に漏れた敵は、アルタクスが小突いて倒していたので、見事な連携で群れの一つを壊滅させることに成功した。
『あんた、予想以上に上手いな。本当に始めて間もないのか?』
「ああ、キャラクターを作ったのは数日前だからな。元々現実では冒険者をしていたからだろう」
『そう言えば、マグレイア王国には優秀な冒険者が多いとか言っていたな。いつか行ってみたいものだな』
「今なら行けるのではないか? 確か飛空艇とかで直ぐだろう?」
『ああ、そうだな』
ふむ、とりあえずこのキャラの中身はマグレイアの冒険者ってことにしておこう。そのうち設定を忘れて話が矛盾しなければいいがな~。しかし、マグレイア王国か・・・・・・それだけでなく家族で旅行っていうのはしたことがないかもしれないな。レイシアを連れてどこかへ行ったことはあるのだが、レビルスを連れて行ったことはないかもしれない。冒険者としての訓練ばかりしていたような気がする。今度どこかへ連れて行ってやらないとだな。
その後も時間一杯ここで狩りを続けた。地震を起こす魔法のおかげで、案外楽に敵を倒して経験値を稼げたので、調子に乗ったレビルスが群れを二つも集めてしまい、アルタクスのフォローが間に合わなくなる場面もあったのだけれど、幸い抜けて来た敵の数が少数だった為、僕が落下しつつ足で突き刺すことによって討伐し、事なきを得るといったことも起きたけれど、殆どは危なげなく殲滅できた。
敵が上を見ていなくて本当に助かったよ。こっちはお腹を晒す攻撃なので、体力が低いうちはなるべく接近したくなかったからな~。しかし、自由落下での奇襲だったが、普通に足で敵を貫けるとは思ってもいなかったので、案外この蜘蛛足は使えるかもしれない。できればちゃんとした槍を生産して持ちたいところだけれどね。おそらく今回の狩でスキルポイントを稼いだので、鍛冶のスキルとかも習得することができるだろう。
まだまだレビルス達の強さに追い付くには、時間がかかるだろうな~
二人が落ちた後も僕は経験値集めを続けた。残念ながら範囲攻撃系のスキルはこちらは持ち合わせていないので、ネットを編み上げ、地面に敷いて軽く風魔法で草の中に隠すともう足元なんかわからなくなる。後は群れを挑発して、糸を張り巡らせた仕掛けの中に追い込んで引っかかったら一気に糸を引っ張って空中へと掬い上げれば、プチプチと突き刺して倒すだけっていうお手軽な狩になる。しかしこの戦闘方法は糸と刺突系のスキルしか上がらないな。範囲攻撃ってことなら魔法を鍛えなければいけない。別の戦い方を考えてみるか・・・・・・
次の群れには予め見えるようネットを張ってまとまるように道を塞いでおいた。その状態で袋小路の場所へと誘導して自分だけは木の上に登って行く。でもって地面から離れた瞬間、アースシェイクで足止めをしつつ逃げ道をネットで塞ぎ、そのまま地震の持続ダメージを与えつつ、木の上に退避した状態で上から風魔法を打ち込んで倒して行く。うーん、見事な追い込み漁業だ。根性を見せたやつがネットをよじ登ってこちらに向かおうとするけれど、糸に触れれば動きは束縛される。
ばっちり死角はないな! 回復魔法も経験稼ぎしたいのだが、このランクの敵からダメージをもらうのは致命傷になりかねないので、走り回って削られたスタミナの回復で経験を稼ぐことにした。まあやらないよりはましって感じだろうか?
まあこんな感じで僕の忙しい三重生活が始まる。リアルとレイシアとの冒険、それとレビルスとの修行だな。
夜十時前、レビルス達と冒険する前にまずは稼いだスキルポイントを使って有効なスキルを学ぶ為に町へと帰還する。はっきり言って、ポイントが足りなくてろくにスキルを習得できなかったのだよね・・・・・・
名前:タカ 種族:アラクネ 体力 1266/1462 精神 329/1379 スタミナ 56/100
所持スキル: 生命探知23 熱探知21 魔法の才能19 風属性攻撃魔法25 土属性攻撃魔法27 強化魔法11 刺突向上28 攻撃速度向上26 潜伏12 射撃技術9 蜘蛛の糸26 自動回復14 回復魔法16 魔力向上20 消費MP減少18 肉体強化5 刺突耐性7 収納7 槍術19 格闘術13 斬撃耐性6 打撃耐性8 状態耐性3 物理耐性7 魔法抵抗3 移動補助17 発見1 収穫1 伐採1 採掘1 鍛冶1 大工1 裁縫1 細工1 錬金術1 料理1 生産の加護1 三次元行動1 部位復元1 火属性攻撃魔法1 水属性攻撃魔法1 盾術1 ポイント19
所持アイテム:ショートソード ダガー バックラー ハンドアックス ショートボウ ショートスピア アロー(300) レザーアーマー バックバック 初心者ポーション 素材
ギルドへと向かうとレビルス達は既に来ていて、これから行く狩場に付いての情報でも集めている感じだった。ふむ、昔に比べれば随分冒険者として通用しそうな感じなのだが、何が問題だったのだろうか? これなら多少ミスをしようがそこまで気にしないで固定パーティーが組めそうなものなのだがな~
「こんばんは。来たぞー」
『おう、来たか』
「こんばんは」
まずは合流して挨拶をする。アルタクスは言葉少なげだが、僕の事に気が付いているのかどうか、わからないな。なんとなく眷属ならわかりそうなのだが、あえて黙っているっていう可能性もあるかもしれないな。まあいい、こっちは結果が出てくれれば何も問題はないし、不満もないからな。
『今日は狩をして経験稼ぎをしようと思うのだが、構わんか?』
「僕はそれでいいぞ。まだ作ったばかりでスキルLVも低いからな」
『そうか、ならさっそく移動しよう』
「わかった」
道中移動しながらこれから行く所と、敵に付いての情報を教えられる。朝の野良パーティーのリーダーと違い、ちゃんと情報を伝えて来るのはいいことだが、どうせなら町を出る前に聞いておきたかったかな。ひょっとしたらそれによって装備を丸々切り替える人もいるかもしれない。まあそういう人は、町から出る前に質問するかな?
さてこれから行く場所は岩がゴロゴロしている切り立った山の斜面なのだそうだ。そこに出て来る敵は、鮮血姫って名前のトラのような魔獣で、なんでそんな名前にしたって言いたい敵だった。このトラは別に吸血行為とかそういう要素はまるでなく、鋭い爪の攻撃や魔法を操り攻撃して来るなど、多少厄介ではあるものの名前の由来がさっぱりなモンスターだった。
まあ、名前に文句を付けないなら普通に上級の中でも油断できない強敵のモンスターなので、経験集めには結構いい相手かもしれないな。
今回の相手は特に策みたいなものはなく、普通に戦って普通に倒して行くだけだった。とはいえ、こっちはダメージを受けるとちょっと不安があるので弓で遠距離攻撃ばかりの支援って感じで相手をして行く。しいて言えば目を狙って行くくらいだろうか? 射撃スキルがそこまで高くないので狙うだけで当たらないけれど・・・・・・後はひたすら逃げ撃ちって感じだ。
足場がかなり悪いけれど、こっちはこういう所は得意なので、あちこちの岩場にへばり付いて敵の死角から攻撃を仕掛けて行く。たまにレビルスが突っ込み過ぎて危険になることもあるけれど、アルタクスが盾を持って割り込んでちゃんとフォローしていた。なかなかいいペアだな。まあ一方的なサポートだけれど・・・・・・
これがお互いの利益になる間柄になれば、もっと楽しく遊べるのだろうがな~。まあまだそこまで求めるのは早いってところだろうか。今の僕も大して役に立っていない具合では似たようなものかな? そう考えると何かしら、策を練って行かないと駄目だろうな。
まあできることと言ったら、矢の後ろに糸を付けて飛ばし、即席の妨害トラップを構築して行く。
矢をどこかに突き刺しただけでは簡単に折れて全然強度は足りないので、まずはそれによって足場の構築。それを基礎として空中に陣取った僕が、あちこちに糸を張り付けて相手を拘束するトラップを作り上げた。
こちらを気にしながらも目の前でがむしゃらに攻撃して来るレビルスから目を離せない敵は、特に抵抗することもなくあっさりとトラップの中に閉じ込められ、宙吊りの状態で拘束された。なんてことはない、どうやっても避けられないよう糸を張り巡らせ、後ろ脚を縛り上げた後宙吊りにして、暴れた敵が勝手に周りの糸でぐるぐるに拘束されただけだ。蜘蛛の糸って、万能過ぎじゃない?
その後もレビルスとアルタクスが頑張っている間、こっちが罠を張って敵を捕獲して、みんなでボコって倒す作業が始まった。時間一杯狩をした後、僕は今回の戦闘での反省点を防御力の低さと判断する。足は硬いのだけれどな~
耐性系のスキル自体は学んでいるので、その後は雑魚を相手に防御系のスキル上げをして過ごした。
その後はほぼ三人でひたすら経験集めの毎日になった。なかなか新規メンバーが増えない理由はレビルスがミスをするからとかそういう理由ばかりではなく、ゲームのログイン時間によるところが大きかったみたいだね。のんきに見えてみんなそれぞれに仕事をしている。レビルスのように朝も夜もと遊べる人材って、どこを探してもいないのだ・・・・・・そんなのはニートだけだろう・・・・・・後はレビルスのような子供? まあそんな訳で、子供にはこんなハードなガチ経験稼ぎなぞ付いて来られる訳もなく、一向にメンバーが増えないのだった。
『で、お前は何で毎日こんなに遊んでいられるのだ? 仕事をしないと生活ができないだろう』
「まあ今までずっと冒険者として過ごしていたから余裕があるといった感じだろうな。逆に働き過ぎたからたまにはゲーム三昧の生活もいいだろうって感じで、今遊んでいるってところだ。それに昼間はちゃんと時間があるしな」
『なるほどな。昼に軽く稼げているから、ゲーム三昧もできるってことか。ではまた冒険者家業を始めたらパーティーは抜けることになるのか?』
「まあいつになるかは、気分次第だがそうだな。今のところはあまり考えずにゲームを楽しんでいるよ」
そういう事にしておいた方が、レイシア達と合流した時にじゃあこっちも冒険者に戻るってすんなり抜けられるかもしれないから、都合はよさそうだ。この設定メモしておこう。
そんな話をしていると、アルタクスがこちらを見て何か言いたそうな感じだった。ありゃ、やっぱり気が付かれているか。
(バレバレか?)
確認の為、念話で話しかけてみる。これはリアルの方のスキルだ。
『はい、感情が伝わって来るので、しばらく一緒に行動しているとそのシンクロ率で分かりました』
あーなるほど。感情が繋がっているから、敵に出会って驚いたとかそういう感情もまるわかりになる。そんな感覚が何度もあれば嫌でもバレるってことだな。なるほど。まあレビルスにさえ気が付かれないならば問題はないだろう。
(サクサクLVを上げて、レイシア達に合流しよう)
『了解しました』
そんな感じでひたすら経験集めを繰り返して行った。結構いいペースで成長して行けているよ。
さてもう一人のゲーム初心者はというと、選択したキャラクター種族が人間なので、レビルスのパーティーにも加入できない程戦闘力に問題があった。昔もそうだったのだが、粋がって突っ込むくせにそこまで強くない為、雑魚にも手間取っている様子。あれは当分雑魚の相手ばかりだろうな~
見かねた近衛達が同じゲームを始めて、彼らがゲームの中でも護衛をしているのを見かけて何やっているのだかって思ったよ・・・・・・まあそれでも楽しんでいるのならいいのかな? 近衛達は気の毒かもしれないけれどね・・・・・・
サリラントの方は放置していても問題なさそうなので、日本側の様子も見ておこう。
来てみると日本側は、かなり活発に活動しているようだった。町の周りには広大な敷地を使った畑が広がり、一部には家畜らしい動物が放し飼いにされているのがわかる。町の中も見てみると、町にはNPCがいなくなっていて、全て日本人が独自に店などを経営して過ごしているようだった。
どうやら完全に自分達だけで生活基盤を構築したようだな。こっちも僕が面倒みる必要性がなさそうだ。おっさんの仲間達とだけ近況報告をし合って帰ることにする。若手が冒険者として積極的に外に出て、資源などを持ち帰って来るようになったことで、少しずつ活気が出て来ているのだそうだ。戦いたくない、それでいて働ける者はなるべく畑や家畜の世話をすることになったようだ。
残念なことに、モンスターとの戦闘で亡くなった者も少なくない数いるようで、戦闘訓練みたいなものも始めて、なるべく死傷者を出さないよう集団で行動しているそうだ。まあこれは交通事故のあった日本と同じようなものと考えておけばいいのだろう。
ゲーム世界やサリラントの方はそこそこ順調に進んでいる。しかしリアルの方で、昔の生徒達の国から使者が押し寄せて来たみたいだった。
「このたびは、我々各国から同盟のお願いをしにまいりました。ホーラックス魔王閣下にお話を伺ったところ、バグ殿と話をするようにとの指示を受けたので、こちらへ伺わせてもらいました」
「以前こちらから同盟をお願いした時は、同意しなかったと記憶しているが、なぜ今更同盟したいと? こちらとしても既に周辺国家との同盟関係は大体進んで、後は手を取り合って一緒に発展して行こうって感じで落ち着いていたのだがな。何故今になってそれを引っ掻き回しに来たのか教えてもらいたい。それと、フォーレグス王国と今来ている使者達の国では距離が離れ過ぎている。同盟することに意味があるとは思えないが?」
そう言うと、いくつかの国々から来ている使者の一団が返答に困っているといった感じの表情を浮かべていた。まあ、苦しい時にはこちらの手を取らず、平和になったら技術目的で同盟しようなどと言って来たら、さすがに自国の使者だったとしてもそんな表情も浮かべるよな。
「今回はそちらの意思を伝えたいというだけなのだろう? 回答は必要無しだ。お引き取りを」
なんと言えばいいか困っている使者達にそう言ってやると、さすがに苦い顔をして何やら話しかけて来た。
「我々は何とかフォーレグス王国側の条件だけでも聞いて来るよう申し付けられていますれば、なにとぞご再考をよろしくお願いします」
つまりは使いっ走りの伝令ではなく、大臣とかそんな感じのちゃんとした交渉人という事かな? ある程度いい返事を聞くまでは粘りたいって感じなのかもしれないな~
「では周辺国家と同盟を結ぶ時にも出した条件をそのまま伝えよう。フォーレグス王国は金や技術、資源や輸出入も全部国内で事足りていて、例え全ての国が反旗を翻したところで何一つ問題はない。それを踏まえたところでお前達に聞きたいが、お前達に何も求めてはいないのだがそれでも同盟を結びたいというのなら、そちらは何を提供できるのか聞かせてくれないか?」
こちらが言った内容を理解したのか一瞬絶句した後、さっきから代表して喋っていた使者が、確認するようにこちらへと問いかけて来た。
「そ、それは今まで同盟を結んで来た国々にも同じ条件を出して、その交換条件を受け取っているという事でしょうか?」
「ああ、だからこそ同盟を結ぶに値すると判断したからな。でだ、お前達はフォーレグス王国と同盟を結ぶに辺り、何をこの国にもたらしてくれるのだ? おそらく同盟を結べばフォーレグス王国の技術力を自分達の国にも導入できて、発展して行けると思って同盟したいとか言い出したのだろうが、なぜ僕達の国がお前達の国を発展させていかないといけないかさっぱりわからん。特に苦しい時には見捨てた国だからな。そのくせ問題があれば元先生だからと頼って来る。はっきり言えばお前達の国との付き合いはこちらにとってデメリットしかない」
「わ、分かりました。このたびは突然の来訪、誠に失礼いたしました。条件を満たせるよう話し合って、また伺わせていただきたい。それでは失礼します」
そう言って使者達一団は帰って行った。
本当に深く考えれば散々利用されるだけされて、いい事が全然なかったよ。教え子っていうのは可愛いものだけれど、損得勘定で懐かれるっていうのは逆にうっとうしいものだ。クレクレ君だったハウラスとどっちが嫌な存在かな? ・・・・・・どっちもそこまで変わらない気がするな・・・・・・
ゲームでもして気分を切り替えよう。まだまだレビルスと成長して行くにはスキルLVが足りていない。隣に立ってガンガン戦えるくらいには強くなりたいものだな~
リアルの問題もとりあえず先延ばしって感じになったので、またゲームで冒険をする日々が訪れた。スライムの時とは違いアラクネは生産ができるので、自分用の装備などを作って行く。あちこちに出かけていたので、素材も随分手に入ったからな~。さすがにそろそろ初級の武器は卒業したかった。
換金物などを手に入れていたので、それらを売って買えば直ぐ手に入るのだけれど、やはりこういうゲームは自分で何とかしたいって思う。大半の人は面倒とか生産する暇があるのなら普通に冒険したいって人の方が多いのだけれど、僕はじっくりと遊びたいっていうプレイスタイルだった。そのせいで最先端を逃すだろうけれど、僕は返って情報が出回った後でのんびりと遊びたい派だ。
そんなことを考えつつ、ショートスピアの上位のノーマルスピアを製作している。自分用の武器なので、店売りと違い自分の扱いやすいようオーダーメイドで作ることができるので、しっくり来る出来になった。まあデザインとかはほぼ考えていないのでほんとに戦闘用って感じの物だけれどね。後は大工のスキルを使い、弓矢を製作する。こっちはショートボウからロングボウへと変える。この二つの武器以外は余分なスキルポイントを消費したり、枠を取られるので作らないことにした。後は鎧をレザーアーマーからハードレザーアーマーという堅めの革鎧に変える。盾は一応作っておくけれど、ショートスピアと違いノーマルスピアが両手持ちだった為、しばらくは出番がないかもしれないな。そういえば、こっちの世界だと装備の魔道具化とかってできるのかな?
試してみたけれど、どうやら無理そうだった。まあ、武装が新品になってランクアップしただけよしとしておこう。
レビルス達の武装はと見てみるけれど、レビルスはビゼル姫と同じ格闘での戦闘で、アルタクスは片手剣に盾、サブウェポンに弓って感じだった。そしてどうやらギルドパペッツでポーションや、装備は買い揃えているみたいなので、こっちで作る必要性はないみたいだな。ちょっと残念だ。それにしても魔道具が作れないっていうのはなんだかがっかりだな~
ゲームバランスが壊れる可能性があるからなのかな?
確かにプレイヤーには作れないってなって来るなら、クエストや敵からのドロップで手に入る魔道具はかなり重要になって来るだろう。そう考えれば、なかなかいいバランス設定といえるな~
生産としてはちょっと不満があるけれどね。
それはそれとして、今日も朝からレビルス達と一緒に冒険へと旅立とう~
今日はみんなで進化を進めることになった。いつまでも初期種族のままというのはいい加減きついので、進化して能力値なども上げようってことだな。その為、三人分の進化素材を集めることになる。例の如く収穫とかの面倒な作業だね。今回の進化はアラクネだったので、さすがに僕も手持ち素材では進化できなくて素材集めをしなければ駄目だった。こればかりはレビルスを手伝ってやることもできないし、アルタクスもサポートのしようがないというか、アルタクスも収集系のスキルがないので、同じように苦労している。
まあとりあえず、自分の進化素材を確保して来よう。後々敵が出て来るところとかでの収穫があるだろうからね。
まずは進化先を決めてから進化素材を集めなければ行けないけれど、戦士寄りか魔法寄りかどっちがいいだろう・・・・・・まあパーティーバランスからすれば魔法寄りの方がいいかな~。このキャラ自体も防御面は不安があるしね。
進化後の種族名はアラクネリーダー。どっちに進化をしたところで種族名には違いはなさそうだな。最初に集める進化素材は月光草。上級の敵が沸く森に入って直ぐの場所によく生えている薬草だ。収穫のさい敵が来ないかって心配は必要なさそうかな? 奥に行かなければエンカウントすることはないだろう。後は運が悪いか、他のプレイヤーがトレインしていなければ大丈夫だろう。
サクッと収穫して次の伐採へと進む。スキルがあるとかなり楽だ・・・・・・進化素材の凍真粘樹の丸太もササッと集め、ラストに魔造魂の鉱石とやらをモンスターに襲われそうになりながら採掘して揃えた。やっぱり最後は敵が出て来る所での採掘だったか。ここだけはサポートしてやれそうだな。
自分の分の進化素材は揃ったので、二人の様子を見に行ってみると永遠と収穫作業の最中だな。運が良ければ二日くらい、悪ければ四日くらいかかるだろうか? 子供には苦痛に感じる時間かもしれない。そんな訳で適当に雑談でもしてやれば、手は機械的に動いてそんなに苦痛に思わないかなって考える。
「レビルスはどうしてそんなに強さに拘るのだ? もっとのんびりとやって行ってもいいと思うがな」
『母上や父上のような最高峰の冒険者になりたいんだ』
おや? 僕らの冒険なんて、吟遊詩人とかの歌になるようなものではないはずだが・・・・・・眷属にでも聞いたのか?
「そんなに凄いのか?」
『ああ、勇者ですら母上には勝てなかったと聞く。父上は魔王すら超える力を持っているらしい。僕もそういう強い人間になりたい』
「まあ気持ちはわからないでもないがな。どんな強者でも、弱かった時代というものが大抵はあるものだ。いきなり力を手に入れたって者は何かしらミスや油断、付け入る隙ができる。じっくり隙なく強くなって行く方が、僕としては大事だと思うがな~」
『経験がありそうな言い方だな』
「僕自身の体験談ではないがな。周囲に強さに溺れて身を滅ぼした者なら何人か見て来た。大抵は無様な最期を迎えるものだぞ。それに対して地味に思えるだろうが一歩一歩確実に強くなるやつは恐ろしい。少し目を離した間に予想以上に強くなっていたりするからな。突然力を手に入れた奴は隙が大きいが、そういう地道に強くなったやつには隙がまるでない。よく地道なやつは弱いと馬鹿にされるものだが、大抵の場合笑っていた奴はそういうやつらに倒されて転落人生を送っていたな」
『ほー、そういうものなのか・・・・・・僕も地道にやって行った方がいいのだろうか?』
「地道っていうのはそう悪いものじゃない。同じような素振りを繰り返すって行為は体にその動作を覚えこませているものだ、いざって時には頭で攻撃しようって考えるより先にもう動いていたりする。それはかなり違うぞ、頭でこう攻撃しようって思って行動する奴らとは違い、敵を前にしたらもう自然と戦っているのだ。考えて戦っている奴はその速さに付いて行く事ができない。まあ力があるからある程度力押しって感じになるだろうがな」
『でも最後には負けるのだろう?』
「ああ、何も考えなくても体が反射的に動くやつらが、そこに頭を使った動きを取り入れて来る。最終的には負けるのが当たり前だろう。強い奴はそれ以上努力もしないが、弱いとわかっているやつは強くなろうとして一歩一歩鍛えて強くなるのだからな。僕ならそういうやつらを馬鹿にしたりしようと思えないな。正直言って相手にしたくないタイプだ」
『確かに、際限なく強くなられるのはきつそうだ。あ、紅爆草が出た』
「お、おめでとう。次だな~」
『うむ。アル姉さまはどうだ?』
「こちらはまだです。後で追い付きます。次に向かってください」
『わかった、先に行っているぞ』
やっぱり雑談して黙々と作業していれば、それほど苦痛なく集めて行けそうだな。アルタクスはあまり喋る方ではないから、こういう雑談相手はちょっと難しいかもしれない。案外レビルスが焦って強くなろうとするのは、のんびりするような時間を作ってやれなかったからかもしれないな~。アルタクスにはもう少し気軽に話しかけたりして、緊張をほぐしたりしてやるよう、コミュニケーションをするようにって指示を出さないとかもしれない。
アルタクスの方がコミュ力は低いってことかな? ・・・・・・サポート役の選択を間違えたか?




