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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第三章  自由を求めて
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ミノタウロス討伐クエスト

 「ミノタウロスのような、大物の討伐依頼を見せて欲しいのですがいいですか?」

 前に見た受付の人がいなかったので、ブレンダがミノタウロスやリザードマン、ゴーレムなどの討伐部位などを受付に出しながら話をする。

 「少し待っていてください」

 受付の人は討伐部位を持って奥へと引っ込み、しばらくした後に戻って来た。

 「まずはこちらをお返しします。それで、現在ご紹介しても問題ないと判断された討伐クエストは、こちらになります」

 そう言って差し出された羊皮紙を、ブレンダが受け取る。

 みんなでそれを確認するとリストの中にはミノタウロスも載っていたので、ブレンダがこれでいいよねって感じでみんなを見回す。全員が頷いたのを確認して、ブレンダが代表して受付に依頼の話をした。

 「では、このミノタウロスの討伐依頼をお願いします」

 「わかりました、こちらが詳細になりますので、ご確認のうえこちらにサインをお願いします」

 全員でサインをしてクエストを引き受ける。

 その後はミノタウロスがいるはずの遺跡に行く前に、必要な消耗品などをギルドで買い足して、そのまま乗合馬車で近くの村まで移動する事になった。

 今回の移動中は、僕を含めた全員で周りの警戒をしながらの移動を心がけていたのだけれど、幸いというのかこういう時に限って特に何も起こる事もなく、目的地の村へと到着した。ちなみに、移動にかかった日数は三日だった。

 「さて、ここからは森の中を二日歩くみたいね。丁度お昼時なので、村で昼食をいただいてから出発しましょうか」

 ブレンダの意見にみんなが賛同して村唯一の食堂へと向かう。

 「あの冒険者さん、申し訳ないのですが、スライムを中に入れるのは遠慮してもらってもいいですか?」

 食堂に入ったとたん、店員にそう止められて僕は入れなかったけどね!

 よくよく考えたら学校でも微妙な視線向けられていたし、こんな田舎の村じゃあモンスターを連れて入るとか嫌われて当然だったかもしれないな~

 特に気分を害することもなく、そういう事もあるかもなって感じに受け取った。

 「外に出ているから、後で合流しよう」

 レイシアにだけ聞こえる声でそう言って、村の外へと出て行くことにした。

 下手に店の外にいたとしても、通りがかった村人に攻撃されないとも限らないからね。

 かえって村自体から出ちゃって、森の中でのんびりしていた方がまだましだと思えた。

 まあついでに、魔法開発でもして時間潰しでもしていよう。

 肩から飛び降りる時、レイシアの表情が冷たく固まっていたけれど、よほど一緒に食事をしたかったのかな? そういえば、学校の食堂などでも一緒にご飯を食べたがっていたことがあったな・・・・・・

 まあブレンダもいるから大丈夫だろう。


 それから一時間くらいして、パーティーのみんなが村から出て来た。

 魔法の開発状況は、とりあえず自分と他人のステータスを見る事くらいまではできるようになった。微調節というか数値の安定化がまだなので、実用化には至っていないけれどね。

 具体的にいうと力十五とか表示されているところに敏捷百六とか数値がばらついているというか、開き過ぎているというか、多分数値化の単位がまとまっていないのだろう。

 徐々に統計を取ってまとめていくしかないようだ。

 ちなみにこの能力値に僕自体の能力値データは、あまり参考にできなかった。

 多分僕のステータスは人間よりも優れた値を叩き出している部分と、劣っている部分があって比較対象には向いていなかったのだと思う。

 だから村を出たついでに、村人でデータ取りのようなものをしながら、時間潰しなどをするのはある意味都合がよかった。

 何気にパーティーメンバー達も、見習い冒険者とはいえ一般人よりも優れた能力値だったりして、データがばらついちゃっていたのだよね。とりあえず、デフォルトの基礎になる基準点を探らなくっちゃ使い物にならない。

 村から出て来たレイシアが僕のことを探していたので、木の上から姿を見せるとこっちに手を伸ばしておいでおいでとするので、やれやれと思いつつも飛び降りてやる。案外寂しがり屋さんなのかもね。

 さて僕の方はこれくらいにして、今回のクエストの方に集中しよう。


 今回も基本見守るだけで、よほど危なくならない限りは手を出さない方針になっている。

 四人で協力してミノタウロスを討伐、無事帰れる事を目標にしている為、せいぜい助言するぐらいで後はお任せって感じの計画になっている。

 新米冒険者でミノタウロスの討伐って、本来なら難易度が高い気もしないでもないけど、どうやらスライムに倒せて自分達には無理って言うのが、彼女達には納得いかないようだった。

 なので助言は有りで極力手は貸さないっていうのが、今回の僕の立ち位置になっている。

 レイシアの肩に乗って半分は警戒、半分は魔法研究に意識を向けながら、のんびりと森の中を移動して行く。さすがに街道と違い森の中ではモンスターが現れて襲い掛かって来るが、それらの討伐も基本お任せだった。

 「右にコボルト一!」

 フェザリオが周りを見回してみんなに報告している。まあ、微妙に経験不足って感じだけどね。

 「左上方の木の上、ゴブリンアーチャー」

 フェザリオの見逃した敵を、フォローのつもりで報告する。

 フェザリオはしまったって感じで顔をしかめていたけれど、まあ最初から完璧にはいかないだろう。それに僕は木の上から全体を見ているのに対して、みんなは下にいる関係で見えなかったって可能性もあるはず。

 コボルトの発見報告でそっちに意識がいっていて、ゴブリンアーチャーに対処できない分を、フェザリオの取得した魔法攻撃が炸裂して挽回していた。

 属性による追加ダメージは無いけれど、集中した弓による攻撃ができなくなったようで、枝の上でバランスを整えようと喚きながら騒いでいた。魔法を受けた衝撃で、枝から落ちそうになっている。

 お陰で全体の流れに余裕ができ、たいした怪我も無く襲って来たコボルト、ゴブリン、ホブゴブリンの群れを殲滅することに成功する。

 「みんなお疲れ様! 怪我もないようなので、問題なければこのまま進むわよ!」

 おー、ブレンダは張り切っているな~

 ようやくパーティーとして頼もしくなって来た仲間に、嬉しくて仕方がないって感じなのだろうな~

 その後も雑魚と呼べるモンスターとの戦闘が数回に渡り続き、野営をしながら僕らは予定通りの2日後に、森に隠された遺跡へと到着した。


 「小休憩をして、疲れが無いようでしたら、遺跡へ潜るわよ」

 ブレンダの発言に全員が頷き、それぞれが休憩に入る。

 ここから先は、集中しないと油断したら危ないからな。

 いざって時には手助けしないといけないし、手を出していいのかどうかの判断もしなくっちゃいけない。まあ、なるようになるかな~

 レイシアも、がんばるよって感じでこっちにアピールしていた。

 「そろそろいいかしら? 行きましょう」

 五分ほど休憩した後ブレンダがそう言って、みんなで遺跡へと潜って行く。

 「道を照らし出せ、ライト」

 レイシアが光の魔法で周囲を照らす。初級魔法が使えるようにはなったけれど、まだまだ魔法の威力も低いレイシアが、こういう細々とした魔法を担当する。補助魔法に威力は必要ないからね。

 隊列の一番先頭にレイシアの召喚した狼、その後ろにランドルが続きフェザリオ、ブレンダ、レイシアと僕、そしてしんがりが二匹目の狼って感じで進む。

 このパーティーは戦士系が一人しかいなくって、他が魔法系だからどうしても前衛が不足するのだ。

 盗賊系もいないから、罠とか解除できないし・・・・・・

 なのに攻撃魔法が使える者が僕を合わせたら4人? バランス悪過ぎるだろう・・・・・・


 しばらく進むと最初の分かれ道に辿り着いた、道幅は三人並べる程に広く、床に積もった埃には蹄の跡が結構一杯ついている。

 しょっちゅうここを通っているのか、それとも複数いるとか? ちょっと嫌な予感がするな。

 「まずは左の方へ行ってみましょう」

 最初の分かれ道のT字路は、左に折れるようだ。

 床をじっと見ておそらくここにいるミノタウロスも、左の方の通路へ歩いて行っているんじゃないかと判断する。

 そうなると、後ろから敵が来る可能性が高いので、なるべく後ろを警戒するように気を付けておいた。

 そんな僕の警戒は考え過ぎだったのか、しばらく通路を進み道なりに右へと曲がってまたしばらくすると、通路の先からドシン、ドシンと重量のある巨体の足音と振動が伝わって来た。

 「戦闘準備」

 ブレンダが静かにみんなへと指示を出す。通路での戦闘とはいえ、それなりの広さがある場所で、周りに隠れる場所もない今回は、正面からの戦闘に備える事しかできなかった。

 前方からノシノシとやって来るミノタウロスも、魔法の光で侵入者に気が付いているので、こちらの動きを警戒しながら、着実に迫って来ている。お互いに不意打ちは無しの、対等な勝負になりそうだ。

 「召喚、ファルコン敵の撹乱をお願い。ウルフも牽制して!」

 鷹と、狼二匹がミノタウロスへと果敢に戦闘を挑む。

 狼に続くようにランドルも走り出して、飛んで来る鷹に注意を向けたミノタウロスに向かい、ブレンダが魔法を放つ。

 「凍てつく刃よ、アイスソード!」

 不意打ち気味に左肩に当たった魔法に驚き、隙を見せたミノタウロスに鷹が攻撃して偶然なのか右目を傷付ける事に成功する。

 おそらくそう深い傷ではないので、失明まではいっていないだろう。それでも右目が少し見えにくくはなったはずだ。幸先のいい出だしになったな。

 その後も狼や鷹ががんばって相手の注意を引き、ランドルが斬り付けては攻撃を上手く受け流して立派に前衛を果たし、ブレンダが魔法によって体力を削り、レイシアが相手の妨害を誘う魔法で相手の隙を作り出す。

 フェザリオは怪我人が出る可能性を考えて、極力魔法の使用を控えながら、それでも物理攻撃に参加してがんばっているのがわかった。

 うん、このまま行けば少し時間はかかっても、余裕を持って討伐に成功するだろうと思われた。


 ドシンドシンドシンドシン・・・・・・


 後ろから聞こえて来たこの音を聞くまではだけれど・・・・・・

 「集中!」

 みんなの気が散りそうになる中、みんなにまずは目の前の敵に集中しろと伝える。

 そして後方からやって来る複数のミノタウロスにやっぱりそうだったか! って思わず叫びたくなったよ・・・・・・

 まずは冷静に、敵の数の把握だ。うん、ぱっと見で五体はいるね。まだ後ろからも来ているかもしれないけれど・・・・・・

 まだ距離があるうちに足止めしておくかな。

 「シェイド! そして、スパイダーネット!」

 ミノタウロスの集団に向けて先頭がいる通路周辺を闇で覆うと、その集団がいた辺りに蜘蛛の巣での足止めをおこなう。

 これで多少の混乱と時間稼ぎが出来るはず、その間に前の敵を排除しないと厳しい戦いになるかもしれないな。まあ僕が魔法を使えば希望的な判断だけど、後ろの敵を全滅させることは出来ると思うけれどね。

 こういうアクシデントも込みで、みんなの実力をよく見ないとだろうね。


 ブモォー


 進行方向から聞こえて来たミノタウロスの鳴き声で、無事に討伐に成功した事を理解した僕は、念の為に後ろの集団へと魔法を放つ事にした。

 「シェイド、スパイダーネット」

 足止め用に使った二つの魔法、これでもう少し時間を稼ぐ事が出来るだろう。

 「背後からの敵は最低で五体だった。おそらくだが、もっといると思うよ」

 ブレンダが聞きにくそうにしている中、情報は正確に伝えておいた方がいいと判断して余計な事は言わず、現状を報告する。みんなが厳しい表情を浮かべる中、ブレンダは冷静に判断して指示を出した。

 「ここで立ち止まっていても、何にもなりません。隠れる事の出来る場所か撤退できる別ルート、何かしらの進展を求めて移動しましょう」

 「ああ、そうだな」

 ランドルもそう呟いて、狼を先に歩かせて足早に通路を進み出した。

 「あれだけミノタウロスが歩き回っているから、おそらく通路には罠は無いと思うよ」

 今までのようにのんびりとしている時間も無いと思い、そう意見を出す。

 もたもたしていると後ろから一杯敵が来ちゃうから、さっさと移動しちゃった方が得策だろう。

 「そうね、みんな全力で走り抜けるわよ!」

 僕の意見に賛成したブレンダが、そうみんなへと指示を出した。今更だけど、ブレンダはパーティーのリーダーなのだなーって思ったよ。他に適任もいないからブレンダ以外の人選はないと思うけれどね。


 どれくらい走ったか、かなりの距離をただ真っ直ぐに進み道なりに右へと曲がると、しばらくしてまたT字路にさしかかる。さすがにここは警戒もなく走り抜けることは出来ないので、止まってウルフを先行させていた。

 あー、これ直進と右ってことは、この遺跡は外周にぐるりと通路があって、右に行くと中心部へ行くって事じゃないのかな?

 遺跡の構造を頭の中に思い浮かべていると・・・・・・まあ今は頭ないけれど・・・・・・足止めして前に進めないやつらが逆走してこちら来ているんじゃないかなって思っちゃったよ・・・・・・

 そりゃグルグル回っているのなら、一杯足跡も付くよね。まあ何が言いたいかというと、前後から敵が来ていて逃げ道はありませんって事かな・・・・・・

 「右に行ってみるしか、なさそうだ」

 ぽつりとそう言った・・・・・・逆走して来るミノタウロスの相手は、彼らには難しいだろう。

 ブレンダはこちらを見た後、ふむって感じで少しの間考えた後、指示を出して行く。

 「確かに、それ以外なさそうね」

 若干顔色を悪くしながら発言すると、敵の有無だけ調べた後右へと進む。

 曲がった後直ぐにまたT字路になったところを見ると、反対の方にまたT字路があるのだろう。中心の部屋まで、ずっとこのまま交互にT字路があるパターンかな?

 僕は足元の蹄の進行方向を見て発言する事にした。

 「ここは右の方が進行方向らしい」

 地面を示しながらそう言うと、なるほどと頷かれる。

 「じゃあ右回りで進みましょう」

 「あのさあ、このまま進んでも出口は無いんじゃないか? ミノタウロスの討伐はもう一体は終わっているんだし、どっちかから来るやつを突破する方がましなんじゃないか?」

 ランドルがそう言って来た。

 僕を戦力とした場合なら、その考えもいけなくは無いと思うけれどね。

 「確かに討伐自体は達成しているけれど、時間がなかったから依頼達成の討伐部位は取れなかったよ。それにまだ絶対のピンチじゃないのだから、バグに頼るのは早い気がする」

 レイシアが頼ることなく、自分達の力でやり遂げてみたいのか、そうランドルに反論した。

 ふむ、よくよく考えてみるとこれだけの数のミノタウロスがうろついているってことは、ひょっとしたら上位個体がいる可能性もあるか。

 小説やゲームなんかを見ていると、ミノタウロスって大体ボスって位置に置かれていたから、ここまでうじゃうじゃいるって事は、このまま進むのも危険って考えもあるね。ひょっとしたら王様みたいな奴でもいるのかもしれないし・・・・・・

 「強引でも、突破して外に出る方がいいのかも。たぶんここは新米パーティーが挑む遺跡じゃないな」

 「じゃあ、早く撤退しようよ!」

 今まで大して意見を言わなかった、フェザリオがそう訴えかけて来る。一刻も早く逃げ出したいといった表情だな。

 まあ結構絶望的な状況だしね。後は僕がどこまでやれるかって感じかな?

 「そうね、このまま進むよりはどこかで討伐部位を手に入れて、さっさと撤退した方がいいかもしれないわね」

 「じゃあどっちに進む? どっちに行っても、複数来ると思うけれど」

 ブレンダに続き、レイシアも意見を言う。さすがに僕の意見を聞いてレイシアも無理と判断したのか、悔しそうに脱出することを選んだみたいだ。

 本当にここはミノタウロスだらけだな・・・・・・

 「頭のいいやつは少ないと考えて、逆走するやつの方が少ないって予測はどうだ?」

 ランドルがT字路を直進することを提案する。

 「多分どっちもそう大差ないと思う」

 おそらく半々くらいだろうなってね。迷っている時間の方がもったいないよ。

 「そうね、通路を直進して出口を目指しましょう」

 そうブレンダが締めくくって、僕達はT字路まで少し戻って再び移動を開始した。


 どれくらい進んだか、前方から複数の巨体の走る足音が聞こえて来る。

 「手間取ると後ろからも来ると思うから、今度は僕も参戦するぞ」

 「お願いするわ」

 短くやり取りして僕達は戦闘を開始した。

 「ファイアウォール」

 とりあえず敵の数を絞るように、火の壁を立てて数を絞る。

 勇敢にも突破して来た固体を優先的にしとめて行くのだ。

 とりあえず、一体はみんなに任せて、それ以外の相手は僕がしよう。

 初めは二体出て来たので、右のミノタウロスの顔面に突撃する。

 「フライ」

 ポーンという感じで目の前に飛ぶと、ようこそとミノタウロスが待ち構えていて、持っていた棍棒を振り降ろすのが見える。

 こちらのスピードに合わせたゆっくりとしたスイングは、このままだと直撃だけど、飛行速度を一気に引き上げた僕に対応するには今更どうにも出来ない鈍い動きだった。

 難なく顔に張り付いた僕は、いつもの手順で窒息を狙う。

 初めのスライムの時は核があったので、それなりの防御行動が必要だったよなーって、のんびりと考えているうちにやがて取り付いたミノタウロスが動かなくなる。後ろではパーティーメンバーが連携してもう一体と戦闘しているところだった。

 うん今度も一体だけなら、何とかいけそうな感じだな。そんな事を考えていると、火の壁から次々とミノタウロスがこちらに来るのがわかった。

 「フリーズブリット」

 ついでなので、魔法の威力を検証しておこう。

 一撃で倒せるようならかなりの魔法力ってことになるし、今後窒息を狙うよりも戦闘時間を短縮できるかもしれないからね。


 ブモーー


 とりあえず先頭でやって来る三体に向けて魔法を飛ばした感じ、それなりのダメージは受けたみたいだけれどまだまだ元気ってところかな。

 逆に怒り狂ってこっちに向かって来ているみたいだ。ふむ、魔法に対してある程度の抵抗があるって線もあったね。前のジャイアントのパターンを忘れていたよ。

 「スパイダーネット」

 怒りに我を忘れたミノタウロスに、これを避けることはできなかった。

 いい感じで後続を妨害するように捕獲できたよ。

 蜘蛛の糸に絡め取られたミノタウロスに、順番に飛びついて倒して行く。三体倒した後ろにはまだ五体もいたけれどね。


 「よし、止めを!」

 後ろから聞こえて来た声で、相手をしていた一体を倒せたのがわかった。僕が四体倒している間にパーティーで一体か、これは優秀といっていいのか、どうなのだろうね。

 単純に考えるなら、新米パーティーにしては優秀なのだろうな~

 「スパイダーネット」

 更に現れた後続の五体もまとめて絡めて、次々と襲い掛かって行く。それにしても、これじゃあどっちがモンスターだって感じだな。まあ今の僕は間違いなくモンスターだけれど。ミノタウロスを倒すスライム、ちょっと相手したくないよな・・・・・・

 のんきにそんな事を考えながら、ミノタウロスを倒して行く間、レイシア達は倒したミノタウロスの討伐部位を回収していた。

 まあせっかくなので、倒したやつは全部、回収しておきたいところだな。

 「何とか、回収も間に合ったわね」

 ブレンダが、安心したようにそう言うと、メンバー達も次々とやれやれって発言する。

 「いつ後ろから襲って来るかって思うと、怖かったわ」

 「だな。急ぎたいのに妙に緊張感があって、いつ失敗するか戦闘中びびりまくったぜ」

 「僕はあまりの怖さに、昔に逆戻りしそうで不安になりましたよ」

 僕らは移動しながらつかの間の静寂を噛み締めていた。

 その後も、前方から三体のミノタウロスが現れたので、二体を僕が一体をみんなが相手をしていると、後ろから追いついて来るミノタウロスが三体いた。

 みんなはまだ戦闘中なので、追いついて来た三体は僕が相手をする。

 結局魔法ダメージで体力を削って行くより、窒息を狙うのが一番早いってのがわかったな。

 討伐部位を回収して、僕らは早足に進みようやく入り口へと戻って来ることができた。

 「助かったー」

 フェザリオが思わずそう叫んで、入り口を出て直ぐの地面に倒れ込むように転がった。

 まあ気持ちはわからないでもないね。

 「ちょっとハード過ぎだよね」

 レイシアも、どこかホッとしたようにそう言う。

 「こんなにきついなんて、思ってもいませんでしたわ」

 「帰ったら、ギルドに文句を言ってやろうぜ!」

 ブレンダとランドルもどこかホッとして、明るい声を出しながらギルドへの文句を言っていた。

 レイシアは遺跡を見詰めてどこか誇らしげだった。

 ちょっと前までは落ちこぼれと言われていたのに、今ではパーティーとしてだけれどミノタウロスと実力で勝負できる程に力を付けたのだ。ちょっと見違えた感じがしたよ。


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