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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十九章  フォーレグス王国
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赤ちゃん

 魔界の姫に、人間界侵略を諦めてもらえた後、フォーレグス王国の町へと姫を連れて来て家を紹介し、ここでの常識などを教えて行くことにした。下手に野放しにするよりは、やられたら困る事などを教え、なるべく人間界を好きになってもらえるように、愛着が湧くよう仕向けていった方が得策かと考えたのだ。

 早速効果があったかなって思えた出来事としては、やはり食事だろうか?

 目の前で物凄い勢いで食べているのを見ると、何とか上手くやって行けそうな気がする。見ているだけで幸せそうな表情を浮かべていたからね。

 問題は、上手くやり過ぎるのも困りものかなって思えるところだな。恋愛なんてレイシアだけでも手一杯って感じなのに、姫にも好かれたらたまらない。よくハーレムとか羨ましいとか言われているけれど、僕にはそんな甲斐性はないぞ。

 あれっていい面だけしか見ていないからそう感じるだけなのではって思えてしまう。女性の独占欲って結構ドロドロしていて、表面上は仲良く見えるけれど裏でどんな事態が進行しているのかって考えると恐ろし過ぎる。そしてそこで無責任な発言が引き金となって、一気に崩壊したりとかね。

 最悪な事が、誰が一番みたいな発言だろう。この言葉をポロリと洩らした場合、自分も巻き込んだ殺傷事件が起きたとしても不思議ではないと考えられる。でもって女性は誰よりも自分が一番だと言ってもらいたい生物だったりするので、何かにつけて言わせようとして来るのだ。まあ予想だが・・・・・・

 そう考えると、やっぱり一人と付き合うので精一杯かなって思える。


 しばらく姫に付いて町の案内や、姫以外にも何かしら問題が起きていないか町の様子などを窺ったりして過ごしていると、司書パペットから連絡が来た。魔界からのちょっかいが終わったのにまた別の問題が発生したのか?

 『バグ様、至急拠点にお戻りください。レイシア様の陣痛が始まりました』

 「直ぐ戻る」

 もうそろそろだとは思っていたけれど、いよいよって感じだ。陣痛が始まっても直ぐ出産とはならないようだけれど、数日のうちに赤ちゃんが生まれて来るだろう。いよいよ父親になる瞬間が来たようだ。

 「レイシア、大丈夫か?」

 転移して寝室に戻って来ると、僕は早速レイシアの手を握って声をかける。確かこうして手を握って声をかけていくのがいいとか聞いたことがある。あれはもう少し後の話だったか? まあお喋りして気を紛らわすとか、そういう話だったように思う。

 「バグ、大丈夫。まだ生まれないよ」

 「そうか。がんばれよ」

 「うん。がんばる!」

 そんな感じで励ましていると、枕元に置かれていた人形がふと目に留まった・・・・・・。西洋人形のようで黒いドレスを着た、妙にリアルな出来の人形だった。ある種の芸術性があって、高い技術力が窺える。

 しかし注目すべき事柄はそんな事ではなかった。この人形には蝙蝠の羽と尻尾が生えているのである。そしてその顔はごくごく最近知り合いになったばかりの魔界の姫を彷彿とさせる。人形らしく多少デフォルメされてはいるものの、最近の事なのでおそらくあの姫の顔だと判断できた。

 そういえば、姫のステータスを見た時に妙なスキルが付いていたよな? 確かアルタクスの人化のように、人形化というスキルだったはず。まさかこれって、姫本人か?

 「バグ、どうしたの?」

 急に黙り込んだ僕を不思議がって、レイシアが声をかけて来たみたいだ。

 「あーいや、こんな人形見た事なかったからどうしたのかと思ってな」

 「赤ちゃんが生まれるし、パペットが作ってくれたんじゃないのかな?」

 「なるほど」

 裁縫パペットならこれくらい作ってくれそうではあるが、さすがに姫には似せないだろう。しかし、どうやってここに侵入したのだ? っていうか、僕以上の能力を持っているのだから、侵入していてもおかしくはないか・・・・・・ここは何で侵入したのかといった方がいいだろうな。

 レイシアはまだ魔界と争った事は知っていても、姫がやって来たことは知らないので、内密に確認しておかなければいけないだろう。

 (お前、何でこんなところに居るのだ?)

 そう念話で話しかけてみた。人形に話しかけるとか、気が狂ったかと思われそうだけれど、これは絶対に姫だと思う。そういえば人形になっていたら、会話とかできるのかな?

 『友の妻とやらを見てみたいと考えていたんだがな。ただ来てみたらなにやら子供が生まれると騒いでおったからしばらく様子を窺わせてもらおうと思っただけだわ』

 普通に喋りやがった・・・・・・そしてやっぱりこれが姫で間違いなかったか・・・・・・

 さすがにここにレイシア以外の女性を入れるのは問題があるぞ。これじゃあ浮気だって言われてもいい訳ができないのではないか? 何かしら対策が必要だな。

 幸い、レイシアは人形どころではないようだから、他の人形と入れ替えるっていう手が使えるかもしれないな。

 (今から寝室まで来て、ここにある姫そっくりの人形と、別の黒いドレスを着せた人形を作って来てくれないか?)

 裁縫パペットに念話を送り、指示を出しておく。深く追求される前にさくっと入れ替えてもらわないと危険だ。それと一応念の為にダミーの人形も必要だろう。そう思って姫そっくりの人形も作ってもらうことにした。

 やって来たパペットが、レイシアの枕元にあった姫を連れて部屋から出て行く。すると姫から念話が来た。

 『何だ何だ! わらわをどこへ連れて行くつもりだ!』

 (うるさい、不法侵入者め。こういうプライベートの部屋は、いくら親しい者でも勝手に立ち入ってはいけないのだぞ・・・・・・それと一応念の為にダミーを作らせてもらう。いざって時にそいつと入れ替われば安全だろう?)

 『ふむ? だが赤ん坊は見たいわ』

 (まだもう少し時間がかかると思うぞ。だからそこまで焦らなくていいだろう)

 『そうなのか、まあならいいわ』

 ふむ。こういう生命誕生の瞬間とかを知っておくのも、姫の教育にはいいかもしれないな。ただいくら教育にいいとはいっても、同じ女性だからと見せたくはないな。近場には置いておくが、直接は見せないようにしよう。どうせ見たいのは赤ちゃんだろうしな。


 しばらくすると陣痛も収まったのか、レイシアもホッとした感じで雑談を始めたので、それに付き合うことにする。結局その日はそのまま何事もなく過ぎ、数日の間落ち着かない時間が過ぎて行く。その間に裁縫パペットの作った西洋人形が三体程完成して、部屋に飾られていた。姫そっくりの人形の方は、姫に渡していざという時には入れ替わるように言っておく。

 さすがにこれを飾る訳にはいかないからな~ いずれ姫の事はレイシアに紹介しなければいけないので、その姫そっくりな人形を置いておくとか、ちょっと遠慮したい。

 「なあバグとやら。わらわはもう少し可愛いのではないか? これはちょっとふっくらし過ぎというか、丸顔過ぎるというか・・・・・・」

 人形を見ていた姫が、そのクオリティーに文句を言っている。こういうところは普通に女性だなって思う。やっぱりそういうところはどの世界の女性でも気になるのだな~

 しかし、パペットの技術を疑われるのはなんだか納得いかないな。こうなったら両者を写真に撮って、徹底検証してやろう。他のパペットも呼んで、姫の目の前でそのできについて調べてもらう。

 人形化した姫と、そっくりに造り上げた人形を並べ、さまざまな角度から撮影された写真を透明なフィルムに印刷して、その両者をことごとく重ねて行く。すると、恐ろしいまでにぴったりと重なったのがわかった。おー、いくらなんでもこれは凄いんじゃないかな? 寸分の狂いもなく、まったく同じ造詣を作り出すとか技術力の高さが窺えるぞ。

 「凄いな。ここまで完璧にコピーできるとは」

 「ぐっ、確かに。文句の付けようもないのだわ」

 さすがにここまで物的証拠を提示されてしまえば、否定もできまい。裁縫パペットがどうだって感じで威張っているのも納得できる。よくやったと、褒めておこう。

 それにしてもここまで力をいれて作るとは思ってもいなかったな。相変わらず、妥協がないというか、物作りには全力投球だよな。

 「あー、それとレイシアにはいずれちゃんと紹介するから、本人とばれるような人形の姿で、寝室に入るなよ」

 「いくら親しくてもとか言っていたやつか?」

 「ああ、親しき仲にも礼儀ありって言ってな。こういうことは気にするやつは気になるものなのだ。自分勝手に行動して相手に嫌われたら元も子もないだろう? だから親しい間柄、例えば恋人や例え夫婦、親兄弟であっても踏み込んではいけない部分っていうものがあるから、それを理解してくれ」

 「むー、なかなかに人というものは厄介だわ」

 「まあそうだな。でもそれが仲良く付き合って行くためのコツでもある」

 「ふむ。努力はしてみよう」

 結構友好的な姫様で助かったな。支配するとか言っていたから、もっと横暴なやつだと思っていたけれど、そこは人間と魔族での常識の違いってやつかもしれないな。まあ、あまりグダグダ言い過ぎてもう面倒だとか言われないように気を付けておかないと、ここはお互いの歩み寄りの部分だろう。こちらもなるべく姫の希望は聞いていこう。


 そして日付が変わろうかという頃、ついにその時は来た。破水が始まり、ベルスマイアの指示の下お湯を沸かしたりタオルを準備したりと慌しく眷族達が走り回る。そんな中僕はといえば、レイシアの手を握り付きっ切りで声をかけていた。こういう時になんと声をかけていいのかもわからず、ただがんばれとしか言いようがないのが不甲斐ない。

 魔界の姫は同じ部屋にいるものの、直接様子を窺うことができない位置に一応置いている。そしてさっきから僕と同じくどうしたらいいのかわからずに、あわあわとしているのが伝わって来ている。まあそのおかげで少しは冷静になれたので、微妙に仲間がいたかって感じだった。

 まあそんな状態でどれくらいの時間が過ぎたのかわからないのだけれど、気が付くと赤ちゃんのあげる泣き声が聞こえて来て、終わったのだと気が付けた。

 「バグ様、御子息おめでとうございます」

 ベルスマイアのその声に、やっと赤ちゃんの顔を見ることができた。しわくちゃな顔をしているものの、それは紛れもなく人間の赤ちゃんだと思われる。羽とか尻尾が生えていたり、肌が青かったりといった特徴は一切ない為、表面上は完全な人間だと思ってよさそうだった。

 僕の遺伝子がいったいどうなっているのかは不明だったけれど、もし進化過程の遺伝子を継いでいたとしたらドラゴンなどの遺伝子も混じったりするかもしれなかった。けれどどうやらそんなことはなかったみたいだな。ステータスを確認してみても、種族は普通にヒューマンとなっている。

 『う、生まれたのか? 赤ちゃん、見たいぞ! 早く見せてくれ!』

 しばらく放心していたのか、静かになっていた姫が騒ぎ出したので、レイシアになるべく怪しまれないように姫人形の位置を動かして赤ちゃんが見えるようにしてやった。赤ちゃんはまだ首がすわっていないようで、ベルスマイアが面倒を見てくれている。今はレイシアの横に寝かされていた。

 『おー、これがお前の赤ちゃんか~ なかなか可愛いいものだな。して、この者の名はなんと言うのか?』

 (あ!)

 『うん?』

 (いや、考えていなかった・・・・・・)

 『ほう。ならばわらわが相応しい名を授けてやるわ』

 (いやいやちょっと待てよ。何で親や親戚、身内ですらない他人が名付け親になりたがるのだ)

 『誕生の瞬間に立ち会ったではないか。友でもあるし、もはや他人ではないわ』

 (その理屈はおかしい! せめて候補の一つにしておいてくれ)

 『まあそれでも構わんわ。どのような名が相応しいかな・・・・・・』

 そういって姫は考え込み静かになったけれど、こっちも名前を考えなければいけない。せめて姫よりいい名前とか考えておかないとな~ こういうセンスは自信がないぞ・・・・・・


 「レイシア、お疲れ様。大丈夫か?」

 「バグ。大丈夫だよ。それよりも赤ちゃん、男の子だったね」

 「ああ、なんとなく女の子が生まれると思っていたのだが、男の子だったな。それでこの子の名前なのだが、考えてあるか?」

 「うん。少しなら・・・・・・男の子だったら。クルスとか、リックスとか、トライアンとか考えてた」

 どれも無難な名前った感じだな。

 「この子は家名ってフォーレグスになるの?」

 「うん? いや、僕らは国を造ったのは確かだけれど、国王はあくまでホーラックスで、王家とは何の関係もないぞ。貴族でもないまるっきりの一般市民だ」

 『何? バグはこの国を造ったと言っていたのに、支配者ではないのか?』

 おっと、姫が会話に飛び込んで来たぞ。詳しい経緯とか話していなかったから、そこら辺りの事情は理解していないのだな。だから勝手に僕が国王とか支配者だとかと思っていたのだろうな。

 (確かに国は造ったが、眷族に国王を任せて後は自由に暮らしているぞ)

 『ふむ、つくづく自由が好きなのだな~ なかなか面白いやつだわ!』

 まあ、姫は放置しておくとして、家名か~ しいていうのなら日本での苗字だろうか? 江本だけれどそのまま使うのは変だからちょっともじって使いたいところだな。そうすると、エルト辺りなら語呂がよさそうかも?

 「しいて言うのなら、向こうで使っていた苗字をもじってエルトと名乗るといいと思うけれど、どうする?」

 「エルト? レイシア・エルト・・・・・・クルス・エルト・・・・・・リックス・エルト・・・・・・」

 「少し微妙かな? 実際は江本なのだが」

 「それだと、エーモットかな? レイシア・エーモット・・・・・・クルス・エーモット・・・・・・リックス・エーモット・・・・・・」

 それはなんか嫌だな。何かクレクレ君みたいに催促されていそうな名前だ。

 「むー。エルモートは?」

 って、何で家名を決めているのだ? 息子の名前を考えなければ! フォーレグスから取って来て、フォルンとかレグトとか、なかなかいいかも?

 「レイシア・エルモート・・・・・・クルス・エルモート・・・・・・なかなかいいかもね~」

 「よし、安直かもしれないが、フォルンか、レグトを僕の候補にしよう」

 「バグも、なかなかいいセンスしてるじゃない。私ももっとかっこいい名前考えたいな~」

 「まあ、今直ぐ決めないといけない訳じゃないからな。今は疲れているだろうし寝ておいた方がいいぞ」

 「うんそうね、そうするね。お休みバグ」

 「ああ、お休み。レイシア」

 そう声をかけると、やっぱり疲れていたのか、直ぐに眠りに落ちて行ったようだ。


 そういえば赤ちゃんってお酢で体を洗っておくと色白の肌になるとか聞いたことがあったけれど、あれは女の子だけだよな? 男の子でそんな事をしたら、何となくなよってしそうで嫌な気もする。それにしても男か。娘とどうこうなりたいわけじゃなかったけれど、女の子がよかったなって思わなくもないな~

 でも娘になると、結婚を阻止したりとかしてみっともなくなるのかな? それもちょっと微妙だよな~ 自分は結婚しておいて、娘の結婚に反対するような親にはなりたくないと思う。そういう意味では、息子でよかったのかな~

 その日からしばらくホーラックスを含めた眷族達が浮かれたように、赤ちゃんのことを見にやって来たりした。何故かそれに便乗する形でやって来た姫もレイシアに紹介しろと言って来るので、まあ容態も安定したしここら辺りで紹介しておくことにする。いきなりだと誤解されるかもしれないので、呼ぶまで遊んでいてくれと断りを入れて、とりあえず話をしておこう。

 「レイシア、少し前になるが魔界から魔族がやって来ていたのは知っているよな?」

 「うん。バグがもう大丈夫だって言ってたけれど、また何かして来たの?」

 「いやそういう厄介ごとじゃなくて、現在の魔界の支配者と言ったらいいのかな? 魔界の姫というやつと話をしてこっちに手を出さない代わりに遊びに来ているのだが、その姫って言うのがレイシアに会いたいって言っているのだ。連れて来てもいいかな?」

 「え? 何で私に会いたいって言っているの?」

 「うーん。どうやらこの間戦った時に、気に入られたようで僕の妻を見てみたいって思ったようだ」

 あまり紹介したいって気はしないけれど、下手に隠すよりは素直に言っておいた方がいいかなって判断する。下手に関係がこじれるよりは、まだ被害が少なくなるよね?

 隠せば隠す程、こっちに変な疑いも出て来るかもしれないだろうしね。それくらいなら正直に話して、一緒に悩んでもらった方がいいだろう。それで変な方向に話がいったのだとしたら、まあ諦めも付くというものだ。

 「わかった。会ってみる」

 レイシアも微妙に覚悟を決めたように、そう言ってくれる。了承も取れたので、早速姫を呼ぶことにした。

 「会ってもいいそうだ、こっちに来てくれ」

 おそらく町中を見学しているだろう姫に、念話で連絡すると直ぐに反応して転移して来た。


 「初めましてと言っておくわ。わらわは、ビーゼィフォルト・フォールン・グラウトス。魔界を統べる姫である。以後よろしくだわ!」

 「初めまして、レイシアといいます。結構普通というか、あまり魔族っぽくはないのね」

 「ふん。父上のように威張り散らすだけ威張った挙句あっさりと人間にやられるような者になど、なりたくもない。バグも言っていたが、わらわももっと自由に生きたいのだわ」

 「はあ。なるほど」

 何か魔王との間に確執でもあったのかな? こっちに迷惑がかからないのなら、別にいいのだけれど。

 「では、わらわが考えたその赤ん坊の名前を候補の一つとするがいい! ジグレグトという名前がいいのだわ」

 「お前、名前を付けたくて会わせろって言っていたのか・・・・・・予想と違って案外まともに考えて来ているし。魔界センスで変な名前かと思っていたぞ」

 「何を言う、名前とは重要なものだわ。変な名前のせいで暴れる魔族がどれだけ多い事か! あいつらまとめて番号でも付けて呼んでやりたかったわ」

 「魔界では、そんな理由で暴れ回るのか・・・・・・」

 切れる子供ってやつだろう。親で苦労するって言うのはどこの世界でも同じってことなのだな~

 「えっと、グラウトスさん。わかりました、候補の一つでいいということなら確かに受け入れておくことにします」

 「うむ。それとわらわはグラウトスと呼ばれるのは好きではないわ。そうだな・・・・・・ビゼルとでも呼んで欲しいわ」

 「じゃあ、ビゼル姫と呼ばせてもらいますね。これからよろしく」

 そこまで横柄な態度でもないし、そこまでこちらの態度とかも気にしないみたいだったので、無難に紹介が終わったようでホッとしたな。結構この町も気に入ったようだし、変な奴とかがいなければ問題はないよな?

 馬鹿な人間がちょっかいかけないようにだけは、注意しておこう。たぶんモンスターはそこまで変な奴いないだろう。こういう時に地雷を踏みに行くのは、大抵人間だ。


 結局その後揉める事無く雑談して、それなりに仲良くなってビゼル姫は用意しておいた家に帰って行った。

 「魔界から来た姫だって聞いてどんな人かと思っていたけれど、気さくな人だったね」

 「そうだな。僕としてもあまり偏見とか持っていないつもりだったが、さすがにもっと話の通じない厄介な相手だとばかり思っていたよ」

 「確かに、魔族ってそんなイメージがあるよね」

 「固定概念ってやつだろうな。だから何か一つのグループに分類して本人を見ないって言うのは、好きじゃない。おそらく魔族の中でもビゼル姫みたいな者は例外的な性格なのだろうな」

 「そうだと思う。そう考えると、こっちに来たのは正解だったかもしれないね。魔界が実際どんなところかはわからないんだけれど」

 「もう少し仲良くなったら、見せてもらいに行くのもいいかもしれないな」

 「そうだね」

 「後、名前の件だが、一応候補と言っていたが無下にしたくはない。眷族も集めてそこにビゼル姫も加えたみんなで決めていいか?」

 「下手にこっちで決めちゃうと、後々不満になるってこと?」

 「表面上は気にしないって感じだけれど、まだどんな性格か、何が癇に障るのかわからないからな。実力はこちらより確実に格上だから下手に刺激したくはない」

 「わかった。それにみんなで決めたいって言うのは確かにいいと思うしね。眷族達もバグの家族だし」

 「まあな」

 その後の息子の名前決め会議は、まあみんな真面目に名前を考えてくれて、しっかりと選んでくれたので誰からも文句が出ないですんなりと決まった。

 命名、レビルス・エルモート。ビゼル姫もその会議には呼んで、眷族からも候補を集めて最終的に決まった名前だ。誰が考えた名前なのかはわからなくして決めたので、おそらく不満なく素直に選ばれた名前だと思いたい。

 一応ビゼル姫の様子を窺ってみたけれど、なかなかいい名前だって言っているので、自分で考えた名前が選ばれなかったからと暴れるようなタイプではなかったみたいだな。まあ表面上はだけれど。それにしてもこれは誰が考えた名前だったのだろう?


 しばらく眷族やパペットが、息子を見る為に仕事の合間を利用して出入りすることが多くなった。ホーラックスは魔王なのに息子に会いに来ているのが可笑しい気もするが、まああいつも中身が冷たいやつではないので、素直に可愛いものを可愛いと思える感性があるのだろう。言葉遣いは横柄だけれどね。

 ちょっと心配だったことは、魔王の威圧感というか、そういうもので泣き出さないかどうかが心配だったのだけれど、平然として眠っていた。いや、眠っていたから気にならなかったのか? まだ目が開いていないので、今後でわかることかもしれないな。

 ビゼル姫も、町をうろうろしてはひょっこりとやって来て、息子を見ながらレイシアと話をしていた。こうしてみると、魔界がどうのという事実がなければ普通の町娘って感じだよな~

 「そういえば、ビゼル姫はこのまま客人扱いで滞在するのか? それともこの町に移住するみたいな感覚でいたらいいのかどっちだ?」

 「む。そうだな~。ここはわらわにとっても住み心地がよいから移住したいところなのだが・・・・・・魔界を完全に放置する訳にも行かぬからどうするべきか」

 「ビゼル姫みたいに平和的に付き合っていけるのなら、そのまま交流できそうだがな~」

 「あ~あー。それはいいと思うわ。だが残念な事に、わらわほど穏便な者はいなくてな。取引や交渉、交流など面倒だから支配しろって連中ばかりだわ」

 「あー、やっぱり魔界ってそんな感じか」

 「うむ。毎日のように何かしら争い合っておるぞ。まったくよく飽きぬものだわ」

 「それじゃあ、こっちに滞在して魔界からこちらに魔族が来ないように管理するって役目でもするか?」

 「魔界の管理者みたいなものかな?」

 「まあ、そのまんまだがそういうお仕事ってところだな」

 「おー。そうしてもらえるのならありがたいわ」

 「じゃあ、ビゼル姫はフォーレグス王国では魔界からの大使って感じで、魔界からの危険を防ぐ仕事をしてもらう変わりに、国から給料を出すってことでいいか?」

 「給料がもらえるのか。それは願ってもないことだわ」

 魔界からの侵略がこれで完全に無くなるのだとしたら、大儲けってところだな。

 それにもし万が一何かしら事件が起きた時には、助っ人として戦闘に参加してもらえるかもしれないからな。失望されないようにしっかりと友好関係を築いて行けるよう、がんばって行こう。

 そしてフォーレグス王国のルールなどを説明して、ホーラックスにも連絡して給料を出すように指示を出すと、国民になった印のカードの魔法を受け入れてもらう。これでちょっと変わった魔界からの移住者が、フォーレグス王国の正式な国民に加わった。


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