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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十八章  LV百を目指して
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町に来た人間達

 町に着くと、幸がロップソンの無事を確認して抱き着いていた。他のパーティーメンバーはそれどころでは無い様子だけれど、まあ幸は日本人だから今更この町の状況に左右されないのかもしれないな。それか、ただロップソンが心配で周りが見えていないだけとかかもしれないが。

 僕らの周りにはレイシアが召喚した多数のアラクネ達が取り囲んでいる。よりにもよって蜘蛛か・・・・・・まあ何かあった時を考えればいい選択だとは思うけれど、またうじゃうじゃしているのを見ちゃったよ・・・・・・まあそれより彼らだな。

 「まずはこの国の住人になるにあたり、お互いに攻撃したりして傷付け合わないという約束をして欲しいのだが、賛成してもらえるかな?」

 「できる訳が無いだろう・・・・・・殺らなければこっちがやられる」

 ジャドといったか、みんなを代表してそう答える。

 「では聞くが、今君は彼らから襲われているのかな?」

 「いや、でもそれはレイシアさんや、アラクネがいるからだろう?」

 ふむ、まだ理解が足りないか・・・・・・まあ仕方ないだろうな。それならばと・・・・・・

 「そこのゴブリンこっちに来てくれるか?」

 「ゴブ? オレ、カ?」

 「そう、お前だ、ちょっとこっちに来てくれ」

 ジャド達が唖然としている中、ゴブリンの一体がこちらへとやって来る。

 「ゴブリンが喋った・・・・・・」

 ジャドがどうにかそれだけ呟くと、僕の目の前までゴブリンが辿り着く。

 「オレ、コレカラ、シゴトアル。サボルト、ゴハン、タベラレナイ」

 「悪いな、でもそう手間は取らせないよ。これから君の仕事を見せてくれるかな? いつもどんなことをしているのか教えてくれればいいよ。そうだな、手間賃に券を一枚あげよう」

 「ゴブ! ワカッタ、ミセテヤル、ツイテコイ!」

 券を渡してやると、ゴブリンはその場の人間に付いて来いって感じで張り切って歩き出した。

 「ボーとしていると置いて行かれるぞ。ゴブリンより鈍臭いって言われたくなかったらちゃんと歩け」

 「あ、ああ。わかった」

 彼らを連れて、ゴブリンが働いている工場へと移動して行った。


 そこでゴブリンは、家具のほんの一工程をノミで削っては自慢げに僕らに見せびらかす。結構こういう生産って、他人に褒めてもらいたくなるのだよね。だから僕もそのゴブリンを褒めたり、もう少しここを綺麗にとか声をかけたりしていた。

 その後ろで、レイシアが幸達を見張りながらここがどういった場所なのかを説明したりしている。ちなみに一緒に付いて来ていたグロッサブも、ゴブリンがこれ程頭のいい種族だと思いもしなかったとかジャド達に言っていた。ついでだから、工場以外にもコボルトの農場を見せたり、街中で商売しているラミアの店に寄ってみたりした。

 それから時間的にそろそろ昼食の時間だったので近くの食事処に入って、みんなで食事をすることにする。

 まだジャド達がモンスターに慣れていないこともあって、店の奥にある部屋を貸してもらい、そこに料理を運んでもらう。料理を運んで来たのはウェアラビットと、料理パペットだった。

 「あれ? ウェアラビットが働いていたのか。人間の町にとけ込んでいるって聞いていたけれど」

 ライカンスロープが見付かったとかいう報告は受けていなかったのだが、早速こちらに移り住んでくれる者もいたのだな~ それにちゃんとこっちで働いてくれているというのも、嬉しいものだ。

 「最初はそうでしたが、驚いたりした拍子に獣化してしまうと耳とか見られて、襲われますから。ここの話を聞いて直ぐやって来ました。来てみてわかったんですが、ここはとてもいい所ですね。いろいろな種族が一緒にいるのに争いも少ないですし、他所なら殺し合うような種族もたまに一緒にご飯を食べに来るところを見ると、ここだけ違う世界のような気がしますよ」

 「たまに争いになっているのか?」

 「ああ、些細な事ですよ。直ぐに収まりますから、殴り合いとかにはなっていませんね」

 「そうか、問題があるようならそのパペットにでも報告してくれ」

 「この子ですか? この子はお話できませんよ?」

 「喋れないだけで、感情が無いわけじゃない。ちゃんと情報は上に伝わって来るから、問題があれば上で処理されるぞ」

 「え、そうなんですか! というかお客さん随分と詳しいですね? ひょっとしてお偉いさん?」

 うーん、どう言えばいいのかな? まあ適当に誤魔化しておくかな。

 「ただ伝手があるだけだよ」

 「はー、そうなんですか。困った事が起きたら、話しかけてみますね」

 「ああ」

 「それではごゆっくり~」

 ウェアラビットが去って行った後、パペットがお辞儀して部屋を出て行った。


 「これ、めちゃめちゃ美味いな!」

 「本当だ。サチさんのより美味しいとか初めてだよ。あっ、ごめんね」

 冷めないうちに食べろって勧めると、ジャドが一口食べてそう叫び、子供っぽい女性もそれに続いてそう感想を口にしていた。直ぐその後幸に失礼だと思ったのが、謝っていたけれどね。

 「いえ、本当に美味しいですから。バグ君、これって日本の野菜ですか?」

 「いや、さっき見て来ただろう? コボルトが育てている野菜だぞ」

 幸が聞いて来たのでそう言うと、みんなが驚いた顔をする。

 「レイシア先生、前より美味しくなってないか?」

 うん? 先生? そこには他のメンバー程驚いた様子が無い一人の女性がいた。確か彼女は以前にレイシアのことを見詰めていた女性だな。やっぱり知り合いだったようだけれど、先生っていうのはどういう関係だ?

 リーダーのジャドも気になったようで、その女性の方を見ている。

 「たいした話ではない。私は冒険者養成学校に入学は出来たのだが、素質が無いと言われて一年目で追い出された。その後先生に拾われて冒険者に必要な事を教えてもらって、冒険者になれた。それだけの話だ」

 一体何時の話なのだろう? レイシアとはずっと一緒にいたけれど、そんな時間とかは無かったように思える。あるとしたら、一度死んだ後僕が生まれ変わる間くらいか? 確かにその間の出来事なら、僕は把握していないからそういう事もあったのかもしれないな。そんな事を考えていると、ジャドがその女性に話しかける。

 「おいミーリス、何で今まで黙っていたんだよ? そういう情報は共有しておいた方がいいんじゃないか?」

 「彼女には、こちらの情報を漏らさないように、私達に付いて喋れなくさせてもらったわ。だからミーリスが悪いわけじゃない」

 おー、レイシアは情報の大切さをよくわかっていたのだな。まあ僕には教えて欲しかったところだけれど、まあいい。これはレイシア個人の話で、僕が知っているかどうかで何かあるものではないからな。プライベートは大切だ。

 ジャドはレイシアの説明を聞いて納得したようで、再びご飯を食べ始めたようだ。

 「ミーリスはこんな美味しい料理を食べていたんだ。いいな~」

 ムードメーカーなのか、子供っぽい女性がそうやってミーリスという女性に話しかけている。結構いいパーティーメンバーだな。

 「いや、確かにこれ程ではなかったが、昔少し世話になっている間食べていた。しかしそれも少しの間だけだ。冒険者になりたかった私は、実力が付くと直ぐ冒険者として登録したからな。それから先生には会っていなかった」

 「それにしても、ミーリスが落ちこぼれっていうのは、納得いかないな。こんなに何でもそつなくこなせるのに」

 「あー、それは俺も思ったな。剣も魔法もばっちりでどこが落ちこぼれだって言いたいぞ」

 ロップソンとジャドがそう学校に対して文句を言う。

 「レイシアも学校では落ちこぼれと言われたぞ」

 だから僕はそう言ってやった。今だから言える事かもしれないが、レイシアのどこが落ちこぼれなのだって疑問に思えるよな。今じゃあレイシアに勝てる奴なんか、早々いないだろう。勇者も倒したしね。

 「それ、やっぱり本当の話だったのか・・・・・・俺達の学校って、見る目ないんじゃないのか?」

 僕の発言に、嘘だろって感じでジャドがそう答えた。他のメンバー、大体同じ感想を持っているみたいだな。

 「多分だけれど、それは違うと思う。学校は普通だと思うけれど、バグが特別なのよ」

 久々にレイシアがそう言って自慢げに会話に参加して来た。やっぱりこういう人間同士の会話って言うのも、大事なのかもしれないな~ あまり僕の事は持ち上げないで欲しいが・・・・・・

 凄いと思われるよりは、侮られていた方が、いざという時には有利になる。僕は優秀なやつって思われたくはないな。


 その後も町中を見学してもらい、彼らには共存する事を認めてもらうと、カードの魔法をかけた。嫌々なら、この魔法は発動しないから、おそらくこれで大丈夫だろう。後は上手く馴染めるか、モンスターと喧嘩になったりしないかだな。

 話は無事に終わったので、こっちは自分達の遣り残したことを優先させてもらおう。

 まずは金属の解析から進めることにする。

 注目するのはやはりこちらではよく使う金属と、銀に近いけれど別物の存在であるミスリルだ。その他の金属についてはパペット達に調査させようと思うが、全ての金属が地上にあるとも限らないよな・・・・・・やはりここはモグラかね?

 「魔生物作製」

 モグラ型パペットを五十体創り出し、埋もれている金属の調査を指示しておく。金属を探す仕事が終われば、彼らには諜報の仕事をしてもらえばいい。

 さて、まずはよく使う金属を調べてここから鉄の要素を取り除いていく。その結果、僕達が思っていた仮説が正しかったことがわかり、鉄と何かに分離する事ができた。この鉄に混じっていた何かの部分はまだ謎のままだけれどね。

 同じようにミスリルに対しても銀の要素を取り除いてみると、こちらは鉄とはまた違う謎のものが抽出で来た。

 どちらも取れる量はわずかで、鉄が百としたら一しか混じっていないって感じだ。ミスリルの方は、二百に対して一かな?

 とりあえず銀は使い道があるからいいけれど、鉄はこっちの世界ではゴミと変わらないな。それではあまりにも勿体無さ過ぎるので、レイシアに加工してもらう。

 「レイシア、この鉄を変換してくれるか? 限定魔法陣」

 「わかった」

 SPの回復力を高めたので、これでがんがん上位変換してもらおう。ちなみに鉄は変換すると何に変わるのだろうか? それともランダムなのかな?

 一度に変換できる量には限りがあるようで、何回かに分けて上位変換を繰り返す作業をしてくれる。

 ちょっと興味があったので変換作業を見てみたけれど、金属の詳しい専門知識って持っていないのだよね・・・・・・今後工業を発展させて行く為にも、こういう知識って必要になって来るし、そういう意味でもここら辺り知識を集めなければいけないな。

 そう考えると日本のネット環境は理想的だと思う。家にいながら欲しい情報をピンポイントで調べる事ができるのだからね。こっちの世界にもネットを繋げられないのかな? ちょっと試してみようかな?

 「創造!」

 習得できてよかった創造系スキル! おかげで知識にある物は創り出すことができて、目の前に現れる日本で過ごしていた時に愛用していたパソコン一式が現れた。新品であるが、機能はあの時のままだと思われる。自作で組み立てた本体なので、中にあるマザーボードやCPU、グラフィックボードには心当たりがあるものの、その詳しい基盤などの部品には詳しい知識は当然ない。

 それでも創造系のスキルでは創り出すことが可能になっていた。ここら辺りはファンタジー万歳といったところだろうね。パソコンというものはこういう物だってことで、創り出せているのだと思う。

 では早速パソコン一式に含まれているルーターに魔法をかけて魔道具化する。このルーターが日本のどこかのサーバーっていっても以前使っていたプロバイダだと思うけれど、そこに繋がれば自由に知識を手に入れることができるだろう。お金を支払っていないのが申し訳ないけれどね・・・・・・

 早速パソコンで金属の情報を調べてみるけれど、どう調べたらこの見た目鉄の金属がどういった名前なのかがよくわからなかった。むー、パソコンがあってもそれを生かすことができないとは・・・・・・名前がわかれば検索とかできるのだがな~

 やはり専門家でなければどうにもできないものかね~


 『バグ様、私に任せてもらってもいいでしょうか?』

 工房で悩んでいると、司書パペットがそう話しかけて来た。まあ、現状打つ手はないのだし、何かいい案があるのなら任せてしまうのも手だよな。

 「何かできそうなのか? 別に任せても問題ないが」

 『必要な知識を調べてみます』

 そう言うと早速慣れた手付きでカタカタやり始める姿は、とても頼もしく見えた。おー、これは期待してもよさそうだな。

 そうなるとしばらくは情報整理を任せるって事になるだろうし、こっちは時計の方を進めて行くのがよさそうだな。えっとまずはこの世界の時計の情報を集めなければいけないよな。

 「調べ物をしているところ申し訳ないが、時計についてわかっている情報を出してくれ」

 『はい、バグ様』

 多目的シートを広げて時計の情報を見てみると、結構調べてあったみたいで時計の構造に触れている部分も載っていた。

 それによるとどうも人力と言うか、精霊に教えてもらい時計の針を動かしているだけで、別に自動で動いているわけではないみたいだ。

 神官と深く結びついている場合などは、時間確認が必要になった時に、精霊が時計の針を動かしてくれてそれを確認したりしているそうで、個人的な時計の中には時の精霊が好む聖なる気のようなものを溜め込める構造が作られているのだそうだ。つまり、こちらでの時計は手動であって、自動で時を刻むものは存在していない。精霊が動かしている時計が、擬似的な時計って感じだった。

 なんだかな~って感じだな。

 まあ逆にそんな状態なら、時計を作る価値はあるかもしれない。問題は魔道具として作りたくはないので、誰にでも作れるような構造をどうやれば生み出せるのかってところかな。やっぱり電気とかになって来るのだろうか?

 確かクリスタルに光を当て、その反射した光の時間差か何かで秒針のリズムとかになるのだったか? そんなもの、僕の技術力では作りようもないな・・・・・・変わりとなりそうなものを何か探してみよう。

 ようは一定のリズムで動くものが存在していれば時計として組み込めるのだ。まずはそれを探してみよう。


 直ぐに目的の情報を見付けることができなかったので、気分転換をかねてダンジョンに潜ったりレイシアとのんびり雑談などして数日を過ごした。新しい発想とかって、不意に思いついたりするものだからな。

 そんなある日、ダンジョンで倒したキラープラントの反応が丁度使えそうな感じがした。まったくの偶然ではあったものの、攻撃手段として棘を打ち出して来る瞬間、周囲から魔力を取り込んでいることに気が付いて倒した後で魔力を流してみたらピクピクと動いたのだった。単純に棘を発射する何かしらの役立てようと考えただけなのだがね。こういう変わったものは、とりあえず使わなくても利用できないか考えてみるのが生産者としては楽しいものだ。

 結局棘自体は生えてこなかったものの、魔力を流している間はずっとピクピクしているのを確認して、これを利用できないかなって思ったのだ。ピクピクしている動きは、おそらく棘が生えて来ていれば、打ち出そうという動きなのだろう。

 「ちょっと研究してみたいからまた工房に戻るよ」

 「はーい。これが時計になるの?」

 「どうかな? なんとなく出来そうだなって気がするだけだけれど、今は他にいい案がないし、試してみたいところだね」

 「上手く行くといいね」

 「そうだな。失敗したとしても、他で別の物に使えそうなヒントになればいい」

 工房に戻って来ると早速パペット達を集めて、キラープラントを使った時計の開発を試してみる。程なくして、ぴくぴくするたびに秒針がカチカチと動く構造は作る事が出来た。まあ腕時計程小さいものではないけれどね。出来た構造物は置時計くらいの大きさの物だった。

 後魔力を流してやらないと動かないので、どうやって一定の魔力を流して行くのかという問題がある。魔道具ならこれは簡単だけれど、余り魔道具を使いたくはないのだよね。これは一般家庭に復旧させたい物なので、出来ればゴブリンでも加工できるような物にしたかった。

 とりあえず、魔力の部分は保留にして、秒針が動けば時計として機能するだろうから、そっちをパペット達に仕上げてもらおう。おそらくその構造自体は難しくないので、直ぐにできると思う。歯車を使えば直ぐにできるだろう。


 その後進展が特になかったので、僕達はまたダンジョンに潜って経験を稼いだり、幸達がちゃんと過ごせているかを確認してみたりした。

 そうして様子を見ていると、ロップソンが錬金合成で作った植物の肥料の話をして来て、こちらも野菜の品種改良をしているということでいろいろ情報交換をすることになる。

 植物を急成長させる魔道具とか、結構便利な物を作っているようだな。おかげでいくつかの野菜が納得できる品質になったよ。せっかくなので、ロップソンにはそのまま野菜の品種改良を担当してもらうことにした。彼も美味しい野菜を作りたいと考えていたようで、僕がやってもいいと言うと喜んで取り組みだした。

 ただし今までロップソンがやっていたような錬金合成で種を作る方法は止めさせて、受粉による品種改良だ。

 植物のモンスター化の話を聞いた後だと、余計にその方法はするべきではないと思えた。それはロップソンも嫌だと考えていたらしく、受粉によって品種改良ができると聞いて、喜んでこちらの方法を試している。

 まったく新しい野菜を生み出すのだとしたら、錬金合成も面白いとは思えるけれどね。それは全ての野菜を美味しくできた後でもいいだろう。


 そんな感じで過ごしていると、司書パペットの情報集めに切りが付いたみたいで、以前鉄を上位変換した時の金属の情報が手に入った。どうやら玉鋼と呼ばれる鉄の一種になったと教えてもらえた。

 確かゲームとかでたまに出て来るような金属だな。用途はよくわからないけれどね。

 『バグ様、玉鋼は日本刀を作る時によく使われた金属らしいですよ』

 「何? それはさらに上質の日本刀が作れるってことかな?」

 こちらではゴミ金属といえる鉄が、化けたな~

 『おそらくはそうかと』

 ほー、早速日本刀を鍛冶パペットに作ってもらう。出来上がった日本刀は、確かにいい刃紋が浮かんでいて、美しいなって感じられた。今だと僕やレイシアでは正確な良し悪しを見る事ができない為、戦士をしているジャドにその日本刀の出来をチェックしてもらうことにする。錆びた剣でも力押しで斬れるからね。まあ錆びてたらその後で折れると思うけれど。

 「という訳で、新しい金属で作った日本刀なのだが、出来を試して教えてくれないか?」

 「そういうことなら任せろ。何か斬ってもいい鎧とかはないか?」

 「それならこれで」

 そう言って鎧を創造のスキルで創り出してジャドの前に置く。店などで売っているフルプレートの鎧だな。金属の材質はこの世界の一般的な金属だ。この時点で金属の優位性は日本刀にあるだろうね。まあ、手応えみたいなものがどう変わるかわからないので、どんな感想がもらえるかな。ちょっと楽しみだ。


 はっ!


 戦士らしく、なかなか気合の入った一撃によって、あっさりと肩口から腰にかけて斜めに斬り飛ばされた。

 「これは凄いな。殆ど抵抗を感じなかったぞ。これは名品といってもいい武器だ」

 ふむ、なかなか好評を得られたみたいだな。そうなると、武具を作るのにはこの玉鋼を使って行くのが良いかもしれないけれど・・・・・・もう戦争とかは考えていないのだよな・・・・・・

 一部の冒険者用かな? まあ、他の使い道も考えて行こう。ジャドには協力に対する感謝を伝えて一度工房に戻って来る。


 そういえば、今まで使っていた分離前の金属を上位変換するとどうなるのだろうか?

 「レイシア、こっちの金属を上位変換してみてくれないか?」

 「はーい。やってみるね」

 早速スキルを使って変換してくれる。出来上がった金属を司書パペットが鑑定してくれて、どうやらチタン合金と呼ばれる金属になったみたいだ。ステンレスのように錆びにくく鉄より硬い優秀な素材だということが判明した。

 この結果から、工房内でパペット達が使っていた道具を全てチタン合金に変える作業が始まる。まずは加工しにくいチタン合金から加工するのではなく、鉄の状態でそれぞれの道具へと加工する。そして出来上がった鉄をレイシアが上位変換することで、チタン合金の道具が完成して行った。

 今までの金属製工具に比べ、丈夫で軽く手入れがお手軽になるって話で、かなり使い勝手のいい素材になったようだな。レイシアにしか出来ない作業になるので、また苦労をかけそうな予感がして来たな。しかも今度はお手伝い用のパペットが創れそうにないぞ。

 そういえば、ロップソンも同じスキルを持っていたかな? 手が足りない時には手伝わせてもいいかもしれないな。ロップソンも生産は好きそうだから、喜んで手伝ってくれるだろう。

 そんな事を考えていると、チタン合金はピカピカしていて綺麗だったので、パペット達と一緒に出来上がった工具を前に喜んでいるレイシアが見られた。まだ活用方法もわからないから今悩む事でもないな。

 まずはチタン合金を使ってどうやって工業を盛り上げて行くか考えて行かないとだよな~


 そういえば工業みたいな生産は、性に合わない冒険者も一杯いそうだから、もっと体を使った仕事も用意してやらないといけないな。レスキュー隊みたいに、いろいろな場所で活躍する部署でも作るかな? それなら日頃から体作りをしてもらえば後は自由だし、何かが起こった時には役に立ってくれそうだ。

 今まで地震や天災は起きていないから、こっちの場合は戦争があった時にも活動してもらうって感じになるかな? これは普通に軍隊って感じがするな~ まあ無職よりはましって感じだろうか?

 まあ暫定的にそういう扱いをしてみようとホーラックスと話し合う。

 会議を開いて眷族達の意見をまとめてみると、国の兵士ということでその他にも体を動かしたいモンスターなどを集めて、フォーレグス王国の軍部を立ち上げることに決まった。ある程度軍事訓練をした後、他の人間の町も含めた見回りや兵士の駐留などをして行く方針に決まる。

 まあ逆らって来る者とかも出て来るから、そういう人間を鎮圧するのが最初の役目になりそうだよね。

 軍隊とか言ってはいるが今のところ戦争は想定していないので、ホーラックスや眷族に任せることにして、他の金属について調べていくことにする。


 まずはこっちの世界の一般金属から抽出された薄緑色の金属について調べてみてわかったことは、地球には無い金属らしくて、金属のわりに比重は軽いみたい。金属としての硬さ自体は、鉄より硬いようだった。溶解温度は鉄の二倍以上あるようでかなりの高温でないと加工できない金属みたいだった。しかし魔力を流す伝導率は悪くなくて、魔力が流れている間は粘土のように柔らかくなるみたいだ。

 つまりわざわざ高温で溶かさなくても魔力を流しながら加工すれば簡単に造形できるというわけだ。ドロドロになるわけではないので加工はしやすそうだな。型とかに押し込むことも出来るだろう。

 魔力を流すのを止めると、数秒で魔力を排出して硬くなるようで、魔力の保持力はよくないことから魔道具として扱うには不向きな事がわかった。

 魔力を電子回路みたいにして扱うにはいいかもしれないけれどね。この金属の中を素直に移動してくれるので、途中で吸い出されない限りは出発点から終点まで、真っ直ぐに魔力が流れるようだ。

 鉄に混ぜることで安定するようで、鋼みたいな硬い金属になるみたいだな。鋼と違うメリットは、錆び難いということと、一時的に魔力を流す分には使い勝手がいいことだろう。

 まあこれをどう利用するかが問題だろうね。今は性質がわかるだけで、利用方法がわからない。

 次に銀を上位変換してもらうかな。少量取れた薄緑の金属を、魔力を流し粘土のようにして遊んでいたレイシアにお願いして、上位変換してもらう。

 このスキル僕も欲しいな。そうじゃないと魔道具に取り入れたりできないから、今後この工程が必要になって来るとまたレイシアの負担が大きくなりそうだ。そうなったら、ロップソンにも強制的に手伝わせようと考える。


 銀の方は、こちらの世界で普通に使われているので、特に変換する必要も無いかもしれないが、一応何に変わるのか見ておきたい。そんな訳で上位変換してもらったのだけれど、銀から変化した物はコバルトと呼ばれる金属だと司書パペットに言われた。

 「シールド!」

 それを聞いた瞬間、即座にシールドを展開して周囲が汚染されていないかどうかを調べた。

 確かコバルトとは金属を腐らせると言われコボルトの語源にもなった、放射性物質の名前じゃなかったか? もう少し安全に対して気を付けるべきだったと反省するけれど、幸い汚染自体は特になさそうだった。

 『バグ様、この状態のコバルトなら安全ですので汚染の心配はいらないようです』

 「そうなのか・・・・・・もう少し安全に気を使うべきだったな」

 工房の一部に何重にもシールドを展開した隔離空間を作って、もし何か危ない物質を作り出してしまったとしても被害が広がらないようにと工夫をしてみた。わかりやすいようにシールドを薄く青色に染めたので、これを見れば危険な作業はこの中でしないといけないって想い出すだろう。

 後は念の為に工房全体を他の場所から隔離できるように自動防衛機能を付け加えておく。事前に対策するって難しいものだなって、改めて考えされられたな。

 さて肝心のコバルトの活用方法だけれど、これは単体では意味がないらしい。合金に加工することで、ジェットエンジンの材料になったり、宇宙船の装甲板みたいな物になったりするみたいだ。これで盾を作れば、無敵の盾になりそうだな。

 何か活用方法が全部戦争にいっている気がするのでここらで保留にしておこう。こんな金属が必要な一般のものなんか思い浮かばない。


 途中ばたばたしてしまったけれど、続けるかな。

 ミスリルから抽出された物質は紫色の金属で、こうしている間にも周りから魔力を吸い取っていることがわかる。どれだけの魔力を溜め込むのか、ちょっと興味があるところだな。まあ今はそれより特徴の把握だ。

 こちらも地球にはない金属みたいで、比重は銀と同等。硬さは銀よりも硬いみたいだった。溶解温度は鉄と同じくらいなので、銀よりも高温じゃないと溶けないみたいだな。

 こちらは魔力を含む程硬度が上がって、内包した魔力は何かしらの方法で消費しなければ保持し続けるようだ。その為魔力の伝導率はほぼ無く、バッテリーのようにひたすら魔力を溜め込む感じの金属らしい。

 この金属にはいろいろと使い道がありそうなのだが、ミスリルがそこまで豊富ではないのと、そのミスリルから少量しか抽出できないものなので、どう生かして行くかは考えどころだ。

 日本だと黒船に蒸気機関車、鉄砲といったところだったかな?

 交通手段は馬って世界なので、蒸気機関は有りかもしれないな~ 他にはファンタジーっぽく飛行艇とかも浪漫がありそうだ。空を飛ぶのはこちらではありえない発想なので、そっちの方が楽しいかもしれないな。

 事故が起きれば大体かなりの人命が失われることになりそうだけれどね・・・・・・

 その後も金属の生かし方は今のところ決まっていないので、ダンジョンに潜ることにする。金属をどう役立てて行くのか考えながら、ダンジョンをずんずん進んで行った。


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