カラント平原・5
バトル回。残酷シーンあります。
皆さんコンニチハ!
手乗り改め、頭乗りスライムになった自分です。
進化の祠を飛び出してから、幾日か経ちました。
え? えーと、三日くらいまでは数えたけど飽きた。
日常に変化がなくてつまらんし。
いやー、昼夜の違いはあっても、祠ん中とそんな変わりは無いね。
苔食べてたのが草になって。
青さん達と一緒に行動して。
まあ、寂しくは、なくなった。
ボッチよさらば。
たまにバトルがあるけどね!
いやいや、自分が戦うんじゃないよ?
戦うのは青さん。今の所は狼さんとのエンカウント率百%で、他のモンスターをまだ見たことがない。
出会い頭に向こうが襲って来るんだけどね。もち即殺。青さんの棍棒がどす黒い理由がよく分かった。
あれ、潰れたトマトが染み付いてるんデスネ☆
まあ慣れた。色々。
トマトも頭の天辺も。
高い所でも落ちなきゃ平気なのだ!
……けっして、肩に乗ってたら鳥さま達が怒るから、自分の定位置が頭になったワケではない。
んで、本日もいつも通りに平原を散策。
自分は勿論、青さんの頭の上だ。
鳥さま達……そろそろ名前を考えるか? よし、右さん左さんで。リーダーがさん付けなのに、いつまでも様呼ばわりはしないよ!
……右さん左さんはお空を飛び回っている。結構フリーダム。
あー、いや、斥候みたいな事もやってんのかも。たまに青さんが空を見上げて、歩く方向変えたりしてるし。
そしたら狼さん達とエンカウントするんだよね。
偶然とは思えん。
やっぱ、青さん達は生きる為に狼さんを殺してんだろーなぁ。
これも弱肉強食。
……自分は草食だけどね!
ふと青さんが空を見上げた。
あー、獲物発見、ですか?
自分はバトル中、ただのひえ○たですから。
頭の上で大人しくシテマス。
はよ終わらしてねー。
ええええええええ。
多くね? めっちゃ多くね?
ひー、ふー、みー、……あ、動かないで、数えらんない。
とにかくめっちゃ狼さん達が周りを取り囲んでいる。
十数頭、いや、二十以上?
や、ヤバくね?
あ、青さん!
信用してるからね!
いつものごとく、即殺、全滅で!
動物保護とか自分知らんし! 自分の安全第一だし!
任せた!
てな訳でバトル開始。
青さん、棍棒を振りかぶった!
地面に叩きつける!
ズオォォォォン。
あからさまな迄の威嚇。
大きな動作は本来隙に直結するだろうに、それ以上の殺気と威圧に、闇狼達は跳び退く。
事実その行動は正しく、棍棒を叩きつけた場所は落石でもあった様に陥没している。
棍棒、すげー丈夫だな!
闇狼の一体が、悪くなった足場をものともせず、青さんへと飛び掛かった。
うなる棍棒。一撃必殺とはまさにこの事で、空中で直撃と共に破砕音が響く。
即殺だね!
一頭目が倒されたのを合図に、狼ならではの連携プレーで、正面と背後から同時攻撃!
前が五、後ろが六。
一頭目と同じ愚行は犯さず、陥没した地面を飛び越えずに、這うように低く、素早く、一掃されないだけの距離を互いに置いて迫り来る。
あ、頭いーな!
先頭が横に跳んだ。フェイント。青さん、構えを崩さない。二頭目、回り込んで棍棒を持っていない左手側へ。背後からも合わせたようなタイミングで一頭。
青さん、動く。
狙ったのは--フェイント狼。
一歩で左腕を伸ばし、鷲掴む! 流石は巨人、リーチが長い。それは前方の攻撃を誘うような動き。左腕狙いの狼達がそちらに流れる。
更に一歩……じゃない! 蹴りだ。釣られた前方の一頭を蹴り飛ばす。多分、死んだ。棍棒で殴るよりも湿った音がした。
鷲掴んだ狼を引き寄せ、そのまま後ろへと振る。肉と肉がぶつかり合う音。
二頭の狼が一塊になって転がっていく。
ひいぃぃぃぃぃ。
こえーよー。
二歩前に出た分距離は縮まっている訳で、時間差で襲い掛かって来るはずだった残り三頭は棍棒の餌食に。一薙ぎで吹っ飛ばされる。
青さーん! うーしーろー!
背後の五頭が一斉に飛び掛かって来た!
一頭は左足に、二頭は右足に、更に二頭は振り切ったばかりの棍棒を持つ右腕に噛み付く!
ぎゃー! あ、青さん!
噛み付かれても何のその、青さん表情を変える事なくまずは右腕を一振り。
狼達を地面に叩きつける! それでも狼達は離れない。
ウォォォーーーン。
高らかな遠吠え。
見れば周りを取り囲んだ残りの闇狼の中に、一体だけ毛色の違う巨狼がいた。黒銀の狼。
い、いかにもボスっぽい!
巨狼の一吠えによって、全ての狼達が青さんに襲い掛かった! 巨狼自身も飛び掛かる!
でかい!
怖い!
ヤバい!
超ピンチ!
あ、死ぬかも。
ぶぉぅん。狼二頭をぶら下げているとは思えない速さで、青さん、棍棒を振り回す! 威力はやや落ちたのか、吹き飛ばされるも即死はしていない狼達。
腕の狼二頭もまだ食らい付いたままだ。
と、そこで青さん、左手で一頭を掴む。なんとそのまま、頭を握り潰した。ぐしゃり。
もう一頭も以下同文。
え、ナニソレ。
薙ぎ払いを華麗に避けていたボス狼が、その隙に青さんへと近寄る。
そこで上空から飛来する影。
右さんと左さんだ!
怪鳥達の妨害に、攻めあぐねるボス狼。
ヒットアンドアウェイで蹴られまくってイラついているようだ。
両足の狼達をも握り潰して始末した青さんが、ボス狼へと向き直った。
場面は一騎打ちの様相を呈しつつある。
これまでの攻撃は青さんにどれだけのダメージを与えたのか。自分が見る限りでは、青さんはなんともなさそうだ。
一方のボス狼もほぼノーダメージ。
互いにタイミングを計り、じりじりと間合いを詰める。
棍棒で吹き飛ばされ、ダメージを受けたがまだ動ける狼達の方は、右さん左さんが相手をしている。
あ、一頭がお空に吊り上げられた。……あ、落とされた。死んだっぽい。
怪鳥ならではの攻撃だな!
青さんが動いた!
先手で仕掛けるのは初めて見る。一歩踏み込んで上段からの振り下ろし!
ボス狼、するりと身をかわし懐へと潜り込む。この狼、かなりでかい。立ち上がれば青さんの肩ぐらいまでは届くのでわ? そんな巨体が間近に迫る。
ギャーーー!
パックリと開いた口腔、ズラリと並んだ禍々しい牙。狙うのは--青さんの首。
だが首筋に辿り着く前に、青さんの左腕、いや、拳がねじ込まれる。殴ると言うよりは防御の反応で、ボス狼はそのまま拳に牙を立てた。
上体を捻って、青さんは相手の勢いを後ろに逸らす。しかし拳を引きずられてたたらを踏んだ--巨人である青さんが! それだけボス狼が大きいのだ。
拳は大丈夫なのか?
まさか噛み砕かれたりしないよね!?
直後、棍棒がうなった。脳天めがけての一撃。ボス狼、拳を口から放して避ける……避けない? え?
巨狼の体が硬直したように見えた。
バッキィン。
な、何か凄い音した! 金属か!
巨人の一撃をまともに喰らってなお、ボス狼はまだ立っていた。だがフラついている。額が割れたのか、血が溢れ出す。様子がおかしい。口からも大量の血が流れている。
青さんが拳を引き出した。血塗れの手。何かを握っている。え。何。ちょっ。
ヒギャーーーーーーーーーーーーー!!
次の瞬間、勝負は決まっていた。更なる追撃。
ドグシャァ!
二度目で完全にボス狼の頭は叩き潰された。
終わってみればほぼ圧勝。平原に横たわる死屍累々。
陥没した地面、流れる血河。
おおぅ……。
子分狼達も、右さん左さんによって始末されている。
墜落死って怖いよね。
ポイッと青さんが左手に持っていたモノを投げ捨てた。
血塗れのブツだ。
うっかりマジマジ眺めてしまった!
牛タンって旨いよね(現実逃避)。
……狼タンはやめて。
あ、萌えじゃないから。むしろ引くから。ドン引くから。
バサバサっと羽音と共に右さん左さんが降り立った。
「「グギィィ!」」
俺等も活躍したぜ! とばかりに誇らしげだ。
うん、ホントに凄い。
あんなにいた狼が………………どうすんの? これ。
食べるの? 食べ切れるの?
自分は草食だから無理だよ?
---二大モンスター対決は、斯くして一つ目巨人の完全勝利で幕を閉じたのだった!!
以上、解説はスライム、青さんの頭の上から実況をお届けしました☆
スライムは解説に向いてない。悲鳴多過ぎ。