国境《ギニジ・ギリバ国/バーンドン国》
大変遅くなりました。誠に申し訳ありません。
まさかこんなにネタに詰まるとは。
一日一話の掟が崩壊中。どうにかしたい。
村を出てから三日。野宿が続いて、みんなにちょっと疲れが見えていた。
自分は超元気! でも餞別の野菜が底を突いたので、そこらの雑草食べてるよ!
これはこれで食感がヨロシイ。
荒野を一日以上掛けて馬車で走り抜き、昼過ぎになった頃、遠くに建造物らしきモノが見えてきた。
長大な、石の壁だ。
おぉぅーーーーお。
右から左に眺め渡しても、切れ間が見つからない。
荒野の先を完全に塞いでしまっていた。
おお、何アレ。万里の長城? 違うか。実物見た事ないけど、絶対違うな。
近付くにつれ、少しずつ壁の様子が判ってくる。
大きく長方形に切り出した茶灰色の石が、下から三段積まれている。その上からはレンガ大の長方形の石。
見上げた高さは---これ、青さんより大きいんでない?
防壁? 城壁?
城塞らしきものは今の所見えない。それとも壁の向こう側にあるの?
「--、---」
リーダーさんが商人さんに声を掛けると、馬車の進路が右に寄った。
その内、壁を並走する形になった。
昼過ぎの時間で、今、太陽は馬車の右斜め後方。左手に壁がある。
……自分の知ってる東西南北がこの世界でも当てはまるのなら、壁は東西を一直線に貫いてる事になる。
どこまで続いてるんだろ。
てか、よくこんなの造ったな。
真新しさは感じない。だいぶ風化したような、年季の入った石壁だ。
驚いてるのは自分だけじゃなく、御者席にいるティーさんも、どこか感動したように壁を見上げていた。
そのティーさんへ商人さんが何事か話している。もしかしたらこの壁の解説でもしてるのか。
ちょっと羨ましい。
うーむ、そろそろちゃんと言葉を勉強するべき?
でもなー、どうやればいいのか。
青い猫型ロボがいれば、翻訳コン○ャクが手に入るのに。
そんなどーしようも無い事を考えていると、ようやく前方に門が見えて来た。
幅も高さもある、多分鉄製の大きな門が一つ。
その両脇にやっぱり鉄製の小さい門が二つ。
大門は閉じていて、小門だけが開かれていた。人の姿も見える。
小門でも馬車は通れそうだった。
「----?」
「……---」
商人さんとレッドさんが言葉を交わした。
ん? 何でこっち見るの?
リーダーさんの馬が下がって来て、御者席の隣に並ぶ。
……ん? 馬さんの水袋?
あ。
ヒョイ、と持ち上げられた。んで、ポイと水袋の中へ。
ま、またかーーーーーーー!!
謎の監禁(?)再び。
ちょっと! 何でさ!?
門の観察したいのに!
せっかくの観光気分が!!
…………あれ、狭いケド居心地いいカンジ?
ぐう。
………。
………。
ぬふ、くすぐっ………とぬぉ!? 誰だ!? 鷲掴んできたの!!
せ、セクハラだ!
急に水袋がひっくり返った。
ポヨンと落ちたのは地面の上。
ビミョーな表情で自分を見下ろしている兵士さん? が目の前にいた。
周りを見れば、「あ、しまった」な顔をしたティーさん、商人さん達。
………うん?
なんかマズイんですか?
取り敢えず、空気を読んで大人しくしておく。
「----」
「----」
しばらく兵士さんと商人さんが話し合い、結論が出たのか他の兵士さんが一人、すぐ側の扉からどこかへ行ってしまった。
……自分はただの人畜無害なスライムですよー。
つ、捕まらないよね?
よくよく周囲を見渡せば、どうやらここはあの小門だった。
さっきの兵士さんが入ってった扉は、石壁の中を出入りするためのもので、どうもそこから人の気配が沢山する。
つまり、この石壁自体が砦みたいなモノなのか。
ここって……国境、なのかな?
同じ国の中を、わざわざ壁で分断するはずもないし。
って事は、これから入国目的とか訊かれちゃうの?
さいとしーん、てはっきり言わなきゃ別室で尋問されちゃうの?
うお、緊張してきた。
程なく戻って来た兵士さんの手には,銀色の指輪とチェーンがあった。
………見覚えあるような。
ティーさんがその二つを受け取る。
膝を地面に付き、自分と向かい合った。
「-----、---」
兵士さんが隣に立って何か説明している。
ティーさんは頷くと、それを見ていた自分にチェーンを巻き付け始めた。
え、拘束!?
ところがスライムボディのツルツルが、チェーンを滑り落としてしまった。
だよね。いや無理でしょ、スライムにチェーン付けさせるの。
業を煮やしたティーさんが、ぐりぐりチェーンを押し付けた。
えー……これ、自分が持たなきゃ駄目なの?
しょーがない……細身のチェーンだし、この量なら取り込めるかな?
ごっくん。
チェーンを丸呑みしてみた。
「--……、---」
なんか兵士さんに驚かれた。でもこれで正しかったらしい。更に何かをティーさんに説明した。
「---、---、---」
ティーさんが呪文みたいなのを唱え出す。
あー、思い出した。
これ、ゴブさんと学者さんがやってたヤツ?
あの時は逆にチェーンを外してたけど。
何が起きるんだろ。
「---、---」
仄かに指輪が光る。
一方の自分が持つチェーンは。
……反応なし。
あれ、光らない?
怪訝そうな兵士さん。ティーさんがまた初めから呪文を唱える。
「……---」
指輪、光る。
チェーンはやっぱり反応なし。
周囲がざわつき始めた。
荷台から降りてきたレッドさんが、ティーさんとバトンタッチ。
呪文を唱える。
指輪は光った。
でも、チェーンはやっぱり何も変化が起こらない。
兵士さんが別の指輪とチェーンを持って来たので、自分は取り込んだ物を吐き出し、そっちを新たに飲み込んだ。
レッドさんも指輪を交換して、また呪文を唱える。
チェーン、反応なし。
「---?」
みんなが困惑してるのが分かる。
商人さん、護衛さん達も順繰りに試していった。誰が呪文を唱えても、チェーンは反応しなかった。
……え、コレ自分が悪いの?
イヤイヤイヤ、きっとこのチェーンがおかしいんだよ!
自分、悪くない!!
困惑ムードが自分にとって針の筵状態の中。
荷物を漁っていたティーさんが、二つの封筒を兵士さんに差し出した。
ちらりと見えた片方には、ギルドの押印。
受け取った兵士さんは、よく見ると他の兵士さんより装備が立派だった。もしかしたら偉い人?
しばらく渋面で、その人は唸っていた。
「--、------」
「--」
「---」
ティーさん、レッドさん、商人さんが頭を寄せ合って話している。ティーさん達はどこか申し訳なさそうだ。
じ、自分のせいじゃないからねっ!?
兵士さんが顔を上げた。封筒を二つとも返却して、何かを話し出す。
それを聞いたみんなが、ホッとした顔になった。
もしや………無罪放免?
まだ取り込んだままだったチェーンを吐き出し、自分はポヨポヨとティーさんの側へ。
ティーさんは自分を拾うと、肩に乗せてくれた。
それを見ている兵士さんからは、お咎めはナシ。
もう大丈夫らしい。
良かったー、逮捕されちゃうかと思ったよ。
安心の余り、ティーさんの肩の上で脱力する。
国境って怖い。
……結局、あの指輪とチェーンが何だったのかは不明だ。
また馬車に乗り込んで---自分は今度は堂々と御者席に。
動き出した馬車は、ゆっくりと石壁をくぐり抜ける。
無事に入国。
自分にとって、三番目の国を訪れたのだった。
道具を使った従魔契約は魔法攻撃に当たる、と言う話。
スライムには無効。




